【レポート】佐野史郎さんが語るクトゥルフ神話の魅力と体験型エンタメの可能性 リアル脱出ゲーム最新作でディズムさんと対談

山岡広樹 gamebiz編集者
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SCRAPは、クトゥルフ神話を題材にしたリアル脱出ゲームの最新作『混沌這い寄る教団からの脱出』を、東京ミステリーサーカスにて2026年10月29日より開催している。

本作は、参加者が警察の潜入捜査官となり、闇バイトの摘発を目指して潜入した現場で、怪しげなカルト教団による世界を滅ぼす邪神の召喚儀式に巻き込まれるというストーリー。参加者自身が物語の当事者となり、制限時間60分の中で邪神を退散させ、世界を救うことを目指す。

開催に先立ち、公式アンバサダーを務める俳優の佐野史郎さんへのインタビューと、佐野さん、TRPGシナリオライターのディズムさんによる特別対談が行われた。

長年クトゥルフ神話に親しんできた佐野さんは、本作への参加を通じて何を感じたのか。また、映画やドラマとは異なる体験型エンターテインメントの魅力をどのように捉えているのか。両セッションで語られた内容を紹介する。

■佐野史郎さんが語るクトゥルフ神話との出会いと魅力

本作の公式アンバサダーを務める佐野史郎さんは、以前からクトゥルフ神話に親しんできたファンの一人だ。

クトゥルフ神話との出会いについて、佐野さんは1970年代に雑誌『幻想と怪奇』でラヴクラフト作品に触れたことを挙げる。当時はまだ知る人ぞ知る存在で、古本屋を探し歩いて作品を見つけることも楽しみだったという。

その後、1980年代半ばにTRPG『クトゥルフの呼び声』と出会った。シナリオとダイスが入ったボックスセットを購入し、キャラクターシートを作るためにサイコロを振るというアナログな遊び方に面白さを感じたと振り返る。

小説や文学を通じて親しんできた世界が、ゲームをきっかけに広がっていった。90年代以降はライトノベル、漫画、アニメなどにも展開され、幅広い世代に知られるようになったと話す。


▲『混沌這い寄る教団からの脱出』の公式アンバサダーを務める佐野史郎さん。クトゥルフ神話との出会いや、本作への思いを語った。

一方で、佐野さんはクトゥルフ神話の魅力について、単なる空想の世界にとどまらない奥深さを指摘する。

「本当に遡っていくと、空想も現実も超えて、僕らの一番深いところにいるんじゃないかなと、個人的には思うんです」と話す佐野さんは、現実とは切り離されたファンタジーとして楽しめる一方で、人間の理解を超えた存在や根源的な恐怖を通じて、現実の世界を捉え直す感覚もあるという。

また、佐野さんは子どもの頃から好きだったゴジラについても、クトゥルフ神話とのつながりを感じてきたと語る。『ゴジラ FINAL WARS』に出演した際には、監督が止めるのも聞かずに「いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!」と叫んだというエピソードも披露した。

佐野さんにとって、クトゥルフ神話は長年にわたって関心を寄せてきた大切な世界だ。今回のイベントへの参加も、その魅力を改めて実感する機会になったようだ。


▲クトゥルフ神話との出会いや、長年にわたって親しんできた作品の魅力について語る佐野さん。

■祭司役の収録に「全身全霊」――大勢で同じ体験をする一体感

本作で佐野さんが演じるのは、怪しげなカルト教団の祭司。イベント内で流れるボイスの収録では、近年の仕事の中でも特に気合いが入ったという。

「正直、今回の仕事はもう下手なことはできない。ブースの中で全身全霊、気合いが入りましたね」と語る佐野さんは、収録時から参加者たちが声をそろえて「いあ! いあ!」と唱える場面を想像していたという。実際に会場で参加者たちが声を合わせる様子を目にした際には、「感無量。本当に俳優を続けてきてよかったね」と感慨を述べた。


