MIXI(2121)から提供されている『共闘ことばRPG コトダマン』(以下、『コトダマン』)。本作の「ことば」を組み合わせる楽しさや、マルチプレイでわいわい楽しめるゲーム性に熱中しているユーザーも多く、リリースから5年以上経った今でも支持されている。
そんな『コトダマン』だが、アニメや漫画などの作品とのコラボイベントをなんと50ヶ月連続で実現させているそうだ
50ヶ月といえば、4年以上となる。4年以上、毎月何かを継続というのは至難の業であると言えよう。
今回、gamebizでは『コトダマン』キーマンにインタビューを実施。50ヶ月連続でコラボイベントを行う理由や、どのようにしてそのペースでクオリティに妥協せず実現できているのかを聞いてみた。
振り返ると50ヶ月連続…ユーザーの声を励みに続けたコラボ
株式会社MIXI
『共闘ことばRPG コトダマン』プロデューサー
大槻一彦氏
ゲーム業界にて長らくプロデューサーとして活躍。『コトダマン』はリリース直後に関わったのち、2021年より再び『コトダマン』チームに参画。
株式会社MIXI
『共闘ことばRPG コトダマン』ディレクター
望月貴矢氏
3年前より『コトダマン』チームに参画。新機能開発の責任者を担当したのち、現在は『コトダマン』ディレクターとして現場全体を統括。
株式会社MIXI
『共闘ことばRPG コトダマン』ライツグループ マネージャー
三沢隆浩氏
4年前より『コトダマン』運営チームに参画。コラボ作品の権利を持つ企業との渉外、コラボコンテンツの制作進行を担当するライツグループを統括。
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――:コラボ50ヶ月連続実施というのは、業界としても中々できることではないと感じます。まず初めに、率直に振り返られていかがでしょうか。
望月:たぶん50ヶ月連続コラボをしている作品は『コトダマン』だけになるかと思います。単純に50ヶ月連続で実施できたことは振り返るとすごいなと感じます。
大槻:毎月コラボを実施させていただいているので、ユーザーさんからしても一つのライフサイクルとして捉えられているかと思います。その中でも僕らは新しさや斬新さ、ちょっとしたことでも新しいことを毎回チャレンジしている部分もあるので、そういった意味では50回コラボをやったというよりは、毎回違う体験を提供できていたら良いなと感じます。
――:ちなみに、ここまでコラボを行う狙いというか、注力する経緯はどういったところからきているのでしょうか。
望月:色々と理由はありますが、まずは単純に、様々な方に『コトダマン』に触れてほしいという思いがあります。
コラボする作品が好きな方に遊んでいただけるので、色んな方に手にとってもらえることは狙いとしても大きいと思います。
大槻:先ほども話したとおり、毎月コラボが実施されるという事がユーザーさんにもライフサイクルにも組み込まれていると思いますので、期待に応えるというとか、裏切りたくないという気持ちが大事だと思っています。
今でこそ、毎月できて良かったと話していますが、二年前とかはすごくしんどくて”これは続けられそうにないな”と感じていた時期もあったのも事実です。
いつまで毎月コラボするんだと、運営チーム内でも議論される時期がありました。ただ、コラボを通じてコトダマンを知って頂き楽しんで頂いている方や、既存のユーザーでも楽しみにして頂いている方も多くいたので、チーム体制を整えた結果、50ヶ月連続コラボを成し遂げられました。
この体制があればもう100ヶ月でもいけるでしょうという感じになってきており、だいぶ組織として強くなったと思います。
――:連続でのコラボ開催を可能にする組織体制へと変化を促したと。そこまでの労力を払ってでも、ここまで連続でコラボを実施するモチベーションや動機はなんだったでしょう。
大槻:やっぱりユーザーさんの反響だと思います。『コトダマン』のコラボでその作品を知って、”原作の漫画を全部読んじゃった”、”ハマっちゃった”というコメントをX(旧:Twitter)で見ると、やって良かったと思えるんです。
望月:生放送のコメントでも、”これを機に見たけど、1話目から面白い!”とか、”原作ファンだけど、あのシーンを再現しているのはめっちゃ良い”といった反響を頂くこともあって、とても嬉しいですね。
大槻:コラボした作品を見たことない人も、がっつりファンな人も、両方が喜んでいただけるんですよね。その両軸の反響を見ると、”また来月も頑張ってみようか”とチームではなるのです。そこから今では、もうどうやって楽しませようかと、運営チームみんなで毎月前のめりで考えるようになりました。
次はどうやってサプライズを提供しようかといった感じで、私や望月が発信しなくとも”これだとちょっと足りなくない?”と、現場発信で出てきたアイディア企画を練り直すこともあります。
