【インタビュー】IPプロデュース集団グリーエンターテインメントが誕生 小竹社長が構想する“IP”を軸に据えた”柔軟"なゲームビジネスとは



2021年7月1日、ゲーム運営サービスを行う子会社ファンプレックスがグリー<3632>の一部ゲーム事業とライセンス事業を吸収分割により承継し、グリーエンターテインメント株式会社として生まれ変わった。グリーエンターテインメントは、WFSとポケラボに続くグリーグループの3社目のゲーム会社として、本格的に事業展開を行っていく。

今回、代表取締役社長に就任した小竹 讃久氏(写真)にインタビューを行い、グリーエンターテインメントの誕生の経緯や、グリーグループにおける位置づけ、同社としての強み、今後の展開について話を聞いた。



――:よろしくお願いいたします。今回の決定に至った経緯を教えていただけますか。

グリーにはゲーム事業と広告メディア事業、バーチャルYouTuberを含むライブエンターテインメント事業の3本柱があり、そのなかで、広告メディア事業とライブエンターテインメント事業は、投資期間から徐々に収益化のフェーズに移行しつつあります。その中でゲーム事業の成長をさらに加速させるため、当社グリーエンターテインメントを設立することになりました。


――:今回、ファンプレックスとグリー本体の一部ゲームおよびライセンス事業が一緒になることになったわけですが、ファンプレックスはわかりますが、ライセンス事業の内容について教えていただけますか。外部から見ると、『ワンパンマン』や『無職転生』など断片的に見えている程度ですので。

グリーとしては、実は随分前からアニメ製作委員会への出資を行っており、これまで30本ぐらいに参加させていただきました。出資の目的は、ゲーム化権を獲得することでしたが、それだけでなく、IPの立ち上げから収益化までの一連のプロセスに関与することで、IPに対する理解を深めるという点もありました。

ゲーム化については、自分たちで開発するだけでなく、パートナーとなるデベロッパーを開拓し、協業でゲーム開発に取り組んでいます。『ワンパンマン』に関しては、当社は製作委員会には参加していなかったのですが、中国でも非常に人気になっていたこともあり、ゲーム化権をいただき、中国のデベロッパーと提携させていただきました。

グリーのライセンス事業では、製作委員会に参加して、IPのアーリーステージから関与して作品の発展に貢献しつつ、ゲーム化を進めていくことを推進してきました。なかには、『ONE PUNCH MAN 一撃マジファイト』のように製作委員会に入らないでゲーム化権だけをお借りして、パートナーと一緒に開発することもあります。


 



――:グリーエンターテインメントを設立するにあたって、今後、自社ならではの強みをどう発揮させていこうとお考えですか。

グリーには、WFSとポケラボというゲーム会社がありますが、両社とは違った切り口にしたいと考えています。一般的に、ゲーム会社は、IPタイトルも含めて自分たちが開発したいゲームを開発して提供することが主な事業ですが、我々はあくまでIPを主体に据えています。

今回、グリーエンターテインメントを立ち上げるにあたり、既存の「ライセンス事業」という名称を「IPプロデュース事業」と名称変更させていただいており、その背景として、単にIPをお借りするのではなく、IPファーストの姿勢を貫き、IPを育てることにコミットするという意思が込められています。

製作委員会や原作への関与を通じてIPの成功・成長を支援することをミッションとして、自分たちでゲームを開発するだけでなく、他のゲーム会社への橋渡しや、IPと他のゲームとのコラボ支援なども行いたいと考えています。

当社自らIPのゲーム開発を行う場合には、IPのゲームだけでなく、ゲーム以外のコンテンツと融合したサービスの開発も念頭に置いています。具体的にお伝えるのは難しいですが、「ゲームありき」ではなく、ファンの方が喜んでいただけるような様々なコンテンツの中にゲームが入っていることを想定しています。ゲーム開発を行いますが、あくまで"IP"にスポットライトを当てている点が特徴です。



――:なるほど。IPのなかには現在主流のスマートフォンゲームにマッチしないコンテンツもありますから、そういう方向も面白いかもしれませんね。グリーエンターテインメントという会社を一言で言うと、どういう存在と言ったら良いと思いますか。

