【インタビュー】意識すべきは「国ごとにゲームを一から作る感覚」と「ユーザーへの思いやり」…新進気鋭のゲーム会社Nuverseのゲーム展開とは

 

 日本国内では『フィギュアストーリー』、海外では『Ragnarok X: Next Generation』などの様々なゲームを配信しているNuverse。

同社は、グローバルなゲーム開発及びパブリッシング会社として、日本を含めたアジア地域、および欧米地域向けに主にスマートフォン向けゲームを展開しており、RPG、MMORPG、TPSなど様々なジャンルを手掛けている。

各地域の市場によって、ユーザーや作品の手ごたえは異なることも多く、攻めあぐねいている企業がいる中、Nuverseではどのように展開しているのか。

今回、gamebizではNuverseの担当者にインタビューを実施。同社のゲーム展開における戦略や考え、そして今後の日本展開についての考えを聞いた。

 

新しい技術や表現を用いて話題となった『フィギュアストーリー

 

――:国内では『フィギュアストーリー』をリリースされましたが、手応えはいかがでしょうか。

 リリース後、iOS無料ランキング1位、Google Play無料ランキング1位を獲得し、セールスランキングでも予想より上位にランクイン、またApp Storeレビューで4.9を獲得するなど、十分な手応えを感じております。

ゲームシステムはカジュアルバトルRPGですが、1/7スケールの「フィギュア」が題材という点で幅広い層にご興味を持っていただけたと感じています。

――:『フィギュアストーリー』の魅力やユーザーに楽しんでもらいたい点はどういったところでしょうか。

 フィギュアの質感を忠実に再現したビジュアルや、フィギュア視点の世界観、また空き時間に遊べる気軽さが『フィギュアストーリー』の魅力です。

ゲームには3Dのキャラクター(フィギュア)達がたくさん登場するのですが、ただの3Dキャラクターではなく、実際のフィギュアに使われる素材「PVC」と「ABS」の質感や、1/7スケールで再現することにこだわったキャラクターです。

シナリオや戦闘シーンでコミカルに動いたり喋ったりするので、そこはぜひゲーム内でご覧いただきたいです。

また、戦闘シーンではフィギュアを配置したあとは基本的に自動で戦ってくれて、さらにフィギュアを育成するための素材はゲームを閉じている時にもフィギュア達が自動で集めてくれるので、育成の手間がかからず、気軽に遊べる点も魅力です。

――:日本国内マーケティングにおいて意識している点はどういったところでしょうか。

 
Nuverseでは『フィギュアストーリー』のゲームジャンルを「フィギュアRPG」と謳っており、「フィギュア」を切り口にした施策を意識して行っています。

例えば、YouTuber原型師(YouTubeで活動する粘土造形師)との取り組み、ホビー製品の展開をしていない企業としては珍しいワンダーフェスティバルへの協賛、「ゲーム」ではなく「フィギュア」を切り口にしたバラエティー番組の配信などです。これまで「ゲーム」では開拓されたことのない場所を、「ゲーム」×「フィギュア」という立ち位置を活かして、開拓しています。

おかげさまで、自社ではまだホビー製品を展開していないにも関わらず、ホビー系メディアで取り上げていただくこともできました。

有名IPとのコラボの際にも、基本的には「このキャラクターがフィギュアになったら」という観点でプロモーションを企画しました。コラボ期間中に訪れた誕生日に、Twitterのプロモトレンドで盛大にお祝いするだけでなく、オフラインのイベントに協賛して、参加したお客様や、キャンペーンの当選者にフィギュアパーツの「ケーキ」をプレゼントしました。

こちらは単体でももちろん成立するのですが、既存フィギュアにもフィットするような仕掛けを施したので、気付いたファンの方からTwitterで喜びの声をいただくなど、ポジティブな反響を多くいただきました。

――:施策では“例のプール”など、ニヤリとする内容も印象的でしたが、各国にちなんだマーケティングはどのようにして企画しているのでしょうか。

例のプールの企画は、夏にゲーム内に実装された「水着フィギュア」の宣伝のために企画しました。

他社のゲームでも「水着」は定番の夏のイベントとなっていて、大規模なプロモーションを実施する企業もある中で、いかに差別化して話題にできるかを考えた結果、この企画が生まれました。

『水着フィギュア達が例のプールでグラビア撮影をする』という企画で、映像と写真集を作ったのですが、実際の場所とCGのフィギュアを組み合わせて、本当にフィギュア達がその場所にいるかのような映像や写真を撮ることは可能なのか、誰もやった事がありませんでしたが、信頼できる制作会社さんのおかげで結果的にとてもクオリティの高い映像と写真が出来上がりました。

この企画も、ゲームのキャラクターが3Dフィギュアだからこそ映える企画になったのだと思います。

また、新しい技術も積極的に取り入れているため、例えば不定期で実施している生放送も、メタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスター株式会社に協力してもらい、フィギュア達の秘密基地(通称:ダンボール基地)を3DCGで再現した会場から配信しています。ダンボール基地には毎回実寸大(1/7スケール)のフィギュアを展示し、MCやゲスト声優などもフィギュアと同じ等身で合成しています。

まさに番組名「潜入!ダンボール基地」の通り、出演者や視聴者がフィギュアの世界に潜入して、フィギュア達の秘密基地をのぞき見するような、ワクワクする体験ができると思います。こちらは何度も綿密な打ち合わせやリハーサルを行い、試行錯誤しながら実現しました。こちらはかなり複雑な技術を使ってクラスター社と作り上げていったため、クラスター社でも初の試みとなったようです。

 

