【インタビュー】ミラティブが仕掛ける新たなゲーム体験「ライブゲーミング」に迫る 配信者と視聴者がつながる魅力、開発のメリットとは

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ゲーム配信サービス「Mirrativ」で知られるミラティブは、ライブ配信とゲームを融合させた「ライブゲーミング」を積極的に展開している。

直近では「エモモバトルドロップ」が、7人の開発人数で開発されたタイトルながら開催期間9日間で約5,000万円の売上規模に成長。開発パートナーに向けたライブゲーム開発環境「Mirrativ Connect for Developers」の提供を開始するなど、さまざまな角度からこの新たなビジネスモデルを支えている。

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▲ミラティブ代表の赤川氏によるライブゲーミングの可能性や開発環境を説明した動画も公開されている。

同社が考えるゲームとライブ配信が融合したライブゲーミング体験は将来どんな成長を見せるのか、セールス部長の井上数馬氏(写真左)、ライブゲームプランナーのマネージャーを務める小川まさみ氏(写真右)に展望を伺った。



配信者と視聴者が同時に楽しめる体験を短期間、低コストで実現

――:まず、ライブゲーミングの概要をあらためて教えてください。

小川:弊社が運営する「Mirrativ」はライブ配信のプラットフォームであり、ライブ配信中の体験をいかに楽しくするかが重要だと考えています。


その中で生まれたのがライブゲーミングです。具体的には、配信中にライブの盛り上げの目的でギフトを贈る機能があり、それに付随してゲームのアイテムがプレゼントされることで、ゲーム中に視聴者さんの影響がゲームに施されるという仕組みです。

またギフト経由での介入以外にも、そもそもいっしょに遊べる体験もあります。視聴者さんの中から「いっしょにゲームを遊びたい人いる?」と配信者さんが声を掛けることで、チームを組んで遊んだり、パーティーゲームで対戦したり、新しいタイプの遊び方が可能になります。

井上:ライブゲーム開発に興味があるゲーム関連会社さま向けに話すと、開発期間の短さ、開発費の安さが特徴です。一般的なソーシャルゲームは開発に数億から数十億まで、また開発期間が2、3年など長期にわたるケースが多いと思います。一方でライブゲームに関してはかなりミニマムなリソースでかつ低コストでリリースすることができるのです。

例を挙げると、Mirrativで楽しめる『エモモバトルドロップ』に関しては開発期間が4カ月で、開発費が3,000万から4,000万程度に収まっています。開発に携わった人数も『エモモバトルドロップ』に関しては7人とかなり少なめです。

小川:なぜこんなに安く抑えられるのか、参入を検討する各社さんから質問を受けることも多いですね。理由としては、インゲーム体験の部分があまりにも複雑だと、その場で「いっしょに遊ぼうぜ」と提案しても、実際に遊ぶ場面まで持っていくのが難しい側面があるからです。作り込まれ過ぎていることが、マイナスに働いてしまうわけです。

インゲームがすごくシンプルで分かりやすいことが重要であり、そういったゲームを作る場合、自然と開発費、開発人数を少なく設定できるのです。

――:確かに、ゲームシステムが複雑すぎると、始めるのに躊躇してしまいますよね。

小川:そうなんです。もちろん『エモモバトルドロップ』にもやりこみ要素は多少入っていますが、それはあくまでも楽しみ方のひとつでしかなく、やり込みや複雑なゲーム性を攻略する遊び方がプレーヤーのメインストリームにならないように心がけています。

――:ユーザー視点でいうと、ライブゲーミングはどんなところが評価されているのでしょうか。

小川:今までのライブ配信ですと、一方的に配信を見ることがメインの体験だったと思います。そこに対して、より自分自身が介入でき、自分もそのライブ配信のコンテンツの一部になれる点が面白さのポイントになっていると思います。

ギフトを贈ったり、いっしょに遊んだりという方法自体は、既存の他のゲームにも実装されてはいます。それに対してMirrativの参加型配信は、視聴者さんを巻き込み遊ぶことが前提になっています。ライブ配信に特化した体験になっていることが視聴者さん側の参加ハードルの低さにも繋がり、多くの方々に支持されているのだと思います。

ライブゲーミングへの反響は大きく、サポート体制も強化

――:では、現状のライブゲーミングの市場規模はどのように受け止めていますか?

