全世界トップ5を目指す! エイリム高橋氏とgumi國光氏が語る『ブレイブ フロンティア』のグローバル展開

エイリムの『ブレイブ フロンティア』は、7月のリリース以来、App Storeの売上ランキングでも上位に入り、9月にリリースしたAndroid版も売上ランキングでトップ20に入るなど、破竹の勢いで伸びている。これからさらに伸びが期待されているが、gumiグループと組んで早くも海外展開を行うことが発表された。リリースからわずか3ヶ月程度であることや、エイリムの規模を考えると、恐ろしいスピードといえよう。今回、エイリムの高橋英士プロデューサーと、gumiの國光宏尚社長に『ブレイブ フロンティア』の海外展開についてインタビューを行った。

国内で開発されたアプリの海外展開に関しては、これまではゲームアプリを現地の言葉に翻訳してリリースするか、現地のパブリッシャーにライセンス提供してリリースするというパターンが多かった。今回、『ブレイブ フロンティア』は、世界中に展開されたgumiグループの拠点を通じて提供される。そのアプローチ方法は、これから海外展開を目指す会社にとっても参考になるのではないかと思う。そして、今回のインタビューを通じて、gumiが海外展開に膨大なコストを費やした理由も見えてくるだろうと思う。(取材日:10月15日)

 


■海外展開はgumiの各拠点から配信 10言語に対応

  ―――: さて、『ブレイブ フロンティア』は、Android版も好調な出足ですね。

高橋氏: Android4.0系で動作確認のとれた端末から配信をスタートしました。事前登録を行った程度でしたが、iOS版で一定の認知度ができていましたので、初週から数万人にお楽しみ頂くことができました。現在は、対応端末を増やしつつ、アドネットワークやリワード広告も実施しているため、さらに規模は拡大し続けています。いま本当に上り調子ですね(注: Google PlayとAppStoreの売上ランキングで同時にトップ10に入った。関連記事)。

國光氏: いやぁ、本当にそうですね。(非常に面白い話なのだが、とても記事にできない内容のため割愛)

―――: すごく面白いお話なんですが、残念ながら記事には…本題に入ります。『ブレイブ フロンティア』を海外で展開されるということなのですが、本当に驚くような速さですね。「まさか」と思いました。

高橋氏: そうですね。7月3日に日本語版のiOS版が出て、9月にAndroid版、そしてさらに1ヶ月ほどで海外ですから。エイリムという会社の規模を考えると、前例のない速さといえるかもしれませんね。海外展開のやり方は、パートナーシップを組んでいるgumiさんの各拠点を通じて、各国でリリースしていきます。役割分担になりますが、エイリムサイドでは、オリジナル『ブレイブ フロンティア』の機能強化と追加を行い、これをgumiさんの各拠点をリアルタイムで共有し、海外版も配信・運営していきます。そのための体制ができあがっていて、準備を進めているところです。まもなく出せます。

國光氏: 言語でも韓国語、中国語2つ、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、そして日本語と合わせて10言語に対応します。全部行きます!

―――: 一気に対応するのですか。

高橋氏: さすがに全言語に一気に対応するのは無理ですが、当面、その半分くらいは2ヶ月ぐらいのレンジの中で順次対応していくことになると思います。

國光氏: われわれは世界を大きく「日本」、「韓国」、「台湾・中国」、「欧米」に分けてアプローチしています。この4エリアは、サーバーも運用も別です。その理由ですが、いずれも競争が激しく、言語だけを変えただけでは勝負にならないと考えたためです。現地でヒットするタイトルは、現地の人が最も知っています。したがって、現地のスタッフがきちんとローカライズ・カルチャライズして出すことが望ましいと考えました。特に『ブレイブ フロンティア』は、RPG特有の世界観を持ったキャラ名や武器名が多いですから、その内容を咀嚼(そしゃく)せずにそのまま翻訳すると、訳のわからないことになります。ゲームのベースとなる部分はそのまま活かして、それ以外は現地に合わせて変更してね、ということです。運用を分ける理由は、海外の事例を見ていくと、その国ごとに分けてイベントを運営すると成果が上がるからです。休みの意味やイベントが異なりますので、その国にあった運用は絶対に必要です。


 

■配信は韓国からスタート予定

  ―――: どこからスタートするかとなると、やはり韓国でしょうか。

國光氏: 現地スタッフの準備が整ったところから、ということになりますが、やはり現実的には韓国からでしょう。欧米系のみが少し時間がかかるかもしれません。欧米系のマーケティングでは、アプリストアにフィーチャーされることが最重要です。フィーチャーされるにはリリースして祈っているだけではダメで、AppleやGoogleなどとの交渉はもちろん、HD対応、言語対応、ゲームセンターへの対応、iOS7への完全対応などやるべきことが非常に多いのです。欧米でSuperCellやKingと勝負するには彼らと同じ水準のものに仕上げる必要があります。

