【ハイカジ道】創業から約500日で国内DL数4位と急成長を見せるNew Story…世界市場で戦う秘訣や今後の展望を代表取締役・IN氏に訊いた

スマートフォン端末の機能を活かした直感的な操作方法、説明を必要としない明快さ、老若男女だれもが楽しめる万国共通のルールなど、ゲームの間口を広げるジャンルとして、スマホアプリ市場において注目されているハイパーカジュアルゲーム。

gamebizでは、各社のハイパーカジュアルゲームにスポットを当てたレビューやインタビューを掲載するコーナー「ハイパーカジュアルゲーム道(ハイカジ道)」を展開している。

今回は、ハイパーカジュアルゲーム『Draw Happy』シリーズなどを手掛けるNew Storyの代表取締役・因雄亮(いんゆうすけ)氏のインタビューをお届けする。

New Storyは、『Draw Happy』シリーズが全世界でダウンロード数1000万回を突破するなど、2020年3月に創業したばかりの若い会社ながら急成長を遂げている。

そこで、New Storyの創業のキッカケや、ハイパーカジュアルゲームにおいて世界と戦うための秘訣などを、因氏に訊いた。

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New Story代表取締役
因 雄亮(いん ゆうすけ) 氏

コロナ禍のピンチをチャンスに変えたハイパーカジュアル

Q.本日はよろしくお願いいたします。まずは、New Story立ち上げの経緯をお聞かせください。

因雄亮氏(以下、IN) 私は元々、通信キャリアで新規事業の仕事をしていました。

当時、リアル謎解きゲームが趣味で、一緒に制作していた仲間とリアル謎解きゲームを作る会社を作ろうという話になり、2020年3月にNew Storyを立ち上げました。

Q.元々はリアル謎解きゲームを手掛けようとしていたんですね。

IN 当初の目的はそうでした。しかし、ちょうどその時期にコロナ禍で緊急事態宣言になり、「リアルイベントが開催できなくなる…」という状況になって頓挫してしまいました。

正直「もう終わったな…」と思っていたところで、芸者東京さんやカヤックさんのハイパーカジュアルゲームの成功事例を拝見し、その分野にチャレンジしようと思いました。

それまではリアルで限られた人に向けたサービスを考えていましたが、デジタルで制限なく多くの人たちに向けたサービスをやってみたいという好奇心もあり、ハイパーカジュアルに着手しました。

Q.創業時は何名体制だったんですか?

IN 私を含め3名でスタートしました。その内1人はソーシャルゲームの運用をやっていましたが、ハイパーカジュアルゲームを作るというのは、全員にとって新しいチャレンジでした。

現在は6名に増えました。小さな組織、大きな仕事を目指してやっています。

Q.New Storyはフルリモートでお仕事されているとお聞きしましたが、それもコロナの影響で?

IN もちろんそれもあります。当初は、滅茶苦茶狭い畳のいわゆる昔風に言えば下宿のような部屋にみんなで集まって作業していました。それが緊急事態宣言によって、それぞれ自宅でやらざるを得ない状況に追い込まれました。

そんなピンチをチャンスに変えてくれたのがハイパーカジュアルゲームでした。

Q.フルリモートによるメリット、またはデメリットはありますか?

IN New Storyはしっかりと組織化する前にコロナになったので、リモートネイティブな会社かなと思っています。だから、デメリットがあるのか自分たち自身わかっていません。

むしろ、ルールを守っていただければ、好きな時間に好きな場所で働いてもらって良いし、いつ休みをとっても良いよ、というスタンスです。

それより、ドキュメントが大事という文化があります。話すよりもテキストを書いたり、ドキュメントを残しておくことを全員で意識するようにしています。そうしておくと、私がその場にいなくても確認ができるので。

もちろん、お互いの作業状況を同期させるための定例ミーティングは、オンラインで定期的に行っていますが、基本的には各自やりやすい環境で働ける自由な会社だと思います。

メリットの1つとしては、創業当時からフルリモートであるが故に、副業の方が入ってきやすいという側面があります。

場の空気感で仲良くなるというわけではなく、例えばメッセンジャー等を介してコミュニケーションをとるので、その環境で上手くワークしないと離れていきますし、ワークする人は副業でも普通にやっていけると思います。

ターゲットは世界市場…約500日でDL数が1億に迫る

Q.現状は6名体制ということですが、今後はもっと仲間を増やしていきたいですか?

