【連載企画:DONUTS GAMES 研究所24】色彩を音で表現!?ゲーム音楽の作曲家が日々考えていること

数年前、新宿某所────







ちぃース

自分、アルバイト募集の張り紙を見たんスけど
【DONUTS GAMES研究所】の専属エージェントを  

探してるんスよね?
ええ、まあ……
お前、どう見ても向いてなさそうだけど  

やる気はあるッポか?
もちろん!
見習いでもなんでもいいので、  

とにかく任せてほしいッス
うーん、それじゃあ……
調査レポートをひとつ、任せてみるか
うぃス!

ゲームに没入してもらうためのサウンド作り



ひの

おしろのあとちや いせきを めぐるのが
しゅみだが きがつくと なぜか
はちに おいかけられている。

わかかりしひの M

しんじゅくの きんぺんを
うろついている あやしい せいねん。
じつは ゴミひろいを している。






※「ひの」こと日野悠平は日本の作曲家・サウンドディレクター。 TV番組の作曲等を経て前職はゲーム会社でゲームサウンド開発に従事。2022年に株式会社DONUTSに入社し、現在は複数のプロジェクトの音楽、効果音等のサウンド開発に従事。


ひのさんは作曲家でありサウンドディレクターなんですね!

M

ひの

はい、最初は音楽大学在学中に芸能プロダクションに入ってタレントやアーティストへ楽曲提供を行っていました。業界歴は15年くらいで、テレビ・演劇などの劇伴(作品に合わせて流される音楽)の作編曲がメインの業務でした。年間300曲くらい作っていましたね。

300曲!? それはすごいですね……!

M

ひの

はい、とても大変でした(笑)

ひの

その後ゲーム会社へ転職し、5年半ほどコンポーザー兼サウンドディレクターとチームリーダーを兼任していました。

ゲーム音楽を作曲される上で大事にしていることを教えてください。

M

ひの

ゲームに関わらず曲作りにおいて共通で意識している点と、ゲーム音楽ならではの点があります。

ひの

まず共通しているのは、ゲームもテレビも演劇も「商業音楽」という点ですね。 受け手に何を伝えたいか・何をどう演出したいかをとても大事な目的として意識しています。

ひの

そして、伝えるための手段をどうするか……?どんなメロディや響きにするかなど、試行錯誤する一連の流れを意識して挑みます。
「受け手に伝えたいこと」というのは具体的にはどういったものがありますか?

M

ひの

ストーリーの内容や登場人物の感情だったり、シーンの環境だったり、あとはキービジュアルがある作品ならその色合いなどが紐付けされることが多いですね。そういったところを落とし込んでいく中でどのような音楽演出にするかが変わってきます。

音楽のジャンルを決めることによって大部分が固まるイメージですが、その後はどのように曲作りをしていますか?

M

ひの

私の場合はキービジュアル・背景画・イメージ画などがあればその色合いから連想される音を盛り込んで音楽を彩るイメージです。
例えば青空のシーンなら「ソ」だったり、赤を基調とした背景画なら「ラ」からはじめたり……。あくまで私の場合ですが(笑)
なんと! 音と色合いが紐づいているんですね!

M

ひの

そうなんです。夜の月のシーンなら「レ」からはじまるとか……。
イメージと音の紐付けは、作曲家さんによって違うのでしょうか。

M

ひの

同業者の友人と話している時、音の色彩感覚について話題に挙がったことがあるのですが、わりと近い感覚で感じたりするみたいです。ただ理由ははっきりと分からなくて……なんででしょうね?(笑)
ゲーム音楽作りにおいて意識している点も教えてください。

M

ひの

ゲームの多くはプレイするユーザーの行動・選択や操作が今後の展開に関係してくる「体験型」で、ドラマや演劇とは情報の受け取り方に違いがあると思っています。

ひの

ゲームのような体験型エンターテイメントにとっての「音楽」は、プレイするユーザーの行動を後押ししてあげる役割を担ったり、非現実世界の情景を音楽が作り出す空気感で伝えたり等、いかにその世界に没入してもらえるかが大事なポイントだと思っています。

