オーディオストック、「音源を売る」から「音源の権利を収益化する」会社へ 100万点超の音源を基盤にライツビジネスを拡大

木村英彦 編集長
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オーディオストック<621A>が9月16日、東京証券取引所グロース市場に上場した。同社は、クリエイターが制作したBGMや効果音、ボイス・ナレーションなどの音源を取り扱う「Audiostock」を運営している。映像制作やゲーム、広告、SNSなどで利用できる音源をライセンス販売するサービスとして知られるが、同社が目指しているのは単なる「音源素材サイト」にとどまらない。

クリエイターから音源を預かり、販売するだけでなく、その著作権や著作隣接権などを管理し、テレビ・ラジオなどで利用された際の著作権使用料なども収益化する「音源ライツビジネスプラットフォーム」へと事業を広げている。

 

■クリエイターと利用者をつなぐ「音源のプラットフォーム」

オーディオストックの事業を理解するうえで重要なのが、クリエイターとユーザーの間に立って、音源の利用に関するさまざまな業務を引き受けている点だ。

クリエイターからBGM、効果音、ボイス・ナレーションなどの音源を預かり、著作権を管理したうえで、「Audiostock」を通じてライセンス販売する。

ユーザー側は、購入した音源を番組、広告、SNS、動画などの商用コンテンツに利用できる。利用者には映像制作会社や芸能事務所、YouTuber・VTuber事務所、専門学校、広告業界、官公庁などの法人に加え、YouTuber、VTuber、動画制作者などの個人も含まれる。

9月末時点で音源は100万点を超えており、BGMや効果音だけでなく、生演奏によるレコーディング曲などもラインアップしている。

また、キーワードやジャンル、イメージ、楽器、テンポ、利用用途などから絞り込める検索機能やレコメンド機能を備え、音源を「探しやすくする」こともサービスの強みとしている。

 

■収益の柱は「課金収入」と「著作権等収入」

同社の収益構造は大きく2つに分けられる。1つ目が、Audiostockで音源のライセンスを販売する課金収入だ。単品販売に加え、利用点数を無制限とする定額制プランを展開。さらに、アプリケーションへの組み込みなど個別契約を行うカスタマイズプランや、販売パートナーを通じた代理販売も手掛ける。

6月末時点では、課金収入に占める定額制プランの売上比率が80%を超えており、2026年9月期第3四半期累計の課金収入は4億8600万円、主要な定額制プランの契約件数は1万100件となっている。通期では課金収入6億5000万円、前期比8.3%増を見込む。

もう1つが、同社の事業を特徴づける著作権等収入だ。Audiostockに登録された音源を著作権等管理事業者に管理委託し、テレビやラジオなどで利用された場合、その利用実績に応じて著作権使用料や著作隣接権使用料を受け取る。つまり、一度音源を販売して終わりではなく、その音源が別の場所で利用されることで、追加の収益機会が発生する仕組みになっている。

同社によると、著作権等収入についてはクリエイターから権利を預かり、同社が管理やプロモーションなどを行うことで収益化を図っており、クリエイターには原則として同社受領額の50%を還元する。

 

■著作権等収入が急成長、事業構造にも変化

このライツビジネスが、足元の業績を押し上げている。2026年9月期第3四半期累計の売上高は13億1061万円、営業利益は3億4412万円、経常利益は3億4640万円、最終利益は3億4475万円となった。

通期では売上高17億5300万円、営業利益4億4400万円、経常利益4億3400万円を予想しており、それぞれ前期比で16.3%増、16.6%増、15.0%増となる見通しだ。

一方、著作権等収入は第3四半期累計で8億700万円、前年同期比39.9%増。通期では10億8400万円、同22.7%増を見込んでいる。

課金収入を基盤としながら、その音源を著作権等管理事業者へ登録し、放送などでの利用による収益を積み上げていく。この構造が、同社の成長を支える形になっている。

もっとも、2025年9月期には著作隣接権収入の本格計上開始に伴い過年度の放送使用分も含まれたことで、一時的に収入が押し上げられた。この反動から、2026年9月期の著作権等収入の伸び率は第3四半期累計の39.9%増から通期の22.7%増へ低下する見込みとなっている。

