『週刊少年ジャンプ』50周年の記念作品であるスマートフォン向けゲームアプリ『ジャンプチ ヒーローズ』(以下、『ジャンプチ』)が、2022年3月28日で4周年を迎える。本作品に関しては、gamebiz(旧Social Game Info時代を含む)でも、これまで4年のあいだに4回に渡ってインタビューを実施してきた。
【過去のインタビューはこちら】
・【インタビュー】『ジャンプチ』リリース1000日&全世界1000万DL達成の軌跡に迫る 新プロデューサーが掲げる3つの目標とは
・【インタビュー】『ジャンプチ』収録タイトル数が100作品を突破! 集英社編集部&LINEプロデューサーがゲームに盛り込んだ“ジャンプらしさ”とは
今回は、LINEで『ジャンプチ』プロデューサーを務める藤川翔氏と、同じくLINEで『ジャンプチ』アシスタントプロデューサーを務める浜崎友里菜氏に、この1年を振り返りながら、4周年施策の詳細や今後の『ジャンプチ』の展望についても語っていただいた。
・LINE『ジャンプチ ヒーローズ』プロデューサー・藤川翔氏(写真左)
2019年11月より『ジャンプチ』チームに合流し、2020年12月よりプロデューサーに就任。開発会社であるワンダープラネットと共に全体の方針を決めたり、プロモーションや予算管理なども行っている。本サイトへの登場は3度目となる。
・LINE『ジャンプチ ヒーローズ』アシスタントプロデューサー・浜崎友里菜氏(写真右)
2021年5月に『ジャンプチ』チームに合流。アシスタントプロデューサーとして、藤川氏が立てた全体方針を実現するべくサポートしている。テキストやデザインのチェックなど細かい管理を含め、現場監督のような業務を担っている。
――:本日はよろしくお願いします。まずは、『ジャンプチ』が4周年を迎えた率直な感想をお願いします。
藤川翔氏(以下、藤川):もちろん純粋に”嬉しい”という想いが強いです。50年以上も続いている「週刊少年ジャンプ」などの漫画に比べてしまうとまだまだ歴史が浅いソーシャルゲームという領域ではありますが、既にレッドオーシャンとも言われている業界で4周年を迎えられたことは、ひとえにお客様に『ジャンプチ』を愛していただけている証拠かなと思っています。
――:ここ1年で印象に残っているエピソードはありますでしょうか?
藤川:僕の中で最も大きかった出来事は、前回のインタビューでもお話した「収録作品数が100作品を突破した」ということです。元々『ジャンプチ』は「週刊少年ジャンプ」の作品がたくさん収録されているところが特徴ではあったのですが、この件を皮切りにSNSでもお客様だけでなく作家さんから「『ジャンプチ』を遊んでいます」という声も数多く聞くようになりました。
その中でも記憶に新しいのが、前回のインタビューでも話した大石浩二先生のツイートで、晴れて2022年1月に『いぬまるだしっ』が実装されました。また、藍本松先生からも「『保健室の死神』を出しほしい」というお声をいただいておりこちらの実装も進めているところです。作家先生から要望をいただけるという経験は、他のゲームを担当していても中々できないことなので凄く嬉しく思っています。
他にも、まだ発表していないところで話せるのは、実は『みどりのマキバオー』の「カスケード」を出してほしいというお声がありました。カスケードといえば、やはり有馬記念ですので、まだ先ではありますが年末を楽しみにお待ちいただければと思います。
浜崎友里菜氏(以下、浜崎):先ほど話に挙がった『いぬまるだしっ』の件は私も印象的でした。特に、年末の生放送で実装を発表した際には大石先生のツイートをユーザーも見ていたこともあり、ユーザーも凄く盛り上がっていたので「期待に応えられて良かった」と思ったことを覚えています。さらに、「ジャンプ+」で『いぬまるだしっ』実装を記念した特別読み切りを配信していただけたのも『ジャンプチ』ならではの動きで、凄く大きなことに関わらせていただいているという想いがありました。
私はまだ『ジャンプチ』チームに入って1年経っていないのですが、『ジャンプチ』チームに入ってすぐに感じたことは、「ユーザーの熱量が非常に高い」ということです。1700万DLを達成した際に「ジャンプチ事件簿 黒幕の正体」というユーザーに推理をしてもらうような大きめの施策を実施したのですが、これがユーザーからも好評で、SNSでも考察などで非常に盛り上がっていただけました。運営自身もSNSには積極的に投稿しているので、ユーザーにも届いていることが分かるのは運営冥利に尽きます。
――:そもそも浜崎さんはどういった経緯で『ジャンプチ』のアシスタントプロデューサーになられたのでしょうか?
