
KLab<3656>代表取締役社長 真田 哲弥氏は、第3四半期の決算説明会において、今後の経営方針として「現状打破と利益確保」を最優先課題に掲げ、大規模な固定費削減とモバイルオンラインゲーム事業の抜本改革、新規収益源の早期確立に取り組む方針を示した。足元で実施している具体的な施策についても説明した。

■ 本社移転と人員最適化で固定費を大幅削減
まず、同社は10月27日に六本木ヒルズ森タワー内でのオフィス移転を行った。ハイブリッドワーク体制下でのオフィス利用実績を踏まえ、床面積・座席数ともに4割以上を縮小したという。Web会議に対応した小会議室の増設や、休憩スペースをイベント活用できる仕様に改装するなど、生産性向上も図っている。

また、第2四半期に実施した希望退職により従業員数は340名規模まで縮小した。派遣や業務委託など外注人員の縮小も継続してコスト構造の見直しを進め、「利益確保に向けた固定費削減は計画通り進行している」とした。

■ モバイルゲーム事業は“少数精鋭"へ再編 新規IP獲得も加速
主力のモバイルオンラインゲーム事業では、日本発IPを世界に届けるという基本戦略は維持しつつも、企画・開発体制を抜本的に改革する。従来の大規模体制から、スピード重視の“少数精鋭型"組織へ転換する。意思決定と開発スピードの最大化を図るほか、2027年以降を視野に入れた新規IP獲得の取り組みもすでに始めているという。
開発中のパイプラインは以下の通り。
【大型タイトル】
・EA SPORTS FC TACTICAL(開発中断中)
・ドラゴンクエストスマッシュグロウ(2026年リリース)
・僕のヒーローアカデミア(2026年リリース)
【ハイブリッドカジュアル】
・Guns N` Buddies
・Adventure Survival
・その他1本
【支援モデル】
・ジョジョの奇妙な冒険
・その他3本
・他、IPコラボ支援

■ 「第二の柱」創出へ AIエンタメとGPUクラウドの2事業を本格始動
モバイルゲーム依存からの脱却を掲げる同社は、成長性と早期黒字化を両立できる領域として AIエンタメ事業 と GPU・AIクラウド事業 をスタートした。

【AIエンタメ:AIタレントをIP化し、音楽・アニメまで展開】
同社はAIクリエイター向けサービスを中心に、著作権保護やプロモーション支援、コミュニティ形成などを行う「総合AIエンタメ事業」を推進する。AI生成キャラクターを“AIタレント"としてIP化し、音楽・ライブ配信・アニメ・ドラマなど多媒体展開を進める。この構想を具現化するため、AIアイドルプロダクション「ゆめかいろプロダクション」を設立。AIとファンが共創する作品群を順次公開し、中長期的にKLabの新たな柱とする。


【GPUクラウド:設備投資なしでクラウド事業を拡大できる事業モデルを構築】
さらに、GPUサーバーの販売・運用受託を組み合わせた GPU AIクラウド事業 に参入した。顧客が購入したGPUサーバーをクラウド基盤として運用し、KLabがその運用を受託することで、販売収益を得ながら自社資金を使わずにサーバー調達を進めるスキームを採用する。
購入者は中小企業庁の「中小企業経営強化税制」による節税メリットも享受でき、導入ハードルを下げる形で市場拡大を狙う。同社は「初期投資を抑えつつ効率的にクラウド事業を拡大できる」とし、成長期待の高い領域として位置づけている。


KLabは、これらのコスト改革・ゲーム開発体制の再構築・新規事業育成の三本柱により、収益基盤の立て直しと中長期的な成長を目指す構えだ。
会社情報
- 会社名
- KLab株式会社
- 設立
- 2000年8月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 真田 哲弥
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高83億600万円、営業損益13億4200万円の赤字、経常損益12億8000万円の赤字、最終損益27億8200万円の赤字(2024年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3656