LINE<3938>は2019年9月25日、都内でゲーム業界のマーケティング責任者・担当者を対象にした「ゲーム業界向け LINE活用セミナー」を開催した。
前半はゲーム業界が抱える課題に対してどのようにLINEが活用できるのかをLINE担当者が紹介し、後半は導入事例として6周年を迎える長寿ゲームアプリ『戦国炎舞 -KIZNA-』(以下、『戦国炎舞』)を提供する株式会社サムザップが登壇した。LINE活用方法とその成果について語られたセミナーの模様をレポートする。
◼︎従来からCPIが30%以上も改善…LINEの広告サービスの今とは
はじめに、LINE株式会社のゲームマーケティングコンサルティングチーム マネージャー 富永 翔氏からLINEの広告サービスの現状について紹介された。LINEが法人向けに提供するサービスは、企業とユーザーとの双方向コミュニケーションが可能なLINE公式アカウント、運用型広告プラットフォームの『LINE Ads Platform(以下、LAP)』、その他販促ソリューションサービスに分けられる。
『LAP』はLINEのタイムラインやLINE NEWS、LINEマンガといった様々な掲載面に運用型広告を配信できるプラットフォームで、現在の出稿サービス・ブランド数は8,000を超える。LINEは2019年9月末時点のMAU(月間アクティブユーザー)が約8,200万、DAU(日間アクティブユーザー)がMAUの約86%と高い数値を誇り、LAPにはそのユーザーにリーチができるという特長も備える。
『LAP』をさらに強固なプラットフォームにするのが、2019年4月から提供されている「Smart Channel」という広告配信面だ。LINEのトークリスト最上部の枠に広告を表示し、商品・サービスのランディングページに遷移させる。Smart Channelに配信される動画広告メニュー「Talk Head View」のテスト配信では、1日で4,700万人へのアプローチができ、中でも15~29歳の年代では人口の90%にリーチしたという。
2019年8月からはLINEアプリ上への広告配信のみならず、外部のアプリメディアへの広告配信が可能な『LINE Ads Platform for Publishers』も提供開始し、『LAP』との併用によってより高い効果が出しやすくなった。
LAPは新規機能の提供だけでなく、並行して既存機能も随時アップデートされていて、例えばCPIの自動最適化機能の実装では、従来の約30%もCPIが改善されたという。富永氏は、以前と比べパフォーマンスは大きく変わっているので、以前にLAPを活用したことのある企業もあらためて出稿を検討してほしいと語る。
続いて、LINE株式会社 ゲームマーケティングコンサルティングチームの瀧嶋亮平氏から、LINE公式アカウントとLINEプロモーションスタンプの現状、双方の新しい活用方法について紹介された。
従来のLINE公式アカウントのプランには「LINE公式アカウント」や「LINE@」をはじめ5種類のアカウントタイプがあり、それぞれ料金体系や使える機能が異なっていた。そのため、企業の目的や予算に合ったアカウントの選定が難しく、分かりづらい側面があったという。
そこで、LINE公式アカウントは2019年4月からリデザインを実施。5種類のアカウント間の機能差をなくすなど、シンプルで分かりやすいプラットフォームに刷新した。
▲従来提供していたプランは旧プランとなり、現在旧プランを利用している企業も順次新プランに移行している。
LINE公式アカウントへの統合に伴い、これまで開設するだけで月に250万円の運用費がかかっていた費用も、0円からの運用が可能となるメッセージ配信数による従量課金制に変更された。開設・運用コストが小さくなったことで、ゲームにおける周年施策や期間限定イベントなどを盛り上げたい場合にも活用しやすくなる。
機能面においても、APIの利用やターゲティングしたメッセージ配信が実施しやすくなったことで、ユーザー一人ひとりに適したメッセージ配信が可能になった。リサーチ機能も実装されたことで、友だちになってくれているユーザーにアンケート調査を行うこともできる。
