【インタビュー】プラットフォーム展開と海外展開を担うTeamCARAVANのクロスボーダー課…『ダンクロ』PS4/5版の開発経緯と海外戦略に迫る

スマートフォンで本格的なRPGが楽しめる『CARAVAN STORIES』(以下、キャラスト)や10周年と長期運営を続ける『剣と魔法のログレス いにしえの女神』(以下、ログレス)、さらに『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン』(以下、カゲマス)、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか バトル・クロニクル』(以下、ダンクロ)といった人気アニメを題材にしたタイトルを開発・運営するAiming<3911>の第二事業部。

通称「Team CARAVAN(チーム・キャラバン)」と呼ばれる同スタジオの規模は2021年より事業部制を導入して以降、拡大し続けている。

今回は、『ダンクロ』のプレイステーション(以下、PS)4およびPS5版が2024年2月14日にリリースされたことを受け、Team CARAVANのクロスボーダー課のメンバーへのインタビューを実施。PS4/5版を開発することになった経緯や、海外戦略についてお話をうかがった。

◆Team CARAVAN クロスボーダー課メンバー

Aiming 第二事業部/クロスボーダー課 マネージャー/小村益民氏(写真右)

Aiming 第二事業部/クロスボーダー課/東田卓氏(写真中央)

Aiming 第二事業部/クロスボーダー課/桝田秀吉氏(写真左)

――:まずは簡単な自己紹介をお願いします。

小村 Aiming第二事業部のクロスボーダー課のマネージャーを務めております。クロスボーダー課は主にゲームのプラットフォーム展開や海外展開に関する業務を担当する部署になります。

東田 私はクロスボーダー課で海外版やコンシューマー移植の進行周りを行っています。昨年春にAimingに入社しまして、『カゲマス』と『ダンクロ』を担当しております。

桝田 私も昨年1月に入社しまして、『カゲマス』と『ダンクロ』のプロジェクトに携わっております。主にローカライズ全般と海外パートナー様とのブリッジ業務を担当しております。

――:クロスボーダー課はいつ頃立ち上がったチームなのでしょうか?

小村 2023年1月の事業部内組織変更で出来上がったチームになります。それまではそういった部署がなかったので、企画部や運営部のスタッフの中から、海外展開に一定の知見を持ったスタッフを集めるような形で対応していましたが、正式に昨年1月から部署として立ち上げました。始めは社員と業務委託の方を含めて4~5人の体制でスタートしましたが、現在は20名くらいの部署になっています。

――:クロスボーダー課の軸の一つとなるプラットフォーム展開について、2024年2月14日に『ダンクロ』のPS4/5版がリリースされましたが、どのような経緯で『ダンクロ』のPS版を開発することになったのでしょうか?

小村 『ダンクロ』自体は元々はスマートフォンとPC向けに開発したアクションRPGです。PC版はコントローラーでもプレイできるようになっている通り、『ダンクロ』自体がスマートフォン以外でのプレイを最初から想定して開発されておりました。PS版も当初から考えていましたが、ライセンス元やソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)様と相談、調整の上で今回リリースさせていただくということになりました。

――:ちなみにPSを選んだ理由は何かあるんですか?

東田 元々TeamCARAVAN内でPS4向けに『キャラスト』をリリースしていたこと、そして現在もサービスを継続しているという経験があるので、その際の結果やノウハウも踏まえて、『ダンクロ』もPSでリリースする形になりました。

小村 TeamCARAVANは「世界中で楽しまれる、ほんとうに面白いゲームを作る。」というスローガンを掲げてゲームを作っています。ゲームを開発するにあたって、もちろんスマートフォンがベースのプラットフォームにはなるのですが、特定のプラットフォームや国にこだわらず、オールプラットフォーム、全世界というような形でゲームのリリースを検討していこうという考えがベースとしてあります。

今回の『ダンクロ』で言いますと、アクションRPGという世界中の方に手にとってもらいやすいシステムというところもあり、当初から複数のプラットフォームであったり、グローバル展開であったりを想定して開発を進めてきました。

――:スマホをベースにしたゲームを他プラットフォームに移植する際の難しさはあるのでしょうか?