IN その気持ちはあります。現在、New Storyは、創業から約500日で、国内のダウンロード数で4位です。ありがたいこです。

しかし、やるからには1位を取りたいと思っていますし、国内というよりも海外を視野に入れて戦えるようになりたいと考えているので、そういう意味でも苦楽をともにする仲間はもっと欲しいですね。

New Storyとしては、変化を受け入れ、前に前に進んでいく方が向いているかなと思います。まだ小さい会社なので、一緒に変化していくことを楽しんでいける方を、常時募集中です。

Q.12月にはDL数が1億を突破する見込みとのことですが、創業から約1年半でこれだけ急成長できた秘訣は?

IN 情報というか、知恵を早い段階で知ることができたことが一番大きかったです。

その陰には、私が大学生の頃からお世話になっている黒川さん(ジェミニエンタテインメント代表取締役・黒川塾主宰 黒川文雄氏)の存在がありました。その分野のプロやキーマンの方々にお会いしてお話を聞きたいですと、黒川さんに相談して繋いでいただきました。

そこで実際に、第一線で活躍されているプロの方々から色々なお話を聞いたりアドバイスをいただく中で、「なるほど!」と思う事の連続でしたし、自分自身の考え方も磨かれていきました。

この業界はスピード、加速度を上げていかないといけないと思いますが、自分たちだけではやっていくのは難しいです。ですから、黒川さんから色々な方を紹介していただいたり、業界キーマンの方にお話を聞いたりしました。ユーザー観点でどうしたらいいか? プロモーションはどうやればいいか? といったアドバイスをいただいたりということが非常に効果的で、スピード感が増しました。

幸いなことに、日本にはゲーム産業を盛り上げてきたプロの方々が市場にたくさんいらっしゃるので、自分たちで全てやるのではなく、いかに頼っていけるかが大事だと思います。

Q.DL数の話で言うと、全世界でDL数1000万回を突破した『Draw Happy』シリーズが御社の最初の作品だったんですか?

IN 最初に作ったのは別のゲームです。始めの頃は、世界中のデベロッパーから良いゲームを見つけて世に広げていくというビジネスをしているパブリッシャーに応募した作品が、New Storyとして初めての作品でした。

最初はわからないことが多かったので、ノウハウを持つパブリッシャーさんにお願いしていましたが、全然上手くいきませんでした。数字もわからなかったし、そもそも彼らのビジネスを理解できていなかった。

数多のデベロッパーの中からより優れたものを掴みとって打ち上げて稼ぐというものが、パブリッシャーのビジネスモデルであると仮定すると、我々のように未経験で創業したばかりの小さい会社は魅力的に見えないと思います。

実際、初期のゲームは今思い返すとクオリティーは低かった…。というところで、クローズしたアプリはたくさんありました。


▲『Draw Happy』シリーズは、指で線を描き登場人物を幸せにするという簡単な操作と絶妙な難易度によって人気を博し、計170ヵ国で親しまれている。

Q.色々とゲームを出していく中で学ぶこともあったと。

IN つまずくことが多かったです。そんな時に大事なのはプロに聞くことだと考えています。例えば、Unityのプロに、開発における課題について話を聞きに行き、教えてもらいました。

そう考えると、コミュニケーションをとって仲良くなる事は大切です。次からも相談しやすいですし、我々からもいま市場はこうなっているといった情報を出すこともできます。

つまずきながらも、毎回、人の輪に支えられることが増えていって、結果的に自分たちの糧になったと思っています。派手に転んだほうが助けてもらいやすいので、たくさん血を流したほうがいいです(笑)

Q.世界の市場をターゲットにハイパーカジュアルゲームを出すうえで重要視していることは?

IN 一番大事にしていることは、多くのユーザーに長く楽しんでもらうことです。

iOS14になってATTで広告のトラッキングがダメになりましたよね。直近だと、皆さんAndroidでやるようになっています。

我々の場合、Androidにてアメリカに限らずに、インドでも、ベトナムでも良いと思っています。それは多くの人達に遊んでもらいたいという思いがあるからで、多くの人に遊んでもらったコンテンツやデータには価値があると考えています。

それ故、アメリカの1人のデータよりも、より多くの人達が遊んだデータを信じています。特定の国に依存したくありません。数の方が大事。そういう考え方をしてきたからこそ、成長できたと感じています。

Q.今後ハイパーカジュアルゲームで成功するためには、世界に目を向けたほうがいいと。

IN そうですね。特定の国ではなく、より多くのユーザーに遊んでもらえる国、地域、そしてコンテンツの軸はなにか? そしてどうすればそこに辿り着けるだろう? という問いかけが大事になってくると思います。

ハイパーカジュアルゲームの今後について

Q.INさんが考える、ハイパーカジュアルゲームの定義は?

