【決算レポ】サイバーエージェント、28期連続の増収で大幅増益 「全体的に非常に好調」(藤田社長) メディア&IP10年ぶり黒字化、新作ゲームヒット連発

サイバーエージェント<4751>は、2025年9月期通期決算を発表し、28期連続となる増収を達成した。期中に上方修正した業績予想をさらに上回り、大幅な増益で期を終えた。藤田晋社長は「全体的に非常に好調だった」と総括した。

 

 

■28期連続増収、ゲームとABEMAが牽引

売上高は創業以来、28期連続の増収。営業利益は過去最高ではないものの、過去2番目の規模を確保した。『ウマ娘 プリティーダービー』の反動減を乗り越えたことも増益の大きな要因となった。

・売上高:8740億3000万円(同9.1%増)
・営業利益:717億0200万円(同78.9%増)
・経常利益:717億4300万円(同80.6%増)
・最終利益:316億6700万円(同98.2%増)

販管費については、業績が予想を大きく上回ったことから特別インセンティブを支給した。ABEMAの損益改善により、純利益が安定的に計上される構造に転じたという。 

 

■2026年9月期の業績予想はレンジ形式 「1年先は不確実性が高い」

度業績予想は、営業利益をレンジ形式で発表した。藤田社長は、足元ではゲーム事業が好調なものの、「1年先の予測が難しい」として幅のある見通しとした。保守的な予想にしたのだろうが、レンジの上限でも減益見通しとなっており、マーケットからは嫌気された格好だ。

・売上高:8800億円(前期比0.7%増)
・営業利益:500億円~600億円(同30.3%減~同16.3%減)
・経常利益:500億円~600億円(同30.3%減~同16.4%減)
・最終利益:250億円~300億円(同21.1%減~同5.3%減)
・EPS:49.33円~59.19円
 

 

■ メディア&IP事業:ABEMAが10年ぶり黒字化

「ABEMA」を中心とするメディア&IP事業の業績について、売上高が15.7%増の2315億4300万円、営業利益は72億9100万円(前の期は7億5500万円の損失計上)と黒字転換した。藤田社長は「ABEMA」開局後、大きな赤字を計上してきたが、10年ぶりに黒字化をしたと述べた。

 

決算発表ごとに開示しているWAU(Weekly Active Users)の推移だが、短期的な増減がありながらも右肩上がりに伸びていることが確認できる。また、オリジナル作品に注力しているなか、自社IPの視聴が伸びているという。「これは非常に価値が高く、中身が非常に良くなってきたと感じている」という。

 

とりわけバラエティ番組が非常に好調に推移し、WAUは前年比2倍と大幅に伸びた。開局当初からやっている『チャンスの時間』や『今日、好きになりました。』が非常に大きなIPに育ってきたと明かした。そして新たな作品がヒットしているという。

 

同様にドラマにも力を入れており、作品のクオリティが非常に高くなってきたと自負しているそうだ 。来週19日に新作をリリースする『スキャンダル・イブ』については、作品の出来が良く、期待している作品としてあげた。

 

外部のパートナーとのメンバーシップに関しても、DAZN、WOWOW、J SPORTSといったものを皮切りに、ディズニープラス、グリーンチャンネル、そして今話題のDOWNTOWN+など充実してきた。

 

注力中のIP戦略も展開している。アニメスタジオのStudio Kurmを10月に設立をしており、着々とIP事業のラインナップが揃ってきたとのこと。原作の制作からマーケティング、アニメ化、舞台化、ゲーム化などマネタイズまで一気通貫できる体制づくりを加速させる。「ABEMAに非常に多くのアニメファンが集まっている。アニメという軸を強みにして拡大していきたい」。

 

 

■ インターネット広告事業:大型案件の離脱も継続拡大

インターネット広告事業は、売上高が同6.1%増の4612億2000万円、営業利益は14.0%減の176億0200万円と増収減益だった。大型案件の離脱があったものの、全体としては拡大基調を維持したものの、営業利益は伸び悩んだ。

 

藤田社長はその背景として、

・AIによる広告領域の急激な変化への先行投資
・利益率の高い案件を逃した点

を挙げ、現在は利益率改善のための施策を進めていると明かした。特に「検索から生成AIへ」というユーザー行動変化に注目し、新たな広告手法の確立に取り組んでいるという。

 

 

■ ゲーム事業:7タイトル投入、ガンダムなど大型ヒットで利益倍増

ゲーム事業は、売上高が前の期比10.6%増の2167億1000万円、営業利益が同96.5%増の600億6300万円と大幅増益を達成した。営業利益は、第4四半期に限定すると5.9倍の急拡大を示した。 

 

同社では、複数の新規ゲームタイトルが大型ヒットしたことに加え、海外展開も奏功した、としている。さらに外部決済への移行効果等も営業利益を押し上げた。

藤田社長は、「『ウマ娘』の反動を乗り越えたのが非常に大きく、新規タイトルも後半に寄ってはいるものの、大型ヒットが続発し、このように綺麗なグラフを作ることができた」と述べた。 

この期は7本新作をリリースしたが、『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』と『Shadowverse: Worlds Beyond』『ウマ娘プリティーダービー英語版』を貢献タイトルとしてあげた。7本中3本が大ヒットとなっており、「ヒット率が非常に高いというのが我々の強みになりつつある」と自信を示した。

 

また、海外売上も伸びているそうで、第4四半期には200億円規模まで急成長した。新規リリースした3タイトルの効果と見られる。年間にすると800億円となり、「それなりの規模になってきた」。

 

 

■ 社長交代へ 山内隆裕氏にバトン

最後に代表取締役社長の交代を発表した。12月開催の株主総会をもって、藤田晋氏から専務執行役員の山内 隆裕氏にへ社長職が引き継がれる。藤田晋氏は代表取締役会長となる。

 

株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高8029億9600万円、営業利益418億4300万円、経常利益414億7500万円、最終利益162億4600万円(2024年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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