公取委、「モバイルOSに関する実態調査報告書」を公開 市場競争は不十分、事前規制の有効性を示唆 代替的な決済手段や自社優遇の防止を求める

公正取引委員会(公取委)は、この日(2月9日)、モバイルOS市場及びアプリ流通サービス市場に関する調査をまとめた「モバイルOS等に関する実態調査報告書」を公開した。報告書では、アップルとグーグルが市場を占有し競争が十分に行われていないと指摘しつつ、独占禁止法の執行による競争制限的な行為を排除するより、禁止行為を未然に防止する行為の改善を促すことが競争政策上、有効であるとの見解を示した。これは競争上の弊害の立証に時間を要するだけでなく、セキュリティやプライバシーなどの論点も絡み合うため、結論を得るために相当の時間を要するためだ。

報告書では、独占禁止法上問題になる恐れがある行為として、以下の問題を取り上げ、対応を求めた。

■アプリ市場その他周辺市場における自社優遇行為の防止
自社で提供するアプリや消費・サービスを優遇するため、アプリ審査で競合するアプリのリジェクトまたは時間を必要以上にかけたり、自社アプリを優先的に「おすすめ」に表示したりといった自社優遇行為については独占禁止法上問題になる可能性があると指摘した。モバイル OS 開発部門やアプリストア運営部門とアプリ開発部門を分離することが対応として考えられるとしながらも、経営上の非効率性を生じるなど、かえってイノベーションを阻害する可能性があるとした。よって、アップルとグーグルがそれぞれ悪影響をもたらしうる自社優遇行為を防止していくことが望ましいと指摘した。

■決済手数料に対するアプリ事業者の不満
アプリ事業者はストアに支払っている手数料が高いと不満が根強いとも指摘し、対応を求めた。アプリ事業者の多くは、手数料の低い代替的な決済方法の導入を望んでいるほか、ストア運営会社が定める課金料金表に縛られない、柔軟な課金額の設定を望んでいる。また、例えば、Webサイト経由の決済のほうが安いなど、アプリ内での異なる決済方法の表示を制限しないことが望ましいとした。このほか、多額の課金額のアプリには個別交渉の可能性を認めることや、課金システムの利用料とストア利用料を分けて設定すること、ストア運営費と手数料収入の透明化を求めた。

■他社アプリや商品・サービスから収集したデータ利用への懸念
ストア運営会社がその立場を利用して、アプリ事業者のアプリや商品・サービスから生成される非公開データを収集し、自社アプリの開発・運営に利用し、他社を排除する可能性についても懸念を示した。外部からは検証が困難であるものの、アップルとグーグルは、社内の各部門の間でのデータ等の流通に関して、アクセス権限を必要十分な範囲に限定し、そのアクセス権限の管理状況を外部に対して積極的に発信することが望ましいと述べた。

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