主要モバイルゲーム13社、全社が黒字達成 KLabは新作『スマグロ』で収益一変 ゲーム収益を新作や新規事業に投下で新たな成長の模索も

木村英彦 取締役 編集長
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主要なモバイルゲーム企業の4~6月期の決算が出揃った。上場するモバイルゲーム会社を見ると、スポーツ事業や広告事業、メディア事業、出版事業、ブロックチェーン事業など、ゲーム以外への事業多角化を進めている企業も少なくない。そこで本稿では、ゲーム関連事業の売上高と営業利益を抽出し、四半期売上高15億円以上の企業を対象に比較した。なお、単一セグメントで事業を展開している企業については全社業績を用いている。

 

今回、特に目を引くのは、集計対象となった13社すべてが営業黒字を確保したことだ。前年同期との比較では、増益が3社、黒字転換が4社、減益が6社となっており、必ずしも全社が増収増益となったわけではない。それでも、主要モバイルゲーム企業の収益面を見る限り、赤字企業が目立った時期からは状況が変わってきている。

もっとも、13社の決算を並べてみると、その中身は一様ではない。

既存の大型タイトルの収益力を高めることで増収増益を実現した企業がある一方、新作・新IPのヒットによって業績を大きく改善させた企業もある。また、売上高が伸び悩むなかでもコストコントロールなどによって利益を確保する企業、事業ポートフォリオや開発体制を見直して収益構造を改善する企業もみられる。

さらに、足元で黒字を確保しながら、新作開発や運営体制の強化など将来への投資を続ける企業もある。

つまり今回の決算で共通しているのは、「モバイルゲーム市場全体が好調だった」という単純な話ではない。既存タイトルの収益化、新作の寄与、収益性の確保、事業構造の転換、そして次の成長への投資――。企業ごとに異なるアプローチによって利益を確保していることが特徴といえる。

 ※CA:サイバーエージェント

 

以下、各社の決算から、主要モバイルゲーム企業の現在地を見ていく。

 

■既存タイトルの収益力を高めるMIXI、ドリコム

今回、既存タイトルの収益力という点で目立ったのが、MIXI<2121>とドリコム<3793>だ。

MIXIは、ゲーム事業の売上高が195億3200万円(前年同期比21.5%増)、営業利益が108億8100万円(同39.5%増)となった。主力の『モンスターストライク』ではMAUが減少したものの、『チェンソーマン』『けいおん!』『SAKAMOTO DAYS』『NARUTO』『呪術廻戦』など人気IPとのコラボレーションを展開。ARPUの上昇によって前年同期比で増収となった。さらに、増収に加えてコスト効率化も寄与し、セグメント利益は増益となった。ユーザー数そのものが伸びなくても、人気IPとのコラボレーションなどによって課金を促進し、一人当たりの収益性を高める。長期運営タイトルの成熟化が進むなかで、こうした運営力はゲーム会社の重要な競争力となっている。

ドリコムも、売上高41億4500万円(同4.2%減)に対して営業利益は7億9400万円(同545.7%増)と大幅な増益となった。子会社2社を売却した影響がありながらも、主力2タイトルが好調に推移。『Wizardry Variants Daphne』は前年同期を13%上回る26億2000万円の売上高を記録し、引き続き高い水準を維持した。また、12周年を迎えたIPタイトルの周年施策も好調だったという。新作を次々と投入するのではなく、既存タイトルを長期間運営しながら周年施策などによって売上を維持・拡大する。両社の決算からは、成熟タイトルを「長く稼がせる」運営力の重要性が改めて浮かび上がる。

 

■新作・新IPが業績を押し上げるKLab、アカツキ

一方で、新たなタイトルが業績を大きく変えるケースもある。

KLab<3656>は売上高32億6300万円(同114.0%増)、営業利益4億9300万円と、前年同期の3億5900万円の損失から黒字に転換した。営業黒字は実に19四半期ぶりとなる。業績改善の大きな要因となったのが、スクウェア・エニックスとの共同タイトル『ドラゴンクエストスマッシュグロウ』。課金・広告収益が業績に寄与したほか、『キャプテン翼』が黒字となるなど既存タイトルにも好影響がみられたという。長期間にわたって苦戦してきた企業でも、新たなヒットタイトルを獲得することで業績を大きく変えられる。ゲームビジネスにおけるヒットタイトルのインパクトの大きさを示す事例といえる。

アカツキ<3932>も売上高35億3700万円(同76.1%増)、営業利益12億8200万円と大幅に改善した。前年同期は16億2200万円の営業損失を計上していたため、黒字転換のインパクトは大きい。こちらでは2025年8月末にリリースした『怪獣8号 THE GAME』が収益に寄与したことに加え、既存タイトルも高水準で推移した。もっとも、アカツキの利益改善は新作だけが理由ではない。事業ポートフォリオの見直しや既存タイトルの運営効率化による費用削減、新規開発の一巡に伴う研究開発費の減少も寄与している。

