【インタビュー】野球ファンに捧ぐ! 『プロ野球ロワイヤル』に盛り込まれた3つのポイントとは!? 開発の裏側まで直撃リポート(後編)


3月31日より配信を開始した、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のスマートフォン向け球団経営プロ野球シミュレーションゲーム『プロ野球ロワイヤル』。
 
本作は、プロ野球チームのGM(ゼネラルマネージャー)となり、人事、育成を駆使して試合での勝利を目指し、そのうえ、街づくりも行える「地域密着」型の「球団経営」シミュレーションゲーム。ゲーム内では、ドラフトでの選手獲得や街の活性化などが、地域に密着したチームの強化に繋がっていく。また、1シーズン143試合が1日で全試合行われるため、毎日、日本一への熱い戦いが楽しめる。
 
今回は、そんな『プロ野球ロワイヤル』のプロデューサーである馬場保仁氏と、ディレクターの異儀田諭氏にインタビューを実施。その内容を前後編の2回に分けてお伝えしていく。後編では、開発時の苦労やこだわりについてのエピソードをお届けする。

 

■サーバー負荷軽減と魅せ方を兼ねた工夫

 

『プロ野球ロワイヤル』プロデューサー 兼 野球ゲーム伝道師
馬場保仁氏(写真左)
 
『プロ野球ロワイヤル』ディレクター
異儀田諭氏(写真右)


――:ちなみに、開発にあたって一番苦労されたポイントはどこになりますか?
 
異儀田諭氏(以下、異儀田): DeNAはサーバーサイドのバックエンド側を強みとしてきたので、その強みを最大限に活かしたいという想いがあり、サーバーサイドの技術的なハードルは高く設定しました。2時間で全ユーザーさんの1ヶ月分の試合を処理できるようにしたところが一番苦労したポイントです。試合のほか、他のユーザーさんが良い選手を獲得した情報なども共有するようにしているので、設計段階から今もずっと苦労していますね。
 
馬場保仁氏(以下、馬場):成績争いも野球の醍醐味として取り入れたいので、試合はちゃんと一打席単位で処理しています。野球ファンの納得する本格感に繋がる部分でもあるので譲れませんでした。
 
――:実際、負荷の軽減案として現段階で取り入れられたことはありますか?
 
異儀田:少し具体的な例を挙げると、リーグ戦で12球団すべてユーザーマッチングにせず、COMを入れているところは成績調整のほか、サーバー負荷対策でもありますね。COM同士の試合だけ早く処理して一旦データを逃がすことで2時間おきの処理を少しずつ小さくするというようなことはしています。


 
馬場:ひとつの工夫です。ユーザーさんとしては勝てる相手がいるほか、同一リーグにユーザーさんが4人なので、ひとりだけクライマックスシリーズに出られないというのも中々熱く盛り上がれますよね。
 
異儀田:順位の上の方にはユーザーさんが並ぶだろうと想定していたので、クライマックスシリーズ出場の争いが激化するなという部分を読んで、狙って設定しました。ユーザーさん同士の実力が拮抗するようにマッチングしているので、毎日、ヒリヒリとした競り合いができます。
 
馬場:ただ、ユーザーの皆さんを疲労させるといけないので、例えば、日々のミッションをクリアすることで練習効率を上げるアイテムが手に入るといったご褒美を用意したりしています。普段より経験値を得られるアイテムを活用すれば、短時間での育成も可能にしているので安心してください。プレイした時間が多いほど強くなれるのは良いと思うのですが、遊べる時間が限られている方でもある程度ゲームの進行が捗る手段を別に持たなくてはいけないと思いますので。


▲毎日入れ替わるデイリーミッションをクリアすれば報酬がもらえる。
 
――システム的なところでこだわった部分を教えてください。
 
馬場:本作一番の発明だと思うのは、街と育成ボードです。開発メンバーからアイデアが出てきた時、わたし自身も感心させられましたので(笑)。この2つの要素が表裏になっているところが大事なポイントで、元々はひとつのものではなかったんです。わたしが着想した時には、街づくりを導入し、ログインするたびに回収できるものを用意し、ユーザーさんの「再帰のモチベーション」を高めたい! ということを考えていました。
 
