【連載】ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- 第二十七回「転職 〜入門編〜」
■第二十七回「転職 〜入門編〜」
最近、多くの方をお話させていただく機会があるのですが、その中で、
「活人研では、学生さんや新卒採用にむけての話しか書かれないんですか?」
と、質問をうけました。そんなつもりは無かったのですが、つい、新卒採用や学生さん向けの言葉に終始していたところがあるかもしれません。ですので今回は、中途採用と言いますか、転職というものをわたしの、
求職者(転職希望者)としての経験
求人者(採用担当者)としての経験
両方の観点から、お話したいと思います。
まずは…
「活人研では、学生さんや新卒採用にむけての話しか書かれないんですか?」
と、質問をうけました。そんなつもりは無かったのですが、つい、新卒採用や学生さん向けの言葉に終始していたところがあるかもしれません。ですので今回は、中途採用と言いますか、転職というものをわたしの、
求職者(転職希望者)としての経験
求人者(採用担当者)としての経験
両方の観点から、お話したいと思います。
まずは…
●転職のきっかけ
実際に、わたしも、15年セガさんに勤務させていただき、大好きなセガを辞める、当時の仲間たちをどんな理由にせよ、置いていくことにかなりの葛藤をいたしました。新卒で入った会社に5年、10年勤められた方であれば、誰しもが悩まれるところだと思います。
と、いうか、そもそも「転職」なんて、わたしは視野になかったのです。セガさんでは、それなりに評価されていましたし、名越さん(名越稔洋氏)はじめ上長にも恵まれていました。ただ、わたしの場合、以前このコラムでも書かせていただきましたが、突然2つほどきっかけがふってわいてきました。
1、スマホというあらたなデバイスで、ものをつくってみたい
2、比較的小さめのプロジェクトで人材を育成したい
というものです。これで迷っている時に、東日本震災が発生し、大勢の方が亡くなるのをモニターごしに見て、「人生は一度きりだから、迷うならば、行動しなくてはいけない」と自分で思い立ちました。ただ、その際に、どうしようかな? なにがいいんだろう?と、あらたな河岸を探そうと思ったものの、具体的な行動はイメージできていませんでした。おそらく、クリエイターの皆さんの中にも、この状態、
「このままではいけない、何か行動して、更なる自己成長や目標を追求したい!」
と思われるところまでは、比較的多くの方がたどり着かれているのではないか?と思います。で、実際にわたしはどうしようとしたか?というと…実は、運と縁といいますか、結果的には、能動的に行動しなくても事態が動いてしまいました。
それは、東日本震災の翌週、非常に多くの職業紹介のエージェントの方からご連絡をいただいたからです。実をもうせば、この段階よりも前、毎年のようにお声がけをいただく企業さん、エージェントさんはいらっしゃいました。ただ、わたし自身、セガが好きだし、不満もなかったし、責任あるの仕事をしているという自負があったので、転職なんぞ一考もしなかったのです。
ですが、この時は、自身で課題を持ち、動き出したいと思っていた時でしたので、
「まずは、会って話を聞いてみよう」
と、考えました。やはり、タイミングというのは、あるのです。
でも、ここで1つ怖いというか、よくわからないので、どうしたものか?ということに直面します。
●職業紹介エージェント、ヘッドハンターって何する人?
