NHN テコラスが提供する「NHN AppGuard」は、様々な不正行為から安全にアプリを保護するモバイルアプリ向けセキュリティツールだ。
昨今のスマートフォンゲームにおいては、新しい楽しみを提供することはもちろんだが、ユーザーが健全に遊べる環境を提供するという意味において、不正対策も重要視されている分野であり、各社でも日々努力がなされている。
そんな中、「NHN AppGuard」はゲーム会社が求めている不正・チート対策を叶えてくれるツールとして、すでに多くのメーカーが利用している。
LiTMUSより配信されている非対称型オンラインマルチ対戦ゲーム『脱獄ごっこ』も、そのひとつだ。
同社は「NHN AppGuard」の導入以前・以後で、どのような変化があったのか。
本稿では、UUUMの子会社としてゲーム事業を担うLiTMUS株式会社とNHN テコラスのキーマンにインタビュー取材を実施。昨今のスマートフォンゲームの不正動向について話を聞きつつ、『脱獄ごっこ』でも利用されている「NHN AppGuard」がどういったセキュリティツールなのか、その特徴や利点を聞いてきた。
LiTMUS株式会社CXO
戸塚友氏
株式会社NHNテコラス
マーケティング本部プロダクト推進部
平賀真琴氏
技術担当
朴必煥氏
――:まず始めに皆様がこれまでにどういったことをされてきたのかや、現在の業務内容などを交えつつ自己紹介をお願いします。
戸塚友氏(以下、戸塚):LiTMUS(リトマス)株式会社・CXOの戸塚と申します。元々Web業界でフラッシャー(flashデベロッパー)をしていたのですが、10年ほど前からゲーム業界に入りゲーム開発がメインとなりました。モバイルだけでなくコンシューマゲームの開発も経験し、UUUMに入社したのは5年ほど前で、オンラインアクションゲーム『脱獄ごっこ』を開発しました。幸いにも、この『脱獄ごっこ』や『青鬼オンライン』がヒットしたこともあり、ゲームとIPの会社としてLiTMUS株式会社が立ち上がり、そこでCXOとして新規タイトルの開発に携わっています。
平賀真琴氏(以下、平賀):NHNテコラスのプロダクト推進チームでNHN AppGuardのプロダクト営業を担当している平賀と申します。クラウド業界には10年ほど身を置いていて、ちょうどAWSが出始めた時代に国産クラウドの営業をしていたのですが、縁あってNHNテコラスに入社しました。前職はIaas商材でしたが、現職ではゲームデベロッパー様向けPaaS,MbaaSプロダクトを担当しております。
朴必煥氏(以下、朴):NHNテコラスでNHN AppGuardのサポートエンジニアを担当している朴(パク)と申します。前職では、サーバーサイドのエンジニアとして15年ほどゲーム開発を行っておりました。
――:皆様それぞれの形で以前からゲーム業界には携わっておられたのですね。早速、本題なのですが、昨今の不正対策についてどのような所感を持っておられるかお聞かせください。
戸塚:まず、スマホの普及やコロナ感染といった状況が重なり、インドアでのエンターテインメント市場が急速に成長したという背景があると思います。その中で、ゲームにおいてはオンラインで知らない人と遊べるということがヒット条件の一つになっていると思いますが、ここには単純なマルチプレイだけでなく、配信を通じて世界中の人々と繋がることも含まれています。
その結果、人と繋がっているからこそ、不正をしてでも目立とうという人や、配信で不正のやり方を教えるなど、悪い形で注目を集める人が増えてしまっているのではないかなと考えています。
『脱獄ごっこ』を運営していて感じたのは、一部の若者にはゲーム中の不正行為が非常にカジュアルな行為と捉えられているということです。言葉を選ばずに言うと、あまり技術的な知識がない人でもツールなどで容易に不正ができてしまうため、自分が悪いことをしているという意識も低いのではないかと感じます。その結果、パブリッシャーやデベロッパーが対応しなければいけない件数も目に見えて増えているという状況ですね。
朴:NHN AppGuardとしても、「利用したい」という声や、チートの検出方法に関する問い合わせは増えています。また、相談を受けるメーカーからは、早急に不正対策を行いたいがやり方が分からない・導入が難しいといった声が多く、これに対してNHN AppGuardは非常に簡単に導入できるUIとなっており、技術サポートも素早く対応してくれるため導入を決めましたという声を多くいただきました。
――:業界全体としてセキュリティに対する意識が上がってきつつあるのですね。
平賀:プロダクト側の意見としては、ここ2年ほどでNHNグループ全体として、NHN AppGuardの問い合わせ件数が最も多くなっています。特にモバイル系アプリを運営されているお客様からの声が多く、それぞれチート対策はしているけど手が回らない、または早急に対処したいのでツールを使いたいという問い合わせが増えました。
それは、先ほど戸塚さんが仰られたように昔に比べて今はチートという行為がカジュアルに行えるようになったせいかもしれません。本当はゲーム運営を始める前からセキュリティ対策を行うのが最も良いのですが、そのゲームを遊ぶ人が増えなければ中々そこに工数やコストを掛けられないという事情も分かります。だからこそ、運営中のタイトルから問い合わせが増えているのかなと感じるところはあります。
――:具体的にこういった課題があるので対処したいと相談しに来る人が多いのですね。
平賀:かなり明確な話が多いです。こういった不正が増えているので、この課題を解決して早く対処しなければいけないという話をしています。
――:LiTMUSさんでは、NHN AppGuardを導入する前はどのように対策されていたのでしょうか?
