【インタビュー】ライブとゲームの両輪稼働で「バンドリ!」プロジェクトの再飛躍につなげたい 木谷会長と森川社長が2023年に向けた展望を語る

木村英彦 編集長
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『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(以下、ガルパ)』5周年を記念したイベント「ガルパ5周年記念ファンフェスタ in 秋葉原」が3月19日~20日に開催された。イベント初日に発表会を行い、ゲームの今後のアップデート情報やライブ情報など「BanG Dream!(バンドリ!)」プロジェクトの新展開が多数発表となった。

それらの発表は、いわば新型コロナの大きな影響を受けていた「バンドリ!」プロジェクトの積極攻勢への狼煙といえるものだが、今回、発表会に登壇したブシロード<7803>の木谷高明会長(写真左)とCraft Eggの森川修一社長(写真右)にインタビューを行い、6周年に向けた取り組みと再飛躍に向けたイメージについて話を聞いた。


――:よろしくお願いいたします。改めて、5周年の感想をお願いします。

木谷氏:ここまでよく続けてこられたなと思っています。新しいことをやる時期に差しかかってきましたので、来年のアプリの超大型アップデートを発表できたのは良かったと思います。新型コロナは、病気としてはまだまだ続くのでしょうが、社会的にはだいぶ落ち着いてくる年かと思いますので、ライブとゲームの両輪が本当に回すことができる年になると思います。9月に有明アリーナで控えている各バンドの単独ライブ4DAYSと、「BanG Dream! Special☆LIVE Girls Band Party! 2020」の振替公演が助走となって、来年のアップデートに繋がればもう一度の飛躍があるのではないかと期待しています。

それと新しい取り組みとして、SNEAKER AGES(スニーカーエイジ)さんとのコラボも、プロジェクトには目に見えない形でいい効果をもたらすと思います。全国の軽音楽部の部室にポスターなどが貼り出されるわけですし、当社主催の「バンドリ!」ライブへの出演を目指すことにもなりますから。

 
――:プロのライブに出演とはすごい話ですよね。

木谷氏:ええ。話題になるでしょうね。


――:森川社長はいかがでしょうか。

森川氏:今回のタイミングで先の話をお伝えすることができて、「バンドリ!」がまたすごいことになりそうだ、と感じていただけるきっかけになったと思います。『ガルパ』に関しては、これまでやってきたことの延長線ではない、大きな変化への流れが6周年以降できていくという期待が生まれたと思います。

6周年までは、アップデートが一時的に減ってしまいますが、コラボやアーティストタイアップ、ゲーム内でのストーリー展開などを楽しんでいただければと思います。プロモーションや外部のパートナー様との取り組みなどを通じて、「バンドリ!」プロジェクト全体を盛り上げていきたいですね。


――:今回の発表はずいぶん盛り上がりましたね。

木谷氏:想像以上でした。攻めていると感じた方が多かったようですね。超大型アップデートを1年前という早いタイミングで伝えてしまって良いのかと迷った部分もありました。しかし、早く伝えたからといってやることは変わりありませんし、むしろいまのうちに伝えておく必要があると考えました。

森川氏:『ガルパ』の3Dライブモードや振替公演についても、お客様から要望が多かったことですので、今回発表することができて良かったです。


――:まず、ゲームの話題からですが、3Dライブモードは、開発中ながらも非常に高いクオリティと感じました。

森川氏:ありがとうございます。今回、映像が出せたのはよかったですね。1週間前の時点で社内フィードバックが20個以上あって…という状態でしたが、前日まで対応してなんとか発表までもっていけました。スタッフの皆が頑張ってくれました。現段階で実機でも動くレベルなので、開発は順調に進めることができています。

 
――:MVとはまた違ったユーザー体験があるのでしょうか?

森川氏:はい。衣装やメンバーが変更可能になりますから、全く違った体験になるはずです。例えば、バンドのメンバーを入れ替えて遊びたい、こういうバンド編成でライブを見たい、3Dライブで衣装を自由に変えてみたい、といった声は以前よりいただいていましたので、ようやくお応えすることができます。

 
――:木谷会長は3Dをご覧になってどう思われましたか?

