【大手ゲーム決算まとめ】6社中5社が増収増益、4社が大幅な営業増益を達成 ゲーム関連事業は6社すべてが増収 スクエニHDとコナミの利益率上昇が際立つ

2015年4~6月期決算も後半戦に突入したところだが、家庭用ゲームソフト大手6社の第1四半期(4~6月)決算が8月6日の発表分で出そろった。6社中5社(コーエーテクモHD<3635>、バンダイナムコHD<7832>、スクエニHD<9684>、カプコン<9697>、コナミ<9766>)が増収、営業増益となっており、なおかつ4社が大幅な営業増益を達成するなど、2016年3月期は好スタートを切る形になった。

唯一、減収さらには各利益項目において赤字計上となったのが、セガサミーHD<3635>で、これはパチスロ遊技機の新作タイトルの販売がなかったことが最大の要因。だが、グループの再編に伴い変更となった新セグメントのエンタテインメントコンテンツ事業を見ても、売上高は4.1%の増収を達成したものの、営業赤字を計上するなど厳しい船出となっている。
 
(※1)コナミは国際会計基準(IFRS)のため、経常利益はない
(※2)前期比で%表記のないものは前期実績
(※3)各社決算資料より作成

続いて大手6社の売上高比較を見てみたい。バンダイナムコHDが飛び抜けた規模となるが、これは同社のトイホビー事業の規模の大きさにも起因する。注目されるのはセガサミーHD、コナミ、スクエニHDの3社の売上高規模が接近したことだろうか。売り上げ規模の順位は変わらないものの、セガサミーHDが売り上げを落とし、スクエニが売り上げを伸ばして追い上げた、そんな構図となっている。
 
(※)各社決算資料より作成

営業利益に目を移してみると、唯一赤字計上のセガサミーの苦戦ぶりが際立つ形となるが、スクエニHDとコナミの2社が順調に利益を伸ばしていることが見えてくる。両社とも売上高の増加以上に利益率の向上が目立っている。なお、この比較グラフでは分かりづらいが、コーエーテクモHDも増収増益でかつ、利益率が上昇している。
 
(※)各社決算資料より作成

続いて各社のゲームにかかわる事業のみを抽出してみたい。コーエーテクモHDはゲームソフト事業とオンライン・モバイル事業の合算、セガサミーHDはエンタテインメントコンテンツ事業、バンダイナムコHDはネットワークエンターテインメント事業、スクエニHDはデジタルエンタテインメント事業、カプコンはデジタルコンテンツ事業、コナミはデジタルエンタテインメント事業の数字となる。6社すべてが増収となり、4社が増益、唯一赤字のセガサミーHDも赤字幅が縮小している。
 
(※1)前期比で%表記のないものは前期実績
(※2)各社決算資料より作成

こちらも6社の売上高と営業利益(セグメント利益)を比較して見てみよう。やはり規模という点では、売上高・利益ともバンダイナムコHDがトップということになるが、こと利益に関しては同社とスクエニHD、コナミがだいぶ接近してきている。両社ともモバイルゲーム、PCブラウザゲームなどいわゆるネットワークゲームコンテンツがそのけん引役となっており、従来の家庭用ゲームソフト大手という位置付けからだいぶ事業構造が変わってきていることが成長の原動力になっていると言えるだろう。
 

(※)各社決算資料より作成

6社のゲーム関連事業の業績数字を合算した四半期別売上高・営業利益の推移を見てみると、前年同期比では増収増益、前四半期比では減収減益という形になる。前四半期比で減収減益となるのはパッケージソフトがクリスマスから年末・年始にかけて一番の稼ぎ時を迎えることに起因する。その反動が4~6月期に表れるのは例年の傾向だ。

しかし、今回の4~6月期についてはこれまでと比べてその減少幅が大きく縮小してきている。これはやはり各社がネットワークゲームコンテンツに注力していることで、季節要因による変動リスクが徐々に低下してきていることを示しているものと思われる。今後もこうした傾向が続くのかどうか、引き続き7~9月期以降も見守っていきたい。
 
(※)各社決算資料より作成

さてでは、ここからは6社の個別の業績に目を移したい。以下はコード順に4~6月期の状況をまとめてみた。
 

■コーエーテクモHD<3635>…増収増益


第1四半期期間(4~6月)としては3期連続の増益を達成、経営統合以来最高の業績で着地した。ただし、モバイルコンテンツの好調な大手ゲーム企業が目立つ中で、同社はオンライン・モバイル事業が売上高で前年同期比3.0%減、セグメント利益で同55.9%減となるなど、やや苦戦している。この第1四半期期間は、『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』『信長の野望 201X』の2タイトルをリリースしたが、おそらくはその先行投資が同事業の大幅な減益につながったものと想定される。

