先月の『STEPN』の記事
【STEPN】歩くだけでお金が稼げる? 初期投資13万円から始めるNFTシューズ育成ゲーとその運営企業とは
は多くの読者の目に触れたようで改めてその注目の高さを感じた。前回の記事では、4月の出来事を中心にお届けしたため、今回は5月以降『STEPN』に何が起こっているのかをお届けする。
『STEPN』は簡単に言うとスマートフォンを利用し、歩く(走る)ことで暗号資産(仮想通貨、トークン)が獲得できるアプリだ。アプリの利用自体は無料できる。ただし暗号資産を稼ぐにはアプリ内のでNFTスニーカーを購入する必要がある。
このNFTスニーカーは高額で4月の段階では最低13万円ほどの初期投資を必要としていた。後述するが6月9日の時点で5.5SOL(3万円)ほど、6月22日現在では約3.8SOL、1SOLが5000円弱なので2万4千円ほどとなっている。
なお『STEPN』では5月にバイナンスチェーンに対応した。アプリは共通であるものの、設定画面で「Binance - バイナンス」と「Solana - ソラナ」に切り替えられる。当然ウォレットや『STEPN』への入金方法も経路が異なってくる。そしてこのバイナンスチェーンも、5月の暴落の理由の一つになっていそうだ。
5月以降の『STEPN』の状況は
・バイナンスチェーンに対応
・テラ、ルナのステーブルコインの崩壊による暗号資産全体の暴落
・暗号資産自体の暴落がゲーム内トークンであるGST・GMTにも影響
・中国でのプレー禁止
・中国でのプレー禁止によるスニーカー売却祭り。靴の価格の低下
・運営AMAの発言に対しての多くのユーザーの反発
・GSTや靴の販売価格低下
これら複数の要因による負のスパイラルを形成してしまったように見える。
*なお6月10日のCPI(米消費者物価指数)が予想より上振れたことによるリスクオフ、6月13日のクリプトレンディングCelsiusが出金と送金の一時停止を受け、暗号資産全体が大幅に下落している状況にある。ただし下落幅はある程度一定に見えるため、この2件関わらずに下げていた可能性はある。
*6月13日にレンディングサービス『セルシウス』の引き出しを停止が発生。それによる市場動揺などもあったが、『STEPN』自体には影響がなかったよう見える。なおコインベースが18%のレイオフを行うなど、クリプト業界にとっては悲観的なニュースが多い週となった。
**6月19日にビットコインが一時2万ドルを割れ。2万ドル割れは2020年12月以来。
▲coinmarketcapより
まず5月には暗号資産全体を揺るがした大事件が起こっている。
5月の頭に韓国初の暗号資産「LUNA」ステーブルコイン「TerraUSD(UST)」の暴落には、て暗号資産全体への影響を及ぼした。発端となったLUNAシステムの運営の自宅を訪れる人間が現れる、ソウル市警がテラの資産を凍結、検察の調査が入り、G7での共同声明の素案にその名が刻まれることになった。
暗号資産への影響は見ての通りだ。
▲5月下旬から見たビットコイン
▲同じくイーサリアム
この影響を受け、STEPN内のトークンとなるsGST(ソラナ版)、bGST(バイナンス版)も急落している。
次に5月26日のAMA(ASK FOR ANYTHING)では、運営の言葉に耳を傾けた人も多かったように見受けられる。
さらに日本時間の5月27日深夜1時頃に『STEPN』の運営であるSATOSHI NAKAMOTO LABが中国でのプレー禁止を突如発表。禁止の理由はとして中国の規制に対しての対応とし、7月15日に利用できなくなると告知した。
理由についての詳細は明らかにしていないものの、規制という点においては、中国本土で暗号資産の利用は禁止であるため、今回の対応はその懸念を払拭するためという可能性はある。一方でゲーム内でスニーカーを大量にMintしているユーザーが多く、その靴を吐き出させるためという見方もあるようだ。
なおこれを受けゲーム内通貨は大幅な低下を招いた。中国ではゲーム内でプレイするためのNFTスニーカーを大量にMintしているユーザーが多かったようで、スニーカーの売りが始まる。
STEPNの売り上げは、スニーカーの販売時の手数料などが主となっている。そのため新規ユーザーの獲得(ゲーム内の靴がないと暗号資産は得られない)や、新たにスニーカーを購入するユーザーがいないとトークンを発行する原資が減っていく。そうなるとトークンの価値が下がり、売却する人が増え、ますます価値が下がるという負のスパイラルが始まることになる。
