【インタビュー】大胆不敵に生まれ変わる『ファントム オブ キル』の全貌に迫る 往年のシミュレーションRPGの要素を尊重した新コンテンツにも注目
Fuji&gumi Gamesは、本格シミュレーションRPG『ファントム オブ キル』において、新たな企画にあたる「プロジェクトZERO」をスタートさせた。
本作は、“戦略性×ドラマ”をコンセプトにした、本格シミュレーションRPG。自らの一手で戦況が変わる白熱の3Dバトルと、伝説の武器の名を持つ謎の少女達とのドラマティックなストーリーが楽しめる。現在は300万ダウンロード突破したほか、アプリストアのトップセールスでも過去TOP10にランクインするなど、リリースから1年半経過した今なおスマッシュヒットを記録し続けている。
そして今回の新たな企画となる「プロジェクトZERO」は、“キル姫の誕生に隠された秘密”や“彼女たちが背負う戦いの宿命”など、これまで明かされていなかった『ファントム オブ キル』の前日譚を、ゲームの大型アップデート、コンセプトフィルム、VR体験の3つの切り口で描いていくプロジェクトだ。
本稿では、同作のプロデューサーである今泉潤氏にインタビューを実施し、「プロジェクトZERO」の立ち上げ経緯やこだわりについてお聞きした。話を伺ってみると、未曾有の取り組みであったことが分かった。
■往年のシミュレーションRPGの要素が、ついに
株式会社Fuji&gumi Games
取締役副社長 COO
『ファントム オブ キル』プロデューサー
今泉 潤 氏
――:本日はよろしくお願いします。はじめに「プロジェクトZERO」の立ち上げ経緯についてから教えてください。
『ファントム オブ キル』(以下、『ファンキル』)は、2014年10月のAndroid版リリースから数えて、1年半近く運用を続けてきました。ユーザーさんはもちろん、僕自身もそうなのですが、新しいゲームがたくさん出てくる昨今、どうしても過去にリリースされたタイトルは遊ばなくなりますし、長期的に運用されているタイトルもマンネリ化が避けられないと思っています。そこで、既存ユーザーには新しい体験を、新規ユーザーにはゼロからでも始められる間口の広い内容として、この「プロジェクトZERO」を立ち上げました。
また、一番クリティカルな部分としては、『ファンキル』の世界観を深堀りしていく要素も大きく担っています。
――:今泉さんも「プロジェクトZERO」の特設サイトにて「これを描かないとファンキルは完成しない」とおっしゃっていました。かなり大胆な世界観の変更ですが、なかでも男性キャラクターの登場やファンタジーからネオ東京の舞台などが挙げられます。
“キル姫はなぜ生まれたのか?”など…じつはこのプロジェクトは当初から温めていた設定でした。本来は、メインストーリーという縦軸で世界観の深みを描きたいのですが、運用型のモバイルゲームですと、季節ごとのイベントであったり、キャラクター展開に焦点をあてた横軸の要素が求められる傾向があります。
――:たしかに。カジュアルで接触時間も少ないほか、運営側の更新のしやすさや描きやすさなどがあります。
モバイルのゲーム画面だけでは表現の限界もありますので、今回の「プロジェクトZERO」ではゲーム・コンセプトフィルム・VR体験の3つの軸を設けました。単なる大規模な宣伝プロモーションの一環と思われるかもしれませんが、我々としては“宣伝プロモーションもひとつの作品にする”ことを意識して、世界観の深さを表現していこうと考えています。
――:それでは「プロジェクトZERO」について、ひとつずつ順を追ってお聞きしたいと思います。まず「ゲーム」の部分ですが、世界観も含めて大胆なアップデートを施されましたが、何か明確なコンセプトなどはあったのでしょうか。
そもそもシミュレーションRPGは、拮抗した戦況の中で思考を巡らせ、勝利をもぎ取る面白さがあります。そうした要素を十二分に取り込んだコンテンツとして、今回新たに「地上世界編」を導入しました。
《3月28日(月)に実装された「地上世界編」のゲーム概要》