高橋氏: こういう話は「欧米で展開するには必要なことでしょう」と多くの人は思うのですが、まさに「言うは易く行うは難し」です。今回、パートナーを組むgumiさんの海外展開が本当にすごいのは、いま話した内容を実際に実行できる体制、実行部隊ができあがっていることです。先日、gumi Koreaに訪問したのですが、開発、パブリッシング、プロモーション、ビジネスそれぞれを担当するスタッフがチームを組んでいて、しかもいずれも現地のゲーム業界で活躍してきたプロばかりです。あれだけのチームを短期間で構築して、地に足の着いた形で動いています。韓国だけでなく、台湾やシンガポール、中国、そしてヨーロッパでもあり、世界を狙うための理想的な体制ができています。これをわずか2年でやってしまったのは本当にすごいことです。

―――: 海外展開の話はいつ頃から始めたのですか?

高橋氏: 『ブレイブ フロンティア』がリリースされて、すぐです。移植になるので現地の開発スタッフから嫌がられるのではないかと心配したのですが、ゲームをすでに遊んでくれてファンになってくれていました。そして「良かったら、各拠点ごとにオリジナルの『ブレイブ フロンティア』をつくってユーザーに届けてください」とお話したら、乗ってきてくれて一気に移植が進んだわけです。Android対応と同じくらいのスピードで進み、「これ、ヘタしたら日本のAndroid版よりも早く出されるかもしれないぞ」(笑)と話していたくらいです。7月3日に日本語版のiOS版が出て、9月にはAndroid版、さらに1カ月ほどで韓国語版、さらに中国語版、そして英語版と進んでいます。

―――: グラフィックなどは変えたりするのですか?

高橋氏: まずは言語からですね。その先の発展形としては、各国のユーザーの好みに応じて変えていくことになるかもしれません。日本のオリジナルを絶対視するつもりはないですし、例えば韓国でオリジナルのユニット (キャラクター)が誕生してもいいです。それが日本に逆輸入されるということもあっていいですよね。派生系についてはどんなものが出てくるのか、本当に楽しみです。

―――: なるほど。理想的な海外展開が行えるようになっているわけですね。あと、欧米に関しては、どういった形でされるのですか。

國光氏: まず、当社の海外拠点を説明しておくと、ざっくりとですが、韓国が60名、シンガポールが70名、中国上海が30名、台湾が30名、インドネシア、フィリピン、パリがそれぞれ10名となっています。韓国拠点は韓国市場を担当し、中国市場は上海と台湾が現地の会社と連携して担当します。欧米はシンガポールが中心となってパリと連携しながら進めるイメージです。日本と韓国は破壊的なくらい競争が激しく、中国は激しくなりはじめました。それに対して、欧米は比較的競争が緩めですが、今後、日本や韓国と同じくらい競争が激しくなることは容易に予想できますので、中途半端に翻訳したコンテンツでは勝負にならないでしょう。きちんとローカライズ・カルチャライズするだけでなく、将来的には、さきほど高橋さんが話したように現地独自のコンテンツに発展させたいですね。そして、プロモーションも韓国なら韓国の、中国なら中国のやり方があります。したがって強いマーケティングチームが不可欠で、自社で不足しているならば現地の優れた会社と組みます。これ以外にも、AppleやGoogle、その他ローカルの強い会社と交渉できるビズデブ(ビジネスディベロップメント)チームや、海外でビジネス展開しようとすると、契約書が必要になりますのでそこを担当できるマルチリンガルの法務も必要になります。さらに海外の言語に対応したサポートチーム、24時間・365日のサーバー監視体制も必要ですね。この体制を作るために、赤字を垂れ流して作り上げました(笑)。他の会社に比べて海外展開はかなり徹底したやり方ができます。これにコンテンツが揃えば、鬼に金棒ですね。

―――: 以前から世界を獲るとおっしゃっていましたからね。目先の利益だけ見ていたら、世界市場は狙えないと。

國光氏: 実際、海外に拠点をつくってみて思ったのは、海外で会社を作るのは、地道な仕事が多くて本当に大変で、新しいコンテンツが1年ほどは出せませんでした。国内拠点の福岡であっても、最初のコンテンツを出すまでに8カ月はかかりました。そうしたなか、韓国チームがリリースしたシューティングゲームがすぐに200万ダウンロードを突破して、現地のアプリストアの売上ランキングでも9位に入りました。シューティングゲームでこれですから、『ブレイブ フロンティア』を出したら、もう1位を取るしかないですよね(笑)。これから海外に出るために拠点を作るという会社は、gumiと同じことをやろうとするとかなり大変ですよ。海外で配信する場合、ご協力しますのでぜひお声がけいただきたいですね。(笑)

