様々なモバイルゲームがリリースされ続ける昨今。マーケティング手法も多様化しつつあり、各パブリッシャーは様々なアイディアで、ユーザーの獲得を行っている。
そんな中、ネクソン<3659>の『HIT ~Heroes of Incredible Tales~』(以下、『HIT』)が攻略wikiを利用したプロモーション・マーケティングを行い、成功を収めている。
『HIT』は、『リネージュⅡ』や『TERA』など、大ヒットMMORPGを開発したパク・ヨンヒョン氏が手掛ける初のモバイルゲームで、骨太なゲーム性と、華麗なグラフィックなどが特徴で、リリースから2ヶ月で早くも登録者数が200万人を突破している。
本稿では、『HIT』プロモーションを担当、自ら公式放送に出演し、ユーザーに「ちーさま」の愛称で親しまれている金原千紘氏と、攻略wikiの運用を担当しているゲームエイト 野口雄大氏、加藤喜宣氏にお話を伺い、『HIT』リリースからのマーケティングや攻略wikiの活用方法とその効果についての話を伺った。
■ユーザーの受け皿、継続率向上のための攻略wiki
ネクソン『HIT』プロモーション担当
金原千紘氏(写真右)
ゲームエイト
野口雄大氏(写真中央)
加藤喜宣氏(写真左)
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、『HIT』では、リリース当初にどのようなプロモーション施策を行っていたのでしょうか。
金原氏:『HIT』ではまず、プロモーションとして俳優・窪田正孝さんを起用したテレビCMを実施しました。CMのクリエイティブも、難解に見られないよう、スタイリッシュでカッコ良いと思えるものを心がけました。
また、Youtuberさんを起用したプロモーションを行い、みんなでマルチプレイが楽しめるゲームというところをアピールしました。
--そんな中で『HIT』ではリリース当初からゲームエイトの攻略wikiを導入しています。どのような意図で攻略wikiの導入を図ったのでしょうか。
金原氏:CMを展開する中で、問題になってくるのが「CMを見たユーザーさん達が、すぐにゲームをインストールするわけではない」という点です。CMを見てゲームに興味を持った方々の多くは、サーチエンジンの検索を利用します。
中には公式サイトに訪れる方もいらっしゃいますが、公式サイト以外でも『HIT』がどういったゲームであるかを説明してくれる受け皿が必要だと考え、導入しました。
また、新しくゲームを始めたユーザーさんに、”面白い”と感じてもらうまでプレイをしていただくための、スタートアップガイドも設ける必要があります。ある程度ユーザーさん自身が能動的に面白いと思ってもらえるまで誘導してもらう役割も、攻略wikiには期待しておりました。
--なぜゲームエイトの攻略wikiを導入しようと思ったのでしょうか?
金原氏:『HIT』というタイトルが、どうしても一般ワードになるため、検索結果で上位にあげるのがとても難しくなります。そこで、SEO対策をきちんとしてくれる事業社さんにお願いしようと考え、ゲームエイトさんにお願いしました。
加藤氏:攻略wiki構築にあたり検索順位を一番に考えました。SEOの具体的な戦略としては様々な策があります。
最も重視しているものとして、攻略wikiの更新に運営サイドの意見を可能な限り減らし、常にユーザー目線に立って行うということです。ユーザー目線の情報、ユーザーが求めている情報を載せることで、検索上位表示を狙っています。
そのためには、社員全員で実際にゲームを遊んで、「ユーザーはどこで悩むのかな?どこでつまずくのかな?」ということを全て洗い出します。洗い出した部分を攻略wikiで補完できるようにすることで、良い記事が書け、結果として検索順位が上がりました。
--ゲームエイトでは、攻略wiki自体の運用形態はどのようになっているのでしょうか?
加藤氏:弊社ではHIT専任の社内ライターを付け、攻略wikiの更新をしております。記事の更新はすべて弊社の完全内製で行っているため、ゲームのやり込み度合いが高いことや、イベントをリアルタイムで行う柔軟な対応、ユーザーからの細かな意見に対しても答えることができる体制です。
金原氏:基本的には、ユーザーさんに信頼されているゲームエイトのライターさんにお任せしております。その時期に合わせた、ユーザーの求める情報をフレキシブルに掲載していただいており、運用していく中での情報のスピード感や、対応していただける範囲がとても広く、大変満足しています。
ただ単に「アップデートされたから記事を書いてください。」だけではなく、運営を続ける中で様々な企画も生まれてきています。生まれた企画の中で、ユーザーの盛り上がりを狙ったアバターコーディネートのキャンペーンや、ギルドエンブレムキャンペーンなどの実施もお手伝い頂きました。
▲『HIT』コスチューム選手権の模様
--実際にリリース当初から攻略wikiを設置して、効果はいかがだったのでしょうか。
金原氏:リリース前の段階から、ゲームのシステムやグラフィックのクオリティには自信がありました。一方で、昨今の日本のゲーム市場のことを考えると、コアユーザー向けである『HIT』がどこまで受け入れてもらえるかという不安もありました。
実際には、リリース直後からユーザーのゲーム離脱率が他のタイトルより低い結果となりました。これは攻略wikiの効果(スタートアップガイド)が大きかったと考えられます。
加藤氏:現在、約40%のユーザーが攻略wikiを利用しています。想定されていた「新規の初心者ユーザーが攻略wikiを活用しゲームを楽しめところまで進める。」という効果が出ています。
野口氏:普段使っている攻略wikiには毎日訪れる傾向があります。『HIT』の場合、週3以上利用するユーザーが80%以上、その中で毎日攻略wikiを利用されるユーザーはHITユーザー全体の40%となっています。
それだけの利用者数がいるため、攻略wikiではユーザーさんに伝えたい情報をしっかりと届けることが可能となります。
金原氏:また、新規の人に遊んでいただくことも大事なのですが、既存の人に遊び続けていただくことも、同じく大事です。
ゲーム外でコンテンツの情報と接触することで、例えばゲームに対してはモチベーションが低くなっていても、ゲーム以外の場所で『HIT』の情報に触れていてくれていれば、なにかのきっかけで戻ってきてくれる可能性があります。
■ファンのコミュニティを強固にする存在に…攻略wikiの今後
--利用ユーザーさんの攻略wikiへの反応はいかがでしょうか?
