【決算まとめ①】ゲーム関連企業の24年4~6月期決算は減収減益が目立つ結果に 中国『アラド戦記モバイル』貢献でネクソンが好調 スクエニHDは大幅黒字転換を達成

柴田正之 編集部記者
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主要モバイルゲーム企業の2024年4~6月期の決算を振り返りたい。Nintendo Switchの後継機の影がちらつく中で、家庭用ゲーム機とPC、そしてスマートフォンのマルチプラットフォームを意識したゲーム開発を意識する企業が増えてきている。

この流れはこれまでスマートフォンゲーム専業で事業展開してきた企業も例外ではなく、コンシューマやPC(Steam)への配信タイトルという形での展開が着実に増えてきている。ただ、こうしたマルチプラットフォーム展開は、ハード依存のリスクヘッジとなる半面、開発費用の増加につながることになり、四半期営業赤字を計上する企業数が高止まりになっている状況にあるとも言えそうだ。

さて、今回も前回までの形と同じく、テーマごとに少し切り分け、この記事では4~6月期の決算シーズンの主要モバイルゲーム企業の決算の概略をまとめてみたい。これまでの記事とデータの連続性も踏まえ、エイチーム<3662>とgumi<3903>、アピリッツ<4174>、coly<4175>などの決算は2~4月期の数字を使用している。

なお、これまでと同様にサイバーエージェント<4751>(表中はCA)は、ゲーム事業の数字のみを取り上げている。また、表中では各企業の四半期推移(QonQ)での増収率・減収率で各企業を並べている。

また、今回の集計データからゲーム事業を手放す形となったモブキャストHDとギークスを除外し、モブキャストHDのゲーム事業を取り込むなど全体事業に対するゲーム事業の比率が高まったテンダを採用している。

■中国『アラド戦記モバイル』配信開始のネクソンの好調が目立つ

この四半期は四半期推移(QonQ)での増収企業で目立ったのはネクソン<3659>だ。そのけん引役となったのは5月21日に中国で配信を開始した『アラド戦記モバイル』で、第2四半期累計(1~6月)の連結決算も予想を上回る着地となっている。続く第3四半期も『アラド戦記モバイル』のフル寄与が見込まれるほか、7月に配信を開始した『The First Descendant』も収益に貢献してくることが期待されている。

2024年6月期の連結決算では減収減益となったブシロード<7803>も第4四半期期間の四半期推移では大幅な業績改善となった。バンドリ!プロジェクトの新バンド「MyGO!!!!!」や「Ave Mujica」が国内外において人気を博し、ライブイベントやレコード事業、ライブグッズが好調に推移した。ゲームを手掛けるデジタルコンテンツユニットは、赤字縮小のために取り組んだ体制変更の効果が徐々に発揮され始めており、コンソールゲームを中心とした展開による収益改善をさらに進めていくという。

半面、サイバーエージェントのゲーム事業やカプコン<9697>は前四半期の好調の反動で大幅な減収となった。ただ、これは両社ともに想定の範囲内の推移と言えそうだ。

落ち込みの大きさが気になるのはアカツキ<3932>だ。『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』の周年があった前四半期の反動という部分はあるものの、ゲーム事業で新作への開発投資が膨らんで、その収益を圧迫していることもあって、大幅な赤字に転落している。

■スクエニHDは2ケタ減収も大幅な営業黒字転換を達成

この四半期決算では、集計対象企業36社中の14社が増収、22社が減収となり、減収の企業が多かった。また、営業利益については、15社が増益(赤字幅の縮小を含む)、21社が減益とこちらも利益率の悪化が目立った。

そうした中でスクエニHD<9684>は、2ケタ超の減収ながら大幅な黒字転換を達成した。スクエニHDは、前四半期に新たな開発方針に合わないデジタルエンタテインメント事業の一部の主要コンテンツの開発を中止するなど、大幅な方針転換を進め、コンテンツ等廃棄損220億8700万円を特別損失として計上した。そうして振るった大ナタが収益性の改善という形でこの四半期に早くもその効果を発揮し始めている状況だ。

アエリアは子会社リベルに関連する新作3作品のリリースなどもあり。四半期売上高の増収率は36社中トップとなった。ただ、赤字幅は縮小したものの、黒字回復にはまだ至っていない。2024年12月期通期の業績予想は黒字予想を据え置いているが、次の四半期以降に収益性のさらなる改善が進むのかどうか注目されるところ。

なお、36社を売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる(並びはコード順)。

増収増益…ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>、KLab<3656>、ネクソン<3659>、エイチーム<3662>、アエリア<3758>、モバイルファクトリー<3912>、テンダ<4198>、ブシロード<7803>、バンダイナムコHD<7832>
増収減益…ケイブ<3760>、ガンホー<3765>、gumi<3903>、アピリッツ<4174>、東京通信グループ<7359>
減収増益…ボルテージ<3639>、マイネット<3928>、セガサミーHD<6460>、スクエニHD<9684>、カプコン<9697>、コナミグループ<9766>
減収減益…MIXI<2121>、グリー<3632>、コーエーテクモHD<3635>、enish<3667>、コロプラ<3668>、オルトプラス<3672>、ドリコム<3793>、カヤック<3904>、Aiming<3911>、アカツキ<3932>、coly<4175>、ワンダープラネット<4199>、バンク・オブ・イノベーション(BOI)<4393>、イマジニア<4644>、サイバーエージェント<4751>、マーベラス<7844>

株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
https://www.hd.square-enix.com/jpn/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
設立
1975年9月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高3563億4400万円、営業利益325億5800万円、経常利益415億4100万円、最終利益149億1200万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9684
企業データを見る
株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
企業データを見る
株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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