JOGAとMCFの共同セミナーが開催…改訂された「安心安全宣言」「ガチャガイドライン」を解説 今夏「安心安全ガイドライン窓口」設置も検討中
一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)と一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)は、4月施行のJOGAの各種オンラインゲームガイドラインに関する解説セミナーを共同で開催した。JOGAは、オンラインゲームに関わる様々なガイドラインを作成してきたが、今年2月改訂した以下のガイドラインを公表し、4月から施行した。
「オンラインゲーム安心安全宣言」
「オンラインゲームにおけるビジネスモデルの企画設計および運用ガイドライン」
「ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン」
▼JOGA ガイドライン http://www.japanonlinegame.org/guidelines.php
今回の解説セミナーでは、より多くの参加者に、景品表示法等様々なオンラインゲームに関わる国内法規を反映させたJOGAのオンラインゲームガイドラインを理解してもらうため、MCF、JOGA以外のオンラインゲーム事業者にも開放。当日は、参加申込者数195名、申込者数105社(このうち両団体会員45社)と定員いっぱいの参加者が集まった。言い換えれば、会員以外からは60社もの企業が本セミナーに参加していることになり、関心度の高さが参加企業からも伺えた。
▲セミナー冒頭では、一般社団法人日本オンラインゲーム協会 共同代表 越智政人 氏(写真左)、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム 代表理事 千葉功太郎 氏(写真右)のJOGA、MCF両代表からの挨拶があった。セミナーを通して、事業者による今後の運営改善、ゲーム業界全体の健全化、何よりユーザーが安心・安全で楽しめる環境作りに取り組む姿勢を語った。
▲当日は、消費者庁 消費者政策課 課長 鈴木一広 氏も登壇。消費者庁に寄せられるオンラインゲームに関する相談は、2013年度をピークに減少傾向にあるものの、2015年度は約4,000件の相談が寄せられたという。「消費者の方が適切な判断ができるよう、事業者は配慮して提供することが重要。セミナーを機に、分かりやすい情報提供が広がっていくことに期待しています」とコメント。
■ガイドライン4種の改訂方針
ここからは、JOGA ガイドラインワーキンググループの小川氏が登壇し、4月1日より施行された改訂版「JOGAガイドライン」に関するプレゼンテーションが行われた。「オンラインゲーム安心安全宣言」(以下、安心安全宣言)と「ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン」(以下、ガチャガイドライン)のふたつの資料をもとに解説された。
そもそもJOGA ガイドラインは、2012年の「コンプリートガチャ騒動」や2013年の「未成年高額決済問題」に代表されるような、オンラインゲーム業界が抱える様々な問題が顕在化してきた時代に作成された。そして、2012年~2013年に自主規制を目的としたガイドライン4種が公表。
▲4種のガイドライン。市場の拡大により、2013年4月にはスマホゲームに特化したガイドラインが公表された。内容は、ほぼ安心安全宣言とガチャガイドラインを統合し、スマホゲーム向けにカスタマイズされたものという。
ガイドライン改訂に至る経緯については、スマホゲームの隆盛による利用者数の増加、オンラインゲーム自体の多様化などによって、これまでのガイドラインでは対応が困難になりつつあることを挙げた。各種ガイドライン公表から約3年が経過し、加えて今年の4月1日には、景品表示法が改正されたこともあり、事業者に求められる役割が大きくなってきているようだ。
そして、時代と社会の要請に合わせ、ガイドライン4種を改訂対象として2015年8月頃から再検討を開始した。