その際にはゲーム内を盛り上げるための様々な施策、緊急のAMAの実施などを行っていき、今後の継続につなげていくのだが、5月での対応は効果的とは言えなかった。
bGST(バイナンス版)に至っては、5月25日の時点で3678円と非常に高騰していたにも関わらず、6月1日の時点で338円と10分の1以下になった。
また靴の価格も低下。フロア<最低価格>は6月1日の段階でバイナンス版が1.5BNBで4万円前後、Solana版が4.5SOL前後で2万5000円前後となっていた。
さらに6月1日の夜に行われたAMAにおいて、運営からの言葉に対しての失望があったのかさらに急落している。
というのもAMAにおいては、数日で大きな金額が稼げることへの説教とも取れる内容であったようだ。その一方でゲームの仕組みとして大金が稼げてしまう仕組みになっていれば利用するユーザーが出てくるのは当然とも言える。
頭の痛い話はまだ続く。6月3日に導入したAIを利用したチート対策を導入したものの、DDOS攻撃により正常に機能が動作せず、普通に歩いているだけとしているユーザーが、チート扱いされ、稼げないという状況となった。
This is a thread about our STEPN's latest version upgrade on ANTI-CHEATING:
— STEPN | Public Beta Phase IV (@Stepnofficial) June 4, 2022
1/5. First of all, we sincerely apologize to all the users who have been identified as bots. The moment this issue came to our knowledge, we started work on it immediately.
その後にエナジー2倍(歩ける距離2倍)イベントを行っていたものの、ゲーム内の情報が正しく記録されない可能性があるなどまさに運営・ユーザー両者にとって踏んだり蹴ったりな状況となった。
■税金の話
基本は税理士との相談してほしい内容のため、税金に関しては話半分で読んでほしいところ。
アプリが急速に寂れてしまうような状況で怖いのが税金だ。通常のスマートフォンゲームと異なるのは、そこに税金と密接に関わりがあり、確定申告を意識する必要があるからだ。
ブロックチェーン・NFTゲームでは、ゲームの暗号資産の暴落時た、サービス終了するようなケース(あるいは運営がとぶような場合)、手元のNFTが売れない場合
今年4月1日に国税庁が公式サイトで「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」を公開。
そこには以下のような概要の記載されている。
1 いわゆるNFT(非代替性トークン)やFT(代替性トークン)が、暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、そのNFTやFTを用いた取引については、所得税の課税対象となります。
※ 財産的価値を有する資産と交換できないNFTやFTを用いた取引については、所得税の課税対象となりません。
2 所得税の課税対象となる場合の所得区分は、概ね次のとおりです。
(1) 役務提供などにより、NFTやFTを取得した場合
・ 役務提供の対価として、NFTやFTを取得した場合は、事業所得、給与所得または雑所得に区分されます。
・ 臨時・偶発的にNFTやFTを取得した場合は、一時所得に区分されます。
・ 上記以外の場合は、雑所得に区分されます。
(2) NFTやFTを譲渡した場合
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当する場合(その所得が譲渡したNFTやFTの値上がり益(キャピタル・ゲイン)と認められる場合)は、譲渡所得に区分されます。
(注)NFTやFTの譲渡が、営利を目的として継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分されます。