▲カルト教団の祭司役を演じた佐野史郎さん。衣装や演技を通じて、クトゥルフ神話の不穏な世界観を表現する。

前作『狂気の山脈からの脱出』では、4人ずつテントに入り、各グループが物語を進めていく形式だった。それに対して本作では、大勢の参加者が同じ空間で謎を解き、邪神の退散を目指す。

佐野さんは、前作とは異なる体験として「大勢の人と一緒に謎を解いていく、邪神を退散させていくという一体感がありましたね」と振り返る。


▲多くの参加者が一つの空間に集まり、同じ物語を体験する『混沌這い寄る教団からの脱出』。佐野さんは、大勢で謎解きに挑む一体感を本作の魅力として挙げた。

また、参加者自身が主人公となる体験型エンターテインメントについて、佐野さんは初心者にとってはハードルが高い面もあるとしつつ、複数人で知恵を出し合うことの心強さにも言及。一人で行き詰まるよりも、仲間と協力して考えることで楽しみが広がると話した。

今回のように100人単位の参加者が同じ空間に集まり、共通の物語を体験することは、ほかでは味わいにくい感覚だという。


▲物語の中で重要な役割を担う儀式のシーン。参加者が同じ空間で物語に向き合うことで、会場全体に一体感が生まれる。

■ゲームが生み出す臨場感――クトゥルフ神話を次の世代へ

クトゥルフ神話がTRPGやさまざまなゲームを通じて広がってきたことについて、佐野さんは「ゲームの力というのは改めて大きかったんだなと思います」と語る。

一方で、作品が多様なメディアへと広がることを歓迎しながらも、原典の魅力にも触れてほしいという思いがあるという。クトゥルフ神話を題材にした作品を楽しむ中で、その背景にある世界観や考え方を知ることも大切にしてほしいと話した。

特に体験型ゲームについては、参加者自身が身体を使い、周囲の人々と同じ空間にいることが大きな特徴だと捉えている。

これについて佐野さんは「実際に動いて、みんなと一緒の空間にいるというところが、臨場感が一つ上というかな」とコメント。


▲参加者同士で協力しながら謎解きに挑む。実際に身体を動かし、同じ空間で物語を体験することがリアル脱出ゲームの醍醐味だ。

物語を読む、映像を観るといった楽しみ方とは異なり、現実の空間で自分自身が物語に関わることで、空想の世界をより身近に感じられる。佐野さんは、そうした体験型エンターテインメントがクトゥルフ神話の世界を広げていくことに喜びを感じているという。

また、これからクトゥルフ神話に触れる人に向けては、ラヴクラフトの『クトゥルフの呼び声』『ダンウィッチの怪』『インスマスを覆う影』などを推薦。邪神そのものだけでなく、「いつでもない、いつか。どこでもない、どこか」という、時代や場所を特定しきれない独特の感覚も、クトゥルフ神話の魅力だと語った。

最後に、佐野さんはリアル脱出ゲームのファンにも、クトゥルフ神話を通じて新たな世界を知ってほしいと呼びかける。逆に、これまで脱出ゲームを体験したことがない人にも、作品を通じて邪神たちの世界を体感する喜びや恐怖を味わってほしいと話した。


▲日常の延長にある空間が、物語の進行とともに非日常へと変わっていく。現実と空想の境界を揺さぶる演出も、本作の世界観を形作る要素の一つだ。

■佐野史郎さん×ディズムさんが語る「本物」としての物語体験

続いて行われた特別対談には、佐野さんと、TRPGシナリオライターとして活動するディズムさんが登壇。公式アンバサダーを務める二人が、本作の印象や創作への思い、クトゥルフ神話を体験型コンテンツに落とし込む面白さについて語り合った。


▲佐野史郎さん(写真右)とディズムさん(写真左)が、クトゥルフ神話の魅力や体験型エンターテインメントの可能性について語り合った。

ディズムさんは、クトゥルフ神話を題材としたシナリオを手掛けてきた一方で、脱出ゲームや謎解きは苦手だという。アンバサダーのオファーを受けた際にも、自分で大丈夫なのかという思いがあったと振り返る。