ゲームという枠にとらわれず、IPの価値を最大化させる「IPプロデュース集団」になりたいと考えています。


――:IPプロデュース企業って世の中には存在していますが、開発能力を持たない会社が多く、グリーエンターテインメントの開発・運用力はすごく魅力だと思うのですが。

隣接領域であるアニメをみると、スマホの普及を背景に、NetflixやAmazon Prime Videoが、全世界でアニメを視聴するプラットフォームとして成長しています。そういった中でMAPPAさんやufotableさんなどの作品のクオリティ、そして制作能力の高さにスポットライトが当たっています。

ゲームもアニメと同様で、スマホの普及を背景に広く展開する土壌があるなか、質の高いゲームを開発・運用する能力はこれまで以上に必要とされています。IPがより良い展開をしていくため、我々自身の開発能力をさらに高める必要があります。



――:これからゲーム開発部門ももっと強化していく、ということですか。

はい。グループ会社のWFSとポケラボは、それぞれ得意とするゲームエンジンを開発・発展させていきながら、ゲームエンジンの特徴にあったIPを活用したゲーム開発も行っています。グループのゲームエンジンを使わせてもらうことができますので、積極的に利用させてもらおうと考えています。


――:グループの協力を得られるというのが大きいですね。

WFSとポケラボは、それぞれエンジン戦略を打ち出しています。たとえアプリが大きくヒットしなくても、特定のエンジンを基軸において開発を続けていくことでそのエンジンは必ず進化し、確実にその会社の開発力として積み上がっていきます。当社は、自社のエンジンを持っていませんが、プロデュースする作品の積み上げに伴いアニメ製作への関与度合いを高めている点は大きな蓄積です。実際に、これまでの実績からお声がけいただくことも増えており、グループ内のゲーム2社とは違った価値を積み上げることができていると考えています。


――:アニメの製作委員会は、お金を持っているから入れてくれるものではないですよね。信用を積み上げることは大変だったんじゃないかと思うのですが。

そうですね。最初はゲーム化の権利の獲得と、製作委員会に参加することはほぼ同義と捉えていました。製作委員会で製作するアニメは、数億円の予算が必要で、関係会社で分散して出資しています。そしてさらにゲーム化となると、追加で少なくとも数億円の予算が必要でした。いまでは2ケタ億円は当たり前ですよね。ゲームとアニメで投資資金が全く違いますし、リスクのバランスも異なっています。

そうしているうちに、自分たちだけでゲームを開発するということは、製作委員会のメンバーに対しても"出口"を閉ざしているのかもしれないと思うようになりました。作品によっては、自分たち以外のデベロッパーと組んで一緒に作る方が好ましい結果を生むのではないかと考えたわけです。IPプロデュース事業で、自分たちは開発しないけれども、ゲーム化に関与し始めたのはそういう経緯からです。

その結果として、日本以外の国・地域で成功事例が生まれてくるようになりました。当初は自分たちで開発しなくてはいけないと考えていましたが、違った方法を模索したことで、結果として、IPにとって良い結果につながったと思います。

日本は、新しい、優れた原作がどんどん生まれてくる土壌があります。そして、優れた作家さんがでてきて、積極的に登用する文化があります。日本特有のものですし、日本のIPの強みになっています。そういった部分を生かす戦略にしたほうが、世界にも通用するのではないかと考えています。



――:他社と組んで開発されて、成功事例がいくつかでてきたというお話ですが、どういった事例があったんでしょうか。

成功事例として一番大きいのは『ONE PUNCH MAN 一撃マジファイト』ですね。中国のデベロッパーと組みました。『ワンパンマン』は、タイトルから分かるように、一撃で敵を倒すヒーローの話なので、これをゲームにどう落とし込むのか、大きな課題でした。一撃で倒してしまうため、ゲームとして成り立たせるのが難しいんです。その点をどうクリアするか、中国のデベロッパーと議論して決めていきました。

あまり表に出ない話ですが、以前から日本のアニメ製作委員会に海外のゲーム会社が出資してゲーム化権を獲得するケースが増えていました。しかし、アニメ放送が終わっても、ゲームが出ないまま…というケースが多かったんです。その理由のひとつに、権利元の監修への対応が苦手である、という事情がありました。