 

■「音源を増やす」ことが、そのまま収益機会の拡大につながる

オーディオストックのビジネスで興味深いのは、クリエイターと音源の蓄積そのものが事業基盤になる点だ。9月末時点で登録ユーザーは20.3万人、クリエイターは4万人、BGM47万点、効果音49万点、著作権管理楽曲3.4万点となっている。定額制プランの契約件数は9700件で、エンタープライズプランの直近4四半期平均月間解約率は0.5%、スタンダードプランは2.2%だった。さらに、6月末時点ではユーザー数が22.2万人まで増加し、著作権管理楽曲も4.4万曲まで拡大している。

同社では、クリエイターから音源を集めるだけでなく、著名クリエイターの参入促進やライブラリ楽曲の買収などによってコンテンツを強化。テレビ放送などで利用されているにもかかわらず、まだ著作権等管理事業者に登録されていない楽曲を、モニタリングサービスを活用して効率的に管理委託する取り組みも進めている。同社資料では、2025年9月期には9000組を超えるクリエイターに報酬が発生しており、クリエイターへの還元総額も拡大しているとしている。

 

■次の成長領域はYouTubeなど「インタラクティブ」へ

今後の成長戦略として掲げているのが、音源1つから得られる収益をさらに重層化することだ。現在は「定額・単品販売による課金収入」が基盤。その上にテレビ・ラジオなどの著作権収入、著作隣接権収入を積み上げ、さらに今後は動画投稿・動画配信サービスなどから得られる「インタラクティブ関連収入」へと領域を広げる考えだ。

市場規模について同社は、ストックミュージック市場をグローバル2403億円、国内120億円と試算。国内音楽著作権市場は1761億円、国内+北米の放送・インタラクティブ配信領域は1263億円と見ている。

特に注目されるのがYouTubeだ。同社は今後、YouTubeなど動画投稿・動画配信サービスにおける著作権使用料の獲得モデルを構築する方針を示している。従来のテレビ・ラジオ中心の著作権収入を、インターネット動画へ広げることで、音源の利用機会そのものを増やしていく考えだ。

 

■海外では「和風・アニメ・ゲーム系」の音源を武器に

もう1つの成長領域が海外市場だ。同社は7月に英語対応のAudiostock海外版をリリース。6月時点で累計1.8万人以上のユーザーを獲得している。

今後は海外企業との連携やマーケティングを通じて販路を拡大するとともに、日本発の独自コンテンツを強みに世界市場での売上拡大を目指す。資料では、特に「和風、アニメ、ゲーム系」の音源を強みとして挙げている。

また、Adobe Expressへのアドオン提供など、Audiostockのサイトへユーザーを呼び込むだけではなく、他のアプリケーションに音源を組み込む方向での連携も進めている。

 

■「音源素材サイト」から「音源の経済圏」へ

オーディオストックは、もともと2007年に「音楽×IT」のサービス提供を目的として設立された。2013年にAudiostockを開始し、2018年から著作権等収入への取り組みを開始。2019年には定額制プランをスタートさせた。そして現在は、音源のライセンス販売だけではなく、著作権、著作隣接権、さらに今後はインターネット動画などの利用まで含めて、1つの音源から複数の収益機会を生み出すビジネスへと進化している。

同社自身も成長戦略として「課金収入を基盤として、音源のライツを活用した収益の重層化による事業の拡大」を掲げている。音楽を「作品」として販売するだけでなく、その作品が動画、ゲーム、テレビ、ラジオ、SNSなどさまざまな場所で利用されることで新たな収益を生み出す。

「音源を売る会社」から「音源の権利を活用して収益を生み出す会社」へ――。今回の上場を機に、オーディオストックがどこまで音源ビジネスの経済圏を広げられるかが注目されそうだ。

 

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株式会社オーディオストック
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会社情報

会社名
株式会社オーディオストック
設立
2007年10月
代表者
代表取締役社長 西尾 周一郎
決算期
9月
上場区分
東証グロース
証券コード
621A
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