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合は、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分されます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1525-2.htm
STPENのNFTスニーカーは売買ができるため、課税対象とした方が無難と筆者は考えている。
プレイヤーとして注意する点としてはSTEPN内でも高額なレア度の高いスニーカーを100万円で購入し、ゲーム内が崩壊、売却ができなかった場合、100万円の資産として申告する必要がありそうだ。もちろん税金は現金での支払いが必要になる。
この負のスパイラルが続いていった場合、2足3文になった際に売らずに年を越した場合にどうなるかなど、ブロックチェーンやNFTなどでは日本のプレイヤーとしてはさらに頭を抱えることが多い状況となってしまう。
この点においては、年末になるまでによくよく検討をしておうたほうが安心だろう。
*なお6月のアップデートで靴のバーンにあたる機能が実装されている。
■今後の予定など
5月に関しては非常に悪い内容ばかりとなってしまった。STEPN内のトークンGSTは暴落と言ってもいい。スニーカーのフロア(最低)価格もx分の1ほどになってしまった。
運営によればSTEPNのベースは「歩いて健康になり、そのためきっかけとしてお小遣いが貰えればいいね」といったニュアンスと筆者は理解している。
今回はその思想から離れたMintによる稼ぎが大きくなりすぎたのが原因の一つではあると思う。Move to earnならぬMint To Earnになり、最終的にはWork To Earnに引き戻された人も多いのではなだろうか。
高騰したバイナンス側のGSTとそのスニーカーのMint(鋳造。生成といった意味合い)によって莫大な利益を出した人は多いとも聞く。その内容に釣られてソラナ側から多くの人が移った形跡もある。ここで市場が大きく変化してしまったようだ。
歩いて稼ぐゲームが、スニーカー生成が主となってしまった。ゆるふわな感じで歩いて小銭を稼いでキャッキャしていたところに、大金を持ってMint工場を作りスニーカーを生成することでその存在意義が大きく変わってしまった。
5月に起こった内容に関しては、多くプレイヤーにとって非常に悲観的と言わざるを得ない。
悲観的な話が続くが、『STEPN』は英語のアプリであっても、プレイをするのにそこまで外国語を意識せず体験でき、そのUIUXは非常に優れている。これだけ多くの人間がNFTやブロックチェーンゲームに触れた事実は大きい。
FIND SATOSHI labでは、現状を反省し数々のトラブルを謝罪した上で、様々な改善を行っていくようだ。異なるレルム(チェーン)からエネルギー供給やスニーカーのミントコストの変更、ミント時間の延長、5つのスニーカーの合成でワンランク上のスニーカーになるなど、様々施策案を発表し、経済を正しいループにするとしている。
運動をしないミントして売るだけのユーザー活動への対応といった元々のゲームのコア部分に対してのアップデート発表は好印象を受けてか発布日直後にはGSTの値段が上昇した。
▲6月8日16時の発表後。好印象だった影響かGSTは一時的にではあるが上昇した。
また有名スポーツメーカーとのコラボレーションの噂や、以前よりロードマップで共有していた靴のレンタル機能、新しいレルム(チェーン)対応なども控えている。さらには6月10日にアプリ内にDEX(分散型取引所)を実装(※)、SOLANAとBinanceの靴間でエナジーの分離などをすると発表している。
(※)手数料は1%でそのうち0.6% をSTEPN内のエコシステム(GMTのバーン、スニーカーのバーン、エコシステム構築イベントのバーン、コミュニティ向けの抽選や景品などを検討)で利用するとしている。
また本日6月21日には複数のスニーカーを合成してランクアップさせる機能が実装されている。
繰り返しになるが『STEPN』のUIUXは非常に優れており、今後どのような施策で運営を行っていくかは非常に注目したいところだ。ユーザーとしての視点だけではなく、NFT・ブロックチェーンゲームを運営していくにあたって、事業者の視点でも非常に重要な事例となっている。