メールだけで完結するプレスリリースが最強である理由 「何を伝えるか」だけでなく「何をさせるか」という視点も大事【クリエイターの広報術:番外編(9)】

木村英彦 取締役 編集長
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ゲームメディアを運営していると、日々さまざまなプレスリリースが届く。最近特に増えているのが、海外のパブリッシャーや開発会社、PR会社などから送られてくるリリースだ。ゲームの情報発信そのもののハードルが下がり、これまでメディアに届かなかったような小規模なタイトルの情報まで届くようになった。

実際、当社も届くプレスリリースの半分以上が個人開発者やゲームサークル、インディーズスタジオ、海外からのものとなっている。特に海外からのものが増えた。これは、情報発信の裾野が広がるという意味で非常に望ましいことで、当サイトとしても非常に歓迎している。

一方で、受け取る側の処理能力には限界がある。大量に届くリリースをすべて丁寧に読み、必要な情報を探し、素材を集めて記事にすることは難しい。そこで最近、掲載するリリースを判断する際に以前とは異なる基準を持つようになってきた。それは、「編集者がどれだけ少ない手間で記事にできるか」だ。

 

■「面白そう」だけでは記事にならない

以前であれば、ゲームのリリースに画像素材が付いていなければ、編集側で公式サイトやSteam、SNSなどを探して画像を用意することもあったが、リリースの数が増えてくると、そうした作業に時間をかけることが難しくなる。

リリースを開いて、「これは面白そうだ」と思ったとしても、画像がない。

・公式サイトを探す。
・Steamページを探す。
・SNSを探す。
・画像を探す。
・保存する。
・動画があるか確認する。
・リンクを探す。

こうした作業を1本ごとに行っていては、掲載できる本数に限界が来てしまう。そのため現在では、インディーゲーム開発者からのプレスリリースに関しては「画像素材がないものは、以前のように自分で探してまで取り上げることが減ってきた」というのが実情だ。

そうしたプレスリリースは、決して数は多くはないのだが、個人開発者やインディーゲーム開発者のもので散見される。ニュースとして価値があるかどうかとは別に、編集部の処理能力という現実的な問題がある。

 

■「必要な情報がメールだけで完結する」リリースは強い

そんな中で、特に取り上げやすいと感じるのが、メールそのものを開けば必要な情報がほぼ揃っているリリースだ。

例えば、

・ ゲームの概要
・ 発売日
・ 対応プラットフォーム
・ 価格
・ 開発会社・パブリッシャー
・ ゲームの特徴
・ スクリーンショット
・ キービジュアル
・ トレーラー
・ Steamや公式サイトへのリンク

などがメール本文にまとまっている。画像はメール本文に直接貼られており、動画はYouTubeへのリンクが用意されている。これなら、編集者はメールを読みながら記事を書くことができる。

オンラインストレージにアクセスして、フォルダを探し、何十枚もある画像から使える素材を探す必要もない。別のGoogle Driveを開いて、リリース本文と素材をそれぞれ探す必要もない。メールを開いた時点で、記事制作に必要なものが目の前に揃っている、という利点は、リリースの本数が増えれば増えるほど大きくなる。

 

■画像は「素材」であると同時に「説明」でもある

特にゲームのプレスリリースでは、画像をメールに貼り付けることのメリットは大きい。文章だけでは、ゲームの内容を正確にイメージするのは難しい。

・「ローグライトアクションゲーム」
・「見下ろし型のアクションRPG」
・「独自のカードシステムを搭載した戦略ゲーム」

と説明されても、実際にどんなゲームなのかは分かりにくい。ところがスクリーンショットを1枚見るだけで、「なるほど、こういうゲームなのか」と直感的に理解できる。つまり画像は単なる記事用素材ではない。ゲームそのものを理解してもらうための情報でもある。

さらに動画があれば、キャラクターの動き、戦闘、操作方法、UI、ゲームテンポなど、静止画では分かりにくい部分まで伝えられる。メールにYouTubeのが貼られていれば、編集者は「動画はどこにあるのだろう」と探す必要もない。クリックするだけで確認できる。これは非常に大きい。

 

