【海外市場調査】『ワンパンマン:正義執行』原作公認の3Dターン制モバイルゲーム…戦略的バトルシステムと豊富な育成要素・PvPモードの今後に期待

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また、中国をはじめとした海外のゲーム内イベントやランキング情報も閲覧でき、本連載記事ではスパイスマート協力のもと、海外市場のゲームアプリ動向を紹介する。

今回はTencentGames(騰訊遊戯)の『ワンパンマン:正義執行』をピックアップする。

(以下、スパイスマートが提供するスマホゲーム分析/運営ソリューションル「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」での調査内容を基に掲載) 

「ワンパンマン」原作公認の3Dターン制モバイルゲーム。原作アニメを忠実に再現

 

注目ポイント

①原作アニメ公認の作品
集英社公認の最新「ワンパンマン」モバイルゲームとなり、原作アニメの人気キャラクター、シーンやストーリーが再現されている。

②戦略的な戦闘と豊富な育成要素
従来型のターン制バトルシステムを採用。キャラの行動順の調整やスキルの発動が戦局を左右するなど、一定の戦略要素がある。



背景

原作マンガの連載が停止し、リメイク版マンガのストーリーが中国のファンの間で議論を招く中、TencentGames(騰訊遊戯)は集英社からライセンスを取得し、2年の開発期間を経て9月末にこの作品をリリースした。

ストーリー、キャラデザイン、アニメーションなど原作が高い精度で再現されている。またCGでストーリーアニメを制作しているほか、フル3Dでモデルが構築されており、一部のキャラクターは単独で立ち絵が描かれている。ゲーム制作過程においてカートゥーンレンダリング技術が採用されており、この技術を用いて制作されたキャラクターはCGによる3Dの立体感が感じられるほか、表情までもがリアルに描写されている。

▲バトルシステムは従来型のターン制となり、漫画原作のモバイルゲームではよく見られる。



▲原作アニメの声優をフル出演させることで、再現度を高めた。




世界観とストーリー

ストーリーはアニメ版のような時系列を入れ替えた形ではなく、3年前にサイタマが「ハゲて強くなった」経緯から時系列順で語られる。そのため原作を知らないプレイヤーにとってストーリーの理解に対する負担を軽くすることができている。

また有名なバトルシーンが数多く再現されていることも、原作アニメファンにとってはうれしいポイントである。このように原作アニメの再現度の高さが、中国のプレイヤーに好意的に評価されている。

▲原作アニメの一場面をそのまま使用しているアニメーションが多く見られる。

▲3D化されたストーリーCGアニメーション。原作アニメの名場面の一部を再現している。






マーケティング施策

このゲームは国慶節間近の2022年9月末にβ版がリリースされた。

パブリッシャーのTencentGames(騰訊遊戯)は、自社のメディアプラットフォームで大量に広告を投入した。広告のクリエイティブをみると、この作品がキャラの露出に重点を置いていることと、原作アニメの再現度を重視していることが分かる。

ただしバトルシステムなどのゲーム内容についてのプロモーションはあまり行われていない。

 

システム

[パラメータ]
このゲームでは、キャラクターはダメージ型、グループダメージ型、補助型、状態異常型の4種類に分かれている。

▲キャラパラメーター画像。

[基本操作]
バトルはターン制カードゲームのシステムを採用。キャラクターを6人まで戦闘に参加させることができ、双方のキャラクターが速度に応じて順に攻撃する。キャラクターは戦闘中、普通攻撃・スキル攻撃・Sスキル攻撃のアクションを実行できる。



[キャラ育成]
キャラレベルアップ・キャラ進化・キャラランクアップ・キャラのスキル強化・キャラ覚醒などがおこなえる。また『キャラソースコア』があり、キャラクターはそれぞれ7つまで「ソースコア」を装着でき、これにも育成するシステムがある。

