【インタビュー】誰もが“ぶったまげる”…徹底的に遊んだ『モンスターハンターポータブル 2nd G for iOS』で注目すべき5つの要素。そして開発陣が語る制作意図にも迫る
カプコン<9697>は、本日(5月8日)、2008年に発売されて以来、累計出荷本数400万本を突破し、多くの人々に「モンハン」の愛称で一般に広く認知されるきっかけとなった『モンスターハンターポータブル 2nd G』のiOSアプリ版をリリースした。その名も『モンスターハンターポータブル 2nd G for iOS』(以下、『MHP2ndG iOS』)である。
本稿では、一足先にメディア向け試遊会で体験してきた本作のプレイレポートに加えて、『MHP2ndG iOS』の開発陣インタビューも掲載。だれもが今回のiOS移植には驚いたと思うが、果たして実際の触り心地はどうなのか? 今回「Social Game Info」では徹底的に迫ってみた。
■『モンスターハンターポータブル 2nd G for iOS』
■対応OS: iOS6.0以上
■ジャンル:ハンティングアクション
■配信日:5月8日(木)
■税込価格:1,600円
■プレイ人数:1人(通信プレイ時最大4人)※Wi-Fi通信のみ
■「ちゃんと出来るの?」…そんな不安を全て解消
PSP『モンスターハンターポータブル2nd G』といえば、2007年に発売された『モンスターハンターポータブル 2nd』に、多数の新要素を搭載したカプコンが誇る大ヒットアクションゲームである。今回のiOS移植化では、驚きと喜びが同時に押し寄せきたものだが、どうしてもひん曲がった性格の筆者は、「操作性は大丈夫なのか」「通信プレイは遅延が発生するのか」「どこか改良しているのか」…と、色々な要素が頭を過ぎった。
そんな不安を払拭するためにも、今回のメディア向け試遊会ではiPhone、iPad、iPad mini、そして現在開発中のコントローラーなど、ありとあらゆるデバイスで操作を試みた。ここからは、本作における注目すべき5つの項目に付随しながら、プレイレポートを掲載していこう。
【グラフィック】
本作のグラフィックには一部手が加えられており、フルHDを超えるほどの高解像度に対応している。加えてiPadに関しては、解像度(2048×1536)での描写を実現。圧倒的に美しく鮮明に描き出されたフィールドを舞台にしているため、臨場感や迫力が増幅している。
モンスターの揺らぐ毛並みの質感はもちろん、絵画のようにのっぺりとしていた背景も生命の息吹が感じられるほどリアリティに描写されているため、本当にフィールドをぐるぐる散歩するだけでも楽しめてしまう。なお、画面サイズもiPhoneの16:9とiPadの4:3にそれぞれ対応しているほか、テレビ画面に出力して楽しめば、もう『モンスターハンターポータブル 2nd G HD』といってもおかしくないクオリティに。
▲周辺機器でテレビ画面に映し出すことも可能
【操作性】
iOSデバイスで操作するため、本作はすべて画面をタッチ操作で行えるように最適化されている。画面左下にあるバーチャルパッドでハンターが移動、画面右下の武器や足などのアイコンをタップすることで攻撃や回避、武器ごとの特殊行動が可能だ。また、クエスト中のアイテムは、常時画面下中央に表示されており、フリックでアイテムを選択し、タップでアイテムを使用できるといった具合だ。
とはいえ、『モンハン』における攻撃方法は、武器の種類によって大きく異なるもの。攻撃ひとつとっても、武器出し攻撃やなぎ払い、突きなど、多種多様な攻撃方法が存在する。しかし、本作では「攻撃ボタン」をタップしながら上下左右にフリックすることで、適した攻撃を繰り出せるように最適化されているのだ。
また、誰もが初見プレイでは、恐らくバーチャルパッドが表示されているゲーム画面を見ては、正直なところ操作性に全く期待しない人がほとんどだろう。筆者もそうだった。しかし、これが動かしてみると分かるが、ハンターによる歩きから走りにいたるまでの細かい所作が緻密に適応されており、違和感のない操作性が実現されているのだ。言ってしまえば誤操作がほとんどない。
【通信プレイ】
『モンハン』の醍醐味である4人協力プレイは、Appleが提供するオンラインサービス「Game Center」のアカウント登録とWi-Fi通信を使用して、通信環境さえ安定していれば、ラグや遅延など一切なく快適にプレイできる。オンライン集会所に入る際は、全国の見知らぬハンターたちと気軽に狩りを楽しめる「他のハンターとすぐ遊ぶ」か、友達など特定の人と遊ぶ「特定のハンターと遊ぶ」のいずれかを選べる。「他のハンターとすぐ遊ぶ」場合は、各条件のいずれかを選ぶだけで自動マッチングしてくれる。「特定のハンターと遊ぶ」場合は、「タップして数字を入力」の部分に1から9までの数字を入れて「入室」すればOK。なお、集会所内では、「Lobi」を用いたチャット機能も使用可能だ。
