【インタビュー】配信開始から1ヵ月…ガンホー最新作『サモンズボード』のプロデューサーに現状と開発舞台裏、今後の展望を直撃【独占情報あり】
『パズル&ドラゴンズ』を筆頭に『ケリ姫スイーツ』や『ディバインゲート』など、数々のスマートフォンアプリでヒットを飛ばすガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>の最新作は、新世代ボードゲームと銘打った『サモンズボード』。
本作は2014年2月10日(月)よりAndroid版、 そして2月17日(月)にiOS版がサービス開始され、各マーケットのユーザーレビューで高評価を獲得しているほか、いまでは売上ランキングでも着々と順位を伸ばしてきている。
そこで本稿では、ガンホーから『サモンズボード』のプロデューサー・荻原智氏に、開発の経緯や“こだわり”、現状の盛り上がりと今後の展望など、様々な視点からインタビューを行ってきた。また、「Social Game Info」独占の最新情報も公開!
■そもそも『サモンズボード』とは
本作は、4×4マスのボード上でモンスターを縦横無尽に動かしダンジョンを攻略する、完全オリジナルのスマートフォン向けボードゲーム。
プレイヤーはモンスターを使い、一度に複数の攻撃を仕掛ける「コンボ」を駆使し、時には「スキル」を発動させながらダンジョンの最奥をめざし、各フロアを攻略していく。スマートフォンならではの直感的でシンプルな操作性でありながら、奥深い戦略性が魅力である。
また、他プレイヤーのモンスター編成と対戦できる「ランキングバトル」、通称「ランバト」では、他のプレイヤーに戦いを挑める。相手はAIによる自動行動のためオンライン対戦に慣れていない方でも、気軽に挑戦可能だ。「ランバト」に勝利して得られる「BP(バトルポイント)」を集めることで、ゲーム内で使用できる様々なアイテムを入手できる。
さらに「ギルド」と呼ばれるグループに加入し「ギルド育成」をすることで、同一「ギルド」のメンバー全員のモンスターがパワーアップ。「ギルド」に加入し、他のプレイヤーと助け合うことがダンジョン攻略の近道となる。ちなみに本作のサウンドには、数々の有名ゲームタイトルに楽曲を提供している「下村陽子」氏を起用。ファンタジー感あふれるサウンドが、本作の世界を盛り上げる。
■新しいボードゲームを生み出すということは…
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
『サモンズボード』プロデューサー
荻原智氏
――:よろしくお願いします。込み入った話で恐縮ですが、まず経歴について教えていただけますか。
もともと私は、PC『ラグナロクオンライン』のゲーム内イベントのプランニングを担当していました。その後は、縁あって立ち上がったばかりのモバイル部署に配属となり、フィーチャーフォン版などのモバイルコンテンツを手掛けていました。そして2013年の2月頃から本作の企画が動き出しました。
――:なるほど。では、『サモンズボード』の開発経緯やコンセプトについてはいかがでしょう。
本作は「コンシューマで体験できた面白さを、スマートフォンでも表現したい」という想いのもと企画を立ち上げました。というのも、いまはスマートフォンアプリでも格闘ゲームやシミュレーションゲームなど、様々なゲームジャンルが遊べるため、スマートフォンでしか遊ばないユーザーさんも増えてきています。そういう人たちに新しいゲーム体験を打ち出していくため、“パズル”(『パズル&ドラゴンズ』)や“パネル”(『ディバインゲート』)などの刹那的な判断ではない「じっくり考えて一手一手進めていくボードゲームのようなタイトルもあるんだよ」ということを伝えたくて、今回の『サモンズボード』を手掛けました。
――:開発視点から見た本作のこだわったポイントとは。
やはりボードゲームの核となる“ルール”を決めるところですね。当初は6×6や5×5など、広いフィールドを用意していましたが、もっとシンプルにしなければユーザーさんは面倒に思うのではないか、ルールが伝わらないのではないかという葛藤がありました。
また、カジュアルゲームを好むライトユーザーでも遊んで理解できるように、マス目を減らしてもユニットの移動が将棋風になるように調整していきました。
さらに本来の将棋は一手しか攻撃できませんが、本作では矢印の方向が敵と接していれば、ほかのユニットも同時に攻撃できるといった、盤面の展開や演出をダイナミックに施しました。戦略性を備えつつも、ゲーム画面をシンプルにすっきり見せることも意識しました。
