【インタビュー】『異世界美少女受肉おじさんと』は「誰でもハッピーになれるバディ作品」 許プロデューサーがビリビリのアニメ製作へのアプローチと作品の魅力を語る

木村英彦 編集長
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Cygames運営のマンガ配信サービス「サイコミ」連載中の『異世界(ファンタジー)美少女受肉おじさんと』(原作:津留崎優氏・池澤真氏)のTVアニメが2022年1月11日より放送開始した。今回、同作のプロデューサーでビリビリの許樹人氏(写真)にインタビューを行い、本作の魅力と制作の経緯のほか、ビリビリのアニメビジネスについても話を聞いた。

――:よろしくお願いします。『異世界美少女受肉おじさんと』のアニメが1月から放送とのことですが、タイトルのインパクトがすごいですね。最近、ビリビリさんはアニメ業界でも存在感を高めていますが、御社としての取り組みについてあらためて教えていただけますか。

ビリビリは中国の若年層が集まるコミュニティーです。2021年で12周年を迎えまして、設立当初から一貫して日本のアニメコンテンツを中国で紹介し続けています。現在では、製作委員会への出資またはライセンス取得などを通じて中国国内で配信しており、中国におけるシェアの約70%を占めています。 ビリビリのユーザーは35歳以下が86%超と、いわゆる中国のZ世代が集まってきてくれている点が特徴です。そんな中で、アニメというのは最も好まれるコンテンツのひとつとして存在しており、我々としてはアニメを絶え間なく供給していくことがミッションとなります。

ちなみに、最新のQBR(Quarterly Business Review)では、直近の四半期(2021年7~9月)のMAUが2.67億人(YoYで35%増)と設立から10 年以上が過ぎた現在も高い成長率を実現しています。私自身も入社してから3年目になりますが、コンスタントに伸びているという実感があります。

――:すごい伸びですね。許さんはこれまでどういったタイトルを手がけられたんでしょうか。

入社してからこれまで『グレイプニル』『ぼくたちのリメイク』直近では『最果てのパラディン』『進化の実』など、弊社の出資作品に携わっています。作品によっては幹事として関わらせていただいており、ビジネスのスキームも作品毎に開発段階から構築しています。



 ――:プロデュースする作品はどういう考え方、観点で選んでいるんでしょうか。

プロデューサーという仕事は「結果」が求められる仕事だと考えています。普段から「この作品を映像化したい」という強い情熱はもちろん胸に秘めつつ、その一方で国内外の客観的なデータを集めチーム全体で分析を行います。当社はデータドリブンの会社ですので定性的な部分も含めて総合的な判断をしています。ビジネスとして成立させていくには日本や中国のみならず全世界に広がっていく仕組みが重要になります。そのポテンシャルがあるかどうかと言った観点で常に作品を模索しております。

――:本題に入りたいのですが、どういった経緯でアニメ化に至ったんでしょうか。

はじめて読んだ瞬間、これはこの作品のキーワードでもあるんですが、私自身すっかり「魅了」されてしまいました。異世界ものの中でも次元の違う面白さがあると感じ、是非アニメ化したいと考えるようになりました。

その頃、弊社のマンガ事業部もこの作品を中国に向けて配信したいと検討していたこともあり、これは丁度良い機会だと考え、20年の9月ころに企画を作成してサイコミ編集部に伺いました。たしか2巻が刊行される前だったと思います。先方もこんなに早くアニメ化の話が来るとは思わず、驚いていた様子でした。

始めは半信半疑だったようですが、私の方からこの作品の中国での注目度の高さだけでなく、当社のマンガ事業部と組んだ際のシナジーや中国国内での宣伝的メリットなど、できるだけ丁寧に提案させていただきました。我々の熱意が通じたのだと思いますが、「一緒にやりましょう」というお答えがいただけました。

これは後日サイコミさんから伺った話なのですが、先方でもこの作品についてはアニメ化を前提として連載を始めた作品だったそうで、弊社としてはとても良いタイミングでお声がけできて大変幸運だったと思います。



――:2巻が発売される前とは相当早いですね。

物語のテンポも良く作品として非常に読みやすかったですし、中国本社のスタッフも絶賛していました。中国での評価も高かったのが決め手ですね。

――:作品の魅力はどういった点にあるとお考えですか。

個人的に海外ドラマのバディものが好きなんですけど、『異世界美少女受肉おじさんと』も、片方の見た目が女性になっているものの、まさに正統派のバディものだと思っています。

