【連載】中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」NCC編第2回 大日方祐介-ETHレジェンドGavin Woodとの共同事業、日本人として世界で結果を出す
デジタルガレージ(DG)社は1997年価格コム、2005年食べログとWeb1.0、2.0時代を乗り越えてきたインターネット企業で、2013年からサンフランシスコでインキュベーションセンター「DG717」を運営している。今回6/14に第22回目となるNCC(THE NEW CONTEXT CONFERENCE)カンファレンスは、過去最大の1500名もの参加者を数えた。なぜなら「web3 Summer Gathering 〜未来からのテクノロジーの波をサーフしろ〜」と、web3、DAO、NFT、暗号通貨をテーマとするものであったからだ。この領域は「English speaking Community」が主導している。すなわち米国を中心としたコミュニティである。DG社取締役でもある伊藤穰一氏は言わずと知れた元MITメディアラボ所長であり、孫正義氏にYahoo!を紹介したエピソードから始まる様々な伝説や広い交友関係で知られる。過去はWikipedia、Linkedin、Twitterの創業者を直に呼んでくる豪華なDGカンファレンス、本ステージも彼を中心とする米国のweb3.0サービスの先駆者たちを呼んでのパネルディスカッションが行われた。
今回はその1人、大日方氏に個別インタビューを行った。
■東南アジアバックパッカー→VC→Web3第一人者への道
――:自己紹介からお願いしてよろしいでしょうか?
大日方祐介(おびなたゆうすけ)です。East VenturesでのVCを経て、2018年に日本のイーサリアムコミュニティを支援するイーサリアムジャパンや、web3・ブロックチェーンコミュニティ育成をするCryptoAgeを立ち上げ、2020年からイーサリアムCTOのギャビン・ウッドが立ち上げたWeb3 Foundationに参画し、Polkadotというプロジェクトをやっております。
※Web3 Foundation:「Web3.0」の最初の提唱者でありイーサリアム共同創業者、元CTOのGavin Woodにより設立されたスイス財団。「Web3.0」を実現するための基盤となるパブリックブロックチェーン「Polkadot(ポルカドット)」の考案とローンチを主導。2018年よりWeb3業界における主要カンファレンス「Web3 Summit」も主催。
――:大日方さんは学生時代からEast Venturesをお手伝いされてました。なかなか学生でいきなりVCに入る人は珍しいですよね。
早稲田大学に入学してすぐから、東南アジアをバックパッカーでまわっていたんですよ。その後、2014年ごろでしょうか。東南アジアでどんなインターネットサービスがあるかを逐次ブログなどで書いていたのをきっかけに、East Venturesの松山太河さん※にSNS経由で声をかけられて、それで入社することになりました。
※松山大河:アクセンチュア、ネットエイジ取締役、(グーグル3人目社員のスコット・ハッサン創業のシリコンバレースタートアップ。その後Yahooに買収された)eグループを経て2009年にジャカルタ、シンガポール、東京をベースとするシードラウンドのVenture CapitalであるEast Ventures創業。約4千億円、160社の投資先は、メルカリやメドレーをはじめ、フリークアウト、グノシー、Traveloka、Tech in Asiaなど。
――:当時で東南アジア、しかも学生が、というのが珍しかったんでしょうね。
はい、日系のVCはほとんどみない時代でしたし、East Venturesも2011年ごろからようやく東南アジアに小さい投資をしはじめていた段階でした。当時ですと、ほかはCyberAgent Venturesさんくらいですかね。学生だったので、オフィスの掃除とか雑用からのスタートでしたが、まだ10人もいないサイズだったのでよい時期にキャリアをスタートできました。
――:その後VCで様々な経験をされます。ブロックチェーン業界ともその時期に接点が?
当時のEast VenturesはちょうどメルカリやBASEなどにも出資したばかりでその時に多くの起業家と国内外で接点をもてたことが現在につながってますね。bitFlyerの加納裕三さん(共同創業者)と初めてお会いしたときに、ビットコインの話だったり国際送金マーケットの課題点などについて教えてもらい、自分自身も学生時代に1年ほど国際送金が盛んなフィリピンに住んでいたこともあって、そのあたりから暗号通貨について興味を持ち調べるようになっていきました。そのあと2017年あたりまでは業界を横目でみているくらいの段階でしたが。
――:どのあたりから本格的に参入されたのですか?