――:とはいえ、ボードゲームのルールを新たに作るというのは、ゲームバランスを調整することを考慮すると、とてつもない苦労があったかと思います。そのへんはいかがでしたか。
もう半泣きでしたね(苦笑)。ただ、こればかりはトライ&エラーを繰り返すことしかありません。たとえば、バランスやレベルデザインを決める段階では、1ターンの間ですべてのユニットを動かしたほうがいいのか、将棋風ではなくてシミュレーションRPGのような行動範囲制を採用したほうがいいのか、ユニットは5体居たほうがいいのではないのかなど、様々な試行錯誤をしました。
――:そういえばバトルの初期配置は逆L字型ですよね。こちらも試行錯誤の末に行き着いた形なのでしょうか。
▲『サモンズボード』のバトルの初期位置は、逆L字型。
はい。一直線に並んでしまうと、敵と味方が1歩ずつ移動するだけで、すぐにお見合い状態になってしまうため、敵を呼び込むような思考性に欠けることを心配しました。ユーザーさんからは、様々な意見も寄せられますが、何度も触って動かして試行錯誤を繰り返した結果、この4×4の盤面がスマートフォンで表現できる絶妙なバランスと面白さを備えているという結論になりました。これらのルール決めについては、数ヶ月を費やしましたね。
――:ちなみに、荻原さんも普段ボードゲームで遊ばれたりするのでしょうか。
ゲームにも表れているのですが、将棋が好きです。……下手ですけど(笑)。なかでも「どうぶつしょうぎ」が革新的に面白いですね。これは3×4の盤面のなかで駒の動きを簡略化した子供向けの将棋なのですが、ゲーム性が意外と深いんですね。
駒を一歩前に出しただけで、二手目、三手目を自然と考えてしまうゲーム性になっていて「少ない盤面でも何かできることがあるんじゃないか」と、インスピレーションのきっかけになったかと思います。
――:気になったのですが、『サモンズボード』には世界観や物語などはあるのですか。
物語の多くは語らず……です(苦笑)。とはいえ、基本的には世界の危機を救うのが題材となっています。ゲーム中では、世界地図に似たマップを進めていくのですが、その終着点にある門から悪いモンスターたちが出てくるのを、敵を倒しながら門を封印していくという目的はあります。あくまでもゲーム自体を楽しんでほしいため、物語は簡略化しています。
――:そして、ゲーム中を盛り上げてくれる下村陽子さんの楽曲も心に響きます。下村さんを起用した理由を教えてください。
これは私がファンだからです(笑)。……というのと、やはり企画・開発を進めているときに、『サモンズボード』に適した音楽を考えた際、これまで下村さんが手掛けてきた楽曲に自然と結びついていくのを感じました。そして、開発中に巡りあわせで下村さんとお会いする機会があり、そこで楽曲の依頼をさせていただきました。幸いにも快く引き受けていただき、そこからはトントン拍子で話が進んで行きましたね。実際に本作を下村さんにも遊んでいただきながら、作曲していただきました。
■目に見えない“こだわり”を感じ取れる
――:ゲームを遊ばせていただいているのですが、初見、斬新なマイページのUI(ユーザーインターフェイス)に驚かされました。ゲーム開始の際に、スマートフォンを持つ利き手について聞かれたときは「なんのために…」と思いましたが、なるほど、理解しました。
▲『サモンズボード』のマイページ。ボタンが縦に並んでいるのが特徴。
オプションで、ボタンの位置を左右どちらかに変えることが可能。
オプションで、ボタンの位置を左右どちらかに変えることが可能。
じつはマイページでは、スマートフォンが“手帖”に見えるようなUIデザインを意識しました。ただ、その場合はどうしても横にタブを並べてしまうと、右持ちと左持ちで操作性も大きく変わってしまう恐れがありました。それであれば、どちらも対応できるようにしようと、あのゲーム冒頭の案内が入ったのです。とはいえ、ユーザーさんによっては左持ち設定で、右持ちにしたほうが触りやすい方もいると思いますので、実際に触っていただいて操作しやすいほうを各々が調整できる形にはなっています。そのほか、ストレスにならないようにボタンのデザインから配置、当たり判定など細かいところにもこだわっていきました。
――:登場キャラクターも多彩ですが、『サモンズボード』では1枚絵のメインイラストと、バトル中に登場するユニット(アニメーション付き)の2種類のデザインをおこす必要がありますよね。メインイラストのデザインをユニットに落とし込むご苦労もあるかと思いますが。
