スマートフォン端末の機能を活かした直感的な操作方法、説明を必要としない明快さ、老若男女だれもが楽しめる万国共通のルールなど、ゲームの間口を広げるジャンルとして、スマートフォンアプリ市場において注目されているハイパーカジュアルゲーム。
gamebizでは、各社のハイパーカジュアルゲームにスポットを当てたレビューやインタビューを掲載するコーナー「ハイパーカジュアルゲーム道(ハイカジ道)」を展開している。
今回は、ハイパーカジュアルゲームを手掛ける主要企業への共通アンケートを実施。企画に協力してくれたカヤック<3904>、Voodoo Japan、Lion Studiosの回答をまとめたメーカーアンケート記事をお届けする。
▼「ハイカジ道」の過去記事はこちら
https://gamebiz.jp/news/tag/17082
面白法人カヤック
1社目は、面白法人カヤック。同社のゲーム事業部 事業部長/プロデューサーである、畑佐雄大氏からのアンケート回答を紹介する。
▲畑佐 雄大(はたさ ゆうだい)氏
Q. 御社が考えるハイパーカジュアルゲームの定義は?
「世界中で、言語や年齢、性別を問わず誰でも楽しめること」「すぐに理解でき、手軽に遊べること」「主にアプリ内広告によってマネタイズされていること」という要素を満たしているゲームが、ハイパーカジュアルゲームの定義だと考えます。
Q. ハイパーカジュアルゲーム作りで重視していることは?
まず1つは「スピード」です。日々たくさんの新作タイトルが出てトレンドも移り変わっていく中で、常に先手が打てるように意識して開発を進めています。トレンドに乗るのではなく、自分たちがトレンドを作り出すという意気込みで取り組んでいます。
2つ目は「とにかく分かりやすくする」ということです。言語や文化を問わず、世界中すべての人に遊んでもらうためには、一瞬で何をすれば良いのかが理解できることや、ぱっと見て「面白そう!触ってみたい」と感じてもらう必要があるので、分かりやすさは特に大事にしています。
最後は「自分たちが面白いと思えることをする」ということです笑
普段からABテストばかりしていると創造性を忘れてしまいそうになることもあって、「とりあえずテストしてみるか〜」という思考になりがちなのですが、果たしてそれは本当に面白いのか?ということ、自分たち自身が面白いと思いながら作れているかどうかということも、とても大切にしています。
Q. 広告手法について意識されていることは?
ハイパーカジュアルにおける「広告」は大きく分けて「ユーザー獲得用の広告」と「マネタイズ用のアプリ内広告」の2つがあるので、それぞれで意識していることを書きます。
1つ目の「ユーザー獲得用の広告」でいうと、まずそれらの広告にはある程度の「型」があるので、その型を漏れなくテストするということを大事にしています。例えば、失敗ばかりを見せるとか、実際にプレイしている人の表情を載せる、などですね。
そして、その型も共通の正解があるわけではなく、アプリによって相性の良し悪しがあるので、仮説を立ててテストと検証することを意識しています。
2つ目のアプリ内広告については、これも結局テストなのですが、やはりプレイヤー側からすると広告が出る頻度は少ないほうがよく、一方でアプリ提供者側からするとなるべく多く広告を視聴してほしいので、そのバランスをかなり意識しているということです。
遊んで頂くプレイヤーと、提供者の我々とのちょうどよい落とし所を常に探している感じですね。
Q. いま注目しているハイパーカジュアルゲームのジャンルは?
チームとして、特に「こういうジャンルを集中的につくろう!」というのはないのですが、個人的に「ランゲーム」にはまだ可能性が眠っていそうだなと感じています。ゲームのフォーマット自体はかなり前からありますが、最近でも新しい見せ方や体験ができるランゲームが多く出ています。
傾向としては「人間に何かしらの変化が起きる」ものが増えていていますね。弊社のBall Run 2048も「ランゲームと2048系のマージゲームを組み合わせたら面白いかも!」という発想から生まれていますが、まだまだランゲームには様々な可能性が秘められていると思っています。