異儀田:街を導入することになったのが企画立案から1年ほど経ったところで、私としては、ただ建物を増やすだけでパラメータが伸びるような街のシステムは嫌だと思っていたんです。そこで、「街の中を歩きたいです」と言ったら今の案が出てきました。
 
 

▲街に建設した施設と育成ボードに設置されたマスの効果が連動している。

馬場:一方、先ほども話した『栄冠へのキセキ』でボードゲーム状の育成システムを採用していたので、育成ボードの要素は最初からあったんです。ただ、よく街と育成ボードをひとつに融合させて、ある種のジレンマが発生するところにまでたどり着いたなとは思います。開発メンバーの頑張りですね。
 
異儀田:そこから、マップでキャラクターたちを歩かせてみたり、コーチやヤンキーを育成ボードに登場させたり……建てたあとの二次的なカタルシスが生まれないことには意味がないということを話しながらつくりました。
 
馬場:そして、建物を建てることで街にキャラが来るようにしたのが次のアイデアです。映画の『フィールド・オブ・ドリームス』ってありますよね? あの中で、"If you build it, he will come." トウモロコシ畑を切り拓いて野球場を建てたら、彼がやってくる! というイメージとしては、あれのオマージュですね。我々は野球が大好きですので(笑)。話を戻して、元々、『栄冠へのキセキ』でも育成ボードにイベントキャラは登場していたのですが、そのときはランダム出現だったので、因果関係があるものを作りたいという話はしていたんです。何を建てれば誰が出てくるというのを探すのも楽しい遊びになりますし、吹き出しが出ればタップしたくなりますよね。

 
 
▲特定の施設を建設すると、街にキャラクターが出現。いるだけで施設の購入価格が割引かれる「主婦」や、練習で遭遇すれば野球ptをもらえる「ヒラ社員」など、個性豊かな住人たちばかり。周囲の施設の組み合わせによってはキャラが進化して効果がアップすることもある。

――:今後、例えば街にOB選手や日本人メジャーリーガーが登場することはないのかという部分が気になったのですが、その辺りはいかがでしょうか?
 
異儀田:プロ野球ファンが喜ぶ本格的な野球ゲームを目指す身としては、やはりOBの方々にもしっかりと出ていただきたいという想いはあり、鋭意コンタクトを取っている状況です。実は第1弾は既に決定しておりまして、ベイスターズOBの鈴木尚典氏と川村丈夫氏のイベントを実施する予定です。

 
▲ゲーム内に登場する鈴木尚典氏(写真左)と川村丈夫氏(写真右)。
※取材日がイベント開催前のため、現在、ゲーム内で本イベントは終了している。関連記事

 
■鈴木尚典氏プロフィール
生年月日:S47.4.10
ポジション:外野手
経歴:横浜高→大洋→横浜
08年引退。現球団職員(野球振興担当)。
 
■川村丈夫氏プロフィール
生年月日:S47.4.30
ポジション:投手
経歴:厚木高→立教大→日本石油→横浜
08年引退。現球団職員(野球振興担当)。


異儀田:これまでの野球ゲームと明確に違うのは、本作では、OBの方々が今何をされているかや、現役時代にどういったご活躍をされたかという部分にもスポットを当てています。当時のファンなら、懐かしさを感じられるような物語付きのイベントに仕上がっています。もちろん、最終的には選手として自分のチームに入れることも可能です。
 
馬場:私は、ゲームもひとつのメディアだと考えています。プロ野球の歴史が紡がれてきた中から、彼らの偉業を伝えていくことでプロ野球ファンに訴えられるものがあると思うんです。映像ではなくゲームでしか伝えられないことも山ほどあると思いますので、今回はエピソード的な形でエンターテインメントとしてユーザーさんに提供し、当時のファンには思い出してもらい、また若い方々は選手を知るきっかけになればと考えています。単に能力が高い選手が来ましたというだけではなく、OBの選手が活躍されてきたからこそ今の野球があるんだということを伝えていきたいなと。
 
 