井上:特に海外では、以前からライブゲーミングへの注目度が高く、昨年関連企業が約100億円超の調達を完了したというニュースもありました。

弊社としても、『エモモバトルドロップ』が月間で約5,000万の売上を記録しました。月間売上といっても、イベントは9日間しか開催しておらず、なおかつ無償のコインを除いた有償の部分だけで約5,000万の売上です。単純計算では30日間で1億円超えの規模感になってくるので、可能性を感じています。


ライブゲーミングに関する問い合わせは、今年1月に先行開発パートナーさまを募集して以降、50社以上からいただいております。ライブゲーミングの正解はまだ見えていませんが、大きな可能性は感じている会社さまが多い印象です。

――:その50社の問い合わせというのは、従来のゲームを開発している会社さまが多いのですか?

井上:ゲーム関連ではあるものの、かなり幅広い印象です。誰でもご存じのソーシャルゲームを作られてる会社さま、カジュアル寄りのゲームを作られている会社さま、あるいはデベロッパー寄りの会社さまなどさまざまです。自分たちでどんどんゲームを出していきたいとチャレンジングな姿勢で声をかけていただくケースが多いですね。

――:「問い合わせ」というのは、具体的にどんなことを聞かれることが多いですか?

井上:やはり開発費など、ビジネス上の数値感を知りたい方が多い印象です。ARPUであったり、各タイトルの利用率や利用数をお伝えすることもあります。 実際にお話をする機会が得られた場合は、必ず2回、ミーティングを行うようにしています。1回目は具体的な数字は出さずに「ライブゲーミングとは」というところからお伝えして、2回目でどういうゲームタイトルなのか、どんな仕様なのかを具体的に話し合っていくイメージです。なので、1回目の段階では手ぶらでもまったく問題ありません。単に「気になる」「新しいことをやってみたい」くらいの気持ちでも大歓迎です。

まずは、下記申し込みフォームからご連絡いただければと思います。

――:開発規模も小さめというお話でしたが、従来のゲームと比較して、開発環境にはどんな違いがありますか?

小川:開発規模に関しては、カジュアルゲームなど、従来からミニマムなチームでどんどん新しいものを出していく会社さまもあるとは思います。ただ、カジュアルゲームは基本的に広告収益がメインになります。しかし、私たちはライブゲームのマネタイズの中心に、ライブを通したギフトコミュニケーションも置こうと考えています。こうしたマネタイズの違いと、短期の開発期間の掛け合わせは従来のゲームとの違いと言えます。

井上:Unityで開発できるのも特徴です。Unityが使えるエンジニアさんは業界に多く、もともとソーシャルゲームを作っていた会社さまであれば、チャレンジしやすい環境があります。

あとは、私たちがAPIを開放するなど、皆さんを混乱させない形のサポートも実現しています。視聴者さんがどのように面白い体験を得られるのかは私たちも常にチェックしており、配信者さんはもちろん、視聴者さんにとっても面白い企画があればリリースできるよう開発パートナーさまとコミュニケーションを取るようにしています。そこが従来のゲームとはもっとも異なる部分ではないかと思います。

――:具体的に、どのくらいの金額感であれば開発に踏み切れるのでしょう。

井上:もちろんゲーム内容にもよりますが、1,500万から2,000万程度が平均になると見ています。私たちが捻出させていただく開発費によってリリース後のレベニューシェアなど座組も変わってくると思うので、開発パートナーさまがやりやすい形を提案させていただきます。

――:視聴者さんが参加しやすいライブゲームのジャンルなどは分かっているのですか?