■「情報提供」ではなく「編集作業の準備」まで終わっている

ここが、取り上げやすいリリースとそうでないリリースの大きな違いではないだろうか。

企業側からすれば、「画像素材はこちらです」「動画はこちらです」とリンクを送れば、必要な素材を提供したことになるが、メディア側からすると、そのリンクを開いてからが仕事になる。

・オンラインストレージにアクセスする。
・フォルダを開く。
・ファイルを探す。
・画像を選ぶ。
・ダウンロードする。
・動画を探す。

場合によっては、さらに別のページでゲームの詳細を調べる。こうなると、編集者は情報を受け取ったというより、「調査案件」を渡された状態になってしまう。一方で、メール本文に情報と素材がまとまっていれば、編集者はすぐに本来の仕事である「編集」に入ることができる。

つまり優れたプレスリリースとは、単に情報を提供するものではなく、「記事を書くための準備まで終わらせているもの」とも言える。

 

■PRTIMESが企業・メディア双方に受け入れられる理由

この点では、PR TIMESのようなサービスが企業だけでなくメディア側からも使いやすいと感じられる理由も見えてくる。

サービスとしての機能や認知度など、さまざまな要因があるが、メディア側の視点で見ると、「ここを見れば必要な情報がまとまっている」という分かりやすさは非常に大きい。そして、国内のインディーデベロッパーにとって、PR TIMESは単なるプレスリリース配信先ではなく、「良いプレスリリースの教材」としても使えるのではないだろうか。

プレスリリースの書き方が分からないというインディーデベロッパーは、まずPR TIMESなどで自分たちと近いゲームを探してみるといい。大手ゲーム会社のリリースを参考にする必要はない。

むしろ、

・ 同じくらいの開発規模
・ 同じようなジャンル
・ インディーゲーム
・ 同じような販売プラットフォーム

といった条件で検索し、実際にメディアに取り上げられているリリースを見てみる。

そして、「何が書かれているか」だけではなく、「このメールを受け取った編集者は、このあと何をしなければならないのか」という視点で見てみる。

・ゲームの説明は十分か。
・発売日や対応機種はすぐ分かるか。
・価格は書かれているか。
・開発会社やパブリッシャーは明記されているか。
・スクリーンショットはあるか。
・ゲームプレイ動画はあるか。
・公式サイトやSteamへのリンクはあるか。
・追加で検索しなくても、記事を書き始められるか。

この視点で10本ほど比較してみるだけでも、かなり多くのことが分かるはずだ。広報の入門書を読めば、同業他社のリリースを読むこと、自社と近い規模の企業の発信を研究することは、ほぼ必ずと言っていいほど出てくる。

ただし、ここで見てほしいのは文章の上手さや構成だけではない。繰り返すが、大事なのは「このリリースを受け取った編集者は、このあと何をしなければならないのか」という視点だ。

 

■「発信できる」から「記事にできる」へ

プレスリリースを出すためのハードルが下がったことは、ゲーム業界にとって良い変化だ。大手企業だけでなく、小規模なインディーデベロッパーや海外の新興パブリッシャーでも、自分たちのタイトルをメディアに届けられるようになった。

ただし、「プレスリリースを発信できる」ことと、「メディアが記事にできる」ことは同じではない。情報発信の量が増えれば増えるほど、メディア側では一つひとつのリリースにかけられる時間が限られてくる。

そのとき重要になるのが、編集者の作業量をどれだけ減らせるか。

・文章を整理する。
・必要な情報をメール本文に入れる。
・画像を用意する。
・動画を用意する。
・リンクを分かりやすくする。
・できるだけ別の場所を探さなくても済むようにする。

これは別にメディアに媚びるという話ではない。むしろ、自分たちのゲームを正しく、早く理解してもらうための情報設計である。

・「画像素材を付ける」のではなく、「画像を見ればゲームが分かる」
・「を付ける」のではなく、「動画を見ればゲームの遊び方が分かる」
・「リリースを送る」のではなく、「このメールを読めば記事を書ける」。

そう考えると、プレスリリースの作り方も少し変わってくるのではないだろうか。プレスリリースは、情報を届けて終わりではない。メディアの編集者がメールを開いた、その先まで設計する。それが、情報があふれる時代の「取り上げてもらいやすいプレスリリース」なのかもしれない。

 

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