クリーク・アンド・リバー社(C&R社)<4763>は、2018年10月1日、同社のゲーム開発スタジオ内にゲームVFX、2Dおよび3Dエフェクト制作専門のスタジオ「VFXスタジオ」を開設することを発表した。(関連記事)
今回開設した「VFXスタジオ」は、様々なVFX制作ツールに精通したクリエイターが在籍するゲームエフェクト制作専門のスタジオとなる。
ゲームエフェクトとは、ゲームを華やかに見せるための演出で、攻撃がヒットしたことを表すエフェクトや魔法を唱えるときの呪文を表すエフェクト、雷や炎などを表すエフェクトなど、主に無形物を表す際に使用される。
ゲームの世界観や臨場感を作るうえでいまや欠かすことのできない要素のひとつで、VFXスタジオでは、「SPARK GEAR」「Adobe After Effects」「Maya」「Shuriken」など、様々なVFX制作ツールを駆使し、あらゆるゲームのエフェクトを制作する。
今回「Social Game Info」では、VFXスタジオ責任者である掘越亮平氏にメールインタビューを実施し、スタジオ立ち上げの経緯や今後の展望について聞いた。
■プロフェッショナルの価値を向上させたい…専門スタジオ立上げ経緯とは
株式会社クリーク・アンド・リバー社
ゲーム開発スタジオ
VFXスタジオ運営責任者 堀越亮平 氏
−−今回VFXスタジオを始動されたとのことですが、VFXスタジオを作ろうと思ったきっかけを教えてください。
私は元々遊技機のマーケットで遊技機メーカー、開発会社、映像会社に対して人材提案の営業をしていました。
しかし、昨今遊技機の市場が規制の影響で急激に縮小した時に、オーサリングやコンポジットなどのプロフェッショナルの方たちの仕事が急激に減ってしまう状況に陥ったのです。その時に、「このプロフェッショナルの方たちが活躍する場を提供したい!」と思ったことがきっかけです。
−−確かに規制の影響で遊技機の市場は落ち着いた印象にあります。そこからどのようにVFXスタジオの設立につながったのでしょうか?
ちょうどその時、スマホゲームの市場が2Dゲームから3Dゲームに一気にシフトしはじめるタイミングで、3Dエフェクトのニーズが急激に増えていました。
しかしエフェクトを制作できる人は少なく、専門ではない人がエフェクトを手掛けたりしている問題もありました。3Dエフェクトの需要に対して、クリエイターの供給が間に合っていなかったのです。
−−需要と供給のバランスが取れていなかったのですね。
その通りです。ゲーム開発会社からは3Dエフェクト制作の人材ニーズがものすごくあるのに対し、エフェクトクリエイターの数が追い付いていませんでした。そこで、私の担当していた遊技機マーケットにいるクリエイターとマッチングすることができれば、うまくいくのではないかと思いました。
そうすることで、クライアントであるゲーム開発会社の問題も解決できることに加え、クリエイターの方に仕事を紹介することもできるのではと考え、上司に提案し、VFXスタジオを設立することになりました。
−−VFXスタジオについて簡単に教えてください。
VFXスタジオはクリーク・アンド・リバー社の社内にあるエフェクト専門スタジオです。コンシューマ、ソーシャル、遊技機の各種エフェクト制作を請け負っています。「Shuriken」「BISHAMON」「Unreal Engine 4(以下、UE4)」「Maya」「SPARK GEAR」「After Effects」等、様々なツールを使用して、あらゆるニーズに対応可能なエフェクト制作のプロフェッショナル集団です。
−−なるほど。VFXスタジオの特徴も教えてください。
VFXスタジオを擁するゲーム開発スタジオには400名のゲームクリエイターがいます。その中にはプログラマーも多数いますし、3DCGのクリエイターも100人います。この100人の中にはテクニカルアーティストの方もいます。
もちろん2Dのチームもあり、イラスト、コンセプトアート、UIにも対応しています。このようにチーム全体の下支えが充実していることで、クライアントさんのあらゆるニーズに対応することができます。
エフェクトの品質にはかなりこだわっていますので、高品質なエフェクトをクライアントにお届けすることで、ゲーム自体の品質を上げ、売上に貢献できるように努力しています。
−−クライアントのニーズそれぞれに応じるとは具体的にどのようなことですか?
例えば、モデル制作もイラストから作ることも可能ですし、3Dのモデルを作ってそこにエフェクトを入れることも可能です。エフェクト、3DCG、2DCG、企画と一貫した制作体制を完備しているからです。
ワンストップで演出から「Unity」への組み込みまでできるスタジオを作ることによって、ただクライアントのニーズに答えるだけでなく、スピーディーかつハイクオリティなパフォーマンスを実現しました。
その他にはエンジニアも多いので「UE4」や「Unity」への組み込みまでできるのも特徴です。また、制作コンサルティングや、チームでの出向などにも柔軟に対応しています。
−−なるほど。VFXスタジオを始動して何か気づいたことはありましたか?
実際に遊技機のほうからコンバートをしていただいたりして、VFXのスタジオを立ち上げることができました。スタジオ始動の動機はクリエイターとクライアントの需要と供給のバランスをとることでしたが、営業活動をしていく中で、実はクライアントのニーズの方がかなり高いことが分かりました。
そこで、次にやるべきはゲーム業界全体のエフェクトクリエイター不足を解消する必要があると気が付き、育成にも力を入れるようになりました。ちなみに、こちらの作品は当初全くの素人でしたが、3ヶ月でここまでできるようになりました。
こちらのサイトからアカデミーへの応募が可能です。
−−今後の目標は何ですか?
エフェクトはゲーム演出において、なくてはならない重要なパーツですが、意外に蔑ろにされているというか、当たり前になっています。エフェクト制作の評価自体が重要度に対して低いと感じています。私たちがVFXスタジオを通して、ゲーム業界におけるエフェクト制作全体を下支えすることでエフェクトクリエイターのゲーム業界での評価を上げていきたいですね。
今はゲームだけしかやっていませんが、いずれは実写だったり特撮だったり、エフェクトにまつわるもの全部やらせていただきたい!という思いでVFXスタジオと名乗らせていただいています。始動から短期間ですが規模では既に日本一が見えてきましたので、2年以内に世界一、宇宙一のエフェクトスタジオと呼ばれることを目指しています。
そのためにも「エフェクトスカウト」というスペシャリストのスカウト登録ページがあるので、一緒に事業を構築していただけるようなエフェクトのスペシャリストの方にもぜひご登録いただきたいと思っています。ご興味のある方はご応募ください。
−−VFXスタジオに発注含め、問い合わせしたい場合はどうすればいいでしょうか?
ご相談だけでも承りますし、ご要望を受け簡単なサンプルを作成するトライアルも受け付けています。まずはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
−−ありがとうございました。
(取材協力:TechBrook)
会社情報
- 会社名
- 株式会社クリーク・アンド・リバー社
- 設立
- 1990年3月
- 代表者
- 代表取締役会長CEO 井川 幸広/代表取締役社長COO 黒崎 淳
- 決算期
- 2月
- 直近業績
- 売上高497億9900万円、営業利益41億300万円、経常利益41億3700万円、最終利益26億5800万円(2024年2月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4763