それでも、クトゥルフ神話に関わる創作を続けてきた先に今回の機会があったことについて、「続けてきてよかったなという感じでございます」と話した。

佐野さんも、前作『狂気の山脈からの脱出』を体験したことをきっかけに、リアル脱出ゲームの世界に触れるようになったという。映画やドラマとは異なるメディアでありながら、ゲームの世界もまた、物語に没入できる「もう一つの現実」だと捉えている。

対談では、本作の設定についても話題に上った。高収入アルバイトをうたう闇バイトの現場に潜入したところ、カルト教団による邪神召喚の儀式に巻き込まれるという導入は、現代の社会を舞台にしているからこそのリアリティがあるという。


▲闇バイトをきっかけにカルト教団の儀式へと巻き込まれる、本作の設定についても話題に上った。

ディズムさんは、クトゥルフ神話における「名状しがたい」得体の知れない不気味さが、現代的な闇バイトという設定と結び付いている点を評価。佐野さんも、新宿・歌舞伎町の雰囲気を思わせる現実感や、参加者が同じ場所に集まって物語を体験する臨場感に触れた。


▲会場限定のオリジナルメニューで、邪神ニャルラトホテプをイメージした「這い寄る混沌【闇(ブラック)】レモネード」を試飲する佐野史郎さんとディズムさん。二人とも「おいしい」と太鼓判を押した。

■ジャンルを超えて広がる表現の可能性

対談では、ゲーム、映画、ドラマなど、異なるメディアを横断する表現の可能性についても話が広がった。

佐野さんは、本作について「しっかりしたシナリオがあるという強さを、改めてゲームの世界で感じた」と語り、個人的には映像化しても面白いのではないかという考えを示した。

これに対しディズムさんは、ゲームはシナリオが用意されているだけでなく、参加者が加わることで初めて双方向の体験が成立すると説明。物語を受け取るだけではなく、参加者自身が関わることで、それぞれの体験が生まれる点に特徴があるとした。

創作において嬉しい瞬間について尋ねられると、ディズムさんは、参加者が作品を体験し、「自分はこうだった」とそれぞれの思い出として持ち帰ってくれることを挙げた。


▲「その人のものになった瞬間が訪れるというのが、一番創作のところでうれしいことですね」と話すディズムさん。

佐野さんも、俳優、音楽、写真、執筆など、表現するジャンルが異なっても、使う身体は同じだと語る。異なるメディアであっても、それぞれの特性を生かしながら表現を組み合わせることで、新たな面白さが生まれる可能性がある。

さらに、二人は本作の演出やキャストの演技についても言及。佐野さんは、広い空間と大勢の参加者がいる中で物語を成立させるには、演じる側が本気で取り組むことが重要だと話した。


▲演じる側の真剣さが、物語のリアリティを生むと語る佐野さん。「この空間は、本当じゃないと引いちゃうじゃないですか」とコメント。

ディズムさんも、佐野さんによる祭司の声の表現について、自分では同じように発音できなかったと振り返る。佐野さんは、呪文を唱える際に大切なのは「信じているかどうか」だと話し、虚構の世界を本当のこととして捉える姿勢が、表現に影響すると説明した。

現実には存在しない神話や儀式を、参加者がその場で体験する物語として成立させる。そのためには、シナリオだけでなく、演じる側の表現や空間演出、参加者自身の関わりも欠かせない。二人の対談からは、体験型エンターテインメントが持つ表現の可能性がうかがえた。


▲メインフロアの祭壇など、クトゥルフ神話ならではの不気味さを感じさせる空間も登場する。佐野さんとディズムさんは、こうした演出やキャストの表現が物語のリアリティを支えていると語った。

■会場限定ドリンクでクトゥルフ神話の世界を味わう

東京ミステリーサーカスでは、本作の開催に合わせて会場限定のコラボドリンクも販売している。

ラインナップは、邪神ニャルラトホテプをイメージした「這い寄る混沌【闇(ブラック)】レモネード」と、9種類のデザインから選ばれる「神話生物ラテアート」、イベント参加者しか注文できない特別な「裏メニュー」の3種類。