したがって監修にきちんと対応できそうな会社を見極めた上で、海外の会社からするとわかりづらい権利元の監修にスムーズに対応するため、当社がパブリッシャーとして開発会社と権利元との間に立って調整しました。海外のデベロッパーは、問題が起きたらそのときに対応すればいいというスタンスが少なくないのですが、こうしたスタンスは、IPとして健全に発展させたいと考える権利元にとっては非常に良くないことなんです。

そういう意味で、我々がパブリッシャーとして責任を持つことができたので、大きな問題もなく開発からパブリッシングまでできたと思っています。版権元にはご迷惑をかけた部分もあるかと思いますが、対版権元、対開発会社で自分たちなりに役割を果たせたのではないかと思っています。





――:IPを使ったからヒットするという状況ではなくなっています。そういう意味で、これまでと違ったアプローチが求められているとも感じています。IPゲームを含め、スマホゲームの市場というのをどうご覧になっていますか。

最近リリースされた、ネットマーブルさんの『二ノ国』の仕上がりは素晴らしいですよね。コンシューマゲームも含めてゲームは、これからますます没入感を高める方向になっていくと思います。その一方で、そのIPならではのプラスアルファの価値を提供するスマホゲームという方向性もあると考えています。我々は、後者を志向しています。

さきほどお話したような、IPを使ったゲームを開発することとは少し違って、IPを使ったゲームだけど、それ以外のコンテンツも用意されていたり、ファンが喜ぶ仕掛けがあったり、といった要素が組み込んだアプリ・サービスも一つの方向としてあります。

例えば、最近では、ゲームの中にアニメと同じシーンが再現されているケースがよくあります。アニメとは異なる、オリジナルストーリーをアニメを使って表現したり、アイドルのリズムゲームパートでライブ動画を組み合わせたり、といったことです。あくまでゲームと違うコンテンツですが、ゲームと融合させていくことで、さらに新しい魅力を生み出すことができる、といったことでしょうか。IPを中心とした、ファンが喜ぶ新しい仕掛けを考えていきたいです。



――:コンテンツの一要素としてゲームがある、というスタンスですね。

そういうことです。こういうことは話すのは簡単ですが、実際にやるのはすごく難しいです。原作者や製作委員会、アニメ制作会社などステークホルダーと調整して理解を得られないと、うまくできないんです。

当社は、IPプロデュース事業を通じて、ステークホルダーとの関係構築が徐々にできるようになりました。新しいことにトライしたいとお話すると、これまでの信頼関係があるので理解していただけるようになってきたと思います。アプリならではの価値提供を行い、それによって、ファンのIPへの熱量をより高めていくことに貢献したいと考えています。



――:そういった取り組みはすでにされているんですか。

すでにリリースされているゲームですが、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~(以下ダンメモ)』がその例です。原作である『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか(以下ダンまち)』は当社のライセンスビジネスチームが製作委員会の方々と関係があり、そのご縁でゲーム化権をいただきました。今は当社もアニメの製作委員会に参加させてもらっています。また、原作者の大森藤ノ先生と定例会を開いていて、ゲーム中のシナリオやイベントの内容を一緒に検討しています。大森先生から「ダンメモが好きだ」と言っていただいています。

『ダンまち』というIPは、アニメやライトノベルなどで十分ヒットしている作品ですが、人気を獲得していく過程で、色々な展開でファンを獲得していくことが大事だと考えています。ゲームアプリ『ダンメモ』についても、ファンが熱量を上げていく一助になります。

自分たちとしてやるべきことは、原作者の考えている世界観を忠実に表現しているだけでなく、アニメと原作の世界をゲームを通じて拡張していくことで、ファンが増えるような仕掛けを生むことです。


我々としては、自分たちのゲームを売りたいからIPを使うことが第一義ではなく、その作品のこれまでの展開とは異なる仕掛けや新しい価値・体験を用意して、ファンの人たちからこのIPは面白い、やはりすごい、といってもらえるような展開を考えることを重視しています。そうすることで、自分たちの価値が上がっていくと思います。