 

■収益性を確保するガンホー、コロプラなど

売上高の成長だけを追うのではなく、収益性を意識した事業運営を進める企業も目立った。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>は売上高251億6400万円(同6.1%減)と減収となったものの、営業利益は26億8600万円(同22.7%増)と増益を確保した。Gravityの『Ragnarok Origin Classic』が好調に推移したものの、前年に大ヒットした『Ragnarok M: Classic』の水準には届かなかったことから減収となった。一方、広告宣伝費を中心に販管費を抑制したことで利益は増加した。

コロプラ<3668>は売上高48億5600万円(同0.2%増)、営業利益4億5400万円。前年同期は6億5800万円の営業損失だったことから、こちらも黒字転換となった。『ドラゴンクエストウォーク』や『白猫プロジェクト』など主要タイトルが好調に推移し、新作リリースがないなかでも増収を確保。広告宣伝費などのコスト適正化も利益改善に寄与した。前年同期には『Brilliantcrypto』への投資があったことも影響している。

Aiming<3911>は売上高36億2200万円(同5.2%減)、営業利益2億8800万円(同41.3%減)と減収減益となったものの、黒字を維持した。6月9日にリリースした『イナズマイレブン クロス』は同社の想定以上の売上を計上した一方、新規ゲームやコンシューマゲームなどへの開発投資を積極的に行った。

グリーホールディングス<3632>も売上高68億1100万円(同25.2%減)、営業利益10億1400万円(同37.8%減)と減収減益ながら黒字を確保。既存タイトルを中心とした事業運営が軟調に推移する一方、新規タイトルの開発やパイプライン拡充に向けた仕込みを進めている。『アナザーエデン ビギンズ』についても9月のリリースに向けて開発が進んでいる。このグループに共通するのは、売上高が伸びなくても、あるいは減少しても、一定の利益を残しながら次のタイトルや成長機会に備えている点だ。

 

■構造改革や事業の見直しが利益改善につながる

今回の決算では、タイトルのヒットだけでは説明できない利益改善も目立った。

アエリア<3758>は売上高20億8600万円(前年同期比横ばい)、営業利益6600万円と黒字転換した。前年同期は5200万円の営業損失を計上していたが、前年同期に発生した収益認識の遅れの影響がなくなったことなどから黒字となった。一方、上半期累計では既存コンテンツの売上減少もみられており、単純な事業回復とは区別して見る必要がある。

マイネット<3928>は売上高16億1400万円(同2.5%減)、営業利益1億5700万円(同17.8%減)と減収減益ながら黒字を確保した。セカンダリー領域では既存タイトルの長期かつ安定的な運営に注力する一方、「開発ソリューション」「人材マッチング」「スポーツコンテンツ」など新規事業領域への投資も継続している。ゲーム会社の収益構造が変化するなか、既存タイトルを運営するだけでなく、そこで培ったノウハウや人材を別の事業へ展開する動きも今後の注目点となりそうだ。

 

■黒字を維持しながら次の成長へ投資

もう一つ見逃せないのが、足元で利益を確保しながら将来への投資を続けている企業だ。

バンク・オブ・イノベーション<4393>は売上高29億1700万円(同2.6%増)、営業利益4億円(同36.2%減)。主力の『メメントモリ』は横ばいで推移したものの、開発・運営体制の強化や新作開発への投資が減益要因となった。同社はアプリ外決済の利用拡大にも取り組んでおり、2026年7~9月期以降に本格的な効果が出てくる見通しとしている。

Aimingも『イナズマイレブン クロス』を投入する一方、新規ゲームやコンシューマゲームへの開発投資を継続している。つまり、減益だからといって必ずしもネガティブとは限らない。既存タイトルから得た利益を次の成長にどの程度振り向けているのかを見る必要がある。

 

■大型企業でも「前年同期の反動」が明暗を分ける

大手ではDeNA<2432>とサイバーエージェント<4751>の動きも対照的だ。

DeNAは売上高121億2000万円(同33.2%減)、営業利益38億2600万円(同62.0%減)と大幅な減収減益となった。主な変動要因は『Pokémon Trading Card Game Pocket』で、前年同期に3900万人だった平均MAUが2300万人まで減少した。イベントやプロモーションなどを複層的に実施し、ログイン頻度や継続率、アクティビティの向上に取り組んでいる。