この物語は、すべてが平均点な「橘日向」と、すべてが完璧な「神宮寺司」というまるで正反対な親友二人が合コン帰りに異世界に飛ばされてしまい、その際に橘の方が絶世の美少女になってしまうというセットアップから始まります。橘を元の姿に戻すために二人は魔王を倒す旅に出掛けるのですが、訪れる村々でトラブルが続出し、橘の美貌が状況を更に悪化させてしまう。橘は絶世の美少女になっているので、神宮寺も気を抜くとすぐに橘の美貌に魅了されるのですが、そこを必至に抗いながら、トラブルに陥る橘を全力で救う姿が実に頼もしいんです。



二人の会話のやりとりも非常に面白く聞いているだけで楽しませてくれます。心理描写がとても丁寧で、男同士の嫉妬だったり、駆け引きの際の感情の機微が非常に繊細に描かれていて、なんというか男心をうまく捉えているんですよね。2人の掛け合いは基本的にはコメディータッチなのですが、一方でこの特殊な状況に悩む橘に神宮寺がそっと寄り添うシリアスな瞬間もあったりと絶妙なバランスでして。バディものの魅力が随所に伺えます。

また、この様なプロットなのでジェンダーや多様性について問いかけるセリフも見受けられたり、橘の存在をルッキズムに対するアンチテーゼと捉える事もできたりと、単に面白いコメディというだけではなく、深い部分で骨太な作品なのではと詮索したくなるところも魅力のひとつです。


 
――:アフレコも楽しそうですね。

橘(女)のM・A・Oさん、神宮寺の日野聡さんを中心に、アフレコに参加する皆さんの掛け合いが非常に面白くて、ブース内はいつも爆笑の渦でした。現場で「これは絶対面白い作品になるだろうな」と想像しながら聞いていました。

――:アニメの制作も進んでおられるかと思いますが、順調なんでしょうか。

非常に順調に進んでおります。これはOLMさんが頑張ってくださっているおかげですね。プロデューサーの吉岡さんには頭が上がりません。

――:当然出来栄えも自信あり、と。

私自身も映像をチェックしながら笑ってしまっています。思わず口角が上がってしまうような、そんな作品です。

――:アニメならではの面白さはどういったところでしょうか。

声優陣の演技力が本当に素晴らしく、その中でも特に見た目は美少女だけど中身はおじさんの橘(女)役を演じたM・A・Oさんは凄かったなと。作品を見ればその意味がわかるはずです。

また、橘が美少女の姿で豪快にビールを飲むシーンがあったんですが、「このまま表現すると少し問題になるかも…」とスタッフとお話し、テロップで実は32歳である事を大きく主張することでリスク回避をしました。結果として意外な面白さが演出できたのもアニメならではと思います。

――:未成年が飲酒しているように受け取られかねない、ということですね。多国展開しようとすると、国によって文化や慣習、倫理観などが異なりますから、表現に修正が入ってしまうのは仕方がない部分がありますよね。

そうですね。全世界で配信する事が当たり前の今、各国の放送倫理に対応する事もひとつのチャレンジとなってきています。



――:先日、オープニングとエンディングが発表されましたが、作品との相性はどうでしょうか。

オープニングは、福山芳樹さんにお願いしました。「JAM Project」のメンバーで、本当に力強い歌声だなと思いました。音楽が勢いを感じさせてくれるものです。Luce Twinkle Wink☆もポップでぴったりです。料理を作っているときなど、思わず口ずさんでしまいます。

――:OLMさんは最近、深夜アニメでもだいぶ活躍されていますよね。

既に多くの実績があるスタジオですが、最近では深夜アニメにも取り組まれており、非常に優秀なスタッフが多くて、安心してお仕事をご一緒させて頂いています。監督の山井紗也香さんは、今回が監督としてのデビュー作ですが、山井さんを強く推薦したのも吉岡さんなんです。山井さんは、原作に対する理解度が非常に高く、原作の池澤真先生と津留崎優先生とも非常に馬が合い、現場でも様々なシナジーが生まれたのは作品にとって非常にプラスでした。



――:原作者の先生の関わりはどういった感じなんでしょうか。

当初、シリーズを作るには原作のボリュームが足らなかったので先生方にもシナリオ構成から脚本会議に参加していただきました。毎回非常に高いモチベーションを持って参加していただきまして、山井監督とシリーズ構成の竹内利光先生と津留崎先生の三つ巴で面白いアイデアがどんどん生まれていきました。

――:この作品はどんな方に見ていただきたいですか?

この作品は、見た人すべてがハッピーになれる作品です。深夜アニメファンや原作ファンだけでなく、これまで作品を知らなかった方々にも是非見て作品の魅力を知っていただきたいです。作品の裾野を広げていきたいですね。

――:ありがとうございました。



 


(C)池澤真・津留崎優・Cygames / ファ美肉製作委員会

株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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