【インタビュー】キャラクターや世界観を生み出すイグジスが目指すものとは? 稲冨正博社長が語る“クリエイターが能力を最大限発揮できる環境”


日々生み出されるスマートフォン向けのゲームに欠かせないものがある。それは表情豊かなキャラクターや、奥行きのある世界観だ。急拡大したこの業界でそういったゲームの表側を専門的に扱う企業がある。Exys(イグジス)株式会社だ。現在、かなり積極的に採用活動なども行っており、成長著しいイメージを持つ。

ゲームに欠かせない要素であり、プレイヤーの感性に直接影響を与える部分であるだけにどのような現場で制作されているのか興味が尽きない。

今回「Social Game Info」では、そんな同社のことを深く知る機会として全4回にわたる連載企画を予定している。第1回となる今回は、同社の代表取締役社長 稲冨正博氏にインタビューを実施し、同社の事業環境や今後目指していく方向性など、さまざまなお話をうかがった。
 

■キャラクターたちの生きている世界観をまとめて生み出すことがポイント


———:よろしくお願いいたします。まず始めに御社の事業のことについておうかがいしたいと思います。gloopsさんと協働展開された『SKYLOCK(スカイロック)』がやはり一般的にはイメージが強いですが、ゲームキャラクターのデザインが主力事業ということになるのでしょうか?

キャラクターのデザインだけを手掛けているというわけではなく、シナリオも含めたキャラクターたちの生きている世界観をまとめて作っていくというのが当社の事業のポイントです。依頼されて世界観のイメージボードやゲームのパッケージを作ったりすることなんかも多いですね。

———:そうした世界観をオリジナルで作っていく上でこだわりのようなものはありますか。

クリエイターの特徴を生かして、かつ、世の中に受け入れやすい形にしたものを送り出すということです。なので逆にいうと、「こうじゃないといけない」というような、変なこだわりがないというとないのかもしれません。受け入れやすい、求められているものを作って提供していきたいという思いがあります。

———:御社がオリジナルの世界観を生み出していく上で、幹大樹先生や田中克樹先生がクリエイターとして在籍していることは大きいのかなと思うのですが。

そうですね。幹はもともと高校くらい時からの友人だったんです。2009年くらいにmixiがオープン化するころに当社にジョインしてきた感じです。

ただ、最初は幹本人の画風を生かした作品を作ろうというわけではなく、取引先のいろいろなゲームの受託の仕事をやってもらっていたのですが、何かこう違和感のようなものがあって…。

やはり、その人が持っている得意なものとか、強いものを引き出して世の中に送り出す方が良いのかなと思いました。それが『SKYLOCK(スカイロック)』なんです。田中も元々少年誌で連載を持っていた実力者なのですが、縁があって今一緒にがんばっています。社内で新しい連載作品の準備もしていますので、楽しみにしています。

 

———:『SKYLOCK(スカイロック)』についてもう少しいろいろとお話いただけますか。

『SKYLOCK(スカイロック)』は、幹の画風を生かすために、それに合う世界観を作ってという形で生まれました。シナリオの原作は映画やアニメで有名な渡辺さんに担当してもらったのですが、作画は幹が担当しています。原作と作画が違うという、漫画業界でも主流になってきた形になりました。

実は『SKYLOCK(スカイロック)』は、一番最初は漫画として企画を作っていたんですよ。初期の作品は未発表なので誰も見たことがないと思いますけど、ちょっと和風のテイストで妖怪が出てくるような、例えると『妖怪ウォッチ』のような世界観でした。それをゲームに落とし込むときにどうしようかと考えたのですが、市場環境や様々なことを考えて最終的にスチームパンクの世界観を作りたいと思いまして、世界観を今の形に変更して企画を仕上げました。


ゲームは、一番最初にMobageで出したのですが、その時の事前登録が2日とか、あっという間に10万人に達して驚きました。多くの方が求めていたものを生み出せたのかなと思いましたね。

———:なるほど、ゲームとして大成功を収めたわけですね。

そうですね。色々なご意見をたくさんの方からいただきましたけども、市場に受け入れてもらえたと思う瞬間でした。ただ、当社は単純にゲームの会社というイメージにはしたくはないんです。ゲームの会社というカテゴライズだと出ていくものがゲームしかなくなってしまうと受け取られがちなので…。どちらかというとゲームにも漫画にもアニメにもなる、それらの大元になる世界観を作り上げて、作品として制作していくことを事業の中心に置いています。

昔と違って今は、スマホというデバイスでコミックもアニメもゲームもすべてつなげられるので、我々が創る世界観全部を提供できる会社にしていきたいです。


———:そういえば、稲冨社長はアニメーションのプロデュースを手掛けられたそうですね。今までのゲームや漫画とは違った苦労もあったと思うのですがいかがでしたか?

やはり難しかったです。ただ、今回の前にも短い尺の『SKYLOCK(スカイロック)』の動画を作った時に立ち会っていたので、そこでだいたいのアニメの制作の工程を知ってはいました。

前回のアニメは、自分でやってしまうと自分にしかできない事が増えてしまうと思っていたので、まず最初はスタッフの人にやらせてみたのですが…。仕上がりがあまり良くなくて、「これはいかん」ということで自分でやり直して、今の30分強のアニメーションを作りました。


———:30分となると、結構本格的ですね。

実は3部作なので全部で90分くらいになる予定です。映画1本分くらい作ったので、本当に大変で。ある意味もう満足しました(笑)

———:なるほど(笑)、これが世に出るのはいつくらいになるんですか?