基本的には、デフォルメにすることを意識しています。また、もちろんユニットにするときは、描き込みを減らす必要もあります。とはいえ、これから次々と豪華なデザインのモンスターが登場するため、そんな描き込みの多いメインイラストが、逆にどのようにしてバトル用のユニットのデザインに落とし込むかも見所になるのではないでしょうか。イラストをユニット化したものが、きちんとアニメーションで動くということを、これからもしっかりクオリティを上げて見せていきたいと思っています。
▲左がメインイラストで、右がバトル中のユニット。
また、裏話として、本来スキルのない進化用モンスターにもアニメーションを用意しているとのこと。
ぜひ、モンスターBOX上で該当ユニットをタップしてみてほしい。
――:そしてコインや光結晶(仮想通貨)ではない、所持数に応じた報酬がもらえるステージ中で入手可能な“石版のかけら”の存在もありがたいですよね。
じつは、石版のかけらはリリース2週間前に導入しました。これは弊社代表の森下と企画会議をしているときに、森下から「ひたすら敵だけを倒していくと淡々とした感じが続いてしまう。ちょっと一味が足りないよね」と、指摘を受けたのが導入のきっかけです。そうして、あえて敵を倒さないことが目的になる仕掛けとして、石版のかけらが生まれました。
石版のかけらは蓄積していくため、集めれば集めるほどユーザーさんのメリットになります。率先して取りたくなるものですが、取るために一手使用したり、誤って敵を倒してしまうと次のステージに進んでしまったりと、ゲーム中に様々なジレンマが生まれるなど、絶妙なバランスを持った評判の良いシステムのひとつになります。
――:また、先日、ランキングバトル(対戦機能)については不正行為の問題がありました。改めて今後の対策などに関して、お聞かせいただけますか。
ランキングバトルには見込みの甘さがあり、多くの方にご迷惑をおかけしました。今後は、もっとリアルタイムで不正行為を対策できるような体制を整えていくために、逐次アップデートしてまいります。また、これからは公平にコンテンツを楽しんでもらうために、次回ランキングバトルの実施方針も大きく変えることにしました。実施方針については、すでに告知もさせていただいています。
■次回ランキングバトルの実施方針
◇主な方針
・自分のランクに応じた獲得可能BPの増加調整
・対戦相手のマッチング方法の変更
⇒「高ランク」である事がユーザー様の不利益にならないように調整
・VSチケットを1度に複数枚、使用できる機能の追加
・各ランキング報酬とクラス報酬の全体的な見直し
・不正な行為への対応強化
・バトルを盛り上げる新機能の追加
――:迅速で的確な対応をしていただき安心です。……細かいところですが、「バトルを盛り上げる新機能の追加」とは。こちら、お聞きしてもよろしいでしょうか。
まだ検討している段階ですが、フィールド上に見えないアイテムを置こうと考えています。たとえば、そのアイテムを踏んだ時にすぐにスキルを使える状態になったり、一時的に全方向に移動できるようになったりなど、運要素が絡むバラエティに富んだシステムになるよう考えています。基本的には良いことしか起きないうえに、敵が踏んでも一切効果は発揮されないようにするため、手強いモンスターでもちょっと有利になるかもしれません。
――:なるほど。そのままの流れで、『サモンズボード』における今後の展望について、もう少し詳しく教えていただけますか。
直近としては、ユーザーさんが協力して遊べるGvM(ギルドvs.モンスター)のような新しいギルド要素を追加していこうと進めています。また、「1エリアを○ターンでクリアせよ」といった、条件付きのテクニカルダンジョンを用意したり、ユニットが将棋のように“成ったり”、それこそリアルタイム対戦などの構想もあります。ボードゲームとしての面白さを、どんどんブラッシュアップしていく施策を展開していこうと思います。
――:ちなみに何か新モンスターなどは……。
じつは3月末に新モンスターとして「聖獣シリーズ」の追加を予定しています。聖獣シリーズのバトル中のアニメーションは、もはや職人芸のようなきめ細かさとなっておりますので、ぜひご期待ください。
また、降臨ダンジョンとして一日限定で出てくる強大なドラゴンシリーズも追加しています。そのほか人型モンスターも鋭意製作中です。
■「聖獣シリーズ」
▲朱雀、炎帝・朱雀
▲玄武、玄帝・玄武
▲青龍、蒼帝・青龍
▲白虎、白帝・白虎
▲麒麟、黄麟・麒麟
■本邦初公開!(1) 「水の伝承ベネディクト」