木谷氏:リアルのライブと一緒だと思いました。お客様からすると、「バンドリ!」のライブを見た後にゲーム内の3Dを見ると、私と同じ感想を持つかもしれませんね。すごい時代になったものだと思いました。

森川氏:コンテンツとしてのライブ自体が原作のようになっていますよね。ライブをもとにゲームを楽しむというのは「バンドリ!」ならではの特徴だと思います。

木谷氏:ゲームとライブのシンクロ率が上がることになりますので、VTuberとはちょっと違った、差別化された要素になってくると思います。


――:今回、一時的にアップデートの頻度が低下します、とアナウンスしたのは良かったんじゃないでしょうか。

森川氏:きちんとお伝えしたほうが良いと思いました。なんのアナウンスもなくアップデートの頻度が落ちると、お客様からすると何かあったのではないかと不安に思われてしまいます。その意味で、このタイミングですり合わせができたのは良かったです。


――:有明アリーナのライブの発表にも驚きました。しかも4日連続とは…。

木谷氏:最近の「バンドリ!」のライブは、2組出る公演が多かったので、単独ライブが求められていると思っていましたし、今回の4日連続はインパクトがあると思いました。過去最大は3日連続でした。お聞きしている限り、有明アリーナはすごく人気で、すごくいい場所を抑えられたと思います。一般開放の初月にライブが開催できるのは喜ばしいことです。

また、「Morfonica」は、単独でも大きな会場ではやってこなかったですし、他のバンドについてもまだそんなにやってきませんでした。4日連続で行く方も結構いらっしゃるかも知れません。新しい会場や新しい取り組みが好きな方は多いと思いますから。 

 

森川氏:そうですね。4日連続ですからゲーム側も企画のやりがいがありますね。ぜひ楽しみにしていただきたいです。


――:ベルーナドーム(旧メットライフドーム)の振替ライブは、ファンだけでなく、キャストや関係者にとっても発表できたのはよかったんじゃないでしょうか。

木谷氏:あのライブは、「バンドリ!」プロジェクトにとっての集大成という位置づけでして、いわばエンディングのない映画のような状態が続いていました。次のステージに進むためにも大事なライブです。今日発表した大型アップデート前には開催しておきたいですね。現在、最終調整を進めているので、近いうちに詳細を発表します。

森川氏:そういえば、ライブ会場であるベルーナドーム内に「バンドリ!」の広告が出ていましたね。

木谷氏:おかげさまで、すごくいい場所に出すことができました。これから野球のシーズンが始まりますが、スポーツニュースなどで映るのではないかと思います。

森川氏:今年は特にプロ野球への注目度も高いなと感じていますので、良いことづくめですね。

木谷氏:看板の広告を見て、「バンドリ!」を思い出してくれる方がいらっしゃるでしょうし、当社としても「振替ライブを必ずやります!」という決意を示せる意味でもあったので良かったと思います。


――:そういうお話を聞くと、看板の広告は、単なる広告ではなく深みが感じられますね。

森川氏:そうですね。『ガルパ』側も実は(2回延期したので)これまで2回の連動企画をやっていますので、今回も何らかの連動企画をしたいと考えています。


――:さて、もうひとつ、気になったのは「CeVIO AI」とのコラボに関してですが…。ピンとこない部分があったのですが…。

森川氏:AI技術を使い声質や癖、歌い方を高精度に再現する音声創作ソフトです。自分で作った楽曲などを香澄と友希那に歌わせることができます。

 
――:なるほど。どういう方の用途を想定されているんでしょうか。

森川氏:まず、クリエイターの方々に使っていただいて、香澄と友希那の歌う楽曲をつくっていただくことを想定しています。そしてYouTubeなどで配信し、ファンからいいフィードバックがあったら、それを励みにさらに新作を投稿する、といった良い循環が生まれることを期待しています。これ以外にもコンテストやクリエイターの発掘など、新しい展開が可能になるのでプロジェクトにも大きな意味があります。

 木谷氏:「CeVIO AI」の話を聞いたとき、「とうとうここまで来たか!」と思いましたね。映画の吹き替えなどもその人物に合った声を集めてきて、AIで仕上げるような時代がいずれくるのではないかと感じていました。それはもちろん本当に人間が話しているように仕上げられることが前提です。その一方で、リアルの声の価値が上がると思います。AIを通じてコンテンツを知った方が、オリジナルの声に興味を持ったり、ライブや演技など本人でなければ駄目だというところの意味が増していくでしょう。


――:「CeVIO AI」の用途として、森川さんはコンテストなどが考えられるとおっしゃっていましたが、それ以外にできることはなんでしょうか。

木谷氏:楽曲が作りやすくなるということは、作る人が増えることになります。埋もれていた才能が表に出やすくなるでしょう。例えば、漫画を例に出すと、かつては背景までしっかり手で描いていたわけですが、スクリーントーンがでてきたことで描きやすくなり、漫画を描く人が増えました。そしてそこから多くのプロが生まれました。音楽においても同じようなことが起きるのではないでしょうか。


――:例えば、誰かが作った曲で良いものがあれば、「バンドリ!」プロジェクトで取り入れるということも…。

木谷氏:その可能性は十分あると思いますね。

森川氏:キャストさんご本人に実際に歌っていただく、といったこともできると面白いですね。クリエイターさんにとっても良い機会と受け止めてもらえるのではないかと期待しています。


