【エイチーム決算説明会】スマホゲーム企業から総合IT企業に ネットサービス続々成長、新サービスにも継続投資 『スタリラ』でゲームも巻き返しへ



エイチーム<3662>は、先週末(12月7日)、第1四半期累計(8月~10月)の連結決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。同日発表した決算は、売上高89億2700万円(前年同期比0.3%増)、営業利益4億8400万円(同49.7%減)、経常利益5億0700万円(同48.3%減)、最終利益2億5700万円(同62.1%減)と売上高は横ばい、大幅な減益となった。
 


変動要因をみていくと、売上高については、ゲーム事業とEC事業が前年同期比で減少となったものの、ライフスタイルサポート事業が好調に推移し、他事業のマイナスをカバーし、全体としては横ばいにとどまった。また、利益面では、ゲーム事業における既存タイトルの減収による利益寄与の減少に加えて、EC事業における新規事業への先行投資による費用増が響いたとのことだった。人件費や広告宣伝費が重しとなった。
 
▲減益要因は、広告宣伝費と人件費の増加だ。『スタリラ』の事前登録段階でのプロモーション費用も発生していたとのこと。
 

▲セグメント別の広告宣伝費の状況。ライフスタイルサポートの広告宣伝費が増えた。


決算説明会に臨んだ林高生社長(写真)は「ゲームが主軸というイメージが強かったエイチームだが、今後はインターネットサービスを軸に展開する総合IT企業にしていきたい」と述べた。スマホゲームをメインとする会社から、自動車、不動産、金融、ヘルスケアなど様々なマーケットを対象に、広告やメディア、プラットフォーム、ECなどの技術を駆使した新サービスを続々と立ち上げ、成功に導いている。

なお、同社は、インターネットサービスを提供するライフスタイルサポート事業の季節要因による変動が大きいため、今回のレポートでは前年同期との比較で決算を見ていくことにしたい。セグメント別の状況を見ていこう。


 
■ライフスタイルサポート事業

売上高51億7300万円(同30.8%増)、セグメント利益6億4200万円(同16.6%増)だった。引っ越し、自動車、ブライダル、金融メディア、その他と全てのサブセグメントが好調に推移した。各サブセグメントにおいては、既存事業の育成に加え、周辺サービスを拡充しながら、新しい事業領域において新規サービスを複数立ち上げ、中長期的な成長に向けた投資を実施した。
 


このなかで伸びが目立ったのは、ブライダル関連だったとのこと。ブライダル関連のサービスは結婚式場情報サイト「ハナユメ」を展開しているが、従前よりARPU(客単価)が高いうえ、利用件数も伸びたそうだ。
 


なお、エイチームライフスタイル社長の間瀬文雄氏(写真)は、8つのサービスが新規事業として展開していることを明かした。新規サービスを立ち上げる際、営業利益率について20%を担保できるようにしており、新サービスの立ち上げ期=投資期を終えれば、全体の営業利益率が高まるとの見方を示した。ただそのタイミングで、新サービスの立ち上げを行った場合は異なる状況になっている可能性があるという。
 


 
■エンターテインメント事業

売上高32億4300万円(同24.8%減)、セグメント利益2億7400万円(同68.2%減)と減収減益だった。既存ゲームアプリは全体的に売上が減少したことが響いた。新作『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-』を10月21日にGoogle Play、28日にApp Storeでリリースし、無料TOPランキング1位、売上TOPランキング10位を記録するなど好調なスタートとなったものの、実質1週間程度の寄与にとどまった。
 


新作の手応えについて聞かれると、エンターテインメント事業本部長の中内之公氏は「想定どおり、好調な立ち上がり」と明かした。本格的に運用を開始した第2四半期(11月~2019年1月)から本格的に寄与してくる見通しだ。また既存のゲームタイトルでも年末年始の需要期に入ることもあり、下落傾向にあったエンターテインメント事業の売上は「ここでいったん底打ちになり、再び上昇傾向に転じると考えている」(林高生社長)という。
 


ただ、トップライン(売上高)については伸びが見込まれるものの、利益面についてはコメントできないとのことだった。というのは、『スタリラ』でプロモーション展開を行っていく予定だが、実施規模や時期について不確定な部分があるためだ。


 
■EC事業

売上高5億1000万円(前年同期比19.5%減)、セグメント損益6300万円の赤字(前年同期は4400万円の赤字)と減収・赤字幅拡大となった。自転車通販サイト「cyma-サイマ-」を展開しているが、その背景について、「体制整備を優先し、販売台数を追うのをいったんやめた結果」とし、自転車の販売台数が低迷しているわけではなく、通期黒字化を見据えた戦略的な判断であることを強調した。

林社長は「この事業を始めた当初は1日1台か2台売れる程度だったが、いまや月間で3000台以上売れている状況だ。このため、初期に作ったシステムや倉庫が追いついていない。オペレーションも同様だ」と続けた。

体制整備を完了した後、新しくプロモーション展開を強化し、再度伸ばしていく考えを示した。具体的には、顧客のもとに届くまでの日数の短縮して購入率を引き上げるといった取り組みのほか、ラインナップの見直し、在庫の適正化などをあげた。プロモーションについても時期と量を適正に管理していくとのこと。
 


 
■2019年7月通期の見通し

2019年7月期通期の連結業績は、売上高400億円(前期比6.2%増)、営業利益40億円(同14.9%減)、経常利益40億円(同15.4%減)、最終利益26億円(同21.4%減)となる見通しだ。これは主にライフスタイルサポート事業で、新規サービスの立ち上げで費用が大きく先行するためだ。
 


「ネット広告とゲームで稼いでいるうちに次に向けた投資を行う」――これはAbemaTVに投資を行っているサイバーエージェント<4751>の藤田晋社長が決算説明会でたびたび発言していた内容だ。投資分野や投資規模こそ異なるものの、エイチームについても同様にスマホゲームが好調なうちにインターネットサービスを次々と立ち上げ、スマホゲームを凌駕する収益規模に育て上げてきた。そして手掛ける領域も引っ越し、自動車、ブライダル、ファイナンスにとどまらず、ライフエンディング、ヘルスケアと領域を広げ、着実に収益を積み上げている。エイチームは、スマホゲーム企業から総合IT企業に変貌を遂げつつある。

 
(編集部・木村英彦)
株式会社エイチーム
https://www.a-tm.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社エイチーム
設立
2000年2月
代表者
代表取締役社長 林 高生
決算期
7月
直近業績
売上高275億5200万円、営業利益5億4300万円、経常利益7億1100万円、最終利益1億4300万円(2023年7月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3662
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