▲キャラソースコア装着画面。




ゲーム内容

[PvPシステム]
『道場演武(道館演武)』というインタラクションの弱いPvPモードがある。リストに9つの目標が表示される。挑戦するたびに挑戦券を1枚消費する(毎日9枚手に入る。60枚まで保持できる)

1日に3・6・9回勝利すると、宝箱から「紙幣」・「キャラ経験値」・ランダムな素材が報酬として手に入る。

週の挑戦回数・勝利回数が特定の回数に到達すると、追加のミッションチャレンジ報酬が手に入る。「紙幣」・「スタミナ」・「ダイヤ」・「キャラ経験値」が手に入る。

▲道場演武モードのメイン画面。

また『武道大会』というインタラクションの弱いPvPモードがある。毎日12時~24時に開放され、勝利すると手に入るポイントによってプレイヤーのランクが決定する。

また、毎日の初勝利時と3回プレイ時にパック報酬が、毎週プレイヤーの順位に応じてランク報酬が、毎月シーズン報酬がそれぞれ配布される。報酬に応じて手に入るのは「ダイヤ」・「上級ガチャチケット」・「キャラのかけら」・「武闘コイン(武闘幣)」など。

▲武道大会にはブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ・王者の5つのランクがある。またそのランクは3~5のサブランクに分かれている。

▲「武闘コイン」は武道大会のショップで素材報酬と交換できる。

 

ユーザー評価

アプリマーケットやSNSで収集した一部ユーザーのゲームへの評価をまとめた。

(ユーザー評価出典:AppStore・TapTap)

 

総評

「ワンパンマン」の魅力を忠実に再現したアニメ原作ゲームとして一定の評価を得られるものの、バトルシステムや課金要素などに目新しさがなく、今後の対戦モードの展開に期待。

このゲームはIPの人気キャラ・シーン・ストーリーの再現に力を入れ、他のアニメ原作ゲームと同様にアニメキャラを操作して戦いたいというプレイヤーの願望を叶えてみせた。

また原作を踏襲し、ヒーローのランクを設定することでゲームの世界に没入しやすくする工夫がおこなわれていたり、ゲーム内のキャラデザインや会話を通じて原作アニメのスタイルに合わせた熱血かつコミカルな雰囲気を演出している。

システム面では、従来のターン制バトルシステムを採用。キャラクターの速度によって行動順序が決まるため、戦闘時は速度の重要性が高い。このような設計は、『陰陽師』、『聖闘士星矢』、『数碼宝貝(デジタルモンスター)』などのアニメ・マンガ系ゲームでよく採用されているため、残念ながら目新しさはない。とは言うものの、人気キャラのスキルムービーとキャラのパーティー編成が魅力的で、今もなおプレイヤーを惹き付けている。

このゲームには経験値、素材などのステージモードのほか、マルチプレイや多様な対戦モードが用意されている。プレイヤーがリアルタイムで対戦するこのPvPモードはゲームの人気を継続させる上で重要であり、今後の運営もこのモードを主軸に展開されるものと思われる。

課金面では、他のアニメ原作作品同様、主にキャラの入手と育成に重点が置かれており、育成系アイテムの販売は補助的な位置づけとなっている。残念ながらIP側の制約により、現時点でキャラスキンや衣装といった重要な課金ポイントにおいては特段の施策は見られていない。

総合的には、『ワンパンマン:正義執行』はIPの再現に重点を置いた作品であり、CG、キャラクターなどの面では比較的高度に原作を再現している。バトル面では、パーティー編成がバトルの戦略性を高める役割を果たしているが、しかしながら陣容(パーティー構成)の育成においては、プレイヤーがガチャに課金するために大金をつぎ込むほどには至っていない。とはいえ一定の水準は満たしたアニメ原作作品であり、主なターゲットは原作アニメのファンであるといえる。

画像出典:『ワンパンマン:正義執行』ゲーム内



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■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。

 

株式会社スパイスマート
http://corp.spicemart.jp/

会社情報

会社名
株式会社スパイスマート
設立
2015年7月
代表者
代表取締役 久保 真澄
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