――:ゲームのアップデートに関してはこれ以外にもあるとのことでしたが。

森川氏:まだ詳細はお伝えできないんですが、もちろん用意しています。『ガルパ』のメインコンテンツはリズムゲームですが、リズムゲームを遊んでいないときでも「バンドリ!」をより体験できるような内容にしたいと考えております。


――:どんな内容なのか、気になりますね。それと、学年が上がることについてですが、以前のインタビューで森川さんは「バンドリ!」はゲーム内でキャラを成長させることが許されている珍しいプロジェクトだとお話をされていましたよね。

森川氏:ブシロードさんは本当に懐が深くて(笑)、ゲームの中でキャラクターの成長が描けるIPは滅多にないんです。アニメの1期があり、その後のキャラクターの成長が『ガルパ』の中で描かれ、そしてその後の展開がアニメで描かれる、という。アニメの2期以降で学年が上がりましたが、放映期間中にゲームの中でも学年を上げさせてもらいましたね。それ以降も『ガルパ』でのストーリーの蓄積が進んでいるのですが、さすがにストーリーが膨大になってきたので、これから始める人でもお話を追えるような対応も考えたいと思っています。

 
――:いい機会なので伺いたいんですが、キャラの成長を可とした経緯は。

木谷氏:この点は難しい判断なんです。これまで作品を作ってきて思うんですが、ある作品のIIを出したとき、キャラクターを入れ替えるとあまりうまくいかないんです。かといって、IのキャラをそのままIIに出しても駄目で。年齢や学年が上がるということは、これまでのキャラクターを大事にしながら、新しい物語やその展開を描くことを可能にするんです。

森川氏:開発側でも、社内でも、香澄たちのストーリーの続きを描きたいという声は多いですね。

木谷氏:昔のようにアニメコンテンツやゲームコンテンツの少ない時代でしたら、キャラクターや世界観をすべて変えるようなことはできるんだと思います。しかし、それでも多くの場合は初代の作品が最も人気がありますよね。作品によっては、初代の作品を盛り上げるために続編を出しているんじゃないかとさえ思えるほどで、それくらいシリーズ作品で初代のインパクトが大きいということです。


――:ずっと変わらないようにするのも一つの手ではあるかと思いますが…。

木谷氏:そういったものは、子供向けのコンテンツで多いですね。キャラクターが変わるのではなく、ファンが変わるということです。幼児向けの作品でいえば、3歳で好きになった作品を10歳になっても変わらずに視聴し続けるという人は少ないと思います。したがって、コンテンツそのものを大きく変えなくても問題はないんです。


――:『ガルパ』の方で大型アップデートという話がありましたけど、ゲーム以外ではなにか考えているんでしょうか。

木谷氏:ライブをゲームのアップデートに合わせるのはなかなか大変だと思うんですが、なにかやりたいですね。『ガルパ』の5周年に合わせて大きく展開しましたから、切り口を変えて考えたいですね。


――:最後にこれからの抱負をお願いいたします。

森川氏:『ガルパ』は、6周年を契機に遊び方の変化やビジュアルをはじめとした進化を行って、より多くの方に遊んでいただけるようにしたいですね。今までやっていた以上にタイアップやコラボなどの取り組みが期待できるでしょうから、展開も広がりを見せてくれると思います。SNSで「『バンドリ!』の逆襲が始まった」というお客様の声を見たのですが、多くの方に遊んでいただき、改めて最盛期を迎えるコンテンツにしたいと考えています。

木谷氏:エンタメ領域では、新型コロナの影響もあって明るい話がなかなか好まれなくて、暗い話や「自分のほうがマシかな」と思える作品が受けるようになりました。「バンドリ!」は、夢や絆、励みなど明るい方向に向かおうという作品なんです。新型コロナが社会的に落ち着いていく中で、前のめりで「バンドリ!」を楽しめるようになるのではないかと期待しています。

そうしたなか、スニーカーエイジさんからの発表でもありましたが、「バンドリ!」のアニメや『ガルパ』をきっかけとして、バンドに興味を持ち、全国の学校で軽音楽部が増えたというお話を聞くと、本当に嬉しいですね。若い人が夢や目標を持つことへの手助けが少しはできたのではないかと思います。「CeVIO AI」もそうですが、今後も若い才能が育つ手助け、活躍できる場を提供していきたいとも考えています。


――:ありがとうございました。

 

  

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株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高487億9900万円、営業利益33億8500万円、経常利益45億300万円、最終利益20億5000万円(2023年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
企業データを見る
株式会社Craft Egg
http://www.craftegg.co.jp/
人生を豊かにするコンテンツをつくる。
人生を豊かにするコンテンツをつくる。

会社情報

会社名
株式会社Craft Egg
設立
2014年5月
代表者
森川 修一
決算期
9月
直近業績
非公開
上場区分
未上場
企業データを見る