【決算レポート】グリー、第4四半期は『ヘブバン』ヒットの反動で減収に インターネット・エンタメ事業を4つに細分化へ…ゲーム・アニメ事業は前田悠太氏が担当

柴田正之 編集部記者
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グリー<3632>の2023年6月期の第4四半期(4~6月)の連結決算は、前年同期は2月にリリースした『ヘブンバーンズレッド』(以下『ヘブバン』)が拡大局面だったこともあり、売上高はほぼ横ばいながら減収にとどまった。

一方、利益面については、投資先ファンドからの大型な分配により、収益性の高い投資事業が安定的に収益貢献したことで利益率が向上した。

売上高201億2000万円(前年同期比3.6%減)
営業利益49億5800万円(同29.0%増)
経常利益56億6100万円(同4.3%増)
最終利益51億1100万円(同45.4%増)

■『ヘブバン』周年と投資事業の貢献で前四半期は増収増益に

前回2023年6月期の第3四半期(1~3月)の連結決算を振り返ってみると、『ヘブバン』の周年の寄与に加え、この四半期と同様に収益性の高い投資事業が大きく寄与し、増収増益となっていた。

今回の第4四半期は四半期推移(QonQ)では『ヘブバン』は周年の反動はあったものの、投資事業の貢献で一定のカバーを果たしたと言えそうだ。

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■事業セグメントの再編を実施 インターネット・エンタメ事業を4つに細分化

続いて、各事業セグメントごとの状況を見ていきたい。同社は2024年6月期より事業セグメントを再編し、これまでの「インターネット・エンタメ事業」を「ゲーム・アニメ事業」「メタバース事業」「メタバース事業」「DX事業」「コマース事業」の4つに細分化し、「投資・インキュベーション事業」を「投資事業」に名称変更することを発表した。それに先立ち、この四半期から新セグメントごとの足元の状況を公開している。

■ゲーム・アニメ事業は「新規開発の多層化」を推進

まずはゲーム・アニメ事業から見ていくが、こちらの担当は取締役 上級執行役員の前田悠太氏となる。

ゲーム・アニメ事業の第4四半期は『ヘブバン』の国内版1周年施策などの反動により前四半期と比較して減収減益となった。『ヘブバン』は、第3四半期に海外版のリリースも行っており、こちらの初動の盛り上がりの反動も出た格好だ。

一方で、この第4四半期に周年を迎えた『アナザーエデン』『シノアリス』は収益に貢献した。

今後の方針としては「IP創出・継続・育成」「海外展開の強化」「新規開発の多層化」をあげている。特に「新規開発の多層化」については、自社IP、協業、ライセンス型や開発受託などを、多地域×マルチプラットフォームで推進・強化していくとしており、これに基づいたパイプラインを開示した。なお、このパイプラインは「重複が一部ある」(荒木氏)としており、例えば「自社開発タイトル」を「海外展開」というような形で双方にカウントされているケースもあるようだ。

■メタバース事業は投資フェーズのVTuber事業への投資を強化

続いてメタバース事業を見てみたい。こちらは取締役 上級執行役員の荒木英士氏が担当となる。

メタバース事業は、「REALITY」のグローバル展開のマーケティング投資や、VTuber事業への投資強化により、前四半期と比較して増収ながら減益となった。現在は「プラットフォーム事業と法人向けメタバース事業で収益を上げて、投資フェーズにあるVTuber事業へ投資」(荒木氏)局面にあるという。

今後もプラットフォーム事業と法人向けメタバース事業で収益を上げつつ、投資フェーズにあるVTuber事業への投資強化を行い、2024年6月期の営業利益は引き続き収支均衡程度を予想しているという。

■DX事業とコマース事業の2024年6月期は成長への種まきの時期に

執行役員の足立和久氏が担当するDX事業は、マーケティングDXの大型案件の終了とオペレーションDXの体制構築に伴い、前四半期と比較して減収減益となった。2024年6月期は大型案件終了に伴うベースダウンから、オペレーションDXの事業拡大による再成長へ準備していくとしている。

同じく執行役員の中村陽祐氏が担当するコマース事業は、実店舗向けマーケティングSaaS「aumoマイビジネス」を中心に安定的な成長を継続するも、メディア事業における戦略の転換などにより、前四半期と比較して減収減益となった。こちらはHR事業を展開する新会社ジョブダを設立しており、その立ち上げにかかる初期的な投資などにより、2024年6月期は収支均衡程度の見通しを予想しているとのこと。

■投資事業はカバー上場に伴うスタートアップ投資の収益などが貢献

投資事業は、取締役 上級執行役員 最高財務責任者の大矢俊樹氏が担当する。

この第4四半期はVTuber事務所「hololive(ホロライブ)」を運営するカバー<5253>の上場に伴うスタートアップ投資の収益などが貢献し、全体業績にも大きく寄与した。今後もVCファンド・スタートアップへの投資を継続し、中長期で安定的な利益貢献を目指していくという。

■全体業績予想は非開示も複数のセグメントの業績予想を開示

なお、2024年6月期の連結業績予想は非開示としている。ただし、各事業セグメントごとの業績予想については、投資事業の業績予想が非開示であり、ゲーム・アニメ事業が幅を持たせた予想となっているものの、以下のように開示している。

グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
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