ということです。
いろいろ、それまでも電話、電子メール、DMなどいただいてましたが一瞥もしてなかったので、内容も確認してません(笑)。ここにきて、「もっと、話を聞いておけばよかったな」と後悔したものの後の祭りです。なので、片っ端から会うことにしました。大手、外資、エグゼクティヴサーチと、いろんな会社さんにあって、お話をききました。そこではわかったことは、
・基本、エージェントは転職希望者(求職者)の味方
・自分(求職者)は、費用はかからない
・1つのエージェントが、求人会社をいくつも紹介してくれる
・面倒な、日程調整や、金額の交渉なども依頼すればやってくれる
と、プロ野球の代理人(エージェント)みたいなこともやってくれるし、いろんな会社を案内してくれる、ということがわかりました。
でも、自分で体験しなかったら、正直、「胡散臭い」「しつこく連絡してくる」と思っていたところで、終わっていました。
また、わたしの経験から言いますと、有名な大きな会社のエージェントさんでも必ずしもいいとは限らないです。結局、人間と人間なんですよね。エージェントも人間ですし、求職者も人間なんです。相性はありますし、仕事のスタンスも人それぞれです。次の会社に押し込むことしか、考えてないような人間は、エージェントをやっていないとわたしは信じたいですが、誠実に、親身にで寄り添ってがっつりやってくれるかどうか?は、タイミングと、担当者によるところは大きいと思います。また、大手は、1人が受け持つ担当も多く、変な話ですがノルマもあることでしょう。
なので、寄り添いたくても限界がでてきてしまう方もいらっしゃるかもしれません。ただ、大手は、大きな求人データベースをもっておられます。つまりは、人を欲している企業の登録数が非常に多いということですね。これは、求職者にとっても大きなメリットになります。
逆に、少人数のエージェント会社さんもあります。1人1人にキメ細やかな対応をされて、親身に寄り添うことも多いように感じます。もちろん、繰り返しますが、タイミングと担当者によりますが。ただ、エージェントとの距離が近いのは間違いないです。でも、逆に言えば、求人データベースの大きさについては、大手に比べるとやや小さくなるかもしれません。
このように、どのエージェントさんに相談するのがいいのか?は、自分しだいなところが見えてきます。わたしのおすすめとしては、複数のエージェントに登録すること、です。そして…
・大手2,3社
・小回り効く少数エージェントを、2,3社
とか登録できれば、お互いの得意なところでうまく、紹介して、攻めてくれると思います。あとは、自分にとって、そのエージェントが信頼に足る人間か?の見極めは、自身でおこなうことですね。(もしくは、信頼する友人から紹介してもらう)
振り返りますと、、、
となります。さて、次に、
●どんな流れでおこなわれる?
これも、やったことがないと本当にわからないですよね。
しかも、かなり「めんどうくさい」と思うことばかりです。わたしもそう思っていました(笑)。
でも、人生がかかったこと、少なくとも今後5年くらいの人生には大きく影響することなわけです。少々めんどくさくても、ここは1ヶ月くらいのことですから、我慢して、がんばりましょう!がんばるのは当たり前なので言いませんが(笑)。
Step1: 登録する(エージェント?自己応募? いずれにせよエントリーは必要)
↓
Step2: 書類(履歴書、職歴書)を作る
↓
Step3: 転職する理由、就業条件、金銭的なイメージを考え、まとめ、伝える
↓
Step4: 書類選考
↓
Step5: 面接(何回あるかは、企業によります)
↓
Step6: オファーレター(内定+諸条件の提示)
↓
Step7: 承諾
となって終わります。もちろん、途中で、おしまいということもあります。求職者側から「この会社、あわないや…断ろう」ということも十分にありえます。もちろん、求人者側から、選考不合格が伝えられることもあるでしょう。いずれにしても、エージェント登録していたら相談することです。そこでの反応でも、エージェントさんの人柄や相性を見極めることができると思います。
ちなみに、成立すると、エージェントには、求人企業から、成功報酬が入ります。なので、実際に決めないと彼らも一文にもならないわけです。ただ、たいていの場合に、紹介して、入社した人材が、入社後、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月とかで退職してしまった場合は、一部返金しないといけない契約が多いと思います。だから、というわけではないですが、担当エージェントさんは、入社後も継続して話をきいてくれる方がいらっしゃいます。最大限に活用しましょう!
●転職採用の種類ってどんなのがあるの?
