【インタビュー】配信開始から19時間でストアセールス1位獲得!『リネージュ2 レボリューション』の成功を支えたYouTuberを活用したマーケティング施策に迫る


成熟期と言われる日本のスマホゲーム市場において、リリースから24時間以内にApp Storeの売上ランキング(ゲームカテゴリー)で首位を獲得したタイトルは2つしかない。ともにIPタイトルとなるが、ひとつは『ポケモンGO』、そしてもうひとつのタイトルは『リネージュ2 レボリューション』だ。(2017年11月現在)

『リネージュ2 レボリューション』は、スマホゲーム史上に残る歴史的なスタートダッシュを成功させ、リリースからわずか19時間で首位を獲得し、その後も10位圏内を維持している。この歴史的なスタートダッシュの成功の背景にはどのようなマーケティング施策が存在したのだろうか。
 
今回SocialGameInfoでは、ネットマーブルジャパン株式会社の広報チーム チーム長の浅野洋将氏、マーケティングチームの北條誉之氏、他マーケティング担当2名(A氏、B氏)、株式会社BitStarのマーケティング室マーケティング・ディレクターの高尾啓人氏、インフルエンサー広告事業部 リーダーの山村真稔氏にインタビューを実施。

これまであまり語られることのなかった『リネージュ2 レボリューション』のマーケティング施策について話を聞くことができた。
 

「BitStar」お問い合わせページ

 

マーケティング戦略の柱はYouTuberを活用したインフルエンサーマーケティング

 
―:本日はよろしくお願いいたします。最初に『リネージュ2 レボリューション』におけるそれぞれの役割について教えてください。
 
浅野氏(以下、浅野):よろしくお願いいたします。本日のメンバーはマーケティングと広報のチームからなるマーケティング部に所属しています。私はマーケティングの領域における広報活動を担当し、一般的なプレスリリース対応に加えて、既存ユーザーにプロダクトの良さを伝えるための施策を行っています。
 
北條氏(以下、北條):よろしくお願いいたします。私はWeb広告の運用とタイアップなどアライアンスを担当しています。
 
A氏(以下:A):私は、当時の『リネージュ2 レボリューション』では動画マーケティング全般を担当していました。BitStarさんと実際にやり取りも行っていました。
 
B氏(以下、B):私は『リネージュ2 レボリューション』ではマーケティング戦略の策定を行いました。またコアユーザーにゲームの楽しさを伝えるためのリアルイベントの企画や実施なども担当しています。

 
▲ネットマーブルジャパン社マーケティングチームの打ち合わせ風景
 
山村氏(以下、山村):BitStarでインフルエンサー広告事業部 リーダーとして、YouTuberを活用したプロモーションやタイアップの企業様への提案を行っています。『リネージュ2 レボリューション』を担当させていただきました。
 
高尾氏(以下、高尾):BitStarのマーケティング事業やアライアンス事業を担当しています。BitStarが提供するサービスの業界認知を広げる活動も行っています。

 
―:すでにご存じのかたも多いと思いますが『リネージュ2 レボリューション』について改めて紹介をお願いします。
 

浅野:『リネージュ2 レボリューション』は、PCオンラインゲームの大作MMORPGである「リネージュ2」というIPを使ったスマホ用のMMORPGとなります。キャラクターを成長させ、多くのプレイヤーと一緒に戦闘を楽しむというMMOの特性を、ソーシャルゲームを遊んできたユーザーが抵抗なく遊べるように、オートプレイ機能を充実させることによって、より遊びやすさを追求しています。

「リネージュ2」が持つコアなゲーム性は踏襲しつつ、スマホゲームのユーザーにもよりわかりやすいかたちにゲームに落とし込んでおり、MMOを初めて遊ぶ人も気軽に楽しめるゲームとなっています。

 

 
 
―:正式サービス開始の前日には事前登録者数が163万を突破し、他のスマホゲームタイトルと比較しても桁が違う数値となりました。
 
浅野:おかげさまでリリース前から多くのお客様に『リネージュ2 レボリューション』に対して興味を持っていただけたと思います。ゲーム内では事前登録者に先行してゲーム内のニックネームを取得できる施策を行いました。

他のゲームでは見たことのない施策ですが、MMOのゲームを遊ぶ人はニックネームが他の人と被らないように早く取得したいというニーズがあります。そのニーズを上手く刺激できたことで事前登録が促進されたのかなと思います。

▲ネットマーブルジャパン株式会社 広報チーム チーム長の浅野洋将氏
 

―:マーケティング戦略を作るうえでどのようなことを考えていたのでしょうか?
 