そして、シングルプレイでもマルチプレイでも驚くべき点として、マップ切り替え中のロード時間がほぼ皆無であること。これに関しては、iOSデバイスとしての魅力をいかんなく発揮している。ただ、オンライン接続中にスリープモードにしたり、突然iPhoneに電話がかかってきたりしてしまうと、オンライン集会所では部屋から出されてしまうこともあるようだ。iPhoneにいたっては、やはり電話機がメインであるため、まあここは致し方のないところである。
もちろんロードも早いことから、セーブも一瞬で完了する。ちなみにデータは端末に付随しているため、アプリを消してしまうとデータも消えてしまう。きちんとセーブデータをiTunesでバックアップをしておこう。
▲「通信プレイ」の模様
【追加機能】
オリジナル版にはなかった新機能として、本作には『モンスターハンター3G』(ニンテンドー3DS)以降、標準仕様となっている「ターゲットカメラ」と、より狩りが快適になる「自動追尾」も実装されており、どちらかをお好みで設定できる。「ターゲットカメラ」は画面をタップすれば、モンスターを正面に捉えることができ、「自動追尾」は本作オリジナルの機能でハンターがモンスターの方を向いていなくても常にモンスターをカメラの正面に捉えてくれる。
なお、「ターゲットカメラ」や「自動追尾」を設定しない場合は、画面をタップするたびに、カメラはハンターが向いている方の正面に向く。また、フィールドの採集ポイントをアイコン表示してくれる機能も追加されるなど、シリーズで好評の機能も実装し、痒いところに手が届く仕様になっている。そのほかゲーム中のバランス調整や仕様などは、一切手を加えていないようだが、コラボクエストだけは削除されている模様。
【コントローラー対応】
コントローラー対応では、昨年Appleが発表したMFiゲームコントローラーに対応している。また現在HORIでも、ボタンの数が多く、コントローラーだけで操作がまかなえるエクステンデッド版のコントローラーを開発しているようだ(価格や発売時期は未定)。今回筆者もエクステンデッド版で試遊した。なお、コントローラーはオプション画面でON/OFFを切り替えることで、一瞬にして対応する。そして試遊してみた感触としては、プレイステーション2で発売された『モンハン』1作目と変わらない操作性が味わえた。
さて、以上が本作における5つの注目ポイントだ。かれこそ筆者も繰り返し様々な端末で本作をプレイしてみたが、何よりもiPhoneで『モンスターハンター』を操作したときの衝撃ときたら……。手の平サイズで違和感なくハンターを動かして、モンスターを狩猟したときの感覚は、「夢でも見ているのか?」と不思議しながらも言い知れぬ感動を心の奥底から覚えるほどだ。なんか、昔の人が初めてテレビを目に見たときの感動って、恐らくこんな感じだったんだろうなぁ……と。
そして過去、様々なコンシューマタイトルがスマートデバイスに移植されたと思うが、もっぱらバーチャルパッドによる操作性の悪さに愕然することがあったことだろう。しかし、本作における操作性は、細かいところまでお膳立てされた緻密なインターフェイスと操作感度で、信じられないほどのアクションプレイを手の平サイズで実現させた。
Free to Play(基本プレイ無料)が主流となったアプリ市場において、果敢にもカプコンは追加課金一切無しの大ボリュームの買い切り制アプリを投入。シリーズ経験者には懐かしい興奮が蘇り、初心者にとっては新たに始まる狩猟生活の興奮に胸躍ることだろうが、それと同じくして市場にも大きな爪痕を残す大型アプリであることに違いない。
■「スマートデバイスをゲーム機にしようと」…開発陣インタビュー
ここからは、本作の開発に携わった『モンスターハンターポータブル2nd G for iOS』のエグゼクティブディレクターの伊津野英昭氏と、プロデューサーの塩沢夏希氏より、開発経緯をはじめ、細かいこだわりや改修点など、気になるところを根掘り葉掘り聞いてきたので、そのインタビュー模様をお届け。
――:本日は試遊会のお招き、ありがとうございました。まず過去にPSPで発売された『モンスターハンターポータブル 2nd G』を、今回iOSへ移植するに至った経緯について伺ってもよろしいでしょうか。
伊津野氏:いまから1年ほど前になりますが、そもそもは「スマートデバイスをゲーム機にしよう」という想いのもと今回のプロジェクトが始まりました。そしてタイトルを考えていた際に、弊社のタイトルで一番多くのユーザーが触れたであろうPSP『モンスターハンターポータブル2nd G』のiOS移植化にいたりました。
塩沢氏:当時『MHP2ndG』を遊んでいた若年層の方は、もういまでは社会人となり生活サイクルも変わった人も多いと思います。そんな方たちが、いま手元にあるガジェットで遊べるうえに、加えて特別なハードも買わなくていい……「ちょっとやってみようかな」と思えるきっかけとしては、本当に間口が広く敷居が低いタイトルになります。
――:開発期間が1年とのことでしたが、どういったところで苦労されましたか。