三沢:以前は、上から言われたからとかもあったかもしれません。今はどちらかというと、ユーザーさんが楽しんでくれるから積極的に新しいアイディアを出すとか、今回はあの部分をアレンジしたらこの作品にハマるんじゃないかと考えが自然と集まるようになって、運営チームとしてもすごくポジティブなサイクルができていると思います。
――:ユーザーさんの声で報われる、と。ちなみに日々の運営として、50カ月連続コラボを成しえた秘訣や、ここまで連続で実施が出来た事を振り返った時に何か意識していたことはあるのでしょうか。
望月:コラボに限った話ではないですが、『コトダマン』ではチームが領域ごとに分かれています。例えば、プランナーという職種は運用開発分野となる場合が多いと思いますが、『コトダマン』ではそこから施策を考えるチーム、レベルデザインを考えるチームと、細かく細分化されています。
コラボに関してはコラボ専用のチームもあります。役割に対しての組織を小回りが利くスケールでまとめて、且つそこにきちんと決裁権を持ってもらっています。なので、何事もスピーディーに実現できるんですよ。この組織体制を活かしたスピード感を持った開発というのは、明確に意識して取り汲んでいる点ですね。
大槻:こういった体制は、チームの細分化により各所でセクショナリズムが起きてしまい、横の連携ができず事故を起こしてしまうという側面もあります。しかし、そういった部分も2年前と比べるとかなり改善されました。
今は逆にどちらかというと、アジャイル開発の良さが出てきて、各チームが有機的に横の連携を取れるようになりました。
望月:細かな組織体制の最適化を繰り返していくうちに急激に歯車が噛み合って回るようになったのは、この2年間でも大きくポジティブな変化でしたね。
また、コラボにおける組織的な特徴を他に挙げると、コラボチームがコラボコンテンツ自体のディレクションを行っている点もあります。作品の権利をお持ちの企業さんとの調整だけでなく、施策の見え方や内容も我々プロデューサーやディレクター、さらにはプランナー達と考えていきます。
――:出版社で言う、編集者みたいな役割ですかね。
望月:とある作品とコラボを実現させた上で、”この作品の良さはココだから”と、その作品の価値を理解した上でデザイナーやエンジニアと話して施策のディレクションまでガッツリ参加しています。
大槻:こういったコラボ担当というのは、一般的にはアライアンス営業のようなロールとしての印象が強いと思いますが、クリエイターにめちゃくちゃ寄り添っているのが、『コトダマン』のコラボチームだと思います。
三沢:さきほど、アジャイルの良さという話がでましたが、デザイナーさんたちもコラボチームの意思を汲み取った上で、色んな意見を出してくれるんですね。
“このコラボだったら絶対にこういった見せ方をやったほうが良くない?”といった意見が集まってきます。ですから、一人で考えていくよりもスピードもクオリティも段違いで進んでいくのかなと思います。
――:『コトダマン』のコラボを見ると、コラボしている作品としても盛り上がっているような、非常に良いタイミングで実施している印象があります。こちらは狙っているものなのでしょうか。
大槻:盛り上がる時期を狙って…、とかのコントロールは現実的にはかなり難しいです(笑)。もちろん、版元さんとご相談させて頂いて、ベストな時期を調整して進めていくこともあります。
また、コラボチームがすごくアンテナを張っているので、”これは絶対に反響がある”といった作品愛や熱量で情報をインプットしてくれています。そのコラボチームの嗅覚を信じるくらいでしょうか。
三沢:嗅覚(笑)。
コラボチームとしては、日々インプットをしていますし、最近話題になっていることについても、チーム内で情報交換は盛んに行っています。とにかくインプット量はかなり力を入れています。これが大槻のいう嗅覚に繋がっているのかなと。
望月:コラボチームの外から見てもすごくインプットしているなと感じます。あとは、先ほどの施策のディレクションにも関わっていることもあり、色んな版元さんともやり取りを進めて、作品制作にも関わっていることも大きいと感じます。
版元さんとのやり取り、作品制作を通じたクリエイター視点、そして多大なインプット。この3つを50ヶ月連続、5年以上磨き続けているのは並大抵なことではないなと感じます。
大槻:それで言うと、やっていること自体はベーシックなことであって、他の企業さんでもできることだと思います。そこを作品愛で50ヶ月続けていったのが、『コトダマン』コラボチームの強みなのかなと思います。
チーム一丸でそれぞれの未来を考えたコラボを実現させる
――:先ほど、コラボ作品を知っている人も知らない人も楽しめるようにとお聞きしましたが、コラボ内容で意識していることはありますか?