B:マーケティング戦略を作るうえで、流行感を醸成することを考えていました。流行感を出すためにリリース前から、TVCMやWeb動画、イベントなど全方位でのマーケティングを実施しました。特に動画マーケティングは、マーケティング戦略のなかでもとても重要な位置づけとなっていました。実際にリリース前とリリース直後には、Web広告は動画を活用したインフルエンサーマーケティングしか実施していない状況でした。
 
また流行感を作るために意識していたのは、コアユーザーからミドルユーザーへ、ミドルユーザーからライトユーザーへと拡散されていくストーリーです。例えばイベントではコアユーザーにゲームの楽しさを伝えて、さらにコアユーザーが動画を配信することによってミドルユーザー、ライトユーザーへゲームの面白さを伝えていくようなかたちを考えていました。

 
―:『リネージュ2 レボリューション』が初めて公開されたのもニコニコ超会議2017の出展でした。その後もリリース前の期間にYouTuberを活用したオフラインのイベントや公式生放送「リネレボTV」も実施されていました。
 
北條:ニコニコ超会議2017では、30vs30の大規模試遊イベントを実施しました。『リネージュ2 レボリューション』の初披露となりましたが、スマホで高いグラフィックが実現できるという驚きとともに、遊んでみたいとユーザーに興味を持ってもらえたと思います。

ニコニコ超会議は少しとがった企画のブース出展が多い傾向にあるのですが、その中でも純粋に「ゲームを体験してもらう」というブース出展を行いました。そのため当初はドワンゴ様もブースに人が集まるのか心配されていましたが、結果的に企業ブースのなかで来場者数1位となりました。
 
その後も「Youtuber対抗!30vs30 超巨大マルチバトルリーグ」で、YouTuber3名と一般募集27名でチームを組んで戦うイベントを行い、動画配信によってミドルユーザー、ライトユーザーへゲームの面白さを伝えることができたと思います。
 
浅野:公式生放送「リネレボTV」をリリース前やリリース直後に実施して、ユーザーに向けての情報公開も行いました。特に事前登録期やリリース直後に入ってきたユーザーは最も熱量が高いため、積極的に情報を出すことを意識していました。
 
具体的にはユーザーはフェイズによって知りたい情報が変わるため、ユーザーの熱量を落とさないような情報の出し方も心掛けました。例えば、情報は100%のものを出さずユーザーに期待させる余地を残しておき、ユーザーの気持ちの中で長く遊べばこうなっていくと期待が膨らむような情報の出し方を意識していましたね。

 
 

▲ネットマーブルジャパン株式会社 マーケティングチームの北條誉之氏
 
 

■BitStarとの取り組みから生まれたYouTuberタイアップの新しいかたち

 
―:YouTuberを活用したマーケティングにおいて、BitStarさんとどのような取り組みをされたのでしょうか?
 
A:YouTuberを活用したマーケティングでは、複数の会社とやり取りを行い、全体で250~300本の動画をアップしましたが、そのうちの約8割の動画はBitStar様との取り組みとなります。具体的には、日本ではまだ未成熟なMMOの市場を盛り上げるとともに、『リネージュ2 レボリューション』のゲームをわかりやく伝えられるようにゲーム実況者を活用した企画のご提案や実施をお願いしました。
 
高尾:「BitStar」はスマホ時代に特化したインフルエンサーの力を最大化するプラットフォームとして、現在約2,000アカウント登録いただいています。この「BitStar」が持つプラットフォームを活用した幅広いご提案ができることが大きな特徴となり、今回の『リネージュ2 レボリューション』のお取り組みでも活用しています。
 
山村:『リネージュ2 レボリューション』とのお取り組みでは、弊社が持つプラットフォームを活用して、定量や定性を掛け合わせた提案を行いました。定量の部分は、一例になりますがチャンネル登録数が週増加率105%を超えている人は成長率が高いと考えるなど定量的な視点からYouTuberを選定するなどしました。また定性の部分はネットマーブルジャパン様のマーケティング戦略やゲーム性、KPIを理解したうえで企画のご提案を行いました。
 
A:例えば大物YouTuberの方が面白いことをして再生数を伸ばしましょうという提案は数多くあるのですが、それが弊社の目指しているものや『リネージュ2 レボリューション』にマッチしていないケースもあります。BitStarさんは本当にゲームをよく理解いただき弊社のKPIに落とし込んで新しい企画を考えていただいたと思います。
 
いくつか例を挙げると、リリース前は数多くのYouTuberの方々が開発環境で遊んでいたのでマップ上で大物Youtuberを探せというミッション型の企画、リリース後にはYouTuber同士の対決の企画などとても面白かったと思います。またやり取りを通してBitStarさんの対応のスピードが早かったのも印象的でとても助かりました。

 
 

▲株式会社BitStar マーケティング室マーケティング・ディレクターの高尾啓人氏
 
 
―:「BitStar」を活用したマーケティングの取り組みを振り返っての感想をお願いします。
 
A:振り返ってみると戦略を作った時にはわからなかったたくさんの気づきがありました。その中のひとつは「BitStar」を活用することでYouTuberタイアップの新しいかたちを作ることができたことだと思います。現在のゲーム業界は大物YouTuberの枠の取り合いになっていて、数か月待ちが普通になっています。しかし回数を重ねると徐々にCVRなど効果は落ちてくると考えていました。
 
『リネージュ2 レボリューション』では、大物YouTuberとの取り組みに加えて、チャンネル登録数が5万人以下のYouTuberの方々をたくさん活用する施策を行いました。この施策を行っている会社はゲーム業界でもないと思います。正直に言うと個人的にも当初は玉砕するかなと思っていましたが、結果は大成功と言えるものでした。

 
―:チャンネル登録数が5万人以下のYouTuberの方々をたくさん活用する施策によってどのような効果が生まれたのでしょうか?
 
