【ハイカジ道】タツマキゲームズ代表・畑佐氏の特別連載「全米一位への道」…第11回テーマは「ハイパーカジュアルゲームの運用と寿命」

畑佐雄大 タツマキゲームズ代表取締役
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第11回:ハイパーカジュアルゲームの運用と寿命

 ハイパーカジュアルゲームを中心に開発やパブリッシングをしている「タツマキゲームズ株式会社」代表の畑佐(はたさ)と申します。あと数日で2022年も終わりますね!タツマキゲームズは今年から本格的に始動しましたが、なんとか私自身も最初の年末を迎えることができました…(泣)みなさまにとって2022年はいかがだったでしょうか!ハイカジ業界でも様々なニュースがありましたが、個人的にはやはり、大手の合併や買収のニュースに驚かされた1年でした。

 さて今回は海外の記事などでもあまり語られることのない、リリースしたあとの運用に関する内容と、そもそもハイパーカジュアルゲームの寿命はどのくらいなのかということについて触れていきたいと思います!

ハイカジにおける「運用」とは?

 スマホゲームの運用というと「イベント運営」や「アップデート」などが一般的な内容かと思います。特に課金が中心のゲームの場合は売上の波に大きく影響があるため、緻密なスケジュールを作成ししっかりと運用のできるチーム体制を敷いて進めていくことになります。

 ハイパーカジュアルゲームの場合の運用は、それに比べると少人数で、かつ同時に複数のタイトルを運用できるので、個人的にはかなりコストパフォーマンスの良い状態と考えています。これまでお話してきたとおり、ハイカジをリリースするためには複数の厳しいテスト基準をクリアする必要がありますが、それらを乗り越えてリリースできたタイトルはかなり低コストで収益を生み出し続けることができますよ!

具体的には何をする?

 さて、ハイパーカジュアルゲームの運用は比較的少人数でできると書きましたが、具体的には以下のようなことを定期的に行なっていくことになります。もちろんどれも「やらないよりはやったほうが良い」ことではありますが、全部やっているとキリがないためチームの規模に応じて優先順位の高いものから対応していきます。優先順位は「より効果の高いこと」の順番につけていきます。

 以下に具体的な運用内容を、優先度が高いであろう順に記載してみましたので是非参考にしてみてください!


① ユーザー獲得(UA)キャンペーン用の広告作成
 UA用の広告動画は、同じものをずっと使い続けていると次第に効果が悪くなっていきます。これまで使っていたものより高い効果が出る広告をつくるのは苦労しますが、それでも様々なバリエーションを試して試行錯誤を続けていきましょう。新しい広告動画を試していくときは闇雲につくるのではなく、効果の良かったものをベースにしてその一部分を変えてみるような作り方が効率的でおすすめです。効果の高い木の幹(コンセプト)を見つけたら、そこから枝葉のように分かれてつくっていくイメージです!


②広告マネタイズの最適化
 細かく説明し始めるとそれだけで記事が終わってしまいそうなのでここでは簡略化させていただきますが、シンプルに言うと「より価値の高い広告がアプリ内に出るようにすることで、収益を底上げする」ということです。国やOS、季節によっても広告の在庫数や価格帯は常に変化しているので、そういった違いをできるだけ最適に使えるようにしていくことになります。これもABテスト機能を使って、異なる広告マネタイズの設定を比較しながらより高い広告価値を得られるようにします。


③配信国や配信先媒体の拡大
 ハイカジの場合はまずアメリカでの配信やユーザー獲得を優先して行いますが、ある程度アメリカが落ち着いてきたらUAキャンペーンを行なう国を広げていきましょう。その際、優先順位としては「Tier1」と呼ばれる、広告価値が高い国から始めていくことが基本になります。日本、韓国、台湾、カナダ、オーストラリアといったような国がTier1に該当します。アメリカと同じCPI設定で一気に回してしまうと収益がついてこないリスクもあるので、まずはそれらの国でも少額でキャンペーンを行い、各国のLTVを確認した上で適切なCPIを設定するようにします。

 また、UAキャンペーンを行う媒体(メディア)そのものも、可能であればいろいろなところを試してみるのが良いです。ただしあまり無尽蔵に手を広げすぎると、管理するものが膨大に増えていってしまうためチームの体制と合わせて検討するようにしましょう!