一方、パッケージソフトなどのゲームソフト事業は、売上高が前年同期比10.7%増、セグメント利益が同4.1倍と極めて好調だ。特にデジタル販売の『DEAD OR ALIVE 5 Last Round』(PS4、PS3、Xbox One用)の基本無料版累計ダウンロード数が全世界で350万を突破するなどデジタル分野の好調が目立った。
 
 

■セガサミーHD<3635>…減収減益


第1四半期期間(4~6月)は、前年同期比で41.2%の減収となり、赤字転落という結果になった。減収の最大の要因は前述の通り、パチスロ遊技機の新作タイトルの販売がなかったためで、遊技機事業は売上高が前年同期比83.5%減、67億円の営業赤字の計上という結果になった。

また、エンタテインメントコンテンツ事業は、売上高が同4.1%増、営業赤字が前年の13億6600万円から7億3900万円に縮小という結果になったが、これはアミューズメント機器分野とアミューズメント施設分野の影響が大きい。デジタルゲーム分野に限定してみると、既存タイトルに加え、複数の新作タイトルが好調な滑り出しとなったことで増収となったものの、新作タイトルを中心とした広告宣伝費などの先行費用が増加して減益となっている。デジタルゲーム分野のこうした傾向は第2四半期も続く見通しだ。
 
 

■バンダイナムコHD<7832>…増収増益


第1四半期期間(4~6月)は、前年同期比で12.1%の増収、7.7%の営業増益となり、第2四半期累計(4~9月)の連結業績予想も売上高を従来予想2450億円から2550億円、営業利益を同200億円から250億円に上方修正した。

上方修正の理由で最も大きかったのは、ネットワークエンターテインメント事業の『DRAGONBALL XENOVERSE(ドラゴンボール ゼノバース)』のリピート販売など海外の家庭用ゲームソフトの販売の好調だが、スマートフォン向けゲームアプリケーションなどネットワークコンテンツも安定した推移となっている。

また、トイホビー事業は、「妖怪ウォッチ」商品が会社側予想通り、ややピークアウトした感はあるが、「機動戦士ガンダム」や「ドラゴンボール」など定番IPを軸に順調な推移が続いている。
 
 

■スクエニHD<9684>…増収増益


第1四半期期間(4~6月)は、前年同期比で12.0%の増収、56.1%の営業増益と2ケタ増収増益を達成。営業利益率は前年同期の13.4%から18.7%に上昇した。

そのけん引役となったのは、デジタルエンタテインメント事業で、同事業は売上高が前年同期比29.2%増、営業利益が同81.6%増と大幅に伸長した。スマホ向けゲームの『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』『スクールガールストライカーズ』『ファイナルファンタジー レコードキーパー』『乖離性ミリオンアーサー』などが貢献したほか、ブラウザゲームの『戦国IXA(イクサ)』も寄与しており、同事業の営業利益率が前年同期の19.2%から27.0%に上昇したことが全体の利益率向上にもつながっている。

同社は、2016年3月期通期について、レンジを持たせた予想を打ち出しているが、第1四半期までの進捗率を見る限り、予想レンジの上限に近い近い水準の業績が期待できるのではないか。
 
 

■カプコン<9697>…増収増益


第1四半期期間(4~6月)で最も増収率が際立ったのが同社となるが、これはアミューズメント機器事業のパチスロ機部門で発売した「バイオハザード6」が好スタートを切り、同事業の売上高が約4倍に伸びたことに起因する。

一方で、デジタルコンテンツ事業については、売上高は前年同期比14.3%増と2ケタ増収となったものの、営業利益は同2.2%減と減益に終わった。コンシューマの『モンスターハンター4G』や『バイオハザード リベレーションズ2』などのリピート販売が貢献したものの、モバイルコンテンツはカプコンブランドでの主力の新作投入がなく、PCオンラインも主力タイトルがやや軟調に推移した。モバイルとPCオンラインの減収が収益性の低下につながり、営業利益率が20.5%から17.6%に低下したことが同事業の減益要因となっている。

第2四半期はその立て直しが進められるのかどうかが課題となりそうだ。
 
 

■コナミ<9766>…増収増益


第1四半期期間(4~6月)は、前年同期比で5.3%の増収、86.7%の営業増益と大幅な増益を達成した。健康サービス事業の利益率改善、遊技機事業の黒字転換もあるが、利益の絶対額からするとやはりデジタルエンタテインメント事業がセグメント利益で前年同期比78.5%の増益となったことが大きいだろう。

その最大のけん引役は、昨年12月の配信開始以降、8ヶ月間で1,400万ダウンロードを達成した『実況パワフルプロ野球』だ。同作の貢献などにより、デジタルエンタテインメント事業の利益率は前年同期の17.7%から27.1%にまで上昇した。なお、同社は2016年3月期通期予想の同事業の利益率を13.7%に設定しており、現状の進捗状況を見る限り、利益の上ブレ期待が高まってきそうだ。
 
 
(編集部:柴田正之)