藤川:浜崎は元々LINE GAMEのカジュアルゲームを担当していたんです。そこで培ったライトユーザーの視点を活かして欲しくて今回「アシスタントプロデューサー」に着任してもらいました。『ジャンプチ』は大変有難いことに老若男女カジュアルユーザーからコアユーザーまで幅広いお客様に遊んで頂けており、これまでは私がライトユーザー向けに力を入れていたのですが、反面コアユーザーからはやりごたえがなくなってしまったという声も頂いております(特に決闘の挑戦回数など)。今後はライトユーザー向けには浜崎の方に引き続き力を入れてもらい、私はコアユーザーの方にもっと力を入れていければと考えております。
また、『ジャンプチ』には女性ユーザーも多いことから運営の中にも女性目線が必要だとも考えていたので、現場をジャッジする際に僕にはない感覚を持ってくれている点が非常に助かっています。今後は、より女性ユーザーの期待にも応えていける運営体制になったと思います。例えば、秋は「スポーツの秋」ですので、浜崎自身も好きな作品である『ハイキュー!!』や『黒子のバスケ』のキャラが登場するイベントは、女性ユーザーにも今年の秋お楽しみ頂けるのではないでしょうか!
――:ちなみに、カジュアルゲームを担当していたときはどのような業務を担当されていたのでしょうか?
浜崎:カジュアルゲームを担当していた時も今と同様にアシスタントプロデューサーとしてプロデューサーの方針に沿って現場を調整する役割を担っていました。カジュアルゲームでは、ゲーム性としてはシンプルな操作で「考えてやり込む」というよりも「気軽にさくさくプレイする」というのが売りなので、ユーザー層としてもあまりゲームをやり慣れていない人が多く、それを前提に運営をしていました。そのため、この「ゲームをやり慣れてない人の気持ちがわかる」という視点を今に活かしています。
『ジャンプチ』はカジュアルゲームとは逆にやり込み要素が多いので、始めたばかりの人にとっては難しい印象がありました。例えば、キャラの性能についてもゲーム内の表示だけだと内容が複雑で「このキャラの何が強いのか分かりづらい」という課題を感じ、ライトユーザーに伝えるためキャラの性能表に「運営チームおすすめポイント」というサマリーを追加して噛み砕いた内容で性能を伝えてみたり、公式ブログで具体的にどういった場面で使えばいいかという説明を記載しました。UIやUXのデザインに関しても、初めて遊ぶ人が戸惑わないようにフォローすることを意識しています。
藤川:元々『ジャンプチ』は足りない部分を公式ブログで補っていたのですが、浜崎が参加してからはより手厚くなったかと思います。4周年を迎えて機能も複雑化してきているので、一目では分かりづらい部分をライトユーザー目線で噛み砕いて丁寧に伝えてもらえるのは凄く助かります。
浜崎:ずっと運営の中にいると慣れてしまう部分もあると思いますので、そこは途中から参加した自分の強みだと思い、今後も意識していきたいです。公式ブログにも、性能だけでなく各特集祭のポイントや遊び方など、今まで以上に解説やフォローを入れているので、ぜひ一度見ていただければと思います。
――:昨年からコロナ禍が続いておりますが、開発体制に変化はありましたか?
藤川:最初は戸惑いも大きかったですが、オンライン会議が主流になってきてからは逆にコミュニケーションが取りやすくなった部分もあります。特に、開発会社のワンダープラネットさんは本社が名古屋にあるので、コロナ禍前は名古屋へ出張をして打ち合わせなどをしていたのですが、今はオンラインで会議ができる環境も整ったので以前よりスムーズに話ができていると思うところもあります。
浜崎:私がチームに合流した頃には既にコロナ禍に入っていたのであまり戸惑いを感じるということはなく、逆にオンラインの環境でスタンダードに仕事ができて良かったとは感じています。少し困った事態が発生した際にもいちいち会議室の予約などする必要がありませんし、オンラインで気軽に連絡が取れる分、柔軟性が高まったと感じています。ただ、私はまだワンダープラネットさんに一度も伺えていないので、ご挨拶も兼ねて一度行って実際にお会いしたいという想いもあります。
――:対面にもオンラインにもそれぞれ良いところを見つけられたということですね。
藤川:そうですね、今後はハイブリッドで動いていけると良いですね。頻繁に足を運ばなくても気軽に会議ができる体制が十分に整ったのは、このご時世をポジティブに捉えられた一面ではあります。
――:では、ここから本題に入っていきたいのですが、4周年ではどういった施策を展開していくのでしょうか?