ひの

印象に残るメロディラインだったり、そのシーンで何をユーザーにキャッチアップしてもらいたいかを音楽で表現するようにしていますね。
ゲームは場面が変わったのが音楽で分かることがありますよね。

M

ひの

そうですね、私は「説明的音楽」と呼んでいますが、今ユーザーがどのような状況に置かれているかを音楽で説明してあげるというものですね。
例えば、冒険中に立ち寄る街の音楽や、ダンジョンの洞窟の音楽などがわかりやすいですよね。

ひの

逆にドラマや演劇は視聴者が想像で補った隙間から感動が生まれるという演出も多くみられて、リアリティが高くなるにつれて説明的音楽が比較的に少ない傾向にあるように思います。
なるほど〜、音楽の立ち位置が異なるのですね。

M

ゲーム音楽作曲家になる方法とは

ご自身がいち作家として音楽を作られる時と、全体のディレクションや他社へ発注する時とでは考えることが異なるのでしょうか?

M

ひの

ディレクターとして発注を行う時はプロジェクトとクリエイターを繋ぐハブになることが多いので、そのプロジェクトが何をゴールにしているのか・目的地はどこなのか・共通認識がずれていないかを握るのが大事なことだと思っています。

ひの

目的地に向かう手段も様々あり、音楽にとっての手段としてはジャンルもその一つだと思うのですが、クリエイターに対してその手段をどこまで限定的に提示するか慎重に決めるようにしています。

ひの

簡単に参考曲を提示してこちらをベースに制作お願いします、とルートを絞るのは音楽でコンセンサスを取るので分かりやすい反面、クリエイティブを縛ってしまいますよね。

ひの

自分が作り手として参考曲をいただいた時は、聴き過ぎてしまうと参考曲に支配される感覚に陥ることがあります。なので冒頭の数秒やポイントとなる部分など限定的に確認するようにしていて、それと同じようになるべく多くのオリジナリティ、作家性を引き出すようにディレクションするのが大事かなと思っています。
目的意識やプロジェクトの目指すものをクリエイターに共有する時は、言語化して伝えることが多いでしょうか?

M

ひの

そうですね。言葉で表すことが多いです。

ひの

作品のシナリオやキャラクターデザインなど資料を共有して、「何を表現したいのか」をしっかり提示します。そしてワンフレーズの提案やリファレンス資料を提示する際は、その中のどういう要素を見てほしいか、必ず押さえてほしいポイントを明確にしておきます。
なるほど、そんな風に伝えているのですね。

M

ひのさんのようなゲーム音楽の作曲家になるには、どのような道を歩めばよいのでしょうか?

M

ひの

それは……難しい質問ですね(笑)

ひの

先日、音楽大学の現在の学生事情を伺う機会があったのですが、今は多くの学生がゲーム音楽に携わることを希望しているそうです。
私が現役の頃は周りに映画やドラマの音楽に関わりたいという人が多く、ゲーム業界を希望する人はそこまでいなかったので驚きましたね。

ひの

また現在のゲーム業界がサウンド職を目指す学生にとって、とても狭き門であることも伺いました。そんな中、なかなか新卒ですぐにゲーム音楽に携わるのは難しいと思うのですが、とにかくたくさんの音楽に触れつつ曲を作り続けることは大事だと思います。

ひの

得意分野を持つことはクリエイターとして成長の支えになるので大事だと思いますが、現場では「僕の得意分野はこれです!」と選べることはあまりなくて、どんなオーダーにも応えられるようにたくさんの表現の引き出しを持って如何なるジャンルの曲も作れないといけません。

ひの

ゲーム音楽も一人でゼロから100まで作る会社・制作の各工程を担当者ごとに分業する会社・全て外部委託する会社などいろいろあります。

ひの

これまでの私の経験談ですが「ゼロから100までを2日で1曲ペースで作らないとリリースに間に合わない」という状態がずっと続いていました。会社員なので基本的には勤務時間範囲内で今は残業時間の制限もあり、MTGや資料作成、後輩の指導など制作以外の業務もたくさん入ってきます。
そういう状況なので、ちょっとでも遅延すると作業量が重なっていってしまいます……(笑)1日に2曲作ったこともありますね。