IN ビジネス的な側面で言うと、広告によるマネタイズを主とした、国や文化を問わないゲームです。そこは他の会社も共通した認識かもしれません。ゆるく言うのであれば、誰しもが遊べる、何も考えなくてもできるゲームです。

Q.ハイパーカジュアルゲーム市場の現状をどう見ていますか?

IN 何度も終わる終わると喧伝されていたにも関わらず、生き延び、まだ伸び続けている生命力の強いマーケットだと思います。

例えば2019年は30億ダウンロード程度だが、翌年は70億ダウンロードになった。恐らく今年は100億ダウンロードに到達するのではないでしょうか。

Q.昨年からコロナ禍で自宅時間も増えました。その中で、家庭用ゲーム機の需要が増えたという話もありますが、ハイパーカジュアルゲームはいかがですか?

IN 変化はありましたね。平日と土日と見た時、平日のほうがユーザーが遊んでくれる時間が少ないので売り上げが少なくて、休日は高くなる。これは当たり前なのですが、その差がコロナ禍の影響で縮まったように感じています。

特にロックダウンされている国に提供しているゲームを見ると、そういう傾向にあるのかなと思えるようなことが数字で示されています。ロックダウンになったらどうなるのか? という着想は初めてのことだからわからない…。

そういう時、色々な方々とお話をする中で気づかされ、そこから勝ち筋が閃いたりします。改めてプロのお話を聞くことは大事だなと感じます。

Q.最近は、コアなゲーマー向けのハイパーカジュアルゲームも出てきていますが、ビジネス的に広がっていく可能性は?

IN とても注目しています。ハイパーカジュアルゲームで成功したプレイヤーが、次に目指すのはハイブリッドカジュアルではないでしょうか。

ハイブリッドカジュアルとは、広告によるマネタイズだけではなくユーザー課金も組み合わせた形で、『アーチャー伝説』が有名です。

実はこの数年間、ハイブリッドカジュアルを目指そうという流れはあったのですが、多くのプレイヤーが頓挫していました。それが今、また来そうな気配があり、多くの人たちが挑戦していますね。

Q.行けそうで行けなかった原因はなんだったのでしょうか?

IN それが私にもわからないので、識者の方々にお話を聞きたいなと思っています。

ハイブリッドカジュアルについては、元々ソーシャルゲームを作られていた会社など、挑戦している方々はたくさんいますが、日本で成功している事例はまだないと思います。

一方、ハイブリッドカジュアルで勝負するためには、土台としてハイパーカジュアルゲームがないと戦いづらい分野だったりします。だから、いきなりハイブリッドカジュアルに挑戦するが故に苦戦しているようにみえます。

ハイパーカジュアルゲームを踏まえた上でたどり着けるこの領域は、世界では成功例はありますが、国内はこれからなのかなとワクワクしています。

Q.New Storyもそこは目指していく?

IN チャレンジしたいですね。一方で、私たちが大切にしている"多くの人に遊ばれる"というジャンルからは離れていくため、そこは葛藤というかせめぎ合いですね。

Q.改めて、今後ハイパーカジュアルゲーム市場はどうなっていくとお考えですか?

IN 誰でも、個人でも参入できる市場ではあると思っています。なぜなら、我々もほぼ個人のような状況からスタートしたから。

参入障壁が低いゆえに競争は激しいです。ただ、その方が良い作品が生まれやすい。ユーザーに楽しんでもらえるものが続々生み出される良い市場になっていくかなと思っていますし、個人的にも良いゲームが出てくることを楽しみにしています。

Q.最後に、将来的の展望などがあれば教えてください。

IN 我々は、世界の人々が楽しめる新しい体験を作りたいと思っています。ハイパーカジュアルゲームというジャンルは、新しい体験が注目されやすい貴重な市場です。

世の中には色々と楽しいことがたくさんあるので、見た目で「おっ」と思ってもらえないと気づいてもらえない。そういう意味で、今も我々はトレーニング中。日々もの作り、ゲーム作りを通じてこれからも成長していきたいです。

もう1つ、New Storyは"デジタル遊園地を作りたい"というものを社是にしています。

これは最近流行りのメタバースとは違うものなんですが、デジタルエンタテインメントを追求するという点において、ハイパーカジュアルゲームに限らずデジタルを使ったエンターテインメントで大人から子どもまで喜んでもらえるようなものを作りたいというのが、我々の夢です。

まだその道のりは遠いかもしれませんが、その夢に向かって日々進んでいきます。

Q.本日はありがとうございました。


▲IN氏(右)と、アドバイザーでありメンターのジェミニエンタテインメント代表取締役・黒川文雄氏(左)

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