戸塚:そもそもUUUM入社当時は一人でゲーム開発を行っていたので、自分の手が届く範囲で暗号化ツールや検出ツールを作ったり試したりしていました。また、『脱獄ごっこ』は当初から動画配信に特化したゲームをコンセプトに作っていたので、違法な配信やチートツールを配布するような動画を探してBANしていました。前職の頃も不正ユーザーに悩まされていたので多少の知識や覚悟はあったのですが、残念ながらいくら努力しようがイタチごっこから開放されないことに気付いてからはNHN AppGuardにお任せしようとなりました。
――:今はどれくらいの規模で運営されているのですか?
戸塚:『脱獄ごっこ』のインゲームの開発は4人です。また、外部の開発会社にアウトゲームのシステム開発や保守を依頼しているという状況になります。
――:それぞれの会社ごとに不正対策の方針みたいなものがあると思うのですが、LiTMUSさんとしてはゲーム運営を行っていくうえでどういったところを大切にされているのでしょうか?
戸塚:先ほど話した通り人数規模的にも全てに手が回るわけではないので、最初は性善説に基づいて対応していました。弊社のゲームモデルは重課金型ではなくカジュアルに遊べるものになっているので、リリース時は分かりやすい悪質なユーザーはいなかったです。
しかし、ゲームが流行ると対戦部分で不正を行うユーザーが目立つようになりました。性善説に基づいた考えのせいで不正対応が後手に回ってしまったというのも正直なところです。特に『脱獄ごっこ』はオンラインのマルチプレイゲームなので、正しく遊んでくれているユーザーのためにも、悪質なユーザーには法的措置を検討するなど強固に対応していこうというのが今の我々の考えになります。
――:NHN AppGuardを導入することを決めたきっかけについても教えていただけますか?
戸塚:ダウンロード数の増加とともにMAUが増えていくと、違法にアイテムを入手しアカウント売買を行う人が目に付き始めました。その時点では自社でチェックを行い、該当アカウントをBANするという対応をしていました。その後、動画配信でチートを行う方法を紹介する人が現れ始め、最終的には周年生放送で堂々とチーターが乱入してくるという酷い状況となりました。
それがきっかけとなりチーターを公言するユーザーやグループが現れ始めた頃から、アプリ外からも報告が増え始めました。もちろん、通報されたもの全てがチーターではなく、アプリ自体のバグやネットワークのラグというケースもあるのですが、流石にこれをひとつずつ自社で調べるのには限界があると感じて、外部サービスできちんと対応してくれるところを探そうと思い至ったのがNHN AppGuard導入の経緯になります。
――:不正ユーザーの増え方として、動画配信を見た人が真似をするというのは、今の時代ならではという感じがしますね……。
戸塚:本来チートって隠れて行うものだと思っていたので、堂々とやり方を流布している動画はひっくり返る思いでした。不正ユーザーの方も「チートできる俺すごい!」という方向に考えが向いているので悪いことをしているという意識が見えないんです。
――:NHN AppGuardとしても、今回のように相談されるケースは多いのでしょうか?
平賀:多いですね。NHN AppGuard以外の相談ならインフラや運用ツールの案件になるので導入まで2~3ヶ月掛かる商談が多いのですが、NHN AppGuardに関しては急を要するものが多く2週間以内に実装を決めますとスパンの短いものが目立ちます。打ち合わせに関しても技術的なことや仕様のことを話し合うことが多いです。
――:NHNテコラスとしては、今年、東京ゲームショウ2022にも出展されていましたが、現地での反響はいかがでしたか?
平賀:多くの方にブースを見ていただけましたし、不正対策に関して意識を持たれている会社様が増えたなという印象がありました。
――:ちなみに、他にも複数のセキュリティツールがあると思うのですが、NHN AppGuardならでは特徴というのはどういったところでしょうか?
平賀:不正対策へのソリューションだけを続けていくのは負担も大きい中、NHNグループはゲームを開発・運営しているということもあり、そこで実際に運用しているツールを提供しているという点が最大の特徴になると思います。また、クラウドサービスの形になっているので製品アップデートがあればお客様もすぐに恩恵が受けられるような形になっている点も他サービスと大きく異なるところです。
朴:実装までのプロセスに関しても、SDKを組み込んでいただいてWebのUI環境でアプリ保護作業を行うだけで使い始められるようになっているので、導入の障壁も低いと思います。
▲NHN AppGuardのデモ画面
――:今回、LiTMUSさんではどのくらいの期間で導入できたのでしょうか?