▲イベントでは、当時のエピソードや格言を聞くことができるため、OB選手のパーソナルな部分を深く知ることができるようになっている。

異儀田:例えば、プロの世界では鳴り物入りで入団しても、中々活躍できずに引退せざるをえなかった方々も数多くいらっしゃるんですよね。私の希望としては、そういった方々に出演していただいて「俺ならこういう風に活躍させた」という体感を是非ユーザーさんに味わっていただきたい。怪我に泣いた選手を華々しく引退させたり、OB選手との接し方についてはもう少し考えたいと思っています。
 
馬場:やはりファンには思い入れがあるので、その想いを何かしらの形で再現させたい。ゲームの良いところのひとつとして、ifの世界が楽しめるというところがあるので、そういった遊びのギミックを用意しないといけないとは考えています。

 
――オープニングにオリジナルストーリーが入っているのも、そういった理由からでしょうか?
 
馬場:オープニングに関しては、アセットをダウンロードする際の体感速度を減らすための工夫でもあるのですが、より感情を沸き立たせるためのシチュエーションを作りたいと考えてのことでもあります。ストーリーは各々のユーザーさんに想像していただきたいので、キャラの立ち位置や関係を見せることで何かしらのドラマがあるようにはしたいなと。あらかじめ設定を決めておけば、今後、イベントの際にストーリーを作ることも比較的容易になりますし、それが、世界観を作るということだと思います。
 


――:引退とそれにまつわるシステムを採用した経緯を教えてください。

 
馬場:GMとして球団経営をするゲームなので、チームをやりくりするところを一番楽しんで欲しいという想いからです。ただ、努力の結晶がいきなりなくなってしまっては、感情的にやっていられないので、何か活きる形のものを残さないといけない。そこで、今後導入予定の「レジェンドチーム」に殿堂入りさせてイベントで展開したり、スキルやアイテムとして引き継げるようにしているんです。選手自身に対する愛と、チームとして紡がれていくという二方面で対応しています。
 

▲☆3以上の選手が引退したときにはアイテムがもらえるので、残った選手に装備すればチーム力の強化が図れる。

――選手への愛という部分では、引退した選手が街に出てくるというのは嬉しいポイントですよね。
 
異儀田:そうですね。スキル継承がその部分に当たります。お気に入りの選手のスキルを別の選手に引き継いでいけるほか、レアリティが高いほど効果の高いスキルを持っています。アイテムに関しては、レジェンド選手になったタイミングで、その選手の名前を冠したバットやグローブなど、何かしらのアイテムがもらえます。手に入れたアイテムは他の選手に装備することができるので、例えば、筒香嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)のバットに梶谷隆幸選手(横浜DeNAベイスターズ)のスパイク、荒波翔選手(横浜DeNAベイスターズ)のグローブを付けた選手も作れるんです。本来であれば足の遅い選手の足を速くするなど、短所の克服や長所を伸ばすのにも使えるうえ、選手を育てるほどアイテムのパラメータも上がっていくので、数年先を見据えて、逆算して育成する選手を選択していくのも面白いかもしれません。これを繰り返すことで、今までにないパフォーマンスを出してくれる選手が多々生まれます。自分の紡いできた系譜次第で、チームがいろいろな方向に変わっていく面白さがあるかなと。引退に対してネガティブな印象を持たれることもあると思うのですが、少なくとも単に新しい選手がたまたまきたから入れ替える、というのではなく、自分でイメージして、考えて戦略的に動ける、付加価値として大きいものを提供できたという認識があります。
 
馬場:選手単体で完結しないということです。上にいくためにはサイクルを回した方がいい。自分なりの思い入れを作った分だけ理想のチームに近づいていくというのが今までの野球ゲームにはない遊び方ですね。

 


■最後はみんなで協力して、ライバルたちに感謝する

 
――:そのほか、同一リーグから代表選手が選出されて戦う「プラチナカップ」もかなり特徴的ですね。
 
異儀田:リーグ戦では、マッチングされたユーザーさんと3日間、ペナント優勝や日本一を賭けて争うんですけど、最後に行われるプラチナカップでは、リーグごとに代表が選出されたチーム同士で大きいトーナメントを戦うんですよ。なので、ドラフトで選手を獲り合いながらも、最後はみんなで協力して強いチームを作らなきゃいけないというフェーズがありまして。例えば、私と馬場が同じリーグにいるとして、馬場のチームに優秀なファーストがいたら、私はセカンドを育てて送り込んだ方が良いなと考えることで、チームより選手にフォーカスして育成を進めようとなることもあるんです。自分がログインしたタイミングによって状況が変わるので、プラチナカップ含め、毎日、見え方とかやりたいことに変化が感じられるゲームになっていると思います。
 