④長期プレイヤーに効くコンテンツの追加
 前回の記事で「あまり効果がない」と書いたようなものがこれに該当します(笑)これらのコンテンツは効果があるかどうかを測定するにもある程度の期間が必要になるので、他の運用と並行してABテストを始めておき、効率的にアップデートの検証をしていくことをおすすめします。


⑤各種SDKのアップデート
 ハイカジには様々なSDKが搭載されているかと思いますが、それらも不定期にアップデートがくるので適宜まとめて更新作業をするようにします。ただし、SDKをアップデートすることでビルドが通らなくなるなど、思わぬ不具合を引き起こしてしまうことも少なくないため、更新を入れる際は1つずつ入れてビルドしてみるなど、いつもよりも慎重に進めていく必要があります。

ハイカジ1タイトルの寿命はどれくらい?

 これを書くにあたってまずは、スマホゲームの「寿命」について考えてみました。一番わかり易いのは、課金型のゲームにある「サービス終了」ではないでしょうか。サービスが終わってしまう、つまりそのゲームを誰も遊ぶことができなくなってしまうので、サービス終了というのは分かりやすいスマホゲームの「寿命」ではないかと思います。その観点で見るとハイカジゲームにはサービス終了の概念がありません(笑)

 もちろんパブリッシャー側のコストバランスなどが原因で、前述のような運用ができなくなるということはありますが、ハイカジの場合、ゲーム自体はスタンドアローンで成立しているため特に人手をかけて運用しなくとも、アプリストアに置いてあるだけならパブリッシャーもコストを掛けずにアプリを遊び続けてもらうことができます。

 ここで「コストを掛けないって言っても、広告費は必要になるんじゃないの?」とお気づきの皆様…たしかにその通りです!ハイカジは基本的に広告を回すことでプレイヤーを獲得するため、運用とともにこの広告費さえもストップしてしまったらほとんどプレイヤーはいなくなってしまいます。

 ですが、それも最近はLTVに応じて自動的にCPIを調整してくれるというとても便利なUAキャンペーン機能を使える媒体もあり、それを使えば人手をかけずとも、常に一定の収益が出るようにいい感じにバランスを調整してくれるのです。数年前に比べるとこれはとんでもなく便利になりました。

 結論としては、一度リリースまで進んである程度スケールしたハイカジタイトルの寿命は「まだ分からない」というのが正直なところです(笑)もちろん、収益額自体はリリース直後に比べると落ち着いていきますが、それでも人手をほぼかけずに1年以上収益を出し続けることができるというのは、あまり知られていないハイカジの良いところの1つだと思います。

今回のまとめ

 いかがでしたでしょうか。CPIテストや収益性改善に関する記事やセミナーは比較的多く存在していますが、リリース後の運用の実態についてはあまり語られることはないのかなと思い、今回の内容をまとめてみました。リリース後の運用にそれほど多くの人手を必要としないことは、言い換えればリリースしたあともまた新しいタイトルに挑戦するリソースを確保しやすい、ということでもあります。ハイカジの場合は1タイトルにずっと人手を張って伸ばしていくというよりも、どんどん新作を作って層を厚くしていくほうが規模を大きくできるので、新作づくりが好きな人やチームにとってはとても相性の良いモデルだと思います!

メールやDMはお気軽に!

 タツマキゲームズではハイパーカジュアルのあらゆるご相談をお受けしております! ハイカジに興味を持ったり始めてみようかなという人を増やしたいと思っていますので、まずはお気軽にメールやTwitterでご連絡ください。この連載で書いてほしい内容なども大歓迎です。ホントに何でも聞いてください、包み隠さずお伝えします(笑)

メール:info@tatsumaki.games 
Twitter:ハタサ@タツマキゲームズ(@noots_87

次回予告

 次回はついにラストとなります!年明けに「2023年のハイパーカジュアルはどうなる!?」というテーマで、2023年の業界予測をしてみたいなと考えています。それでは皆様、良いお年を!

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