「国ごとにゲームを一から作る感覚」と「ユーザーへの思いやり」

――:『Ragnarok X: Next Generation』も海外では展開されていますが、こちらについては反響としてはいかがでしたでしょうか。

リリース後、タイ、インドネシア、フィリピンでiOSの無料ランキングとセールスランキング第1位獲得、インドネシア、シンガポールでGoogle Playの無料ランキングとセールスランキングで第1位を獲得するなど、大きな反響がありました。

また、リリース後1ヵ月以上にわたってセールスランキングの順位がほとんど5位以上に安定して入っておりました。おかげさまで先日東南アジア地域のGoogle Play Store主催のアワード「Best games of 2021」も受賞することができました。

他には、ゲームが有名になったおかげで、インドネシア地区の視聴率が高い番組でも積極的に報道されるなど、ブランディングの面でも反響がありました。

――:Ragnarokシリーズでは日本はもちろん、海外でも人気IPです。期待度が高い分、難しさもあったと思います。Nuverseでは各国の展開はどのように取り組まれているのでしょうか。

チームメンバーは基本的にこれまでゲームビジネスに携わってきたメンバーで構成されており、少数精鋭制です。

Nuverse内部にいわゆるプロデューサー、ディレクター、プランナー、プロモーションプランナーなどのメンバーがいて、現地(配信地域)のパートナーとも密に連携をとりながら、各施策を進めています。

東南アジア地域の複数の国で配信しておりますが、1つのチームで地域全体を見るのではなく、基本的には複数のチームに分かれています。ユーザー意見の収集、コミュニティ運営についても、現地のパートナーに協力してもらいながら行っています。

――:Nuverseでは二つの作品をみると、さまざまな地域にてゲームの配信を成功させているように見えますが、その要因や意識している点はどういったところにあるのでしょうか。

例えば『Ragnarok X: Next Generation』においては、国民レベルの有名IPである一方で、これまでこのIPを使ったゲームは多数配信されてきており少しユーザーが飽きてきているという点で、パブリッシングにおいて課題がありました。

Nuverseが東南アジア地域でパブリッシングするのはこのタイトルが初めてでしたが、この“有名IPであること”を活かしつつ、“飽き”を解消しこれまでのタイトルと差別化して長期運営するために、特に意識した点は2つです。

1つ目は、幅広いユーザーを取り込むために「懐かしさ」と「差別化」を切り口にした施策を実施しました。まず「懐かしさ」の施策では、Ragnarokシリーズにおいて影響力のある実況者や昔から遊んでいるコアユーザー、さらにRagnarokシリーズがきっかけで結婚した夫婦が出演するTVコマーシャルを放送し、Ragnarokシリーズを昔遊んでいたユーザーを呼び起こしました。

また、「差別化」の企画として、TikTokのハッシュタグチャレンジをタイで行って話題となり、App Storeのフィーチャー記事で自発的に取り上げられるなどして、コアユーザーだけでなくライトユーザーの獲得を推進しました。

2つ目は、「ユーザーへの思いやり」です。長期的な運営を目指す作品として、プレイヤーからの信頼を得ることが作品の発展に繋がると考え、思いやりを持った運営を心掛け、施策に反映させました。

例として、コロナ禍においてゲーム運営者としてできる事はないかと考え、Stay Home中でも楽しめるゲーム内イベントを考えました。

具体的にはゲーム内で「東南アジア各国に明かりを灯そう」というコンセプトで、友達をオンラインで招待するとゲーム内の自国のオブジェ(建物)のゲージが増え、100%になると明かりが灯るイベントです。皆で協力して自国に明かりを灯そう、とユーザーが協力した結果、132万人以上が参加しました。

――:海外各社の展開は、中々苦戦する印象があるので、各地域ごとの展開について工夫している点などはあるのでしょうか。

例えば『Ragnarok X: Next Generation』の場合、東南アジア地域での配信を行っていますが、「東南アジア地域」と一括りで言っても国ごとにローカルルールは違います。

異なる国のニーズに対応するため、声優、フォント、ゲーム内道具のデザイン、ネーミングのルールもとにかくローカルに受け入れられるものを意識するなど、細かい部分に気を配りました。

なので、ベースは同じゲームとは言え、「国ごとにゲームを一から作る感覚」で展開しています。

――:今後の展開や目標についてお聞かせください。

弊社は、グローバルなゲームパブリッシャーとして、今後も優れた製品とサービスで世界中のお客様のニーズに応えたいと考えています。

同時に、日本を含めたアジア市場は私たちにとって最も重要な市場の一つです。特に長いゲーム開発の歴史を持つ日本から学ぶことは、ゲーム品質、ユーザー体験の質、提供するサービスの質を最大限追求することで、Nuverseの理念とも通じるところがあります。

今後もチームの構築や、製品、サービスに至るまで、高水準のパブリッシング能力を維持し、高め続けていきたいと思います。

まだまだ新参者で学ぶべきことは多いと思っておりますが、日本やアジア地域でのパブリッシングにおいて、経験を蓄積しながら、配信するゲームの質を追求し、長期的な視点で取り組んでいきます。

日本では、来年以降も複数のタイトルを準備中ですので、注目していただければと思います。

――:最後に読者に一言お願いします。

弊社には、それぞれの配信地域に信頼できるメンバーやパートナーがいます。その信頼できる方々と共に、より多くのお客様にゲームを遊んでいただけるよう各地域において最適なプロモーションを考えて実行し、実績を作ってきました。

今後も日本を始め、グローバルでのゲーム配信に力を入れていきますので、弊社との提携にご興味をお持ちの方は下記ページより「Business Development」までご連絡をいただければ幸いです。

――:ありがとうございました。

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