馬場:代表に選ばれると、溜めることでレアリティ確定のガチャが引ける「リング」が配布されるので、自分のチームの選手が選ばれるよう一所懸命に練習するんですよね。
 
異儀田:リングの配布数は、チームがどこまで勝ち上がったのか? や、代表に送り込んだ人数によって多くなっていくので、チーム全体の力を上げるのが理想的な形となります。

 

▲代表が選出されるまでの間、ライバル球団と協力して短所を補えるほか、枠を競い合うことでチームの総合力を高めていくこともできる。選出された自球団選手の活躍度合いに応じてもらえるリングが増えていく。
 
馬場:物凄く欲張りな方の中には、全ポジション自分のチームの選手で埋めたいという人が出てくるかもしれないですが、それもひとつの遠大な目標として良いと思うんですよね(笑)。実力が近いユーザーさん同士でマッチングを行っているので、簡単には達成できないと思いますけどね。

 
――:それを達成しようとすると、他のチームのエースを差し置いて自分のチームの3番手、4番手ピッチャーが選出される必要がありますからね。
 
馬場:ピッチャーは比較的幅広く人数が収まるようにしているので、頑張れば、なんとか送り込めると思いますよ。
 
異儀田:送り込んだ人数や、共に戦う球団の能力を見て、結果が出るのを心待ちにしていただければと。リーグ戦や球団運営とは違った楽しみがあります。リーグ戦中は、ドラフトで有望な選手を取られて悔しい思いをすることがあるかもしれませんが、その選手がプラチナカップで活躍すれば、感謝することになるかもしれません。

 
――:それは今までにないシステムですね。
 
馬場:ギルドほど縛られていないけど、ひとつのチームとして戦う一体感。それこそ、現実でも、普段はリーグ戦を争っている12球団のファンがいますが、いざ国際試合で侍ジャパンが結成されると、国が一丸となって応援しますよね。その感覚に近いものがあります。



――:最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。
 
異儀田:最初にも申し上げた通り、プロ野球ファンが一喜一憂できるコンテンツを目指して作ってまいりました。現状、至らないところもございますが、ユーザーの皆さんや球団の意見を取り入れながら、ファンの方々により納得していただけるようなクオリティまで改良していきます。球界に貢献していきたいという想いもございますので、オフシーズンでも『プロ野球ロワイヤル』を遊んで、野球って面白いと思っていただけるよう頑張ります。末永く楽しんでいただければと思います。
 
馬場:プロ野球をGMとして遊ぶことで得られる、野球ファンならではの感情が得られるゲームというコンセプトでゲームを作っています。同時に、"本格感"を大事な柱としていますので、昨年の選手成績の膨大なデータを蓄積しておられるデータスタジアム社と協力することでこのゲームでなければ入っていないような、膨大なデータから参照されるスキルも実装できています。また、先ほどもお話したように、ベイスターズとの連携で現場の方々にお話を伺い、私たちでないと取り入れられないエッセンスをゲームで表に出すことができれば、よりリアルなプロ野球ゲームとして楽しんでいただけると思います。最後に、ずっと野球ゲームを作ってきた私たちが、今だからこそできる手法で、プロ野球ファンの皆さんにどう楽しんでいただくか? を考えに考えて作ってまいりました。いま、改めてプロ野球の素晴らしさをみなさんに伝えたい想いがございます。プロ野球の、野球ゲームの底力を見せる時だと思いますので、ひとりでも多くのプロ野球ファンの方に『プロ野球ロワイヤル』を遊んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 
(取材・文:編集部 山岡広樹)

 
 
■『プロ野球ロワイヤル』
 
一般社団法人日本野球機構承認, ©DeNA Co., Ltd.
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
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