ドリコム<3793>は、2月3日、第3四半期(16年4~12月)決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高56億7600万円(前年同期比16.1%増)、営業利益5億1400万円(前年同期3億1900万円の赤字)、経常利益4億5000万円(同3億2200万円の赤字)、四半期純利益4億1700万円(同6億8900万円の赤字)と大幅な黒字転換での着地となった。
また、第3四半期期間(10~12月)の売上高は前四半期比37.5%増の22億7300万円、営業利益は同16.2%増の1億5100万円、経常利益は同30.3%増の1億2900万円、四半期純利益は同3.9倍の2億4600万円だった。四半期ベースの売上高は過去2番目となり、4四半期連続の営業黒字を記録した。オリジナルタイトル中心から、IPタイトルに重点を置く戦略変更を行ってから好調な決算が続いている。
決算説明会に臨んだ内藤裕紀社長(写真)は、「ようやくスタートラインに立てたばかりだ。まだまだこれからだ」と総括した。好調な決算に決して満足せず、既存人気タイトルの運営強化を行うとともに、新作のIPタイトルの2018年3月までに7~8タイトル投入し、さらなる業績拡大を狙う考えだ(「」内の発言は、断りがない限り、内藤社長の発言となる)。以下、第3四半期の決算の状況を見ていく。
■『ダービースタリオンマスターズ』が想定を大きく上回る
まず、第2四半期(16年7~9月)の決算の状況から振り返っていこう。この四半期業績は、売上高16億5300万円(前四半期比QonQ5.6%減)、営業利益1億3000万円(同44.1%減)とQonQでは減収減益だった。『ONE PIECEトレジャークルーズ』と『ジョジョの奇妙な冒険スターダストシューターズ』などネット売上が計上されるタイトルの比率が増えたことによる"減収"に加え、新作『ダービースタリオンマスターズ』の開発費がかさんだことが主な要因。
続く第3四半期(16年10~12月)は、売上高が同37.5%増の22億7300万円、営業利益は同16.2%増の1億5100万円と増収増益となった。既存の2タイトルが堅調だったことに加え、11月にリリースした『ダービースタリオンマスターズ』が7億4000万円の売上となるなど垂直的に立ち上がり、収益に寄与したことが主な要因。1億5000万円の寄与を見込んでいたが、大きく上回った。GIシーズンに合わせて実施した広告宣伝費の増加を増収効果が吸収した。
▲営業利益の増減分析。広告宣伝費を増やしたが、増収効果で吸収し、営業利益が伸びた。広告宣伝費の増加が売上の伸びにつながっていることがわかる。次の四半期は広告宣伝費を減らす計画で、利益面にポジティブな要因となってくる。
▲ネガティブ要因は、新規開発に向けた人員の確保が進んでいるものの、開発進展に伴い、さらなる人員が必要になっているとのこと。コアメンバー中心にゲームシステムの開発が順調に進んでいるが、「コンテンツの増産部分での人材が足りない」。
■第4四半期は横ばい予想も「保守的すぎたかも」
続く第4四半期期間(1~3月)の業績は、売上高が前四半期比2.2%減の22億2400万円、営業利益は同3.3%増の1億5600万円、経常利益は同14.7%減の1億1000万円、四半期純利益は同66.3%減の8300万円を見込む。競馬がオフシーズンとなるため、達成確度の高い数字を見通しにしているとのことだが、内藤社長は「足元を考えると保守的すぎたのかもしれない」とコメントし、上ブレの可能性が大きいことを示唆した。
実際、業績拡大のけん引役である『ダービースタリオン マスターズ』については、1月に入っても引き続き売上が好調に推移しており、速報ベースでは4億5000万円となったとのこと。同社では、競馬のオフシーズンとなるため、売上が横ばいで推移すると想定し、7億5000万円を売上想定にしたとのことだが、1月だけで四半期計画の実に半分以上を稼いだことになる。
▲タイトル別の売上高の推移。『ダービースタリオンマスターズ』の貢献が確認できるだろう。『ちょこっとファーム』と『陰陽師』も堅調である。
■未発表の新作は「この分野だったらこれしかないという作品が多い」
2018年3月期については、『ダービースタリオン マスターズ』は、ゲーム内で「ブリーダーズカップ」正式版をリリースするとともに、プロモーションも『ダービースタリオン』に向けた施策から、競馬ファンにターゲットを当てた施策に転換し、さらなるユーザー数の増加と、収益の拡大を図る考えだ。また、新作については、期末までに7~8タイトルをリリースする予定。特に「上期に多め」となるという。
2015年11月にオリジナルタイトル路線からIPタイトル路線に大きくかじを切ったドリコム。内藤社長によると、方針転換した当時、オリジナルタイトルを志向するスタッフが多く退社しただけでなく、残っている開発スタッフにも少なからず動揺が見られたそうだ。戦略の正しさは、実績で示すのが一番だ。その戦略の方向性を決める第1弾タイトル『ダービースタリオン マスターズ』が見事、想定を上回る"垂直立ち上がり"をみせた。
この結果、ドリコム社内で会社の方針への確信が深まり、社内の士気も上がり、他の新作を開発しているスタッフも自信を持って開発を進めているという。また、ヒット作品が生まれたことで、転職マーケットでのプレゼンスが向上する副次的な効果もあり、中途採用や業務委託などで毎月20名ペースで入ってくるなど、逼迫していた開発スタッフの充足も徐々に進んでいるとのこと。
気になる新作は『みんゴル』(今春)や『Project LayereD』がすでに発表済みだが、それ以外は「根強いファンが作品が多く、この分野だったらこれしかないという作品が多い」とのこと。スマホゲーム市場の成熟化が進み、IPタイトルが有利になるとの見方が主流となりつつあるが、それに先んじて方針を転換したドリコムが成熟化の恩恵を大きく受けることになりそうだ。その意味で、スタートラインに立ったばかりなのである。
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(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793