高橋氏: われわれからすると短期間で体制を整えて、1年で新作がリリースできるのはすごいことです。これまでの日本企業の海外展開を見ていても、3年経過しても成果を出せずに撤退という話は珍しくはないですから。『ブレイブ フロンティア』は現地の開発者からもヒットするだろうという評価を得ていますので、ぜひ成功を勝ち取りたいです。

―――: 中国に関しては独自にされるのですか?

國光氏: 中国での配信に関して、配信チャネルの多さや規制などの関係で特徴的なため、独自で行うのは難しく、現地Chukong Technologiesと組むことにしました。今日(取材日:10/15)発表します。「PunchBox」というブランドでモバイルゲームを展開していて、カジュアルゲーム「Fishing Joy」と、ミッドコアゲーム「我叫MT(原題)」がそれぞれ現地でトップタイトルです。『ブレイブ フロンティア』と同じく「Cocos2d-x」を使って開発をしていたり、サポートチームも強力であったり、現地で展開することになりました。そのための記者発表会をやったのですが、20社ほどのメディアが集まってかなり取材を受けました。当社独自で発表会をやってもこれほど集まらなかったでしょう。記者さんには試遊もしてもらいましたが、3人はすでに遊んでいました。韓国では独自でやりますが、今後、中国などのように現地の会社と組むか、独自でやるかの判断も海外展開では重要になるでしょうね。

―――: 発表会でこれだけのメディアが集まることは珍しいですよね。Chukongも『ブレイブ フロンティア』には相当期待しているのですね。

國光氏: ええ。Chukong側も『ブレイブ フロンティア』については「普通に1位が取れるのではないか」などと話していましたね。


 

■海外での反応も良好


―――: すでに海外の方々にも遊んでもらっているかと思うんですが、反応はいかがですか?

高橋氏: すごいですね。『ブレイブ フロンティア』は、日本だけでしか出してないのですが、中国や韓国の方がわざわざ日本のアカウントを取得して遊んでいるのです。売上も全体の数%に達するほどです。これには驚きました。また当社はFacebookページで情報を発信しているのですが、繁体字やハングルでのコメントはもちろん、アラビア語のような文字で論争が始まったりして。日本でのみの展開ですが、海外からも注目されていると感じます。中国と韓国、台湾の会社からもアプローチが数えきれないほどありますね。アジア圏からの熱い視線を感じていて、アジア圏ではかなり期待できます。欧米圏は相当な準備が必要なのでまだまだわからないですが。

―――: そういえば、日本の海外でヒットしている、ある人気ゲームアプリも海外で出す以前には、わざわざ日本のアカウントを取得して遊んで課金までしている方がかなりいたと聞きました。そのタイトルは、かなり経過してから海外で出したのですが、それでもヒットしています。海外ですでに遊んでもらっているという話はかなり心強いことですね。

國光氏: 韓国のスタッフは、本当にゲーム好きなユーザーに近い層ばかりで、彼らは「これはまちがいなく流行る」と断言しています。パリのスタッフも同じ傾向があるのですが、同じような感想です。

高橋氏: では来月、パリに行きましょうよ(笑)。韓国に関してはメールやスカイプなどでやりとりしていて熱量を感じていましたが、韓国に行った時に肌で感じました。現地では熱烈歓迎を受けて、私たちの説明に対しても活発な質問がでて2時間ほどになりました。配信チームもかなり強い手応えを感じています。


 


■全世界トップ5を目指す!


―――: ネイティブアプリにせよ、ブラウザゲームにせよ、日本だけでコツコツ利益を出していくという判断もありえたかと思うのですが、なぜ世界展開を目指すのでしょうか。またここまでやる必要もあるのかと感じたのですが。

國光氏: スマートフォンが世界的に普及して、App StoreとGoogle Playで自分たちの開発したアプリをグローバルで展開できるようになったわけですから、日本国内だけでやっていてももったいないですよね。日本の市場が大きいといっても、世界市場の10分の1以下にすぎません。世界で大きな成功を収めているSuperCellやKingをみると、アメリカ国内での売上は全体の30%程度です。残りはそれ以外の国で、数%の国が多く積み重なっているわけです。少なすぎて表示できない国も10%ほどを占めています。つまり世界市場を狙う場合、そういう収益構造に対応できる体制を予め作っておく必要があるのです。

―――: 日本ももちろんですが、スマートフォンアプリの市場は海外市場ではこれから伸びるわけですからね。

國光氏: そうです。日本のスマートフォンの普及率ですら40%程度です。今後の伸びを考えると、国内のスマートフォンのゲーム市場は倍になってもおかしくありません。ブラウザゲームがこれからどうなるかはともかく、ブラウザゲームからネイティブに一定数以上のユーザーが流れてくるでしょう。今後、家庭用ゲームで遊んでいた人も少なからず流れてくると思います。国内では遅れていたタブレット端末も伸びてきましたし。海外市場については伸びる余地しかないですよね!