Q. いま注目している企業やタイトルはありますか?
Rollicさんはいつもものすごくスケールするタイトルを数多く排出しているなと思っていて、個人的によく観察させてもらっています笑
特にアプリだけではなく(これはあくまで推察ですが)ストアの説明文やスクリーンショットなど、ASO対策もかなり注力されている気がしていて、全方位的に施策を行なっていて本当に凄いなと圧倒されています。日々いろいろと学ばせてもらっています。
Q. 今後のハイパーカジュアルゲーム市場の展望について
今後、ハイパーカジュアルゲームはますます「メディア」の色が強くなっていくのではないかと思っています。
テレビやYouTubeも動画というコンテンツがあって、そこに人が集まり、メディアとなった結果広告としての価値ができたように、ハイパーカジュアルゲームも、いまは基本的にゲームの広告しか出ていませんがもっとメディアとしての価値が高まれば、いずれゲームではないブランド系の広告やECの広告なども増えてきて盛り上がっていくのではないかなと…。
願望もたっぷり含んではいますが、そういう未来が来ると思っています。
Q. 読者に向けてメッセージをお願いします。
ハイパーカジュアルは素早くコンパクトに作って、実際の市場と対話しながら仕上げていくという全く新しい開発スタイルですが、今後そういった作り方は他のゲームやサービスでも主流になっていくと思います。
また、つくる側からしても、より本質的な遊びと向き合ったゲームづくりができる面白さや、とにかく速く新しい製品や更新を入れていくスピード感、絶対的な正解がないがゆえの試行錯誤の楽しさがあります。
最初のステップとなるプロトタイプをつくる部分に関しては比較的誰にでもできるので、ぜひこれからより多くの人にハイパーカジュアルをつくる醍醐味を味わってもらい、日本発のハイパーカジュアルゲームがもっと増えると良いなと思っています。
私たちがお伝えできることであればお伝えしますし、情報交換も大歓迎ですので、気になることがあればお気軽にご連絡ください!
Voodoo Japan
続いては、Voodoo JapanのBen Fox氏(Head of Japan)からのアンケート回答を紹介しよう。
Q. 御社が考えるハイパーカジュアルゲームの定義は?
ゲームプレイの定義で言えば、Voodoo社のゲームは短時間のスキマ時間でどこでも楽しめるつまみ食い要素の高いゲームがそれにあたります。短くシンプルなコアループでわかりやすく、ゆるく遊べるゲーム内容となっています。
ほとんどのハイパーカジュアルゲームの市場は超巨大市場であり、世界中の様々な人々を魅了しています。あらゆる年齢、性別、ゲーマーはもちろん、普段 はゲームを遊ばない人たちをも虜にしています。どのようなゲームプレイなのか、と言われてもなかなか一言では説明できないのです。トレンドは毎月のように変化しますから。
Q. ハイパーカジュアルゲーム作りで重視していることは?
ハイパーカジュアルゲーム作りの際に重要視していることはマーケタビティ(マーケティングのしや すさ)です。ゲームの可能性はアイデアやプロトタイプ段階のテストで判別する事ができます。 Voodoo社ではいくつかのプラットフォームでテストを行い、CPIやDay1やDay7の保持率などの初期関与数値を見てマーケタビリティの数値を判断します。
Voodoo社にはハイパーカジュアルゲームの作成とテスト時に注目している2つの要素があります。一つ目は、ゲーム内でのユーザー行動を分析したデータベースの要素です。そして二つ目は人的要素です。私たちのパブリッシングチームは、ハイパーカジュアルゲーム業界での長年の経験と過去の学びをもとに、ゲームの方向性、ロードマップ、ローンチ後のゲームの将来などを見極めます。
Q. 広告手法について意識されていることは?
広告手法についてはとても意識しています。ゲーム成功の鍵はマーケタビリティにありますから。
ゲーム開発時からなるべく多くの人に遊んでもらえるようにアイデア、トレンド、満足度の高いゲームプレイメカニクスを考えています。インターネット上で人気の投稿、時に動画などをヒントにすれば、インストール数につながる広告を作りやすくなります。
魅力がある動画は、その魅力の度合いが多ければ多いほどダウンロード数増加に直結します。商品と広告の間には強いつながりがあるのです。ですので、私たちはユーザーにとって一番魅力的なコンテンツの作成にとても力を入れています。
Voodoo社の社内クリエイティブチームはマーケティングアーティストとマーケティング開発者で構成されており、彼らはゲームのために革新的で魅力あるコンテンツを作成しています。この チームはゲームスタジオと一緒に働きながらより良い広告作りに励んでいるのですが、その過程で広告のアイデアがゲームプレイの一環として実装されることもあるんですよ!
Q. いま注目しているハイパーカジュアルゲームのジャンルは?
Run Rich 3DやBody Run 3Dなどのレベルを勧めるごとにキャラクターが成長する「ストーリーランナー」スタイルのゲームが面白いと感じています。ハイパーカジュアル界の基盤ともいえるランナー系の新たなアプローチが興味深いです。
ですが何よりも私が今注目しているのは、ハイパーカジュアルゲームにメタゲームの実装をすることで、プレイセッションや保持率の増加につながっているゲームたちです。これこそ、ハイパーカジュアルゲームの進化版と言えるのではないでしょうか。
