【インタビュー】ゲームポット売却、そして米AeriaのPCゲーム事業譲渡…業界を驚かせた再編の狙いをAGGPホールディングスCEOに聞く

GMOインターネットへのゲームポットの売却や、米国のAeria Games & Entertainment(米アエリア・ゲームズ)によるPCゲーム事業の譲渡と、昨年後半以降、AGGPグループは事業再編を進めている。その狙いは何か。

今回、AGGP Holdings(AGGPホールディングス)と米アエリア・ゲームズのCEO(最高経営責任者)を兼任するLan Hoang氏にインタビューする機会を得た。再編でモバイル事業に特化したAGGPグループは、欧米・中南米市場での経験を生かし、海外展開を目指す日本企業との提携を進めていく方針を明かしてくれた。また、欧米や中南米に拠点を持つゲーム企業ならではの視点を語ってもらった。(写真はLan Hoang氏)
 
■そもそもAGGPグループとは

まず、これまでの再編について整理したい。ゲーム業界関係者とはいえ、複雑な再編と感じている方も多いだろう。

AGGPグループ傘下の主要事業会社は3つ。モバイルゲーム開発会社のジーピー・モバイル(GPモバイル)、米国のAeria Games & Entertainment(米アエリア・ゲームズ)、韓国のGAMEPOT KOREA(ゲームポットコリア)だ。いずれもAGGPホールディングスの100%子会社となる。
 

米アエリア・ゲームズは、日本のアエリア<3758>やLan Hoang氏の共同出資会社として生まれた。米国、欧州、中南米に拠点を持ち、欧米最大級のPCオンラインゲーム運営会社となった。スマートフォン向けゲームポータルサイト「Aeria Mobile」も運営している。
 

GPモバイルとゲームポットコリアの源流は、日本における『スカッとゴルフ パンヤ』の運営で知られたゲームポット(現GMOゲームポット)だ。2003年に日本のアエリアが100%子会社化し、05年に札幌証券取引所に上場。08年には株式公開買付(TOB)を経て、ソネットの完全子会社となった。
このゲームポットと米アエリア・ゲームズが2012年に経営統合し、持ち株会社として成立したのがAGGPホールディングスとなる。AGGPホールディングスの筆頭株主はソネット(所有比率は42%)で、日本のアエリアは少数株主となった。

AGGPグループは、傘下にアエリアという名を冠したゲーム事業会社を抱えるが、日本のアエリアから経営的に独立したソネットグループのゲーム企業となっている。日本のアエリアは現在、AGGPの友好的な株主だが、経営には参加はしていない。

そして2013年後半から、AGGPグループはモバイルゲームに特化した体制への事業再編を進めた。ゲームポットのモバイルゲーム部門をGPモバイルとして分割し、PCゲーム事業を残したゲームポットをGMOインターネット<9449>に売却。今年3月、欧州企業に米アエリア・ゲームズのPCオンラインゲーム事業を売却すると決めた(関連記事)。

以下、本題に戻ろう。再編の狙いや今後の方針について、Lan Hong氏との一問一答となる。
 

■モバイルに特化、ゲームだけでなく教育・語学分野への展開も視野


――本日はありがとうございます。早速ですが、一連の再編の狙いを教えてください。

「モバイル分野に特化していくことが狙いです。すでにグループ内にPCゲーム事業は一切ありません。米アエリア・ゲームズのPCゲームプラットフォームそのものを、欧州のプロジーベンSAT1ゲームズ社に売却しました」

「いずれはPCを含めたクロスプラットフォーム展開を考えるかもしれませんが、まずはモバイル市場で存在感を高めていきます。モバイルといっても、ゲームだけではなく、教育や語学などモバイルアプリ全般に展開していく方針です」

――モバイルに経営資源を集中させるわけですね。決断した理由はなんでしょう。
 
「2年くらい前からモバイルゲームが大きな伸びを示しているためです。Facebook関連ゲームの登場でPCゲーム市場が成長する時期もありましたが、現在、先進国ではPCゲームの成長が鈍化しています。今後はモバイルに特化し、GPモバイルという日本拠点で培ってきたノウハウを、欧米や中南米で迅速に展開していくことが重要だと考えました」
 

■AGGP一体となって行動…日本のゲーム企業との提携拡大を模索


――モバイルゲームの展開について、傘下会社の役割分担を教えてください。

「傘下の各社で役割分担するというよりは、AGGP全体で1つの会社として動く方針です。大きく分けて開発とパブリッシュの事業分野がありますが、開発はグループ3社が関わります。海外の開発会社からライセンスを受け、欧米市場向けゲームとしてローカライズ開発したり、『X-Men:Battle of the Atom』のように大型IPのライセンスを受け自社で開発するという両面で実績があります」
 
▲『X-Men:Battle of the Atom』

「また、パブリッシュでは課金額水準が世界的に見て大きい日本市場のゲームを、どう欧米向けにローカライズするかが重要な点となります。日本の大手モバイルゲーム企業が北米に参入していますが、利益面で目立った成功をおさめているとは言い難い状況だと考えています。我々は欧米や中南米でのゲームパブリッシュで成功実績があり、提携すればリスクを抑えることができるでしょう。日本のゲーム企業が欧米でタイトルを展開する際、さまざまな形で協力・提携できる体制を整えています」
 