――:これまでは他社と組むこと多いようでしたが、自社開発はどのくらい注力されるんでしょうか。

他社さんと一緒にやっているものが数本ありますが、自社でも複数開発しています。今は開発事業を立ち上げていることもあって、自社グループのエンジンを活用して、新しい価値を加えられると判断したIPを使ったゲーム開発に取り組んでいます。IPの内容によって、自分たちで開発したほうが良い、あるいは、他の会社と組んだほうが良い、などと判断しています。


――:ゲーム開発はいまでは2ケタ億円、開発期間も3、4年かかるのは当たり前で、作る側としては器用にいくつも手掛けるより、一点集中でしっかり作り込んでいくことが求められているように思います。あとIPへの投資なんですが、これから年間、どれぐらいやりたいですか。

現在の参加作品を年間4本だとしたら、それこそ3倍ぐらいにはしたいですね。


――:今後の成長イメージをどうお考えですか。

現在、自社開発の大型IPのタイトルを数本仕込んでいるところで、一本は年内にお披露目できるのではないかと思います。
また、当社としては、開発能力を身に付けるフェーズですので、IPプロデュース事業とゲーム開発・運用事業に加えて、新たに受託開発も始めたいと考えています。

ファンプレックスにおいて、ゲーム運用や海外展開、ゲームエンジンを活用した開発の経験はあるのですが、当社は、自分たちで一から開発した経験がないので受託開発を通じて開発能力を身につけて高めたいと考えています。おそらく受託開発は、期間を決めて取り組むことになると思います。



――:人材募集はされているんでしょうか。

全職種で募集しています。中でもいま力を入れているのは3Dアート関係ですね。今後、3D開発を強化していくことに伴い、採用活動を強化しています。


――:求める人材像は。

会社のミッションは、「日本発のIPとゲームで世界を熱狂させる。」としました。IP「の」ゲームではなく、IP「と」ゲームで、という点にこだわりを持っています。ゲーム開発はしますが、あくまでも主軸はIP。日本発のIPの世界的な広まりに可能性を強く感じる人に来てほしいと思っています。

私は2008年にグリーに入社しました。ちょうどアバターや『釣りスタ』などがヒットし始めて、テレビCMなど大規模プロモーションをやっても回収できる状況が見えてきた時期です。業績が本当に伸びていました。

当時の日本のソーシャルゲームは、他国のフリーミアムゲームと比較しても類を見ない水準のARPPU(客単価)を出していました。こうしたゲームができるのは日本特有かもしれないと考えて、負け続けていたインターネットサービスでも日本のソーシャルゲームは世界で挑戦できるかもしないと本気で考えていました。

当時、採用でも非常に優秀な人が入ってきました。私の親の世代ですと、自動車や電機など世界で戦える会社が多く出てきましたが、自分の世代では世界で戦えるビジネスがあまり生まれてきませんでしたので、そういうものに渇望していた人たちが来たんです。手を変え品を変えトライしましたが、期待したほどの成果が得られませんでした。自分自身としても、そういうふうになれなかったことに対する責任をいまでも感じています。


世界的にインターネットサービスを見ると、アメリカと中国が非常に強く、日本の存在感は決して大きくないと思います。こうした現実に対して、モヤモヤした感じもずっと持っていました。

そういう中で日本のIPはやはり世界で勝負できるものがあります。たとえば、エンターテインメント業界としてみると、アメリカの映画ビジネスなどは、多額の製作資金を集める仕組みが整っていて、そして投下する資金もケタ違いに多いものがあります。

これに対して、日本は、そういった仕組みをとらなくても、優秀な原作が数多く生まれて、世界的な人気を集める作品を多数輩出しています。日本はすごい競争力があるということだと思うんです。日本発のIPが世界に広がる可能性を信じ、そして、世界中でIPに対する熱狂を一緒に作りたいという方にはぜひ来てもらいたいですね。



――:ありがとうございました。

 



(※)インタビューはマスクを着用して行われましたが、写真撮影するタイミングのみ外しました。

グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高626億円、営業利益31億円、経常利益42億円、最終利益27億円(2020年6月期)
上場区分
東証一部
証券コード
3632
企業データを見る
グリーエンターテインメント株式会社
https://gree-entertainment.com/

会社情報

会社名
グリーエンターテインメント株式会社
設立
2015年10月
代表者
代表取締役社長 小竹 讃久
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