【特集】NFTで注目すべきは、”ユーザー体験の拡張”・・・「ブロックチェーン×エンタメ」ベンチャーのGaudiyに聞く今後の可能性とは

達川能孝 gamebizプロデューサー/TeeL合同会社代表
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昨今、「NFT」という言葉が話題になっている。スクウェア・エニックスがブロックチェーン技術を活用したNFTデジタルシールを発売を発表したことや、米国人アーティストのビープル(Beeple)がNFT作品が競売にかけられ6930万ドル(約75億円)で落札されたことも記憶に新しいのではないだろうか。

そこで今回gamebizでは、そんな話題のNFTとはなにかを改めて確認しつつ、そのベースとなるブロックチェーン技術とその周りを取り巻く状況について触れていく。今回は株式会社Gaudiyにメールインタビューを実施。

同社はファンコミュニティサイトなどを手掛けるサービスを展開しており、ブロックチェーン×エンタメにて新しい体験を作り出そうとしている会社だ。代表である石川氏に、Gaudiyの取り組みや今後のNFTやブロックチェーンにおける展望について聞いてきた。

技術進歩が目覚ましいNFTとブロックチェーン。課題は「マス化」。

  • 株式会社Gaudiy

    代表取締役
    石川裕也氏

ーー:まず初めに、御社についてお教えください。

Gaudiyは「ファンと共に、時代を進める。」というミッションのもと、エンタメ向けのトークンエコノミー事業を展開しています。サービスとしては、新しいファンコミュニティサイトなどを開発しています。



私は19歳の頃にAI関連企業を創業したのち、ブロックチェーン×エンタメで世界に挑戦するために、2018年5月にGaudiyを創業しました。個人では毎日新聞社の技術顧問や、LINE Pay社のブロックチェーン技術顧問などを兼任しています。


ーー:NFT参入のきっかけやNFTに注目したポイントについてお教え下さい。

Gaudiyを創業する前年の2017年に、NFT、トークンを中心としたトークンエコノミーの世界観や革新性に衝撃を受け、会社を設立しました。

NFTは高額な取引価格のみに注目が集まりがちですが、本質的な価値はそこではなく、トークングラフのような「価値の拡張」にあると考えています。所有の虚偽ができないというNFTの技術特性が、その拡張性を作っています。

これは、例えば現実世界において、運転免許証が「運転を許可する権利」だけでなく、レンタルや口座開設等における「信用の保証」になっているのと同じです。

このように、NFTはアートなどの単一アセットではなく、あらゆるものに拡張されます。弊社でも、電子書籍、ゲーム、トレカ、チケット、クーポンなど様々なものにNFTを活用していますが、これから世界中でNFTを活用した面白い事例がもっと出てくると思います。


ーー:暗号資産全体についてはどのように見ていますか。

人類史上、最も成長スピードの早い技術がブロックチェーンだと考えています。

その背景として、暗号資産というお金のインセンティブが技術にプラスされたことで、技術フェーズの早い段階で多くの資金が集まり、それがすさまじい技術発展スピードを後押ししたと考えています。それゆえに、技術進歩に管理体制が追いつかず、暗号資産が盗まれるなどの事件があったのも事実です。

そのため、企業や国家は、技術発展スピードに追いつけるような仕組みやセキュリティ、国のガバナンス体制をしっかり作っていくべきだと考えています。

特に国内では、海外と比べてもそのスピードに適応できておらず、税体制などが整っていません。それによって優秀なブロックチェーン企業の国外転出が相次いでいることは、とてももったいないことだと思っています。

 

ーー:NFTの可能性と課題についてはいかがでしょうか。

NFTの可能性については、前述したように多くの可能性を感じています。また最近では「Axie Infinity」というブロックチェーンゲームがフィリピンの方々の生活を支えているように、貧困などの社会問題の解決にもつながると考えています。近い将来、誰もがNFTを扱っている時代になると思います。

よく議論されるNFTの課題は、ガス代(ブロックチェーンの発行手数料)、環境問題、ウォレット・秘密鍵の管理問題ですが、それは時が解決するものだと考えています。

それ以上に、私が思うNFTの課題は「マス化」です。NFTは価値の拡張であり、NFT自体に価値はありません。そのためNFT自体に注目するのでなく、一般の方が使って楽しい体験が先にあり、そのコンテンツの裏側にNFTの技術があった、というような体験を作るべきだと考えています。NFTというバズワードは、ビジネス側や技術者側は好みますが、一般ユーザーにとっては興味を引くものではないと思っています。

そのため、弊社ではアニプレックスやSony Music、集英社、東宝などのIPコンテンツを扱っていますが、あえてNFTと言ってないものも多くあります。



ーー:現在、取り組んでいるNFT事業についてお聞かせください。

弊社では、IPコンテンツを有するエンタメ企業様と協業し、そのファンの方々にコミュニティサービスを提供しています。その領域は現在、ゲーム、マンガ、アイドル、映画、スポーツなどで展開しています。


また、自社のソリューションをもつサービス事業者様とも、チケッティング、ペイメントなどの領域で多数協業しています。

NFTを扱う事業については、NFTを活用した電子書籍やゲーム、トレカ、チケット、クーポンなど、あらゆるものに展開しています。

また弊社はトークンエコノミー実現のため、コミュニティのガバナンスにもNFTを活用しており、現在、大学教授の方々と共同研究を行っています。ここから、理想的なファン経済圏の構築を目指しています。

ーー:現在社内では、どういった体制にて開発や企画を進めていますか。

弊社は副業を含めて約30名の組織で、半数以上がエンジニアです。またビジネスや企画側にも元エンジニアのメンバーがいるため、技術を考慮した企画やビジネスを作れることが弊社の強みだと考えています。

ブロックチェーンの基盤としては、イーサリアムやQuorumを活用しています。特定のチェーンに依存させないため、近日 Polygon、Flowなど複数のチェーンを活用予定です。




ーー:NFT事業展開にて現在、重視していることは何になりますか。

今はやはり「ユーザー体験」に最も注力しています。
ブロックチェーンを活用するからこそ実現できるような新しい体験を作り、企業やファンの方々に喜んでもらえるような体験を提供したいです。

現在展開しているプロダクトは、企業、ファンの方々、双方から良い反応をいただいており、最近では良い体験づくりができてきていると感じています。

ーー:いま注目している企業やサービスはありますか?

繰り返しにはなりますが、直近の動きではAxie Infinityにとても注目しています。


▲NFTゲーム『Axie Infinity』

 
ーー:今後のNFT市場の展望についてお聞かせください。

今後、NFT単体の平均価格は下落すると考えています。
しかし、多くのコンテンツやユーティリティーにNFTが活用されることで、全体市場としては大きく成長すると考えています。

またNFTを発行する企業だけでなく、発行されたNFTに対してサービスを提供するような新しいNFT市場が生まれ、それらも一大産業になると考えています。

ーー:読者に向けてメッセージをお願いします。

ブロックチェーン、NFT自体の理解は難しいですが、この技術は人類にとってとても素晴らしい技術になると確信しています。

Gaudiyでは、こうした先進技術を活用し、新しいビジネスモデルや体験を生み出す協業企業様を随時募集していますし、一緒に働く仲間も積極的に探しています。

弊社の取り組みに興味を持っていただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

ーー:ありがとうございました