CRI・ミドルウェアは新開発の映像・音声関連のミドルウェアを出展 華やかなTGSの舞台裏で活況呈するビジネスブース(4)

「東京ゲームショウ2023(TGS2023)」が開催され、大盛況のうちに幕を閉じた。TGSといえば、華やかな新作タイトルの数々、有名人が出演するステージイベント、ブースを彩るコンパニオンたち、そしてコスプレイヤーたちに注目が集まることが多いが、このコーナーではビジネスデーのみ登場する、ちょっと地味でわかりづらい「ビジネスソリューション」にフォーカスを当てる。

出展社全てというわけにはいかなかったが、ピックアップした企業の担当者から会社紹介やTGS出展に至った経緯、出展してどのような効果があったのかなどさまざまなお話を伺うことができた。いずれもインタビューは、TGS2日目、ビジネスデー最終日にあたる2023年9月22日に行った。

今回の記事では、株式会社CRI・ミドルウェアを取り上げる。多くのゲームで、起動時に「CRIWARE」が表示されるなど、多くのタイトルで利用されている同社のミドルウェアだが、今回、どういった出展を行ったのか。同社常務取締役CTO開発本部長の櫻井敦史氏(写真右)にインタビューを行った。

 

――:よろしくお願いいたします。上場会社で著名な企業で失礼なのですが、あらためて会社紹介をお願いします。

当社は、30年近く音声と映像関連のミドルウェアをゲーム業界に提供しております。その間、ゲームの需要も開発環境も変わり続けたので、それに合わせてゲーム開発に役立つ最新機能を持ったミドルウェアを次々と開発・提供してきました。

――:いまやゲーマーで「CRIWARE」のロゴを見たことがない人は少数派ではないでしょうか。今回はどういった出展をされたのでしょうか(ブースの展示を見せながら回答した)。

今回は、音声や映像関係のプロダクトについて開発中のものも含めて展示しております。その一つは、VODと呼んでいるネットワーク動画再生に関連するミドルウェアです。YouTubeなどのネットワーク動画はパソコンやスマホで利用されていますが、これをゲームの中でかつマルチプラットフォームで再生できるようにするものです。

例えばこれによって、リアルイベントや大会の模様を配信したり、ゲームのアップデートなど最新情報を配信したりする際、プレイヤーがわざわざスマホやPCを立ち上げなくても、ゲームの中で視聴できるようになります。動画はダウンロードするとストレージを圧迫したり、時間がかかったりしますが、本ミドルウェアを導入することで待ち時間をなくすことができます。

ここ最近、ゲームの中で盛り上げを完結させるのではなく、外部にあるコミュニティを巻き込んだ盛り上げなども注目を集めていますので、そういったところと連携できるような機能として提供していきたいと考えております。また、マルチプラットフォーム対応という点をご評価いただくことも多いですね。

 

――:興味深い技術ですね。

統合型サウンドミドルウェアCRI ADXのデモでは立体音響関連の機能強化を行っています。立体音響をヘッドホンで聞いた時に、音の方向や高さを認識できるというもので、技術自体はずっと前からあるものです。

今回、ヤマハさんの仮想立体音響ソリューション Sound xRと連携し、マルチプラットフォームにも対応しました。マルチプラットフォームに対応するメリットは、プレイヤーの使っているデバイスがPCであろうとスマホであろうと、開発者が開発環境で聞こえる音がそのままプレイヤーのもとで再現できるという点です。

今回の東京ゲームショウでは、立体音響を体感するためのデモとして、音だけで見えないおばけを探して撃つデモアプリも展示しています。東京ゲームショウという騒音の多い環境でもきちんと立体音響が感じられると、体験した方から評価をいただいています。

 

――:開発環境と同じように再生されるのは良いですね。続いては…。

次が、CRI TeleXus(テレクサス)というコミュニケーションミドルウェアです。今回、高度なボイスチャットに文字起こし機能を搭載したデモを展示いたしました。ゲームタイトルをワールドワイドで展開する際、アクセシビリティとして、耳の不自由な方向けの機能の重要度が高くなっているため、文字起こしに対応いたしました。

しゃべった音声を文字に変換すると、テキストデータは音声よりも処理がしやすいので、自然言語処理をかけることもできるようになります。単に字幕をつくるだけでなく、様々な面白い機能が作れるのではないかということでトライしています。

 

――:最後のこちらは見覚えがあります。

OPTPiX ImageStudioのリマスター超解像技術です。簡単に言うと、過去のゲームハード向けに開発したゲームのイラストなどを、最新のハード向けにきれいに見やすくしていく技術です。

旧ハード向けのイラストなどは解像度が低いため、最新ハードで遊ぶとどうしても粗さが目立ってしまいます。ブラウン管テレビでプレイする前提の場合、モニターのにじみがうまく作用したのですが、液晶テレビでは粗さがくっきり出てしまいます。OPTPiX ImageStudioを使うことで、昔のゲームの画像を綺麗に見えるように整えつつ、昔遊んだ方のイメージも壊さないようにすることを可能にしています。

また、超解像技術はエンジンによって特徴がありますが、総じて輪郭が曖昧になるか、ディテールが消えるかの二者択一に陥りがちでした。新しいリマスター超解像は、両方をいいとこ取りしてきれいな映像でかつ質感も残すことが可能になりました。先日プレスリリースとしても発表しております。

 

――:過去の素材を一つ一つ書き直していたら大変ですよね。こういうツールがあると助かるのではないでしょうか。

一つ一つ手で書き直すと、それこそリメイクではなく、新作を作るレベルの工数が必要ですので、コスト面でも割に合わなくなってしまいます。ここ最近、リメイクのゲームが多く出るようになりましたが、当社のプロダクトを利用いただくことが増えてきました。今後、新しくリマスターされるゲーム開発を裏側でお手伝いができたら、と考えています。

――:旧ハードだと動画のある作品も少なくないですが、この対応はされるのでしょうか。

プレイステーション 2時代から動画がよく導入されるようになりましたので、どうやって現代ハードに合わせてきれいにするか、といった研究も行っています。様々な技術がありますが、超解像技術を使うことで動画もうまく処理できるのではないかと試行錯誤しています。意外とうまくいったのですが、今回のイベントではデモ展示は間に合いませんでした。

――:今回もずいぶん意欲的な出展ですね。昨日から出展されていますが、反響は良いですか?

はい。通常、イベント初日の午前中は人が少ないのですが、今年はだいぶ違っていました。久々のリアルなイベントということで、朝から多くの方にお越しいただきまして、忙しい状況が続いています。毎年出展していますが、今年も色々な方とお話ができましたし、新規の方にもお会いすることができました。出展して良かったですし、手応えを強く感じています。

――:ありがとうございました。

株式会社CRI・ミドルウェア
http://www.cri-mw.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社CRI・ミドルウェア
設立
2001年8月
代表者
代表取締役会長 鈴木 正彦/代表取締役社長 押見 正雄
決算期
9月
直近業績
売上高28億4000万円、営業利益9700万円、経常利益1億3800万円、最終損益3億3900万円の赤字(2022年9月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3698
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