▲ガイドライン4種の改訂方針としては、PCゲームとスマホゲームなど複数存在することによるガイドラインの複雑化に伴い、スマホガイドラインを廃止。スマホガイドラインの内容は、安心安全宣言とガチャガイドラインに統合する形で改訂。
では、具体的に「安心安全宣言」と「ガチャガイドライン」にて、どのような改訂があったのか。ここからは両資料の内容を一部抜粋して解説、詳細は該当リンク先より確認してほしい。前提として、ふたつのガイドラインは、インターネットに接続された端末機器が対象となる。まずスマホガイドライン統合による「安心安全宣言」の主な追加変更箇所は下記の通り。
・利用者が安心して利用できる安全な環境を提供するために、利用規約を定める。
・利用者が健全に利用できる、安全な環境を提供。
・ゲームを健全に運営するために関係法規を遵守。
利用規約は、ゲーム開始前に掲示したり、分かりやすい位置にリンクを設置したりと、ユーザーが簡単に閲覧できる仕組みを導入、さらに青少年が健全に利用できるように、不適切な投稿やコメントなどについては対策、対応を行うなど。また、スマホガイドライン統合により、総務省が規定する「スマートフォン プライバシー イニシアティブ」 のプライバシーポリシーに準拠し、対象8項目のプライバシーポリシーを作成し、利用者が簡単に参照できる場所に掲示、またはリンクを設置することで明記することが定められている。
■「安心安全宣言」の詳細はこちら
http://www.japanonlinegame.org/pdf/JOGA_declaration_2016.pdf
■ガチャガイドライン改訂箇所 有料ガチャの設定例など
「ガチャガイドライン」改訂箇所の前に、小川氏は本項目で用いられる用語の定義について説明した。以下は「ガチャガイドライン」より抜粋したものとなる。
□ a. ランダム型アイテム提供方式
一般的には「ガチャ」と呼ばれる、文字、絵、符号等を電磁的に表示した、オンラインゲーム上で使用できるキャラクター、アイテム等(以下、アイテム等)を、偶然性を利用してアイテム等の種類が決まる方法によって提供する方式をいう。
□ b. 有料ガチャ
利用者が有料で利用するランダム型アイテム提供方式をいう。
□ c. ガチャアイテム
ランダム型アイテム提供方式により利用者に提供されるアイテム等をいう。
□ d. ガチャレアアイテム
有料ガチャにより提供されるガチャアイテムであって、同一の有料ガチャにより提供される他のガチャアイテムと比較して、顕著な特徴を有するもの、提供割合が低いもの、または提供数や期間が限定されたもの等、顧客を誘引 する目的で提供されるものをいう。
なお、ランダム型アイテム提供方式については、ガチャという名称がなくともアイテムが入った宝箱を鍵で開けるなど、ランダム性の仕組みが伴うもの、及び宝箱の入手自体、鍵を開ける方法が有料といったような場合でも、本ガイドラインの適用を受けることになるとのこと。そして、ガチャガイドライン改訂箇所及び、表示に関する事項は以下の通り。
■ガチャガイドライン改訂箇所
○「有料ガチャ」に限定したガイドラインであることを明確にするため、タイトルを一部変更
・「変更前」ランダム型アイテム提供方式における表示および運営ガイドライン
・「変更後」ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン
■ガチャガイドライン表示に関する事項
○有料ガチャの各情報を、以下いずれかのページや画面に掲載すること。
・公式サイトのトップページ
・有料ガチャを提供する各種画面
・公式サイトまたは有料ガチャを提供する各種画面からリンクされたページ
○有料ガチャのページに掲載する情報
a. 有料ガチャで提供される全てのアイテムの名称(イラスト、種別等で可)
b. ガチャレアアイテム
c. 提供数、提供期間が決まっている場合は、提供数または提供期間
d. 提供割合を変更する場合は、変更条件と変更度合い(※前日まで)
e. 比較対象表示をする場合は、比較対象元の有料ガチャの情報
f. 重複する可能性の有無とその条件等
■ガチャページ表示例
▲上記の表示事項になぞり、ガチャページ表示例を見てみよう。まず「a」として一覧を表示、「b」ではどれがレアなのかを明記、「c」では提供期間、「e」では比較対象を表示し、「f」にて同じガチャアイテムが重複して提供される可能性があるのを記載。