A:YouTuberにとっては、『リネージュ2 レボリューション』のゲーム内でもファンとのコミュニケーションも簡単に行える、また継続して『リネージュ2 レボリューション』の動画を自発的にアップすることでさらにファンを獲得でき、再生数も伸びてチャンネル登録数も増加するという好循環が生まれました。

弊社にとっては、コアユーザーからミドルユーザーやライトユーザーへさらにゲームの面白さが伝わることで『リネージュ2 レボリューション』の成長の後押しとなりました。弊社にとってもYouTuberの方々にとってもWin-Winな関係が構築できたと思います。
 
最初は「YouTuberを使ってユーザーを獲得する」という考えだったのですが、BitStarさんとの取り組みの中で「YouTuberの方々にもゲームを楽しんでもらい、ロイヤルユーザーになっていただく」ことに気づくことができ、ゲームのスタートダッシュの成功にも繋がったと思います。

 

▲株式会社BitStarインフルエンサー広告事業部 リーダーの山村真稔氏
 
 
―:最後になりますが、読者の方へのメッセージをお願いします。
 
浅野:ネットマーブルジャパンは『リネージュ2 レボリューション』、『セブンナイツ』などのゲームを提供し、おかげさまで国内でも名前を知っていただける会社になってきました。今後も大型のタイトルをリリースする予定があり、マーケティング領域を含めて積極的な採用を行っています。そのような背景もあり、今回オフィスのフロアの増床を行いました。
 
増床したオフィスのフロアの半分は会議室となり、残りの半分はカフェスペースとなります。カフェスペースは、社員がコーヒーを飲みながら自由に仕事ができるスペースになり、みんなでゲームを遊べるディスプレイもあります。より働きやすい環境を整えていますので、ぜひ興味があればお問い合わせください。
 
北條:ゲーム会社に限らず多くの会社のマーケティングは費用対効果を重視しすぎた結果、特にブランディング系の施策はやりづらくなっていると思います。費用対効果を重視することでマーケティングの選択肢は狭まり、どの会社も同じような施策だけを実施しているように見えます。
 
弊社でももちろん費用対効果を重視していますが、併せて新しいアイデアも重視しています。自らマーケティングの企画を行い、推進力を持って実行できる人には素晴らしい環境が整っています。ぜひ一緒に働きたいと思っています。
 
山村:『リネージュ2 レボリューション』での短期間に数100本という大規模な動画をアップするというお取り組みはBitStarとしても大きな挑戦であり、ネットマーブルジャパン様はもちろん、弊社内のメンバーにも助けてもらいました。この取り組みを通じて、会社としてもチームとしても大きく成長できたと思っています。
 
BitStarは今まで以上に価値を提供できる、ゲーム会社様の要望に応えられるような会社に成長していると思いますので、YouTuberを活用したインフルエンサーマーケティングに興味のあるゲーム会社様はぜひご連絡いただければと思います。
 
高尾:ネットマーブルジャパン様との取り組みの成功体験を通して、BitStarはゲーム会社様に今まで以上の価値を提供できる環境が整いました。今後は「インフルエンサーマーケティングを科学する」をスローガンに、単純なインフルエンサーとのマッチングだけでなく、よりROASなどの数値からPDCAを回して効果を高めるコミュニケーションを行い、クライアント様のご希望やご予算などにあわせた取り組みを行いたいと考えています。BitStarのサービスにご興味のある方はぜひお問い合わせください。

 
―:ありがとうございました。
 
 
【インタビュアー後記】
スマホゲームがヒットタイトルとなるためにYouTuberを活用したインフルエンサーマーケティングは欠かせない施策になっている。しかし既存のマーケティングに比べてまだ確実な効果が見込めない「新しい挑戦」となり、既存のパッケージ型ではなく企画型の取り組みとなるため、どの会社と組むのか、また協力社の理解は施策の成否を分ける重要な要素になる。インタビューを通して、BitStar様とネットマーブルジャパン様の強い信頼関係を感じることができたのがとても印象的だった。

 

【取材先であるネットマーブルジャパンのオフィス紹介】
事業拡大に伴い、2017年11月より増床したネットマーブルジャパンのオフィス。増床フロアの半分は会議室、半分はカフェスペースとなっている。カフェスペースにはカウンターやソファー、靴を脱いで作業や打ち合わせできるスペースもあり、より働きやすい環境を整えている。
 
 
 
 
▲畳スペースやソファーなども用意されており、リラックスできる空間が用意されている。
 
 
▲カフェスペースでは打ち合わせや団欒の場の他にも、作業に専念できるカウンター席も完備している。

◼︎ネットマーブルジャパン株式会社 リクルートページ
 

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◼︎株式会社BitStar
 

「BitStar」お問い合わせページ

ネットマーブルジャパン株式会社
http://www.netmarble.co.jp/

会社情報

会社名
ネットマーブルジャパン株式会社
設立
2001年8月
代表者
代表取締役社長 朴 宰勲
決算期
12月
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