「這い寄る混沌【闇(ブラック)】レモネード」は800円[税込]で、炭酸あり・なしを選択できる。ドリンクを注文すると、全9種類のコースターからランダムで1枚が付属する。


▲邪神ニャルラトホテプをイメージした「這い寄る混沌【闇(ブラック)】レモネード」(800円[税込])。炭酸あり・なしを選べる。

「神話生物ラテアート」は800円[税込]で、クトゥルフ神話に登場する神話生物をモチーフにした9種類のデザインを用意。どのデザインに出会えるかも楽しみの一つだ。


▲全9種類のデザインを展開する「神話生物ラテアート」(800円[税込])。クトゥルフ神話の世界観をドリンクでも楽しめる。

さらに、イベント参加者限定 裏メニューも900円[税込]で販売する。こちらも注文特典としてコースターが付属する。

イベント体験の前後に、作品の世界観をドリンクでも味わってみてはいかがだろうか。


▲ドリンクの注文特典として付属するコースターは全9種類。クトゥルフ神話の神話生物をデフォルメした、かわいらしいデザインが特徴だ。

■生還祈願のお守りから謎付きグッズまで、オリジナル商品も展開

会場では、本作のオリジナルグッズも販売している。ラインアップには、イベントの世界観を取り入れたアイテムや、謎解きを楽しめる商品などが揃う。



主な商品は以下の通り。

・生還祈願お守り:900円[税込]
・アクリルキーホルダー(全9種・ランダム):800円[税込]

▲「生還祈願お守り」は、邪神や教団が登場する本作ならではのユニークなアイテム。イベントの思い出として持ち帰るのにも適している。

・神話生物ポストカードセット:1,200円[税込]


・「混沌這い寄る 教団セット」:2,500円[税込]
・謎付きクリアファイル:1,200円[税込]
・パンフレット:1,300円[税込]

▲「イベントパンフレット」と「謎付きクリアファイル」をまとめた「混沌這い寄る 教団セット」も販売する。「謎付きクリアファイル」には本イベントの後日談が、「混沌這い寄る 教団セット」にはイベントの前日譚が付いてくる。

・脱出成功・失敗ステッカーセット:各500円[税込]


また、イベント会場では、『混沌這い寄る教団からの脱出』オリジナルグッズおよび、書籍『5分間リアル脱出ゲーム クトゥルフ神話 名状し難い書店“ないあ堂” からの脱出』の購入額2,000円ごとに、全9種類のトレーディングカードからランダムで1枚がもらえるキャンペーンも実施している。

イベント参加の記念に、グッズや書籍もチェックしてみてほしい。



■まとめ――日常に潜む狂気を、参加者自身の体験として描く

『混沌這い寄る教団からの脱出』は、クトゥルフ神話の世界観とリアル脱出ゲームを組み合わせ、参加者自身が物語の当事者となる体験型エンターテインメントだ。

佐野史郎さんは、長年親しんできたクトゥルフ神話の魅力を語るとともに、大勢の参加者が同じ空間で謎解きに挑み、物語を体験することの一体感や臨場感に言及した。特別対談では、ディズムさんとともに、シナリオ、演技、空間演出、参加者の関わりが一つになることで生まれる体験の可能性について語っている。


▲体験を終え、記念撮影に応じる参加者たち。会場には、本イベントに関する専用パネルも用意されている。

現代の闇バイトをきっかけに、日常が非日常の狂気へと変わっていく本作。東京ミステリーサーカスでの開催は2027年1月24日までを予定しており、全国各地での開催も順次予定されている。

クトゥルフ神話のファンはもちろん、リアル脱出ゲームを通じて初めてその世界に触れる人にとっても、物語の中に身を置く体験を楽しむ機会となりそうだ。



(取材・文 編集部:山岡広樹)


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