SHIFT<3697>は、8月26日、「CEDEC2015」で、「SHIFTが考える新しいゲームデバッグ手法『GAME CAT』とは?とJenkins Platform Enterprise Editionによるコンテンツパイプラインの改善」と題する講演を行った。セッションは二部構成だったたが、今回は、ゲームデバッグに関するセッションの模様をお届けしたい。島川知氏が登壇し、SHIFTのゲームデバッグサービスの紹介を行った。
ゲーム関係のデバッグ業務というと、ポールトゥウィンやデジタルハーツなどが有名だが、同社がゲームのデバッグ業務に参入したのは2013年と後発となる。参入以降、売上は順調に伸びており、毎年倍々で伸びているという。同業他社とは異なるテストサービスを行っており、現在では開発以外の全業務の支援を行っているそうだ。
それでは、SHIFTのデバッグ手法の特長とはどういった点にあるのか。従来のデバッグ手法は、熟練者の経験(=暗黙知)で広範囲をカバーする方法だったという。仕様書に規定された動作確認を行いつつ、それ以外の領域についてはフリーチェックで長い時間をかけてテストしてきた。テストプレイに充てた時間が進ちょくを示す指標だった。
しかし、このやり方は、チェック工数が多くなるという問題がある。人数が多くなると、複数の人が同じ内容をチェックするといったことも起こりうるだけでなく、テストに参加した人全員が見過ごす問題が発生することもあるそうだ。SHIFTでは、熟練者のスキルと気付きを、形式知化することで品質の向上と安定化を図っているという。ただ、ゲームは動的要素が多いので、熟練したスタッフによるフリーデバッグも並行して行っていく。
それでは、テスト構成はどうなっているかというと、制作側とユーザー側の視点を網羅しているという。レイアウトや演出、遷移といった画面系、ロジックや判定、計算、データなどの機能系、アプリ外からの影響を検査する環境系、ユーザーライフサイクルなどを検証していくという。同社の特徴は、画面と機能を明確に分けている点にあるそうだ。
その理由は、それぞれの機能のチェックを明確に分けることで、テストの確実性を上げたいという考えがある。例えば、チェックリストを作る際、ガチャに関する項目があったとする。同社は、ガチャであっても、ロジックや演出、画面遷移など全く異なる要素を分けて1つずつチェックする。「ガチャ」という形で一括で検査すると考えなくてはならない想定を見落とす恐れがあるとのこと。
さらに、SHIFTならではの特徴として、アプリ内部だけでなく、「環境系」と呼ぶアプリ外の影響のテストにも力を入れている。端末に入っているOSや他のアプリとの競合のほか、通信状況やサスペンド・レジューム、アプリキル、プッシュ通知、OSの言語設定、ハードウェアキー、ストレージ、CPU/RAMの負荷、SNS連携、データ更新、キャッシュ削除、センサー、3G→4GやWi-Fi→4Gの切り替え、強制終了など、実際のユーザーの使用条件に近い状態でテストしているという。
ネイティブアプリのリリースは、非常に増えているが、ユーザーレビューで辛辣な意見が並ぶものが多い。ゲーム内容以外のところで、星1つになっているところもある。アプリ開発中のデバッグに問題はなかったのにリリース後、動かない、先に進めないといった不具合が発生する一因は、アプリ内だけでなく、アプリ外の影響を十分にテストできていなからではないかとの見方を示した。
また、業務経験で得たナレッジや熟練者の持つ暗黙知を「形式知化」することで、900ものテスト項目を設計することに成功した。テストする際は、標準的なテスト項目をゲームに合わせてカスタマイズしているとのこと。またテスト案件で新たなナレッジや各タイトルで共通するナレッジが得られた場合、成功・失敗を含めてテスト項目に反映させており、現在でも日々、発展しているそうだ。
暗黙知を形式知化することのメリットとして、デバッグの進ちょく状況がわかることがあげられる。顧客も管理画面にアクセスできるため、いちいち問い合わせなくても、何%進捗したかがリアルタイムでわかるだけでなく、サーバーが立ち上がらない、デバッグモードが動かないなど、テストが進まない理由にもリアルタイムで気づきやすいという。
このほか、同社では、デバッグ業務を請け負うだけでなく、デバッグ業務を管理するツールや、開発の人材紹介、ローカライズ業務、多端末検証、アプリストア申請前のリジェクトの有無のチェック、ユーザーサポートといったサービスも提供しているという。「ゲーム開発者は面白いゲームを作ることが仕事。余計な作業は、SHIFTが担当し、ゲーム開発に専念してもらうように支援していきたい。」とまとめた。
(編集部 木村英彦)
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会社情報
- 会社名
- 株式会社SHIFT
- 設立
- 2015年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 丹下 大
- 決算期
- 8月
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3697