「いま、日本企業のなかから、長期でパブリッシングのパートナーシップを結べる相手を探しています。10本程度のゲームライセンスを保有している開発会社と長期で深い関係を構築し、海外展開を支援していきたいと考えています」
 

■『Immortalis』は欧州語圏でも成功、ポケラボとは新規案件も進行中


――他社ゲームのローカライズでは、ポケラボの『栄光のガーディアンバトル』をローカライズした『Immortalis』は成功例ですね。
 
「成功例のひとつといえます。ポケラボさんとは良い関係を築けており、今後、新規のプロジェクトもいくつか予定があります。この先、関係を深めていき、日本でのリリースタイトルを、同時か少し遅れたくらいのタイミングで、北米市場でも出していけるような体制を築くことができれば良いなと思っています」
 
「欧米市場でのモバイルゲーム展開の難しさは、日本の各開発会社も理解し始めています。たとえばカードゲームという日本で人気のジャンルがありますが、英語以外の言語で成功させている例はほぼないといえます。『Immortalis』はドイツ語、フランス語、ロシア語複数の言語で成功を収めています」(関連記事

「まだ小さい市場ですが、フランスでは、アエリア・ゲームズはパブリッシャー別売上ランキングで10位内に入っています。今後、フランスのモバイルゲーム市場も伸びるとみています。たとえば韓国は、小さい市場でしたが、この1年で急速に伸びました。欧州でも同様の動きが出てくると考えています
 

▲『Immortalis』

――今後の協業・提携について、ポケラボ以外との案件は進んでいますか。

「ローカライズパブリッシングにおける一般的な話ですが、日本である程度成功しているタイトルは、北米でも一定の成功がみられます。ローカライズの要望を多く頂いていますが、日本で一定の成功事例があるタイトルを海外に持っていくことが、(AGGPと開発会社の)両者にとって最も良いことだと考えています」
 
新規ゲームの共同開発は、ポケラボさん以外の企業とも進めています。GPモバイルを軸とし、迅速な世界展開に向けて議論を進めていますが、傘下のいずれかの会社が核になるというよりは、傘下各社からチームメンバーを出し合い、適切な開発体制を作りたいと思っています」
 

■アジアに執着するより未来のラテンアメリカ?


――拠点のある中南米(ラテンアメリカ)のゲーム市場はどうでしょうか。

(画像は3月27日のブラジルGoogle Playの売上ランキングトップ10、出所はApp Annie。米国のランキングによく似ている)

「我々はラテンアメリカで、PCゲームの展開をベースにノウハウを培ってきました。ブラジル・サンパウロにおけるオフィスとマネジメントの構築は困難な作業でしたが、拠点を築き上げました。ラテンアメリカのAndroid市場に出ていきたい日本企業に協力できる体制があります。ラテンアメリカで提供したPCゲームはコアなものが多かったこともあり、PCゲームからモバイルゲームへのシフトは大きな問題なく実行できると考えています」
 
「ラテンアメリカのARPU(ユーザーあたりの平均課金額)は米国に対して3~4割程度の水準ですが、ラテンアメリカには7億人という非常に大きな市場があります。アジア圏に注目する方が多いですが、北米からの視点では、アジアに執着するよりは、ラテンアメリカのほうが迅速に対応できると考えています。ラテンアメリカは今年すぐ急激に、というわけではありませんが、この先いずれ伸びてくると考えています
 
――アジアの話が出ましたが、中国やアジア圏での事業展開はどうお考えですか。
 
「東南アジアは様子を伺っていますが、中国は現地企業が力を持っているので進出しにくいと考えています。中国では拠点をつくるよりも、現地企業にライセンスを与え、むしろ東南アジアのほうに焦点を向けたほうが良いのでは、と考えています」
 

■ブランド名称の変更を検討中…日本のパートナーと世界展開目指す


――本質的な話ではないかもしれませんが、ひとつ質問させてください。傘下会社の名称・ブランドに統一感がなく複雑な印象があります。私自身、日本の「アエリア」と米国の「アエリア」を混同した質問をよく受けます。
 
「確かに同様の誤解を我々自身も受けたことがあります。事業再編が進んだので、近日中にブランド名称の変更を検討し、より一層、1つのグローバルカンパニーとしての活躍を目指していく段階です」
 

――欧米に拠点を持つゲーム企業ならではの新鮮なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、何かメッセージがあればお願いします。

ゲーム分野に限らず、欧米や中南米での展開で協力できる日本のパートナーを探しています。我々は、日本で成功するゲームにも精通しているうえ、これまで複数の日本企業との関係を構築し、欧米でのゲーム展開で一定の成果を出してきました。協力や提携の形も柔軟に対応できます。是非、我々と一緒に世界を目指しましょう
 


■関連リンク

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