■本邦初公開!(2) 「星海龍ベネディクト」(ラフ)
■拡張要素を秘めた新世代ボードゲームに期待感が募る
――:発表当時のユーザーからの反響はいかがでしたか。たしか本作は、実際に配信開始されるまで「スマホ時代のボードゲーム」のキャッチコピーのみで、ゲーム概要は公開されていませんでしたね(関連記事)。
そうですね。そのため、いい意味で「一体どういうボードゲームなのか?」ということを、予想してくださるユーザーさんが多かったです。そして、実際に配信後は、「すごく面白い」「奥が深い」というありがたいご意見も多数いただきました。なかでも「この先の展開が楽しみ」というご意見が一番印象的でした。まだまだ拡張要素がある潜在的な面白さに期待してくれているようで、我々としても早めに今後のビジョンをお見せしていきたいと思っています。
――:配信開始から約1ヶ月が経ちました。そこで、『サモンズボード』駆け出し冒険者に向けた“攻略ポイント”を、プロデューサー直々に教えてくれませんか。
はい、本作は大きく分けて3つの攻略ポイントがあります。
■攻略ポイント1)初期配置に気を配る
初期配置は非常に大事です。たとえば、縦横1マスずつしか動けないユニットを、最初から右下に置いておくと身動きが取れなくなります。そのため、あらかじめ左斜め上に矢印があるユニットをセットしておくなど、事前に初期配置を確認しておきましょう。また、ボス戦では初期配置に戻るため、なおのこと意識したほうがいいと思います。ちなみに、現在ではモンスター編成で並べた順にかかわらず、逆L字型の中の好きな位置にモンスターを配置することができる機能を追加しました。
■攻略ポイント2)敵は1体ずつ集中して狙う
『サモンズボード』では、矢印の方向に接している敵に対して攻撃していきます。一見、分散して複数体の敵を同時に攻撃すると効率がいいと思われがちですが、じつはなるべく1体にコンボを重ねて確実に敵を倒していくことが攻略ポイントになります。というのも『パズドラ』や『ディバインゲート』では、HPを全ユニットひとつで共有していると思いますが、本作は個々にHPが存在しているため、敵ユニットを1体減らすだけでも戦況がガラリと変わって、有利に進められるようになります。だからこそ、敵を1体ずつ丁寧に倒すことが勝利の近道となります。
■攻略ポイント3)強大なボスも冷静に動きを読む
ゲームを進めていくと、強大なボスと戦うことが出てくると思います。ボスは攻撃する矢印が刻一刻と変化して非常に厄介ではあるのですが、じつは変化する矢印ごとに敵が放つスキルが決まっています。もし、どうしてもボスに勝てなかった場合には、レベルを上げるのはもちろんですが、相手が使うスキルのタイミングや範囲を頭に入れて、うまく逃げながら戦うと戦況も変わってきます。闇雲にパワープレイで攻撃することはしないで、きちんと敵の動きを考えながら進めていくと、突破口が見えてくるはずです。
――:詳細にありがとうございました。早速頭に入れて実践していこうと思います! それでは、最後に「Social Game Info」読者にメッセージをお願いします。
近年、“ゲーム”と聞いてスマートフォンアプリのことを思い浮かべる人が増えてきていると思います。その中で、もし同様のゲーム性のタイトルばかりが出続けると、それしか知らないユーザーさんも増えてしまうのではないかと不安を抱いています。私が過去に体験したゲームの面白さや魅力を、スマートフォンでも感じてほしいので、やはりこれまでにないゲーム要素を打ち出していかなければなりません。そうして今後もゲーム業界を盛り上げる一助になることができればと思います。
――:本日はありがとうございました。 (C) GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
会社情報
- 会社名
- ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
- 設立
- 1998年7月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 森下 一喜
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高1253億1500万円、営業利益278億8000万円、経常利益293億800万円、最終利益164億3300万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3765