ここまで説明してきて、簡単ではありますが、未経験の方には、少しわかっていただけたかと思います。では実際に転職する際には、エージェントを必ず使わないといけないのか?といえば、必ずしもそんなことはありません。その他にも、
★自己応募
→その会社の「採用」ページにいって、自分で必要事項と書類を提出することで開始
【メリット】
・エージェント費用が発生しないので、企業(求人者)は喜ぶ
・間に人が入らないので、早いやりとりができる
【デメリット】
・自分のことを積極的に売り込んでくれる人はいない
・日程調整、金額交渉など、すべて自分でやらないといけない
★社員紹介
→その会社の社員から案内されたり、社員を介してつないでもらう(制度がない会社もあり)
【メリット】
・エージェント費用より、安価な紹介費を社員に支払うことで済むので、企業は喜ぶ
・友人から、会社の中をいろいろ聞くことができるし、相談できる
【デメリット】
・特にないが、友人以外の人に面接などで会って、「ないな」と思ったときに、やや
断りにくい…
★エージェント登録
→既に語ってきましたが、大手、少人数の複数のエージェント登録を薦めます
【メリット】
・多くの企業を紹介してくれる →自分では限界がある
・自分のことを積極的に売り込んでくれる
・日程調整、金額交渉など、かわりにしてくれる
・自分から断る時も、直接ではないので、気楽
【デメリット】
・信頼できるエージェントを見つけないといけない
が、挙げられるかと思います。
どれも一長一短です。わたしの友人などは、この3つともを実施して、転職した人間もいます。人生かかっているわけですから、どれだけ慎重になってもなりすぎはない、ですからね。ただ、それで、決心が鈍るとか、ころころ考えがかわるのもどうかと思いますので、自己応募以外の場合は、自分の意思、意見をまとめるためにも、友人やエージェントを壁打ちがわりに使い、話をしましょう!!
●最後に、、、
今回は、「転職入門」のような形で書いてきました。
案外、情報がなく、単に皆さん知らないことが多いと思います。わたし自身がそうでしたので。わたしは、エージェントさんを介して、紹介していただいたあとは、ほぼほぼ、DeNAの面接に出てこられた方が魅力的だったので、その方と人事の方と何度も話をして、決めました。その中でもエージェントは6社、実際の選考は4社、お話を聞きました。最後にお伝えしたいのは、
「はじめての転職は、1社だけ受けて決めてしまうのは避けよう!」
です。就職活動は、面倒ではありますが、客観的な自分の評価・価値を知ることができる数少ない機会です。自分が思っているよりも、得意な部分ではないところが評価されることもあります。
また、最初にもらう「内定」は嬉しいものです。(新卒のときも同じですけどね)
そうすると、舞い上がってしまって、よくよく最終的に考えずに決めてしまう方がいらっしゃいます。
そこは、自身の人生の責任は自分でもたないといけないところもあるので、慎重になりましょう。ただ、気持ちはよくわかります。なんせ、「あなたが必要だ」と言ってくれるのですから…
人間は、承認欲求の塊です。必要と言われて嬉しくない人間はいません。
でも、働く環境や、将来性、自分に求められているものなどをよくよく吟味して、わからなかったら、どんどん質問することです。エージェントがいればそこをどんどん聞いてもらうなり、面談の設定を依頼することです。転職は大きなイベントです。慎重になりすぎてはいけませんが、自分のため、家族のため、よく考えてから最終的な結論をだしましょう!
人生は、一度きりです。自分がやろうと思っていることがあるならば、羽ばたくのも勇気、残ってそこでチャレンジするのも勇気!ただ、いずれにしても一度した意思決定から、何年か経過したら必ず振り返ることをお薦めします。
最後に、今回は、あくまでも「入門」でしたので、またの機会に中級、上級あたりを書こうと思います。また、まだまだ、よくわからない、不安だという方は、遠慮なく、わたしにご相談ください。
それでは今回は以上です!
■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■第二十六回「リーダーシップとは」
■第二十五回「思考のスタミナ」
■第二十四回「出て行く勇気」
■第二十三回「個人でつくる・集団でつくる」
■第二十二回「指摘される勇気、指摘する気遣い」
■第二十一回「どこを見るか? どう採るか?」
■第二十回「100%の力を発揮するために……」
■第十九回「まずは、”伝える”ことから始めよう!」
■第十八回「カード少なく勝負に挑まない」
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【後編】(第十七回)
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【前編】(第十七回)
■第十六回「新人事始」
■第十五回「就職活動にみられる地方格差」
■第十四回「【思いやり】の向こう側」
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【後編】(第九回)
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【前編】(第八回)
■第七回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
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■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【後編】(第五回)
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【前編】(第四回)
■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」