Q. いま注目している企業やタイトルはありますか?
日本市場で言えば、FTYの描画とパズルを組み合わせたゲームが面白いと感じています。
私の場合、ある特定の企業に注目することよりも様々な業界全体の動きやM&Aに興味を持っています。ZyngaやRovioは大規模な買収を行いましたし、Voodoo社もマーケティングプラットフォーム拡大を視野にBidshakeを買収を行いました。
ハイパーカジュアル業界がまさに盛り上がっている、という印象です。
Q. 今後のハイパーカジュアルゲーム市場の展望について
ハイパーカジュアル市場のダウンロード数は年々めざましい成長を遂げており、今後も成長が見込まれます。
ユーザー基盤も増加傾向にあり、一人当たりのゲームのダウンロード数も増えています (ユーザー数も増えていますが、ダウンロード数はそれを上回るスピードで成長しています)。コロナ禍でモバイルゲームは全体的に好成績となっていますが、ハイパーカジュアルゲームもその例に漏れません。
しかし、コロナ後の制限解除はハイパーカジュアルゲームにとってプラスになる事が予想されます。ハイパーカジュアルゲームは出先や、通勤時のちょっとしたスキマ時間を使ってプレイする事 ができるからです。同時に、カジュアルゲームや中級コアゲームにとってはコロナ後の制限解除はマイナスに働くと考えられます。
Voodoo社のゲームにおいては、ユーザーがより多くのゲームをダウンロードしていることに加え、プレイ時間の全体的な増加もある事がわかっています。
Q. 読者に向けてメッセージをお願いします。
この記事の読者様たちの中にハイパーカジュアルゲームに興味を持っている、もしくはハイパーカジュアルゲームを作ってみたいと思っている方がいるかもしれません。
もし少しでも興味があるのなら、ぜひ一 歩踏み出してみることをお勧めします。ゲーム作成ツールも豊富にありますし、Voodoo社のテスティングプラットフォームも気軽で使用でき、パブリッシングマネージャーたちからのサポートも受けられます。
人気のジャンルはスピーディーに変化しているので、失敗するかもしれなくてもまずは試してみる事、そして何か学びとる事が大事です。ただ待っていて機会を逃すよりも、まずはチャレンジする事が大切です。
Lion Studios
最後は、Adjustの親会社であるAppLovin社傘下のゲーム会社、Lion Studios。Nicholas Le氏(President, Lion Studios)の回答を紹介する。
▲Nicholas Le氏(President, Lion Studios)
Q. 御社が考えるハイパーカジュアルゲームの定義は?
ハイパーカジュアルゲームは、1プレイの長さが短いにも関わらず、ゲームの仕組みが面白いため、 プレイヤーが気軽にアプリを開き、すぐにプレーすることができるところが特徴です。
ハイパーカジュ アルゲームは通常、車の駐車やバスケットボールのダンクなど、単一のコアメカニックに焦点を当てていますが、それが逆にプレーヤーにとって挑戦的で、普遍的な魅力が込められています。
まとめると、ハイパーカジュアルゲームは、簡単にプレイを始めることができるにも関わらず、クリアへの欲求を自然と駆り立てる構造になっているため、プレーヤーが何度も頻繁にゲームに戻ってくる仕組みになっています。
また、ハイパーカジュアルゲームは、比較的安価かつ短い開発サイクルとアプリ内広告収益にフォー カスしたマネタイズモデルを特徴としております。
Q. ハイパーカジュアルゲーム作りで重視していることは?
このジャンルは、列に並んで待っているときや通勤中など、プレーヤーが短時間で楽しむことができるスナックコンテンツで知られており、70年代や80年代に流行したシンプルなアーケードゲームを復 活させたものです。
他のゲームジャンルとは異なり、ハイパーカジュアルゲームは、バイラルになりやすく一気にスケールするように作られています。
近年、ハイパーカジュアルゲームは大成功を収めており、アプリストアの無料ゲームチャートのトップに上がることがよくあります。ハイパーカジュアルゲームは短い時間で楽しめ、のめり込むことができるので、爆発的にヒットする可能性を秘め、その広告収益に焦点を当てたビジネスモデルには大きな魅力があります。
ハイパーカジュアルのゲームデザインはユニークで、コントロールしやすいものである必要があります。ユーザーが何度もプレイしたくなるループを作るには、プレイヤーが簡単にゲームを進めることができ、常にアプリ内通貨やアイテムなどを獲得できるようにする必要があります。
