【決算レポート】サイバーエージェント、21年9月通期の営業益は『ウマ娘』の大ヒットで一気に1000億円超え 「経営陣でも予測できない」と次期業績予想を非開示に

木村英彦 編集長
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サイバーエージェント<4751>の2021年9月通期の連結決算は、売上高6664億6000万円(前の期比39.3%増)、営業利益1043億8100万円(同208.1%増)、経常利益1046億9400万円(同209.2%増)、最終利益415億5300万円(同528.8%増)と大幅増益を達成した。Cygamesが開発・運営する『ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)』が業績拡大をけん引し、売上高、利益ともに過去最高を大きく更新した。

・売上高:6664億6000万円(同39.3%増)
・営業利益:1043億8100万円(同208.1%増)
・経常利益:1046億9400万円(同209.2%増)
・最終利益:415億5300万円(同528.8%増)

藤田晋社長は、「『ABEMA』への先行投資を行っていたため、ここ数年は300億円程度に抑えていた」が、大ヒットタイトルが生まれて営業利益が一気に1000億円を超えた。またグループで保有する現預金も9月末で1800億円を突破。大型の新作ゲームの開発に充当するほか、新規事業への投資、M&A(企業買収)など、さらなる成長のために活用していく考えだ。

  
 
■インターネット広告事業
売上高は3213億1300万円(同19.3%増)、営業利益は225億7000万円(同7.1%増)だった。ゲームの派手な伸び方に目を奪われがちだが、「近年で見られない大幅な増収となった」という。「広告というと華やかなイメージがあるが、運用力と技術力で広告効果の最大化することを強み」としており、過去最高の売上高を更新した。

同社では、法人向けの営業部門で、小売や行政、医療、イベントなど様々な業種との協業で幅広くDX事業を展開しているという。小売ではデジタルとリアルが融合した新しい購買体験の実現で、共同で販促を行うことで事業拡大を狙っていく。こちらは開始して間もないため、2022年9月期からの収益貢献になるという。

 

■ゲーム事業
売上高は2627億5100万円(同68.6%増)、営業損益は964億4500万円(同217.9%増)となった。「一時はゲーム事業が先細っているのではないかと言われたこともあったが、『ウマ娘』がリリースされて以降、好調だ」。

同社では、グループの業績拡大をけん引した『ウマ娘』について好調な初速からの反動がありつつも、第4四半期も堅調に推移した、としている。「反動があった」「堅調」としつつも、この規模の売上、営業利益を実現したことは驚異的といえよう。

『ウマ娘』については、提供開始から約7カ月で1000万ダウンロードを突破。育成キャラクターの追加やイベントでロングランヒットを目指していく考え。藤田社長はどの程度で落ち着くのか予測がつかないとしながら「長年に渡って愛されるIP(知的財産権)として大切に育てていきたい」と述べた。

昨今、新作ゲームの開発規模が大型化しているが、「大規模開発にも対応できる組織力と技術力、サービス開始後の運営力、そして十分な資金を投下できる資金力が当社の強みだ。年間4~5本の新作を出しているが、今後も継続的にヒットを出していきたい」。

新作のラインナップは以下のとおり。個別のタイトルを挙げることはなかったが、「どれもしっかりとしたものを作り上げてからリリースする体制ができており、期待ができる」とした。

 

■メディア事業
売上高は828億6900万円(同45.1%増)、営業損失は151億4100万円の(前の期は182億6700万円の損失)となった。「ABEMA」の広告や月額課金、周辺事業の売上が大きく伸び、第4四半期(21年7~9月)の売上高は過去最高となる226億円(前年同期比28.5%増)を記録した。

インターネットTV局「ABEMA」を展開するメディア事業について、「損益改善フェーズに入った」という。引き続き営業損失を計上しているが、これから徐々に減らしていくようだ。

同社では、ここ数年、「ABEMA」への先行投資を継続してきたが、収益化に動くメドである1000万WAU(週次アクティブユーザー数)を突破し、直近では1800万を記録した。WINTICKETなど新規で立ち上げたサービスも成長中だ。

番組面では、大谷選手が活躍したメジャーリーグベースボール(MLB)を放送したことや、Girls Planet 999など若年層に支持された番組を強化したことが視聴者数の増加に貢献したという。

また、視聴デバイスについてはスマホが最も多いが、テレビが伸びていることも明かした。新たに発売されるテレビのリモコンのほとんどに「ABEMA」ボタンが採用されており、出荷数が伸びるにつれて視聴数も伸びているという。


■2022年9月期の見通し
2022年9月期の業績見通しは非開示。その理由について、藤田社長は、「新規タイトル(『ウマ娘』のこと)の大きなヒットがあったものの、これからどのくらいで落ち着くのか、経営陣でも予測がつかない」ことをあげた。前期中に2度にわたって上方修正を行った経緯からも合理的な予測が立てづらいのは明らかだ。

『ウマ娘』は、足元でも運営成績は堅調に推移しているとしながら、12カ月後の数字については「全く見えない」とした。レンジ予想で開示することも考えたそうだが、「レンジの幅が大きすぎて投資家をミスリードする恐れがある」という。業績見通しが見えてきた段階で、改めて開示する考えを示した。

株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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