浜崎:まず、キャラクターに「フォームチェンジ」という要素が追加されます。「週刊少年ジャンプ」といえば「変身」という部分が肝になっていると思います。物語の中でキャラクターが成長して見た目が変わったり、技が進化したりする部分を『ジャンプチ』にも反映させており、1人のキャラクターが2バージョンの必殺技を使えるという機能を新しく実装します。また、この新しい機能がどのようなものかをユーザーにも体験してもらうため、全員にログインするとギフトから「ギアチェンジ モンキー・D・ルフィ」を受けとれるようにする予定です。
藤川:周年のタイミングでは「週刊少年ジャンプ」らしさを取り入れることを意識していて、例えば2周年の際は「ジャンプ」といえば仲間との共闘「タッグ」だよねということで「タッグキャラ」を実装しました。その後、次の大きなフェーズに向けて会議をする中で「ジャンプのキャラって変身するよね」という話になり、次の「ジャンプらしさ」はそこかなと思ったので4周年では「フォームチェンジ」を新たに実装することにしました。
浜崎:あとは、今回の4周年をきっかけに新しく『ジャンプチ』をプレイし始めてくれるユーザーもいると思いますので、キャラクターをたくさんゲットしてほしいという意図で、最大400連無料ガチャを用意しています。この機会に多くのキャラクターを手に入れて、早く『ジャンプチ』に遊び慣れてほしいという狙いがあります。
また、周年のタイミングでは「無双キャラ」の登場も欠かせない存在となっていて、今回は無双キャラとして「海賊王 ゴール・D・ロジャー」が登場します。以前から無双キャラとして出てくるのではないかと噂されていたキャラクターではあるので、満を持しての登場になりますね。
藤川:実は、ロジャーに関しては「無双キャラ」という仕組みが追加される最初のタイミングから開発一同の中でも候補に挙がっていたキャラクターではあるんです。ただ、最初に登場した「NARUTO」の千手柱間や次に登場した「ドラゴンボール」のベジットなど、まずは実際に原作で読者がその強さを目の当たりにしているキャラクターの方が「無双」というイメージが伝わるということでいろいろと検討した結果このタイミングとなりましたね。
浜崎:あとは、半年ぶりにヒーローアイランドが新しく追加されます。今回は、「ブラッククローバー」と「Dr.STONE」の2作品が選ばれました。
――:多くの作品がある中、今回この2作品が選ばれた理由を教えていただけますか?
藤川:今回はイベント全体のキャラ選定としても、現在「週刊少年ジャンプ」で連載中の作品をチョイスすることで、“今” 「週刊少年ジャンプ」を読まれている読者にもジャンプチを楽しんで欲しいという想いからこのような選定になりました。特に「Dr.STONE」はちょうど先日完結したところでもあって今とてもアツい作品の1つかと思います。
――:新機能として「マイシップ」というものも実装されると聞きました。この辺りの詳細についてもお聞かせいただけますか?
藤川:そもそも、僕がジャンプチチームに合流したときからずっと『ジャンプチ』にはプロフィール画面がないことが気になっていました。「ソーシャルゲーム」という名の通り、SNSなどで他プレイヤーとコミュニケーションを取ったりするのも醍醐味の1つだと思うのですが、プロフィール画面的なものがないと「私は●●●時間もプレイしてるんだよ」とか「私の戦績はこうだよ」とかそういう話題がし辛かったり、自分のやり込み度を自慢し辛いんですよね。ソーシャルゲームでコミュニケーションを取るうえで、プロフィール的なものは非常に大事だと思っていたので、そこから、せっかくなら「ジャンプチ」の世界観に落とし込もうと企画を少しずつ進めていました。
それをようやく表に出せたのが今回の「マイシップ」機能になります。『ジャンプチ』のテーマでもある「船」を取り入れた機能で、決闘や冒険などゲームをプレイするほど「マイシップ」の経験値が蓄積していき、自身の船が豪華になっていきます。なので、船を見れば「あの人、凄くプレイしているな」ということが分かります。プロフィールの一部をグラフィカルにした機能というイメージです。
▲船首、船体、帆、船室など、ゲームをプレイするたびにパーツが豪華になっていく。
もちろん、もう少し細かい一般的な「プロフィール画面」の開発も進めているのですが、こちらの実装はもう少しお待ちいただければと思います。
――:「マイシップ」には、自身で船をカスタマイズできるような機能はないのでしょうか?