高橋氏: AppAnnieさんがセミナーでおっしゃっていましたが、海外ではタブレットファーストです。海外ではタブレットとスマートフォンが同じか、タブレットのほうが大きい国もあります。日本ではタブレット端末への抵抗感がまだありますが、数年以内にもっと普及するのはまちがいないでしょう。Appleが世界でまともにインターネットに接続できるデバイスとしてiPhoneを出して数年になりますが、各国のディベロッパーが世界で勝負できる状態になりつつあるのだと感じますね。iOSとAndroidの勢いが続く限り、今後も端末で遊べるアプリの可能性はさらに広がるでしょうね。それは凄まじい規模でしょう。

國光氏: 日本のスマートフォンアプリ市場の拡大は異様なほどでしたし、まだまだ広がる。そして、韓国市場も1年前までは本当に立ち上がるかと思っていたら、いきなりKakaoなどが出て、Google Playの売上は日本に匹敵する規模です。中国市場も同様で、月商億を超えるタイトルはたくさんあります。韓国でのシューティングゲームも日によっては『ブレイブ フロンティア』を上回っている時さえありますから。中国のスマホゲーム市場は1000億円といわれていますが、来年は4000億円、それでも中国でのスマホ普及率が数%程度であることを考えると、どこまで伸びるのでしょうか。欧米ではアメリカとイギリスが伸びていますが、欧州もいずれ急激に立ち上がっていくでしょう。ロシアもその兆しが出ています。ある調査では 、今年のゲーム市場は全世界1兆円弱ですが、2016年には5兆円に拡大するとの予測があるように、いまスマートフォンアプリ市場が全世界で同時多発的に立ち上がっているのです。ただ、どのタイミングで立ち上がるのか、誰もわからない。

―――: 徹底した海外展開のやり方もこういう市場認識が根底にあったのですね。

高橋氏: そう考えると、スマートフォンやタブレット端末は、やはり革命的なハードですよね。インタラクティブで、パーソナルな端末として、世界標準と言っていい規模感となったのは、大袈裟ではなく地球初なんじゃないかと思います。全世界に向けてコンテンツを発信できるビジネスとしてかつてないほどのチャンスです。日本でゲームを出してみたら、他の国でも遊んでもらえて、Facebookに各国の言語でコメントが入るなどということは、これまでありえなかったことです。中国でのスマートフォンは、所得の問題などで伸びないと見られていましたが、そうした予想はことごとく裏切られてきました。なぜかというとハードの魅力ですよね。触ってみて使い始めたら離れられなくなります。これがいいとなると、それに多額のお金をつぎ込む人が出てくる。予想を超えてエマージング諸国で爆発的に伸びていくのは、そういうことでしょう。スマートフォンやタブレット端末はそれくらい破壊力のある端末であると認識して取り組まないと、競争に取り残されると心して取り組んでいます。

―――: 時間も迫ってまいりましたので、最後に『ブレイブ フロンティア』の海外展開ですが、当面、どういった目標を立てていますか?

國光氏: 全世界トップ5に入ることです! そうなったら、これまでのコストなどは安いものですよね。『ブレイブ フロンティア』は、それだけの魅力のあるタイトルです。本当に期待しています。

高橋氏: 業界では、エイリムという小さい会社が7月にリリースしたものが国内でヒットし始めてきて、ヒイヒイいいながら作っているのだろうと思われているわけです。実際、ヒイヒイいっているのですが(笑)。そういう会社がgumiさんと組んで、こんなに短期間で海外に出せるというスピードに驚いて欲しいですね。


―――:ありがとうございました。
株式会社gumi
http://gu3.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社gumi
設立
2007年6月
代表者
川本 寛之
決算期
4月
直近業績
売上高120億6600万、営業損益50億4000万円の赤字、経常損益45億1400万円の赤字、最終損益59億3400万円の赤字(2024年4月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3903
企業データを見る
株式会社エイリム
http://www.a-lim.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社エイリム
設立
2013年3月
代表者
代表取締役社長 髙橋 英士
決算期
4月
企業データを見る