2017年のICOバブルで暗号資産にふたたび世界的な注目が集まったタイミングですね。これはかなり大きい流れになるなと感じて、当時は世界的にも日本がすごく注目されていたんですよ。ビットコインも米ドルよりも日本円での取引額のほうが大きかったり。Web2までは中心は完全にシリコンバレーのもの、という感じでしたが、Web3にでは日本やアジアにも大きな注目が集まる世界が成り立ち始めていて、「これは違う流れがきている」と感じて、この業界に飛び込みました。
――:それで2018年CryptoAgeを創立されたのですね。ネットエイジを髣髴とさせるネーミングですが、どんなコミュニティを作ったんですか?
まだ2018年は開発者にフォーカスをしたコミュニティがなかったんですよ。何人もシリコンバレーのweb3系ファウンダーを呼んだら若者がどっと集まって手ごたえを感じてました。その後、イーサリアムジャパンを立ち上げることになり、VitalikやGavinなど、いまのweb3の初期の流れをつくっていた方々が一堂に東京に会するイベントを、Omiseの長谷川さんやイーサリアム(ETH)財団の宮口さんなどと開催したりしました。
――:そしてビットコインと二分するETHをCTOとして作ってきたGavin WoodのWeb3 Foundationに参画しているのが凄いですね。
参画は2020年ですが、それ以前から友人として日本で初めてPolkadotミートアップを開催したりと手伝ってました。Gavinは大の日本好きでよく日本に来ていたんですが、東京で出会って意気投合してから、本当にこの人は天才だな、と感じて。隣でみていても、本当にめちゃくちゃ働くんですよ。土日もホテルでずーっとコーディングして、一緒にご飯食べたらその後またストイックに働き続ける。自分もそういう人の背中を支えられたらと思っています。
――:今回はリスボンからいらしたとのことですが、どうした理由があるんですか?
クリプトの規制・税制の変化で、web3のスタートアップ・起業家がどんどんより良い環境を求めて流入していっており、リスボンがその中心の一つになってきているからです。スイスのツーク州やシンガポール、ドバイなど。ポルトガルも必ずしもweb3を見越して規制を整えたというよりは、むしろ制度に穴があったので、新しいこうした流れにも柔軟に対応しやすかったという偶発性の部分もあるのですが、同じようにweb2時代には日の目をみなかった小さい都市がそうした流入で注目の場所にもなっていくんです。エルサルバドルとか、マイアミ、ルガーノ、そしてポルトガル・リスボンですね。
――:リスボンは現状どんな状況なのでしょうか?
欧州は米国と並ぶくらいweb3の開発者も多いなかで、2020年ごろまではドイツ・ベルリンが中心だったんですよ。でも昨年、ドイツがクリプト税制を改悪する可能性がでてきたので、一気に開発者も投資家もリスボンに流れてきました。もともとテック企業誘致に熱心だったのと、歴史的な街並みとか食とか自然が多い点なども含めて選択されており、かならずしも税制のみで選ばれているわけではないですね。
そもそもDay1からグローバルのサービス、というweb3業界だと居住の移動も一切厭わずにどんどん人も流れるんですよね。年齢も20~30代のミレニアム世代・Z世代が多いです。
――:そうした中で日本はどのようにみられているのでしょうか?また企業や政府の現在の動きはどう思いますか?
興味は強いけど「ブラックボックス」感が強いのが日本ですね。すごく盛り上がっているし、いい作品・プロジェクトも生まれるけど、どうしても発信が弱くて、よくわからない。ただ先述したように、web3はまだまだ黎明期なのでその意味でも政府・企業がこの業界に入ってくることはポジティブにとらえています。今のままですとGeeks(オタク)の遊びのように捉えれることもあります。社会や制度自体が変わっていくハブになるのは政府・企業ですので、むしろトラディショナルなところがどんどんweb3に入ってきてほしいですね。
――:最後に大日方さんの講演から若者に向けたメッセージを掲載したいと思います。
■日本語で日本の中だけに生きるのでなく、世界とつながろう
・英語で発信、英語で情報収集
・海外でのイベントにも参加、登壇
■世界で志をともにした仲間を作ろう
・日本ではマイノリティでも世界に出たらきっと仲間が見つかる
■日本人として、世界で結果を出そう
■日本人として、世界で結果を出そう
■日本人として、世界で結果を出そう
▲大日方氏講演より―2017年末に一世を風靡したCryptoKittiesの開発者を2018年8月に日本に招いた。数百人集まったうちの8割は学生・若者だった
▲イーサリアム財団宮口あや氏・本田圭佑氏と学生向けのイベント
デジタルガレージweb3.0カンファレンス特集
会社情報
- 会社名
- Re entertainment
- 設立
- 2021年7月
- 代表者
- 中山淳雄
- 直近業績
- エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
- 上場区分
- 未上場