金原氏:ゲーム内のチャットで直接攻略wikiが話題になることは少数ですが、攻略wikiの掲示板内では攻略情報等で盛り上がって、新たなコミュニティが作られています。例えば、追加された装備の性能に関する会話や追加マップに関する会話など様々あります。
加藤氏:攻略wiki内のコメント欄や掲示板では、ユーザーさん達が公式さんに言えない本音で話してくれています。
--攻略wikiを運用していく中で、他にプラスに感じたことはありますか?
金原氏:現在私たち運営側とゲームエイトさんの間では月に一度定例会議を設けております。そこで日々のユーザーの動きや変化、PVやユーザー数の数値の動き等をいただいております。
私たちで想定していない直接のユーザー意見を、サイト数値などによる分析・トッププレイヤーであるライターの意見をもらい、議論出来るということはとてもありがたく思います。
--実際の攻略wikiの運用手法として、何か攻略wikiを活用したイベント等は行っているのでしょうか?
金原氏:はい、様々な点でご協力いただいております。現在は、既存プレイヤーの方々にさらに楽しんでもらうという方向にシフトしつつあり、記事の内容もアップデートのことだけでなく、様々な形に多様化させてもらっています。
またゲーム内外のイベントキャンペーンにも柔軟にご協力いただいております。昨年の12月には、先程も話題にあがりましたアバター機能を使ったファッションコンテストを実施しました。
このキャンペーンの際は、イベントの概要もすべてwikiに書いていただきましたし、投稿された作品の投票もwiki上で実施してもらいました。結果として、通常よりも5倍ほど多いユーザーさんの参加率で実施することが出来ました。
野口氏:こちらのファッションコンテストについて、投票期間では『HIT』の約15%に当たるユーザーが攻略wikiを利用していました。
--では、『HIT』の攻略wikiについて、今後の両社の展望などを教えてください。
金原氏:現在の『HIT』のフェーズとしては、攻略wikiが一種の読み物としてファンに喜ばれるものにしたいですね。コミュニティがより強固になっていけば、さらにゲームへの接触が増え、継続率が高いものになるかと思います。
野口氏:実際に現在、コラム記事という形で掲載を始めています。月に一度、ネクソンさんとは定例会議をさせていただき、その時に様々なアイディアを出し、wikiの記事の充実化を図っております。
コラム記事の反響としては、調べたいユーザーが来訪するのではなく、記事自体を楽しんでいただけているユーザーがほとんどとなっています。記事の反響からもユーザーさんの本音が聞けるので、コラム記事は良い感触がつかめていますね。
--最後になりますが、現在様々なゲームがリリースされている中で、攻略wikiはどのような使い方をされていくとお考えでしょうか。
金原氏:個人的な感覚ではありますが、ソーシャルゲームがリリースされ始めた頃に比べると、みなさん攻略wikiを活用しているなと感じております。
当初は運営側にいいことばかり記載するのではないかと懸念しておりましたが、実際はユーザー目線で攻略記事を書いていただいており、充実した内容になりました。
私自身もゲームの攻略に詰まったらすぐ攻略wikiを見るようにしていますし、ゲームユーザーさんの中でも『HIT』に限らずwiki利用者が増えていると思います。「攻略wikiにゲームの情報があることを知っている」方が増えているので、マーケティング手法としてもより重要になると感じています。
加藤氏:ユーザビリティの高い情報を配信していくのを念頭に、『HIT』に限らず、ゲームをより安心してプレイできるような情報、ユーザーさんがゲームプレイに対して悩みがあるのならそれを解決できるようなサイトにしていきたいと考えております。
野口氏:今後様々なゲームタイトルで、継続率を高め・盛り上げるためのマーケティング手法としてwikiを活用するというのが増えてくると思います。その点ゲームエイトでは、『HIT』をはじめとしたwiki運用の実績、そして完全内部制作による強い体制が取れております。これからも引き続きこの部分に注力しつつ、様々なゲームのサポートができれば幸いです。
また、ゲームエイトではサービスの提供のために仲間となってくれるライターさんを募集しています。興味のある方は是非応募していただければと思います。
--ありがとうございました。
■『HIT』
■ゲームエイト社
© 2016 NEXON Korea Corporation & NAT Games, Inc. All Rights Reserved.
会社情報
- 会社名
- 株式会社ネクソン
- 設立
- 2002年12月
- 代表者
- 代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3659