藤川:実はそこも2段階で考えていて、最初の実装では、ゲームをプレイすれば自然と見た目がカッコ良くなる形を考えています。その後に関してはまだいろいろと調整中な部分が多いのですが、自分の船に愛着が湧けば湧くほど好きな見た目に「カスタマイズ」したいという声は出てくると思うので将来的にはカスタマイズ機能を入れる予定です。ここに関しては浜崎がそういったゲームの知見も持っているのでいろいろと協議をしている最中です。また、苦労しないと豪華な船が作れないとなってしまうとライトユーザーが付いてこれなくなってしまうので、この点も浜崎の視点を大事にしながら全員が「船を豪華にしていく喜び」を得られるような機能にしていきたいと思っています。
――:今後はどのような展望を描いておられますか?
藤川:『ジャンプチ』を「週刊少年ジャンプ」のようにしたいと思っています。
どういうことかと言いますと、ユーザーさんからもよく「この作品の冒険を復刻してほしい」などの声を頂くのですが、やはり皆さんそれぞれ好きな作品は違うと思いますし、漫画であれば自分の好きな作品を好きなタイミングで読めて、まずは自分の一番好きな作品から真っ先に読む人も多いと思います。『ジャンプチ』も同様に、まずは皆さんの一番好きな作品を好きなタイミングで自由に存分に楽しんで頂いてその上で他の作品にも触れて頂いて様々な作品に出会って欲しいなと思います。
その展望の第一歩が、マイシップを含む「船長計画」と呼んでいる計画の1つに「航海日誌」という機能がありまして、4.5周年に向けて開発を進めています。「航海日誌」は、今までの冒険を好きなタイミングで遊べる機能になります。
例えるなら、本棚から「今日はこの作品のあの話の巻を読もう」と手に取って読む感じですね。
藤川:これまでは運営側から「この作品のこの物語を遊んでみて」と投げかけるスタンスのようでもあったかと思いますが、今後は自分で選んで楽しめる「週刊少年ジャンプ」のようにしていきたいと思っています。『ジャンプチ』がきっかけで作品を知って漫画を読み始めたという方もいらっしゃるので、上手く『ジャンプチ』と「週刊少年ジャンプ」が循環すれば良いなと思っています。
――:『ジャンプチ』と「週刊少年ジャンプ」を循環させたいという話は、これまでのインタビューでも度々話に挙がっていましたね。
藤川:今回の「航海日誌」を含め、昔から考えていたものがようやく徐々に形になってきて少しずつお見せできるようにもなってきたのかなと。
――:最後に読者の方々へメッセージをお願いします。
浜崎:ソーシャルゲームという入れ替わりが激しい業界で無事に4周年を迎えられたことを素直に嬉しく思います。自分自身、『ジャンプチ』チームに合流してから周年を迎えるのは初めてではありますが、「フォームチェンジ」や「マイシップ」など、4周年を経て未だに新しい挑戦をしている『ジャンプチ』を体感している状態なので、ユーザーと一緒にこの先を楽しんでいけたらと思っています。ゲームというエンターテインメントとして、ユーザーに少しでも楽しい時間を過ごしてほしいと思っているので、先ほども述べた自分ならではのライトユーザー目線を活かしつつ、新規の方を迎えられる環境づくりに注力していきたいと考えています。今後の『ジャンプチ』も楽しんでください!
藤川:今回の4周年は私自身としても大きなタイミングであり、自分がプロデューサーに就任してからも1年以上が経ちました。新体制になって1年以上が経過している中で、皆様から厳しいお声もいただいておりますが、しっかりと自分の中でも受け止めて5周年に向けて『ジャンプチ』をより良くしていきたいと思っています。これまではライトユーザー向けの施策や調整も多くコアユーザーの方々には不満となってしまった部分も多かったと思いますので、今後はコアユーザーの声にもしっかり応えていけるよう、改めて全ユーザーが楽しみ喜べるようなコンテンツにしていきたいと思っています。
そうして、今後5周年、6周年を迎えた際に「今の『ジャンプチ』楽しいよね」と言っていただけるように運営していきたいです。4年間『ジャンプチ』を愛していただいたことに対して感謝の気持ちをお返ししていきたいと思いますので、今後ともぜひ『ジャンプチ』を遊んで頂ければと思います。
――:本日はありがとうございました。
(取材・文 編集部:山岡広樹)
■『ジャンプチ ヒーローズ』
(C)JUMP 50th Anniversary (C)LINE Corporation (C)WonderPlanet Inc.
会社情報
- 会社名
- LINE株式会社
- 設立
- 2019年12月
- 代表者
- 代表取締役社長 出澤 剛/代表取締役 慎 ジュンホ