世界樹ユグドラシルに分断された「天上」と「地上」の二つの世界――伝説の武器の名を持つ“キラープリンセス”と呼ばれる謎の少女達と出会い、失われた記憶を探し、共に成長していく物語が描かれる「天上世界編」――。好きなユニットを仲間にし、好きなだけ育てられる自由度の高い今までのゲームシステムに加え、 新たなゲームモード「地上世界編」が登場する。
“キラープリンセス”に加え、“キラーメイル”と呼ばれる男性ユニットが登場。悪魔が支配する弱肉強食の荒廃した世界で人類の抗いが描かれる。「地上世界編」は全てのユーザーが「同じ条件」の下、 限られたユニット、 武具、 アイテムで思考の限りを尽くして挑戦する「AP消費なし」の新ストーリーモード。
ユニットは物語を進めることで加入・脱退し、傷つき倒れた仲間は戦場に復帰することはできず“ロスト”する。 仲間を守るために緻密に戦略を練り、 パラメーターを確認して、 ダメージの計算をしながら誰一人失うことなく物語を進められることができるのか? 仲間を守る使命感から生まれる緊張が物語をさらに盛り上げる。
――:限られたユニットや倒れた仲間がロストする……本当に昔ながらのシミュレーションRPGですね。丸々コンシューマゲームが導入されたようです。当初からこれらの構想はあったのでしょうか。
そうですね。ただ「地上世界編」は、当初スピンオフタイトルとして売り切り制のリリースを考えていました。ですが、『ファンキル』の世界観や物語を深く知るためのコンテンツでもありますので、ひとつにまとめる形をとりました。もちろん、引き続き少女たちが活躍する従来のストーリーモード「天上世界編」も存在します。
――:なるほど。ずっと温めていたコンテンツだったのですね。
ええ。本当は積極的に地上世界についても見せたかったのですが、まだリリース当初は市場的にもモバイルゲームに対して、ストーリーの需要が少なかったようにも思えます。ですがここ最近は、ユーザーのニーズも変化していき、ストーリー性に深みのあるタイトルも増え、きちんとシナリオを読んでもらえるようになってきたのかなと。ただ、これらを適当に出してしまうと、様々な面で誤解を招いてしまう恐れもあるので、そこは慎重に導入しようかと考え、「プロジェクトZERO」では3つの切り口で内容を補完できるようにしました。
――:今回の「地上世界編」、世界観の深掘りはもちろんですが、ゲームシステムにおいても今泉さんのこだわりが感じられます。というのも、限られたユニットや倒れた仲間がロストするなかで、考えながら楽しむのが本来のシミュレーションRPGの面白いところじゃないですか。そうした外しちゃいけない要素が十二分に入ったコンテンツが「地上世界編」…だと。
そうなんですよ。とはいえ、「天上世界編」でもユーザーさんからは「難しい」との声をいただきます(笑)。
――:種類にもよりますが、往年のシミュレーションRPGであれば、おおむねロストする緊張感を保ちながら、限られた資産のなかで生き抜いていく面白味がありますよね。そういう意味では、かなりコアなユーザー層にとっては嬉しいコンテンツになるのではないかと思います。
ええ、ぜひ遊んでいただきたいです。新規の方も「地上世界編」から遊んでいただいてもいいですし、色々な遊び方が今回提示できるのかなと思っています。
――:ちなみに、コンシューマタイトルに近しい「地上世界編」では、エンディングも存在するのでしょうか。
はい、きちんと物語として完結させるつもりです。今回の更新ですべての内容が入るわけではなく、徐々にストーリーを更新していく形にはなります。
そもそも運用型のモバイルゲームは、基本的に完結することはないじゃないですか。僕としては、物語は描ききらなければユーザーの心に残る作品にはならないと思っています。なので描ききろう、と。これは『ファンキル』以外のFuji&gumi Gamesタイトルにも言えることですが、広げた風呂敷は責任持ってたたむことを目標としています。
――:おっしゃる通り、どうしても運営都合で物語が半永久的に続くのが運用型のモバイルゲームだと思います。もちろん開発側の気持ちも分かりますので、なかなか歯がゆいところでもありますよね。
基本的にエンタメは消費されるものだと思いますし、消化不良のままではダメだなと。この大型アップデートを機に、「天上世界編」の物語もアップデートしていきます。行く行くはふたつの世界が交錯するのですが、そこで「地上世界編」は終わりを迎えます。『ファンキル』リリース当初からあるキャッチコピーの、「天上の悪魔は――地上の天使となる」というのが、どういうことを意味するのかが理解できるかと思います。