一方、サイバーエージェントは売上高611億6500万円(同20.8%増)、営業利益123億2700万円(同25.1%減)。主力タイトルに加えてカジュアルゲームも好調で増収となったが、前年同期は『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』と『Shadowverse: Worlds Beyond』をリリースし、大きなヒットを記録した時期だった。その反動もあり、利益は減少した。もっとも、次の四半期には『hololive Dreams』や『GRANBLUE FANTASY: Relink - Endless Ragnarok』を投入しており、新作による再加速が期待される。

 

■「全社黒字」の先にあるもの

今回、対象となった13社はすべて営業黒字を確保した。だが、その背景を見ると、モバイルゲーム市場が一斉に成長局面へ入ったというより、各社が異なる方法で収益を確保するようになってきたと見るほうが実態に近い。

既存タイトルでは、MIXIやドリコムのようにユーザー数やタイトルの年齢だけに頼らず、コラボや周年施策などによって収益力を維持・向上させる動きがある。

一方、KLabやアカツキでは新作・新IPが業績を大きく押し上げた。ゲームビジネスにおいてヒットタイトルが持つ破壊力は、依然として健在だ。

その一方で、ガンホーやコロプラなどではコストコントロールによって利益を確保。アカツキやKLabなどでは、タイトルの寄与だけでなく事業ポートフォリオや開発体制の変化も業績改善につながっている。

さらに、バンク・オブ・イノベーションやAimingのように、黒字を維持しながら次のタイトルや新たな事業機会への投資を続ける企業もある。

こうして見ると、現在のモバイルゲーム企業に求められているのは、単に「ヒット作を作る」ことだけではない。既存タイトルから長期間にわたって利益を生み出し、その利益をどこまで効率よく維持し、次の成長へ振り向けられるかが、企業の収益力を左右するようになっている。

4~6月期の決算は、こうした企業ごとの戦略の違いが、数字として表れた四半期だったといえそうだ。

 

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株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1477億円、営業利益186億9400万円、税引前利益257億6400万円、最終利益190億4800万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る
株式会社MIXI
https://mixi.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社MIXI
設立
1997年11月
代表者
代表取締役社長 上級執行役員 CEO 木村 弘毅
決算期
3月
直近業績
売上高1713億6900万円、営業利益222億5600万円、経常利益247億円、最終利益172億7000万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2121
企業データを見る
グリーホールディングス株式会社
https://hd.gree.net/

会社情報

会社名
グリーホールディングス株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 最高経営責任者 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高571億1100万円、営業利益48億6000万円、経常利益37億6000万円、最終利益11億9400万円(2025年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
企業データを見る
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
https://www.gungho.co.jp/

会社情報

会社名
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
設立
1998年7月
代表者
代表取締役社長CEO 坂井 一也
決算期
12月
直近業績
売上高932億4200万円、営業利益50億5600万円、経常利益67億8000万円、最終利益14億700万円(2025年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3765
企業データを見る
株式会社アエリア
https://www.aeria.jp/

会社情報

会社名
株式会社アエリア
設立
2002年10月
代表者
代表取締役会長 長嶋 貴之/代表取締役社長 小林 祐介
決算期
12月
直近業績
売上高164億7200万円、営業利益6億6700万円、経常利益5億4100万円、最終利益3億5200万円(2025年12月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3758
企業データを見る
株式会社サイバーエージェント
https://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役会長 藤田 晋/代表取締役社長 山内 隆裕
決算期
9月
直近業績
売上高8740億3000万円、営業利益717億0200万円、経常利益717億4300万円、最終利益316億6700万円(2025年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
企業データを見る
株式会社ドリコム
https://drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高175億4700万円、営業利益4億800万円、経常利益3億1800万円、最終利益2億1300万円(2026年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
企業データを見る
KLab株式会社
https://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 真田 哲弥
決算期
12月
直近業績
売上高68億5600万円、営業損益13億400万円の赤字、経常損益14億2100万円の赤字、最終損益41億7600万円の赤字(2025年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
企業データを見る
株式会社アカツキ
https://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高258億5600万円、営業利益74億4400万円、経常利益76億1800万円、最終利益56億5200万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
企業データを見る
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 上席執行役員 CEO 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高259億3300万円、営業利益10億200万円、経常利益18億500万円、最終損益3億600万円の赤字(2025年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
企業データを見る
株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
https://boi.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
設立
2006年1月
代表者
代表取締役社長 樋口 智裕
決算期
9月
直近業績
売上高123億6600万円、営業利益21億5400万円、経常利益21億8500万円、最終利益13億5100万円(2025年9月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
4393
企業データを見る
株式会社マイネット
https://www.mynet.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社マイネット
設立
2006年7月
代表者
代表取締役社長CEO 岩城 農
決算期
12月
直近業績
売上高74億7800万円、営業利益3億7400万円、経常利益3億800万円、最終利益2億2800万円(2025年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3928
企業データを見る