▲アップデートの開発ロードマップ一覧。
デフォルトの機能やパートナー企業との連携によって、より精緻にターゲティングできるようなビジョンを描いている。
LINE公式アカウントのリデザインによって今後、運用面でも変化が現れる。従来は全体配信が中心だった企業も、プッシュ型のターゲティング配信や、ユーザーの興味関心を引くプル型配信を行うことが運用の鍵となるという。デフォルトの機能やパートナー企業との連携によって、より精緻にターゲティングできるようなビジョンを描いている。
プッシュ型のターゲティング配信では、ゲームアプリのIDとLINEアカウントをID連携することでユーザーごとにメッセージの出し分けを行った事例がある。結果、実施した企業アカウントの保有コストに対してのROAS(Return On Advertising Spend)は200〜1,000%となったそうだ。
一方、プル型配信の事例としては攻略情報ページの活用を挙げた。ユーザーが自らLINE公式アカウントのトークルームを訪れる場になるよう設計した結果、ブロック率が低くなった。
また、集客メニューも柔軟に設計され、LINEプロモーションスタンプの配布も新たなCPDスタンプの登場によって気軽に検討しやすくなった。CPDスタンプはDL数に応じて課金が発生するスタンプ施策で、現在は新プランにてトライアル活用が進んでいる。
これまで、LINEプロモーションスタンプを実施するには3,500万円以上が必要だったことから、 “効果は高いが費用も高い一世一代のプロモーション”と敷居の高い施策として認識している企業が多かったと瀧嶋氏は振り返る。
しかし、12月末までのトライアルスペックで、最低出稿額200万円~のスタンプをリリースするなど、低価格化を進めており、企業も出稿が検討しやすくなった。また、クリエイティブを用いてファンにアプローチできることから、高いCVRが実現しやすくなっている。
最後に、瀧嶋氏は「実施しやすくなったLINEのプロモーションは今まで以上にゲームマーケティングのすべてのフェーズを網羅できている。その分、各フェーズでの活用方法が見えづらく感じることもあるかもしれないが、一度気軽に相談してほしい」と語った。
◼︎SNS比較でみるLINEを活用したマーケティングの強みとこれから
続いて、株式会社デジタルガレージ マーケティングテクノロジーカンパニーの林竜宏氏が登壇し、SNSマーケティングという観点でLINEの特徴について講演した。
まず、4つのSNSの利用率が紹介され、LINEユーザーの特徴と重要性が挙げられた。他SNSと比較してもLINEの日間利用率は約8割と高い傾向がある。
また、Twitterと比較した場合、どちらが優れているということではなく、それぞれに独自の役割があり、使い分けることで親和性が高くなると語る林氏は、それぞれの役割を「クローズドなLINE」「オープンなTwitter」と称した。
さらに、林氏はクローズドという特徴から、LINEでは属性が紐付けやすいと話す。例えば、アクションゲームが好きなユーザーにアプローチしたい、というような特定のアプローチは、LINEの方がTwitterよりも親和性が高いということだ。
「SNSから見るフルファネルマーケティング」については、リデザインでLINE公式アカウントに統合されたことにより、一気通貫したフルファネルマーケティングができるようになったと解説した。
また、現在のLINE公式アカウントは従量課金制であることに触れ、プッシュ型の「マスとしての全配信モデル」から、プル型の「セグメント配信モデル」に変わっていくのではと想定しているという林氏。ゲーム業界におけるLINE活用についても、大幅に配信方法が変わってくるのではと予想する。
プル型の「セグメント配信モデル」の事例として、林氏は「ゼノンザード」というゲームを例に挙げ、LINE公式アカウントをポータル化することでLINEをゲームのミニアプリという位置付けにし、リリース前からユーザーが集まる場としてのポジションを築いたと話す。
この考え方はプル型の施策として重要で、ゲームで遊んでいるプレイヤーがよりコアなファンになるため、プレイヤーとの接点を増やしていくことで今後のプロモーションにおいても大きな影響があるのではと話した。