――:そういう意味では、新規流入のきっかけはもちろんですが、おそらく今回のプロジェクトは既存ユーザーに対する大きなエンゲージメント(愛着度)にも繋がるのかと思います。
そうなれば嬉しいですね。これまで『ファンキル』は、女性キャラクターのみしか出てこなかったのですが、今回の「地上世界編」では男性キャラクターが登場してきます。これらの追加に対して、「上手くいってないからテコ入れするの?」みたいに思われるかもしれませんが、純粋に『ファンキル』の世界観をすべて表現するためにには、絶対に描かなければならない要素だと思っています。
――:きちんと過去も知ってこそ、より世界観にも浸れるかと思います。
可愛い女の子がたくさん登場するゲームとして、これまで大きな認知度がありましたが、あくまでもそれは『ファンキル』の一側面でしかありませんでした。お話した通り『ファンキル』の世界観では、本当に様々な設定や語られていない物語が存在します。
また、これまでもアニメIPとのコラボを行ってきましたが、最終的には自分たちのコンテンツがアニメ化できればと、改めて考えるようになりました。
■形を変えて随所に散りばめられた『ファンキル』の世界
――:そうして、コンセプトフィルムに繋がるのですね。プロダクションI.Gによる重厚なアニメーション作品ですが、こちらの詳細について教えてください。
コンセプトフィルムでは、約20分にわたってキル姫誕生の前日譚を描いています。監督にはProduction I.Gの塩谷直義さん(アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」等の監督)を起用、主人公・ゼロ役は、俳優の藤原竜也さんが演じてくれています。
主人公【ゼロ】役 藤原竜也さん
また、4月7日の六本木ヒルズアリーナでは、完成披露レッドカーペットイベントも開催し、藤原さんはもちろん、主題歌やイメージキャラクターを務めているでんぱ組.inc、そのほか出演声優陣のみなさんがご登壇されます。その六本木を皮切りに、名古屋・大阪など主要都市をまわった上映会も予定しています。
――:コンセプトフィルムでは、主人公の声に俳優の藤原竜也さんを起用していますが、こちらの経緯については。
主人公のゼロは、大きな声で叫ぶなど、気性の激しいキャラクターになっています。そんなゼロを演じられるのは、多彩な役柄や舞台経験も豊富な藤原さんしかいないだろうと思い、起用させていただきました。
――:実際に声が入った主人公の姿はいかがですか。
やっぱり格好いいです…これは好きになりますよね(笑)。
――:(笑)。ゲーム同様、舞台もファンタジーの世界からネオ東京となっていますね。
正直なところ、当初ゲーム本編でもネオ東京の部分を色濃く描きたいという思いがありました。持論として、ファンタジーの世界は王道RPGと呼ばれる様々な作品で描かれていますし、我々が行わなくてもいいのかなと思っています。たしかに「天上世界編」はファンタジー一色ですが、じつは随所に「地上世界編」のネオ東京に通ずる要素が秘められているのです。
――:どういうところにあるのでしょうか。
『ファンキル』って、ファンタジーのなかでもジーパンをはかせたかったんですよ。一見して王道RPGに見えるかもしれませんが、服装などのビジュアル面でユーザーさんに違和感を覚えさせることで、何か別の設定があるのではないかと、想像してもらえる広がりを意識しました。恐らく察しのいい人は、最初にキャラクターたちの服装を見ただけで「何かあるのでは?」と思ったかもしれません(笑)。実際に、そこには深いドラマがあったのです。
――:たしかに、ビジュアル的な繋がりも今回の「地上世界編」と繋がりますね。
エンタメでは、ビジュアルが情報として一番に多いです。昔のブラウザのモバイルゲームは、音も出ないで情報量としても乏しいものがあり、いかにキャラクターやビジュアルだけで魅力を伝えるかが重要でした。『ファンキル』の場合もメインキャラクターのデザインに関しては、より個性を出すために何度もコンペを繰り返して、現在の形になっています。