塩沢氏:グラフィックのHD化はもちろんですが、おもに通信部分ですね。アクション性が伴う『モンスターハンター』の通信プレイにおいては、やはり4人で快適に遊ぶためにラグや遅延があってはなりません。だからこそ、何度も念入りに通信プレイは試行錯誤していきました。
伊津野氏:今回実際に完成しましたが、このグラフィックのなかでここまでやり応えのあるアクションを、さらに4人同時で遊べるゲームタイトルは、恐らくiOSでは出ていないと思います。
――:値段の設定も頭を悩まされたと思います。……とまあ、正直私のなかでは非常に安いと思っていますが(笑)。
伊津野氏:かれこれ6年前の作品ですが、やはりFree to Playが主流の昨今、アプリ単体で見れば1600円はそこそこの価格かもしれません。とはいえ、最新のiOSアプリと言っても遜色ないほどに仕上がっていると自負しているうえに、実際周辺機器を用いればテレビに出力することも可能ですから、HDリメイクと考えてもいいかもしれませんね。
塩沢氏:恐らく単純に『MHP2ndG』をiOSに移植することを聞くと、「ふーん…」で終わってしまいますが、実際に見て触ると大きな感動を得られると思っています。また、『モンハン』は知っているけど、遊んだことのない人も本作をきっかけに、ぜひ、シリーズに触れていただければ幸いです。
伊津野氏:そうですね。それに画面の美しさを見るだけでも元は取れるんじゃないでしょうか。手の平で『モンハン』が動いているところを、友達に見せるだけでも話題にも繋がりますし。
――:たしかに。また、絶妙な操作性を実現するためには、UI(ユーザーインターフェイス)の構築も大変だったかと思います。
伊津野氏:当時はフリックなしのボタンからスタートしました。途中でフリックを思いついた天才がいまして、結果的に初代のPS2版の操作感覚に近い感じにおさまりました。また、アナログレバーのところですが、狩猟中はグリグリ動かすことができるのですが、集会所などの項目を選択するときは、外側に十字キーのついたパッドになっているのも特徴です。やはりアナログだけだと誤操作が多いため、外側に十字キーを付けることで、選択しやすいように最適化しました。
そのほか細かいところでいうと、歩きから走りに変わる感覚も緻密に調整しています。もともとタッチとスライドは、手に感覚のない操作のため、ここも繰り返し変更となった箇所です。PSPであれば物理的に動くレバーがあったので、手の動きに連動した感覚として操作できるのですがね。そんな細かい操作においても、本当にチームメンバーで根気よくクオリティを上げていきました。
――:そうだったんですね。また、コントローラーも採用されていますね。
塩沢氏:やはりコントローラーのほうがゲーム機の感覚に近くなりますからね。しかし、タッチ操作でもまったく違和感なく『MHP2ndG』が楽しめるように開発しましたので、安心してください。
伊津野氏:正直なところ、このバーチャルパッドが映し出された画面を見たときに、恐らくみなさん操作性に期待しないと思うんですよね。それは、これまでもたくさんのコンシューマ作品が移植されては、その操作性に違和感を覚えることが多々あったからです。我々はそのイメージを、なんとしてでも覆したかったのです。
塩沢氏:ユーザーさんはiPhoneなどを、あくまでもガジェットのひとつだと思っています。しかし、今回の『MHP2ndG for iOS』をリリースしたことによって、「これもゲーム機なんだ」という認識が徐々に広まっていけば幸いですね。
――:なるほど。ちなみに今後はアップデートされていくのでしょうか。
塩沢氏:ダウンロードクエストもコラボクエストを除いたすべてを入れている状態ですので、アップデートは予定していません。そのため追加課金が一切必要ないという安心感も得られると思います。
――:分かりました。これからも御社タイトルのiOS移植化はされていくのでしょうか。
伊津野氏:今回のようにコンシューマタイトルを、そのままiOSに遜色なく移植して、さらに1600円という価格で販売するのが初めての試みだったので、まだ正直なところ分かりません。もちろん好評であれば、第2弾、第3弾もあるかもしれませんね。
――:楽しみにしております。本日はありがとうございました。
(取材・文:編集部 原孝則)
■関連サイト
「カプコン」企業サイト
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会社情報
- 会社名
- 株式会社カプコン
- 設立
- 1983年6月
- 代表者
- 代表取締役会長 最高経営責任者(CEO) 辻本 憲三/代表取締役社長 最高執行責任者(COO) 辻本 春弘/代表取締役 副社長執行役員 兼 最高人事責任者(CHO) 宮崎 智史
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1524億1000万円、営業利益570億8100万円、経常利益594億2200万円、最終利益433億7400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9697