三沢:人気度や認知度だけでなく、『コトダマン』との相性を意識するようにしています。
人気だからコラボする、瞬間的に話題になるからとコラボをするとなると、安易なコラボになってしまい、その作品にもご迷惑をかけることにもなりますし、ユーザーさんにもガッカリさせてしまい『コトダマン』の信用も落としてしまいます。
考えないといけないのは、コラボする作品にとっても、ユーザーさんにとっても、『コトダマン』にとっても良いコラボが実現できないといけません。どこかだけメリットがある、ではダメだと思います。
ですからコラボチームでも、世間で人気がある作品であっても、コラボ担当者本人が好きな作品であっても、『コトダマン』と組み合わせて良いコラボが思いつかないのであれば、提案の選択肢には入りません。
大槻:プロデューサー目線ですと、どうしても人気だけでコラボしがちだと思うので、この考え方は大事なポイントだと思っています。
“この作品とはコラボしないの?”と聞いても、”今の『コトダマン』だと上手く組み合わせられないと思います”としっかり弾いてくれるんです。
逆に、こちらが作品に詳しくなかったときは、その作品の良さを手書きでプレゼンされることもあります。この時代に、手書きです(笑)。
――:(笑)。
大槻:熱量ありすぎて勢いあまって手書きのプレゼンになるんですよね(笑)。 それほどの作品愛と熱量を持った上で、ユーザーさんや『コトダマン』のことを考えたコラボ案を出してくれるので、こちらとしてもチャレンジしてみようと信じることも出来ます。
三沢:この50ヶ月の取り組みで、コラボチームがどういうロジックで考えて動いているのかを把握してくれているという目線合わせもできてきているのかなと思います。
組織全体の目線が合ってくると決定も早くなり、コラボチームとしても、チャレンジもさせてくれているなといった信頼関係というか、やりやすさを感じていますね。
――:ユーザーに楽しんでもらう為にフラットに言い合える関係もあるのですね。
大槻:「個人的な好き」は押さえた上で、『コトダマン』だとこの選択が良い、みんなが喜ぶ選択はコレだと、考えが一致するようになってきましたね。
だいたい、こういったのを散らかすのはプロデューサーじゃないですか。“俺が好きだから、こうする”みたいな(笑)。
そういうのはウチのチームではありません。逆に勉強が足りていないと怒られることもあります(笑)。
望月:皆が皆、意見を出していますので自ずと熱量も上がっていきます。僕も生放送で紹介するときにも熱が入ったりします。
他にも、コトダマンの性能やクエストなどにも作品ファンに喜んでいただけるような要素を加えています。
コラボチームが作品の価値とか魅力、コトダマンとコラボした時にどういうアウトプットがされるべきなのかきちんと理解していて、それを運営チームにもしっかり伝播させている。そうすることでユーザーさんだけではなく、チーム内でも自然と作品のファンが生まれてきます。そこから、コトダマンの性能やクエストなどに反映することが出来る。
こういった制作もできるというのが、今のチーム体制としてすごく良いなと感じる部分ですし、このペースでコラボしながらもクオリティにおいても納得頂ける理由の一つなのかなと感じています。
――:実際に、版元さんからの反響はいかがでしょうか。
三沢:良い反響をいただいており、特に制作クリエイティブの部分なども褒めていただくことが多いです。
大槻:そこもコラボチームが制作にも携わっていることが大きいと思います。単に進行管理を行なっているのでなく、版元さんとも熱量を持ってやり取りしているので、お互いに協力して喜び合える関係もできているのだと思います。コミュニケーションの根底に、その作品の価値の、根源への理解がある。
望月:リピートでコラボしていただけることも多いので、それも含めて良い反響と言えるのかなと思います。もちろん作品をお貸し頂いている企業様だけでなく、必ず作品のファンも喜ばせていきたいと思っています!