小川:そこは今も探している状態です。さらにいうと、いろいろなジャンルの可能性を否定したくはないのです。さまざまなタイトルで、どのように視聴者さんが介入できる余地があるのかを各開発パートナーさまと協議したいと思っています。

例えばコメントを送るだけでゲームに介入できるのもありだと思いますし、視聴者さんが何人かチームに入って、いっしょにパーティーを組む形ももちろん可能です。どんなジャンル、どんなシステムがいいのかは、各開発パートナーさまの今までの知見を聞きながらいっしょに考えていきたいです。

――:例えば『エモモバトルドロップ』はカジュアルなアクションライブゲームですが、決してアクションにこだわる必要はないと。

小川:その通りです。RPGやシミュレーションもありだと思います。今後どういうジャンルで、視聴者さんと配信者さんのコミュニケーションが作れるのかは私たちにとっても大きな挑戦です。

――:ちなみに、『エモモバトルドロップ』などはイベント形式で展開していますよね。他のライブゲームも期間限定になるのか、それとも恒常的に遊べる作品も登場するのでしょうか。

小川:現在開発中のタイトルは常設をイメージしています。もちろんタイトルによって、またユーザーさんの反応によって切り替える可能性もあるかと思います。今は各タイトルのポテンシャルを最大化するため、常設をメインで考えている状況です。

――:現状では、ミラティブさん側からは開発パートナーさまのライブゲーム開発に関して、どのようなサポートを行っているのでしょうか。

小川:既に企画進行している先行開発パートナーさまに対しては、Mirrativとつなげるために必要なAPIのご提供、それを接続する間に出てきた質問に対しての回答など、技術的サポートをさせていただいています。


今後、いっしょにリリースを進めていこうと思っている開発パートナーの皆さまに関しては、企画面においても、各社さまの考えを尊重しています。ゲームのプロフェッショナルの方々が大変多いですから。

そこをベースにしながらも、ライブ配信の中で配信者さんと視聴者さんがどのようにコミュニケーションをするのか、視聴者さんが参加したときにそれがゲームにどのように反映されるのか、その反映によって配信者さんと視聴者さんにどんな会話が起きるのかといったノウハウは私たちから提供しています。

いっしょにα、βと進行していく中で、「この体験だと視聴者さんはどんな感情になるのか」とか、「こういう部分が視聴者さんが興奮するポイントだよね」といった部分を開発パートナーさまと擦り合わせていきます。

井上:費用面や集客の部分でもサポートしています。ライブゲーミングは初めての試みなので腰が重たくなる可能性もあり得ると考えていて、開発に対して一歩踏み出していただくため、一部の開発費を弊社から捻出するケースも多いです。よりチャレンジしやすい環境は、我々から積極的に整えています。

また、なかなか集客できない可能性や不安を払拭するという意味で、リリース後にMirrativ内でのプロモーションを行います。ライブゲームを作ったら終わりではなく、リリース後もサポートし続けていきます。

――:先行開発パートナーさまからはライブゲーミング開発に対してどんな意見がありますか?

井上:包み隠さず申し上げると、『エモモ』のアセットを利用したいというご意見が多いです。これに関しては今すぐにご提供できないものの、対応を検討している段階です。

またUnityではなくHTML5で開発したいというご相談をいただくケースがあります。HTML5とUnityに開発方法が分割されると私たちとしてもサポートしきれなくなるので、現状はUnityに絞っていただいております。もちろん、開発しやすい体制をさらに作っていくために鋭意対応を検討しています。

また、既存のゲームのライブゲーミング化も進めているため、そういったご相談もお受けしています。

――:既存のゲームですか。

井上:実際にいくつかのゲーム関連会社さまとお取り組みさせていただいておりまして、おなじみのゲームを配信したり、視聴したりするだけでゲームのアイテムがもらえるというシステムです。本来だと自分が課金をしてゲームのアイテムを入手すると思うのですが、ライブゲーミングだと視聴者さんが配信にギフトを贈ることで、自分もゲームアイテムが手に入るのです。