同社においてもLINE上で投票機能などを活用したことがあり、ゲームアプリ「ファイトリーグ」にて友だちを事前登録に招待した施策を行った。今となっては各社が実施しているが、当時は友だちが友だちを呼ぶという斬新な施策であり、CVRはTwitter経由の数倍あったという。マーケティング目的の活用だけでなく、新しい遊び方をプランニングすることにもつながったと話す。
▲デジタルガレージ社開発のLINE上で実施できるインスタントウィン施策
この応用として、LINEにログイン情報を通知できることも可能だと林氏は話す。ゲームのフレンドでなくとも、ゲームアプリ外からもユーザーを呼び出せるような施策もできるため、新しい広告やユーザーの楽しみ方にもつながるとした。
◼︎新規獲得60,000件以上…『戦国炎舞』のLINE活用事例
最後に株式会社サムザップ プロダクトマーケティング室 リーダー 伊東裕貴氏が登壇し、同社が提供するゲーム『戦国炎舞』の活用事例が紹介された。
『戦国炎舞』は2019年で6周年を迎える人気タイトルだ。本作のマーケティング方針としてのKPIは、LTVを上げることだった。しかし、リリースから6年という運営の長期化によって、初心者と既存プレイヤーのレベル差が大きくなり、ユーザーの新規獲得が難しくなってきたという課題を抱えていた。そのため、既存プレイヤーがまだゲームをインストールしていない友だちを誘いやすくするための運営方針を立てたと伊東氏は話す。
具体的には、ゲームのUIをリニューアルすることでビジュアルの刷新や戦力差を縮めやすい仕様設計への変更のほか、ユーザー一人ひとりに合わせた方針を打ち出した。
また、既存ユーザーへの方針はマンネリ感による乗り換えの防止だ。運営の透明性の向上と、新しい体験の提供、そしてユーザー同士のコミュニティ形成の注力の三つの軸を基に企画を行った。
例えば、ゲーム内で天下統一戦というイベントを年に4回開催するほか、ファンを集めたリアルイベントの実施やイベント結果に応じたトロフィーの贈呈といった場を用意し、ファンのモチベーションを高める工夫を行った。
一方、新規ユーザーへの方針については、CPI改善の施策として既存ユーザーからの招待による活発化を狙い、そのための方法としてLINEを活用したと話す。
▲CPI低下施策として、既存プレイヤーから新規招待を活発化してもらう施策に注力
既存プレイヤーから招待をすることでCPIが下がるということもあるが、身近な人がプレイしているユーザーの方が、プレイへの熱量が高い傾向があり、既存プレイヤーからの新規招待を活発化することを考えたと伊東氏は振り返る。
LINEを活用した招待機能を実装するにあたって意識した点は、”ユーザーを誘う口実をつくること”と伊東氏は説明する。『戦国炎舞』では「絆くじ」という仕組みがあり、その「絆くじ」を基にした招待設計を行う過程でLINEを活用している。
結果、熱量の高いユーザーが熱量の高いユーザーを誘うことに成功。くじを用意することで、ユーザーを誘うきっかけをつくることができた。2018年の9月から実施している新規ユーザー招待の効果としては、獲得数がCPA(チュートリアル突破)獲得の1/5のパフォーマンスを出し、この施策開発コストも含めたROASを回収できたと伊東氏は語った。
▲くじを活用しての新規ユーザー招待時期には、10,000件を超える獲得。
大きな成果を挙げることができたものの、注意すべき点として、伊東氏はLINEの実際の友だちには限りがあるため、定常でキャンペーンを設置するのではなく戦略的に実施する必要があり、不正ユーザーの対策も欠かせないと説明する。
さらに、LINEのグループトーク機能を拡張した新機能「OpenChat(オープンチャット )」も、ファンマーケティングでの活用としても可能性を感じているという伊東氏は、ユーザー同士のコミュニケーションの場としても活用していきたいと話し、セミナーを締めくくった。
会社情報
- 会社名
- LINE株式会社
- 設立
- 2019年12月
- 代表者
- 代表取締役社長 出澤 剛/代表取締役 慎 ジュンホ