ひの

「曲を作る=呼吸」くらいの感覚まで持っていかないと、制作現場でやっていくことは難しいといった状況を見てきました。

アイディアと納期をご自身で上手く調整して、曲を量産できるような日頃の取り組みが大事なのですね。

M

ひの

はい、私はそう思っています。

ひの

短い納期に対して引き出しの量も重要ですが、何よりもクオリティが一番大事なので、たくさんの知識と技術を身につけつつ、「ゲーム音楽が大好き!」という気持ちを持って作り続けることが大事だと思います。

ひの

大変なことも多いですが、何より楽しくてやりがいのある仕事です! 仕事の楽しさは年々増していますし、やれることが増えて視野も広がっています。

ユーザーの記憶に残る音楽をつくる

作曲の幅を広げるために、何かしていることはありますか?

M

ひの

インプットは日常的な習慣にしています。例えば民族音楽を集中的にインプットしたり、EDMをひたすら聴くこともあるし、時には声明(お経)を流し続けたり……。

ひの

そんな中でずっと変わらずに聴いているのはブラームスです。何度聴いても新しい発見があります。

ひの

とても高度なポリフォニー構築をしつつ音楽理論に忠実で、最高の教材だと思っています。自分のチューニングの意味合いでも聴いていますね。
今後、ゲーム音楽やその作曲家はどういった存在になっていくと思いますか?

M

ひの

ゲーム音楽は既に業界の諸先輩方の偉業がありますし、IP化が広がっていると思います。
ゲーム音楽だけのコンサートが開催されていたり、音楽自身がIPとなって盛り上がっていますよね。

ひの

昔は「あの有名なゲームはみんなやっていてBGMも聞き馴染みがある」みたいなことがあったと思うのですが、今は人それぞれプレイするゲームが違って好みも人それぞれで、より限定的なコミュニティが存在している印象です。

ひの

そんな中でゲームに付随する音楽も、ユーザーの記憶に残るかどうかを左右する大きなポイントだと思います。
「この音楽、すごくいいから聴いてみて!」と、ゲームをやってない人にも共有されて広がっていくようなものを作る、これがこれからのゲーム音楽の作曲家にとって大事なことなのではないかと思っています。

前のめりなクリエイター、積極採用中!

DONUTS GAMESに入社されたきっかけを教えてください。

M

ひの

前職で長らく担当していたゲームのストーリーが大団円を迎えて、エンドロールが流れた時に「新しい世界を見てみたいな」と思いました。

ひの

そのタイミングでDONUTS GAMESの採用の方からカジュアル面談のお誘いがあり、どんな会社なんだろう?と調べてみたんです。
ゲームは勿論のこと、音楽を大事にしているという点がいいなと思いましたね。ライブやCDといった展開力が魅力に感じました。

ひの

また、DONUTSが持つラジオやライブ配信&動画アプリ「ミクチャ」といった別のメディアでも自分のキャリアを活かせるのではないか、と思った点も大きいです。

どんな方にDONUTS GAMESに来てほしいですか?

M

ひの

ものづくりに対して貪欲に、こだわりを持って出来る方は活躍できると思います。 最後まで諦めずに粘り強く頑張れる人にはどんどんチャンスが巡ってくる環境なので、挑戦し続けたいクリエイターにはぴったりですね!


おいおい、なんだこれは……
めちゃくちゃいいじゃねーかッポ!
しかも納品まで早い!
あざス
自分、昔からゲームが大好きで……  

今はスマホゲームのデバッガーのアルバイトをやってるッス
フリーランスでWEBライターも掛け持ちしてるッスよ
イマドキの働き方を選んでいるッポね

Mくん。  

────いや、エージェントのMくん
キミを正式に【DONUTS GAMES研究所】  

専属エージェントとして迎え入れることに決めたよ
3人で力を合わせてがんばろう!
うぃス、ありがとうございます!








 

 
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