そして視聴者さんがさらに配信すると、過去にギフトを贈ってもらった方々がさらに贈り返す流れが生まれることも期待できます。友だちの家に行ったときにお菓子を出してくれたから、次は自分が出してあげる。そういう流れが生み出せるよう、私たちも環境を整えているところです。

こちらは、一部の会社さまに絞って開放しています。こういった既存のゲームのライブゲーミング化ももっと広げていきたいなと思っています。

ライブゲーミングの可能性を信じて、進化を続ける

――:ライブゲーミングの今後の可能性という点では、どんな考えをお持ちですか?

井上:可能性でいうと無限大ですよね。ソーシャルゲームを思い返すと、例えば『怪盗ロワイヤル』などから始まり、たくさんのジャンルのゲームが生まれたように記憶しています。今のライブゲーミングは、まだ『怪盗ロワイヤル』がリリースされたあたりの状況であり、今後多彩なゲームジャンルを出していきたいです。

現在は数十本のタイトルを開発していける体制を整えておりまして、しかもゲームジャンルを被らせていません。

どれがヒットするか分からない状態ではありますが、ヒット作が生まれれば、それがヒントとなって次へつながる可能性も出てきます。開発パートナーさまが良いライブゲームを作れる環境を私たちが整えることがポイントと思っているので、そういった情報も順次提供していく考えです。

また、女性向けライブゲームや、性別を問わず楽しめるライブゲームもどんどん作っていきたいです。ミラティブはライブゲーミング領域に積極的に投資をしていく予定なので、開発パートナーさまとご協力しながら、新しいものを作っていきたいです。

――:ライブゲームの開発をより良くするための課題はありますか?

小川:課題としてあるのは、いかに開発パートナーさまのゲーム制作コストを下げるかという点です。そのため、ライブゲームを作るコストがもっと下がる支援をミラティブからさせていただけないかなと思っています。例えばMirrativとライブゲームを接続するAPIを提供はしていますが、そのラインアップがまだ十分ではありません、APIのラインアップを拡張していく、それによってライブゲームを作るコストを下げる努力は、まずしていきたいですね。

また、各ライブゲームで共通にある機能をミラティブ側から提供できるよう、環境を整えることも課題のひとつです。今はゲームの内容にあまり制限が入らないように、自由に開発パートナーさまに作っていただいていますが、ある程度パターンが見えてきたときに、同じものを各社がそれぞれで作るのは効率が悪いと思うんです。共通で必要になる機能が見えてきたタイミングで、汎用性のあるものを拡充していくのが理想だと考えています。

――分かりました。では、ライブゲーミングを今後どのように成長させていくのか、展望があれば教えてください。

井上:2022年12月までのタイミングで、当社開発タイトル、開発パートナーさまのタイトル、両方あわせて50本近く出していきたいと考えています。膨大な数ではありますが、すでに目処も見えているので、まずはしっかりと達成できるよう動いていきたいです。今後もその門扉を広げて開発パートナーさまが気軽にライブゲームづくりにチャレンジいただけるように、さまざまな情報を発信していきたいと考えています。

ライブゲーミングはまだ答えが存在せず、開発パートナーさま、配信者さん、視聴者さんにとってそれぞれの楽しみ方や関わり方があると思います。だからこそ、私たちから積極的に情報発信して、たくさんのゲーム開発に携わる方々に参入いただき、新しい事例を増やしていきたいですね。

小川:そもそも現在のゲーム市場にはたくさんのタイプのゲームがあり、ユーザーさんの嗜好も多様になっています。ライブゲームも同様に、それぞれに適切なライブゲーミング体験があるはずです。今後はライブゲームごとに異なる体験を各開発パートナーさまと作っていきたいですし、それを通してユーザーさんが幅広く多様に遊んでいただけるようなプラットフォームを目指していきたいです。

――:ありがとうございました。

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