大槻:必ずとは、大きく出ましたね!
望月:ビジュアルはもちろん、他にも性能やゲーム体験全体を通じてコラボ作品を感じられるような仕組みを散りばめるように、毎回工夫させてもらっています。
売上も大事ですが、それ以上にコトダマンを通じて作品にのめり込んでもらうことを意識しているので、チーム一丸で、コラボを良い形で実現していく姿勢はアピールしたい点だと言えます。
大槻:『コトダマン』では、いろんなチームが集まって、ワークショップを行っています。例えば、ゲーム企画の立て方とか、マーケティング企画の立て方、といった内容です。
実際に、そこから実現したゲーム内の企画などもありまして、とあるコラボで、あるキャラクターの”たくさん食べる”という特徴をゲーム内で再現したこともありました。
望月:違うチームの人から自由な発想が出るので、そういった意見交換も刺激になります。先ほどの発言にもありましたが、作品の価値や魅力を理解している人が色々なチームにいて、全員野球をしてるからこそ出来る事ですね。
三沢:そして、先ほど話した通り、全体としても目線合わせができている組織になったと思うので、みんながブレストしやすく、それぞれが意見を持っていて、且つみんなが受け入れられる環境になっていると思います。
大槻:これまでを振り返っても、良い企画はみんなで意見を出し合って作り上げたものが多いですね。
スタイルはいろんな会社さんがそれぞれあると思いますが、『コトダマン』チームの文化としては、”集合天才型”というものを掲げているので、このスタイルが合っているのかなと思います。
『コトダマン』を通じて色んな作品を知ってもらいたい
――:読者に向けてメッセージをよろしくお願いします。
三沢:先ほどと重なる部分はありますが、『コトダマン』ではコラボした作品を楽しんでもらえるような工夫を毎回していますので、安心して遊んでほしいですし、作品を知らなかった人は興味をもっていただけると本当に嬉しいなと思います。
大槻:『コトダマン』を遊んでいたら良質なアニメや漫画を知る良い機会になる、と思ってもらえるようなコラボを今後も続けていきたいと思います。
望月:あとは、たとえ5年目だろうと10年目だろうと、コラボをきっかけに『コトダマン』を始めた人が遊びやすくゲーム体験をスタートできるように意識して作られています。
大槻:以前は課題感を持っているポイントでしたが、今では遊びやすく設計しており、久しぶりに『コトダマン』を遊ぶ人でもしっかり遊べるようにしています。なので「おっこの作品は」と思うものがあれば、躊躇することなく『コトダマン』に飛び込んできて欲しいですね。
コラボを通じて作品の魅力を感じてもらえると思いますし、そこで培ったものというのがその後のコトダマンでも活かせるように改善を続けています。
望月:そうですね。コアとなるゲーム体験の部分も日々チューニングさせてもらっており、今のコラボで入ってきた人でも、そのコラボイベントを比較的遊びやすくなるように設計をしたいと思っています。
大槻も言ったように、コラボで始めた人がコラボイベントを遊び尽くした後でも、『コトダマン』を楽しめるように作られているので、かつて『コトダマン』を遊んでいて今は離れてしまっている人もまた遊んでみてもらいたいですね。
――:ありがとうございます。最後に、コラボといえば、「デジモンアドベンチャー」とのコラボも発表されました。こちらも楽しみにしている方々に一言お願いできますか。
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望月:運営チームも作りながら泣いちゃうくらいの内容になっていますので(笑)、ぜひ期待してほしいですね。
「デジモンアドベンチャー」は私自身も当時から親しんだ作品ですので、当時楽しまれた方も、初めて触れるという方も良かったと思えるコラボにしたいと考えています。
最後まで楽しんで頂けるような内容となっておりますので、ご期待ください!
――:ありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社MIXI
- 設立
- 1997年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 木村 弘毅
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1468億6800万円、営業利益:191億7700万円、経常利益156億6900万円、最終利益70億8200万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2121