ほとんどのゲームユーザーはオーガニックからの流入では無いため、最初の数秒間でゲームのアイデアを理解してもらえるようにすることが重要です。
Q. 広告手法について意識されていることは?
ほとんどのハイパーカジュアルゲームは、ビデオ、プレイアブル、バナー、およびインタースティシャ ル広告を組み合わせた収益化モデルを使用しています。一部には、ゲーム内アイテムのロックを解除したり、プレーヤーに広告なしで移動するオプションを提供したりするためのアプリ内課金も含まれています。
ハイパーカジュアルゲームは口コミで広まる可能性が高いため、多くの場合、プレーヤー の維持よりも、より多くのプレーヤーを獲得するためのユーザー獲得に焦点を合わせています。
一 方、ミッドコアゲームとハードコアゲームの開発者は、新しいプレーヤーの獲得に多額の予算を費やすのではなく、特に熱心なプレーヤーが継続的に課金を行うような仕組みづくりに焦点を当てているため、ハイパーカジュアルゲームの考え方とはまるで正反対です。
近年ハイパーカジュアルゲームは、カジュアルゲームやミッドコアゲームからさまざまな機能や広告手法を取り入れることがますます増えています。また、アプリ内購入やサブスクリプションを取り入れ ることにより、開発者はよりユニークなコンテンツを販売し、それによってLTVを増やすことができます。
Q. いま注目しているハイパーカジュアルゲームのジャンルは?
最近私たちが注目しているものの1つは、マルチタスクゲームです。これらのゲームはメカニック (ゲーム要素)が1つだけでなく、異なるミニゲームをいくつもこなすことでレベルアップできるようになっています。
マルチタスクゲームには、1つの大きなテーマが存在し、そこにさまざま作業・操作を伴 うミニゲームが結びついていることが多いです。 Lion Studiosは、このジャンルで最初のゲームの1 つである、『Chores! - 掃除を始めよう』と呼ばれるマルチタスクゲームを公開しました。
さらに、カジュアルナラティブのジャンルは新しいものではありませんが、ハイパーカジュアルのナラティブは物語を伝えるための新しい方法として登場しました。これらのゲームは、選択肢、結果、そし て多くのキャラクターや個性で満たされています。Lion Studiosは『女の子を救え!(Save the Girl !)』をリリースして以来、その後もいくつかのナラティブゲームを立ち上げました。
Lion Studiosは、まず第一に高品質のゲームを作り、プレーヤーにユニークな体験を提供することに重点をおいています。同社はこれまでパズル、ナラティブ、シミュレーションゲームで多くのノウハウを 獲得してきました。
また、カジュアルカテゴリに分類される(ゲーム内のアイテムを組み合わせていく) マージジャンルも積極的に採用しています。最近リリースされた『マージ・ヴィラ』は、マージジャンルの魅力を最大限に引き出したもので、多くの可能性を証明しています。この分野では、今後も新しいゲームのリリースの予定があります。
Q. 今後のハイパーカジュアルゲーム市場の展望について
数年前にハイパーカジュアルゲーム革命を起こした、気軽に楽しめるシンプルで幅広いオーディエンスゲームは依然として成功していますが、エクスペリエンスベース、ナラティブ、マルチタスク、パズル、そして頭脳やクイズなど、その他のハイパーカジュアルサブジャンルも人気があり、マーケットシェアを共有しています。どのジャンルにおいても、創造性、品質、スピードがますます重要になるかと思います。
Lione Studiosでは、ゲーム作りにおける発想(アイディア)を大切にしています。もちろん市場のトレンドのことは考えてはいますが、それだけで方向性を決めることはなく、常に優先しているのは革新的なゲームのアイデアです。
Q. 読者に向けてメッセージをお願いします。
大手マーケティングソフトウェア会社であるAppLovinによって設立されたLionStudiosは、世界中で2億人以上の月間アクティブユーザーを抱えるモバイルゲームパブリッシャーです。 Lion Studios は、モバイルアプリ開発者と協力して世界中のプレーヤーにゲームを提供しています。
SaveThe Girl 、Mr Bullet、Hooked Inc.、Slap Kingsなど大ヒットしたモバイルゲームを含め、25億回以上ダウンロードされた100以上のゲームをリリースしました。サンフランシスコに本社を置くLionStudiosのグロースチームと製品チームは、その専門知識を活用して、ゲーム開発者のビジネスの成長を支援しています。
最近リリースしたアプリはこちらの『Coal Mining Inc.』というシミュレーションゲームです。こちらのゲームはアイドル(放置)ゲームで、プレイしていない間も作業が進み、お金や経験値は勝手に増えて、再開後に入手できるで、いつでも隙間時間にゲームを続けることができます。
このゲームでは、自分で管理しながら、採炭事業を発見して楽しむことができます。採掘場所を探したり、スタッフを雇っとたり、施設を建てるなど、すべき作業がたくさんあります。また、新しい建物や車を購入し、需要に追いつくために多くのアップグレードを行い、自分だけの炭鉱エンパイアを作ることができます。
▼「ハイカジ道」の過去記事はこちら
https://gamebiz.jp/news/tag/17082