続いて、ガチャガイドライン"設定"に関する事項について。
(1)ガチャレアアイテムを提供する場合は、以下いずれかの設定や表示をする
a. いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額を有料ガチャ一回分の価格の100倍以内に設定
b. いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額の上限を50,000円以内に設定
c. ガチャレアアイテムの提供割合の上限と下限を表示
d. ガチャアイテムの種別(レア度やカテゴリ等)毎に提供割合を表示
(2)ガチャアイテムは価額を設定した上で、以下のいずれかに遵守する
a. 有料ガチャ一回利用時、有料ガチャ一回分の価額と同等またはそれ以上
b. 有料ガチャ10回利用時、有料ガチャ10回分の価額と同等またはそれ以上
c. 有料ガチャ5,000円利用時、5,000円と同等またはそれ以上
(3)何らのガチャアイテムが提供されない可能性がある有料ガチャの提供は行わない
■有料ガチャ設定例
▲上記の表示事項になぞり、有料ガチャ設定例を見てみよう(※有料ガチャ一回の利用を500円とする)。(1)a&bでは、合計が1%を超えているため表示しなくてもいいという。(1)cでは、ガチャレアアイテムの提供割合の上限と下限を表示。(1)dでは、カテゴリーごとの提供割合を表示している。
最後にガチャガイドライン運用に関する事項と禁止事項について解説された。
■ガチャガイドライン運用に関する事項と禁止事項
○ガチャアイテムの提供割合を事前の告知なく変更しない。止むを得ず、ガチャアイテムを提供割合を変更する場合は、可及的速やかに告知する
○運用責任者を定める
・運用責任者は、有料ガチャの提供割合を事前に承認し、書面等で記録する
・運用責任者は、有料ガチャが設定された通りに適切に稼働することを確認し、書面等で記録する
○有料ガチャのシステムは、安易に提供割合が変更できないようにする
○不当表示(優良誤認、有利誤認)をしない
○絵合わせ(コンプガチャ)をしない
■ガチャガイドライン内部監査
○ガチャガイドライン記載の内容が適切に運用されているか監査する
○監査担当部署または監査担当者は、有料ガチャを運用する部門とは別とする
○監査の結果、不適切な事実が見つかった場合は、速やかに改善し再発防止策を練る
■「ガチャガイドライン」の詳細はこちら
http://www.japanonlinegame.org/pdf/JOGA20160401.pdf
最後に小川氏はガイドラインについて、「多くの企業が最低限守るべき内容であって、実際の現場では一つレベルを上げたうえでの対応が、本来のユーザーに対する提供の仕方だと考えます」と言葉を添えた。また、JOGAでは会員企業向けに「有料ガチャ類例集」を配布し、様々な有料ガチャの販売方法に対する表示方法等を例示している。昨今の市場では、様々な有料ガチャの販売方法が登場しているため、これらに対応するために配布しているという。
また、JOGAでは新しい取り組みとして「安心安全ガイドライン窓口」の設置を2016年夏ごろまでに検討中とのことだ。窓口設置の経緯として、一般消費者からのJOGA加盟企業のゲーム運営に関する意見・要望・クレームなどを、業界団体内で吸収し、サービス改善に繋げるためとしている。これまで一般消費者からのクレームについては、国民生活センターや消費者庁などが対応していたが、業界内で窓口を設置することで、問題点の顕在化及び迅速な解決・対応にも繋がるのではないだろうか。
今後も業界の健全化に向けてセミナーを開催していくという。現在予定されているのは「JOGAガイドライン解説セミナー:コンプガチャガイドライン」、「改正景品表示法のポイントについて(課徴金の考え方)」、「未成年高額課金への対策について」、「資金決済法とサービス終了時の対応について」など。
会社情報
- 会社名
- 日本オンラインゲーム協会(JOGA)
会社情報
- 会社名
- 一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)