12月くらいには出てきます。今、事前登録を行っている『ワールドギミック(World Gimmick)』というアプリの中に出てくるんです。

今までゲームのシナリオ部分というのは、テキストとか漫画的表現はあったと思うんですけど、急に本格的アニメーションが始まるので、きっとビックリすると思います。

『ワールドギミック』は、ゲーム自体はクラウドナインが作ってるんですけど、ストーリーの世界観ですとか、キャラクターデザイン、アニメやシナリオは当社が担当しました。

 
 

■社名に込められた”実”がある、在り続ける会社であることを目指すこと


———:リリースを楽しみにしています。ところで話は変わりますが、御社の社名「Exys」(イグジス)というのは珍しい響きの言葉だと思うのですが、その由来などを教えていただけますか。

「existence」(イグジステンス)という単語があるんですけど、そこから取りました。

「existence」というのは存在、実在といったような意味があるんです。IT業界で、色々な会社を見てきましたが、ネットのビジネスって形のあるものを扱っているわけではないので、割と”実”のない”虚“であるような会社も見てきまして。

私達がやる会社はやはり”実”がないといけないなという思いがありまして。私達が作ったものは使われる必要性があり、この世界に存在し続けるようなものを作っていこう、売っていこうと思っていました。その上で会社が存続する、在り続ける会社でありたい、ということですね。


———:社員のほとんどがクリエイターというめずらしい体制を構築されていますね。どのようなお考えからクリエイターを社員として雇用しよう、という判断に至られたのでしょうか?

アニメ・漫画業界の労働環境は、格差がすごく大きいと思っています。例えばものすごく有名な漫画家さんだと何百億もお金がもうかると思うんですけど、普通にコミックスを何冊か出したくらいでは、一生分のお金を稼ぐことはできなくて、一般的なサラリーマンの人たちよりも不安定な生活を送ったりすることになってしまっています。

漫画家の志望をしている方とかは特にそうですけど、本来は絵を描くことに時間を割かなければならないはずなのに、生活をするために例えばアルバイトをしたりして結果的に絵からどんどん離れていってしまうというようなことがあります。もちろん、時にそうした仕事を通じて色々なことに気づくことも大切だと思いますが、基本的に画力を上げていくには、絵を描き続けるという環境に身を置くことが一番いいと思うんです。

当社では、絵を描き続けるという環境プラス安定した仕事や生活を送ってもらい、そしてそこから可能性が出た場合にはオリジナルの作品を世に送り出していくという、そういう環境を作れたらいいなと思っています。

そういう環境を早く作っていかないと、今後は例えば中国とかタイとか、日本のコンテンツの影響を受けた東アジア圏のクリエイターたちがどんどん出てくると思うのです。なので、日本人のクリエイティブがちょっと抜きん出ている今のうちにもっといい環境を提供して、そうした海外のクリエイターに負けないような作品が送り出せればいいですね。それでこそ日本のコンテンツの価値やそれを生み出すクリエイター一人一人の価値が上がっていくと考えてます。

 

※制作中のイラストはクリエイターの個人的な作品です。

———:クリエイターがいい作品を生み出すには、いい環境が必要ということでしょうか。

そうですね、例えばIT業界になぞえて言うと、Googleがいい例ですね。IT業界ももともと環境は良くない業界でIT土方なんて言われてましたけど、環境を少し整えてあげて、作るものに集中でき、そういうインスピレーションを受ける仲間たちがいる環境というのを提供していくと新しくて価値のあるものが出来上がってくる。そういう環境であることがクリエイターにとっては一番いいのかなと。
 

 

■クリエイターが能力を最大限発揮できるような環境作りを目指す


———:福岡はスタジオのようになっているのでしょうか?

そういう風な形にもしたいんですけど、まだまだこれからですね。今は普通のオフィスで、クリエイターがみんなで作業していますけども、最終的には、ピクサーのようなスタジオにできれば一番いいなと思っています。

———:ピクサーのスタジオというと…。

トップクリエイターはみんな個室をもって、自分の個室は好きなようにレイアウトして、個々のクリエイターたちのアトリエが集まっているような感じです。

アトリエから出てくるとクリエイター同士で対話ができて、戻ると自分たちのパーソナルスペースがあって集中して作品に向き合えるような。一番ものづくりに適した環境かなと思っています。そのためにはもっと価値の高い作品を作り出していかないといけないんですけどね。

そういう環境を当社が作れればいいなと思っています。クリエイターが能力を最大限発揮できるような環境をできるかぎり作っていきたいですね。


———:どうもありがとうございました

今回、稲冨社長から貴重な話をうかがったが、Exysでは、そうした“スタジオ”として大きく成長していくために採用を強化しているとのこと。特に自分で作品を生み出していけるようなアイデア溢れるクリエイターや、これからもっと成長したいと考える成長意欲に溢れるイラストレーター、漫画家など積極的に採用していきたいとのことだ
 
(取材・文:編集部  柴田正之)


 

Exys 採用ページ



 (C) Exys (C) gloops, Inc.
©Cloud9 Inc. ©DeNA Co.,Ltd. ©Exys Inc.
Exys株式会社
http://www.exys2008.com/

会社情報

会社名
Exys株式会社
設立
2008年2月
代表者
稲冨 正博
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