――:コンセプトフィルムは上映会を実施したあと、どこかほかで流すことはあるのでしょうか。
ネット配信も含めて現在検討中です。なにかしらきちんと視聴できる環境は用意できるようにはしていきます。
――:分かりました。そして、「VR体験」。期間中は渋谷の街を『ファンキル』の屋外広告でジャックするなど、本当に大規模なプロモーションになるかと思います。
VR体験イベントは、4月9日(土)、10日(日)に渋谷PARCO公園通り広場で実施します。VRヘッドセットを装着すると、目の前には「プロジェクトZERO」の舞台となる2200年の荒廃した渋谷の街並みが広がります。モンスターに襲われそうなところで、大きな声で「ゼロ!」と叫ぶと、藤原さんが声を務めるゼロが登場し、プレイヤーと一緒に戦ってくれる…という内容になっています。VRを通して『ファンキル』の世界観をよりリアルに体験できる、ほかには無い面白いイベントになっています。
――:こちら楽しみにしております。
■嫉妬するような作品作りを…
――:また、『ファンキル』などを手掛けてきたgumiのStudio gg2では、現在様々な職種で人材を募集されていますね。求めている人物像などがあれば教えてください。
新しいものを作ることに対して、挑戦できる人です。エンタメ作品は、無難に置きにいっても通用しないことがほとんどですから、積極的に新しいことに挑戦したい方にとっては、Studio gg2は活躍できる場だと思います。
また、作品の開発に携わった人が、きちんと「参加した」と思ってもらえるような作品にすることも大切です。ユーザーさんに対してエンゲージメントを高めるのは重要ですが、それは作り手の我々のなかにも必要ですし、熱量がなければ良い作品は生まれないと思っています。
――:思えば御社には、『ファンキル』『誰ガ為のアルケミスト』『シノビナイトメア』と力強い“オリジナルタイトル”がラインナップとしてありますよね。
ええ。オリジナルIPを手掛けるのは、本当に大変ですが、僕としてはオリジナルのほうが自身の裁量が広がりますし、何よりクリエイターとして面白いと思います。そこには覚悟もいるし、熱量もいるし、知恵も使わなければいけない。本当にオリジナルタイトルを作りたいという気概のある方には、新しいことに挑戦できる環境かと思います。
エンタメは何が当たるかは正直分かりません。ですが、当たっても外れても、ほかの作り手が嫉妬するものを作ることが正しいと思っています。「プロジェクトZERO」に関しても、「楽しそうなことやっている」と思ってもらえるような企画になっています。
――:分かりました。それでは、最後に「プロジェクトZERO」はもとより、『ファンキル』全体としての今後の展望を教えてください。
とりあえず完結させます。
――:(笑)。それは「天上世界編」も含めてのことですか。
もちろんサービスは続けますが、物語としてどこかで区切りを付けようと思っています。先ほども申し上げたように、今後「天上世界編」と「地上世界編」は交わることになるのですが、そこからが本当の物語のはじまりでもあります。
『ファンキル』が今後人々の心に残るために必要なことは、ベストな形で完結させることだと思っています。その意思表示が「プロジェクトZERO」でもあります。ぜひ、こちらの動きにもご期待ください。
――:本日はありがとうございました。
(取材・文:編集部 原孝則@hara_tatsu)
■『ファントム オブ キル』
■gumi(Studio gg2)
© 2014 Fuji&gumi Games, Inc. All Rights Reserved.
会社情報
- 会社名
- 株式会社gumi
- 設立
- 2007年6月
- 代表者
- 川本 寛之
- 決算期
- 4月
- 直近業績
- 売上高120億6600万、営業損益50億4000万円の赤字、経常損益45億1400万円の赤字、最終損益59億3400万円の赤字(2024年4月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3903
会社情報
- 会社名
- 株式会社Fuji&gumi Games
- 設立
- 2014年1月