戸塚:SDKを組み込むだけなので1日で完了しました。
朴:NHN AppGuardはUIが分かりやすく簡単なものになっているのが最大の特徴なので、自分が遮断したい、探知したいチートなどをすぐに検索することができます。また、1ヶ月間隔で定期リリースを行っているほか、緊急度が高い要望があれば48時間以内に対応するというポリシーを持って運用をしています。お客様とのコミュニケーションも密に取るようにしていますので、その点で満足していただけることも多いです。
戸塚:『脱獄ごっこ』は今、若手メンバーが開発運営しているということもあり、すぐに実装して試せた点は非常にありがたかったです。
平賀: SDKを組み込んでその結果を当社のシステムに飛ばして可視化したものをWeb管理画面に表示するという仕組みになっています。稼働中のシステムへの影響が非常に少ないという点は製品的にもメリットになるかと思います。
――:NHN AppGuardを実装された後の反応はいかがでしたか?
戸塚:チートツールが入っているとブロック表示が出るようにしたのですが、実装した直後はユーザーから「ゲームが遊べなくなった」という問い合わせがたくさんきました。そこで、不正ユーザーにも時間や移動速度、残弾数をハックするような高度なものから、ボタン位置などを少し補正するだけでオンライン上での公平性という観点がなかったら不正と呼べないような様々なレイヤーが存在することが分かりました。
ユーザー自身もどこからどこまでがチートか判断しづらいのだと思います。NHN AppGuardを導入してからは不正ユーザーの報告数は導入前と比較すると3%未満になり、自分でゲームをプレイしていてもチーターと思しきユーザーに当たらなくなったので、目に見えて効果が出ています。
――:自分でも不正を行っているという意識がないユーザーもおられたと。
戸塚:恐らくかなりいたのではないでしょうか。そういったユーザーに対して、こちらから「これはポリシーに反する不正なツールですよ」と伝えられたことで素直にツールを消してくれる人が多く、公式から情報を発信することでユーザーも学べるのでしっかりと伝えることが大事だと感じました。
朴:ちなみに、ポップアップ(ブロック表示)はお客様側でカスタマイズができる機能になっているので、もし表示を変えたいなどございましたらデザインや文章を工夫して印象を変えることも可能です。
――:両社の今後の展望についてもお聞かせいただけますか?
戸塚:AppGuardを利用させて頂いている『脱獄ごっこ』をさらにパワーアップした『脱獄ごっこPRO』が2022年11月17日にリリースとなります。
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本作にもNHN AppGuardを導入しているので、安全な環境でより多くの人に遊んでいただきたいです。
平賀:ゲームだけでなくECや決済アプリなど、NHN AppGuardはお客様の用途にあわせてご利用いただけるツールです。チートや不正利用で悩んでいる、アプリケーションのセキュリティを強化したいと考えている企業様の支援を引き続きおこなっていくためにも、まずはNHN AppGuardを知っていただきたいと考えています。そのための情報発信を強化していきたいですね。
――:今後、NHN AppGuardに期待しているのはどのような部分でしょうか?
戸塚:コストに関しては現状を維持していただけると助かります。我々が運用しているタイトルはカジュアルなゲームなので、運用コストは非常に重要なポイントになります。定期的な更新もしっかり行っていただけているので、今後も末永く利用させていただけるとありがたいです。
――:最後に読者に向けて一言お願いします。
戸塚:自戒を込めてになりますが、今回の件で不正するのはダメだという当たり前のことをきちんと発信していく事が重要だと思いました。当然、開発側としては不正を許す環境を作ってしまうことも良くありません。残念ながら『脱獄ごっこ』で初めて不正に手を染めてしまったユーザーもいると思います。
自前で不正対策を行うには限界がありますし、自分たちのゲームを遊んでくれる大切なユーザーを不正なユーザーにさせないためにも、専門家によるセキュリティ対策は積極的に検討し導入すべきだと思います。
平賀:当社はインフラや技術を扱う会社なので、どうしてもテクノロジーの部分に目がいきがちなのですが、セキュリティというのは最終的に人の問題です。ゲームを遊んでくれる多くのユーザーの一部に不正を行う人がいるのでセキュリティ対策をしなければいけません。そういった人をどのように見ていくかが重要なポイントになりますので、当社のツールや技術でゲーム開発会社様、パブリッシャー様を支援していければと考えております。何か課題を抱えておられる方はぜひご相談いただければと思います。
朴:NHN AppGuardを導入して良かったと思っていただけるよう、サポートエンジニアとして今後も尽力したいと思います。ひとりでも多くの方に、セキュリティ対策はNHN AppGuardを入れておけばバッチリと言っていただけるよう頑張りたいと思います。
――:本日はありがとうございました。
■『脱獄ごっこPRO』関連サイト
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