小村 正直に言いますと、全体的に手探りでのスタートになりました。AimingはPS4での開発経験自体はありましたが、PS5に関しては初めての挑戦でした。PS4とPS5では開発も全く別のアプローチでしたから、色々と手探りでやっていかなければいけない部分も多くありました。ただ開発が進むにつれて、PS5のスペックに助けられる部分が大きくなってきたと感じています。

東田 元々複数のプラットフォームでの展開を考えて開発はしていたんですが、リリース時期に関して言いますと、まずはスマートフォン版をリリースして、その後他のプラットフォームで展開することを考えていました、そのため、当初開発された内容は割とスマートフォン向けに調整されたものとなっていました。

小村 先ほどの話にもあった通り、『キャラスト』で一度PS4で開発した経験はあったのですが、PS4とPS5で開発する際に守らなければいけない画像や動画の形式がほぼ別プラットフォームのように違いました。PS5の開発が初めてだったということもあり、我々もそういう知らなかった部分が正直多かったです。

東田 PS5の開発をするにあたって、ゲーム内のリソースも一度すべてのフォーマットを修正したり、動画のエンコードをやり直したり、思った以上に色々なことをやらなければいけませんでした。単純な開発の部分だけではなくて、既存のアセットの調整というところでも結果的に苦労することになったと思います。

小村 開発の方の言葉を借りれば、PS4とPS5でまるまる二つのプラットフォームを開発したというほどではないものの、1.5倍ぐらいの労力はあったようです。企画する側からすると、PS5向けに開発してPS4でも動くといいよねとか、PS4で開発してPS5でも動くといいよねというようなイメージもありましたが、思った通りにはならなかったというところです。

――:その他、開発していて苦労された部分はありますか?

東田 PS4とPS5それぞれで対応する項目だったり規約だったりが異なっているので、その形式に適応するための調整を行っています。また、『ダンクロ』は既にスマートフォンとPCで運営中ですので、そちらのゲーム性も損なわないように作り直すことになりました。

小村 全プラットフォーム、全世界の方に同一の世界で遊んでいただいておりますので、今回のPS版のリリースに合わせて、既存のスマートフォン版とPC版にもそのためのアップデートを入れています。外から見ると、ユーザー様にとっては何の変化もない開発都合のアップデートにはなりますが、これがまた意外とボリュームがあって、それぞれ環境の違うプラットフォームを一つのゲーム世界につなぎ込むというのは思った以上に大変で苦労したところです。

――:『ダンクロ』のPS版を楽しみにしているユーザーに注目してほしいポイントはありますか?

東田 ジャンルがアクションRPGですので、コントローラーでの操作性だったりのアクション部分全般の遊びやすさを体験していただきたいです。大画面に対応している機種でもあるので迫力のあるプレイを楽しんでもらいたいです。

小村 スマートフォンでは気軽に、例えばオートバトルでゲームを進められるようになっていますが、コントローラーで自分で動かしながらアクションを行うと、プレイ体験が変わるゲームだと思っています。スピードやサポート、ディフェンスなど様々なキャラクターのロール(役割)があるのですが、そういったロールごとの操作性の違いなどは、スマートフォン以上にコントローラーで遊んだときに体感しやすい部分です。アクションゲームとしての面白さは、PS版の方がより味わいやすくなっていると思います。既存のPC版でもコントローラーでのプレイはできたんですが、PS版によってより多くの方に体験してもらう機会が増えると思います。

――:そのPS版が先日ついにリリースとなりました。

小村 2月14日にPS4/5版共にリリースしました。基本無料でプレイできますので、是非PSストアからダウンロードの上プレイいただければと思います。

――:『ダンクロ』は海外展開もしていると思いますが、TeamCARAVANのクロスボーダー課としてローカライズや海外戦略について、どのような取り組みをされているのでしょうか?

桝田 『ダンクロ』に限らず海外でリリースする際、注意すべき箇所がいくつかあります。例えばイベント名の場合、日本ではクリスマスイベントという名称を普通に使いますが、北米版だとホリデイイベントというように名称を変えた方が良かったりするので、そこは注意しながら進めています。『ダンクロ』の原作は10年間続いているIPになるので、ユーザーにちゃんと伝わるように、ストーリーやキャラ名についても気をつけないといけません。

――:海外展開するうえでそういう部分で難しさがあると。

桝田 海外展開をすることの難しさと、IPものを海外で取り扱う難しさという、二つの軸がありますね。海外展開においては、現地の文化や言語にアジャストしていかなければいけません。

小村 先ほどのクリスマスイベントの話に関しても、日本人はそもそもクリスマスに対して宗教的なイメージはない方も多いかもしれませんが、思っている以上に海外の方はすごく気にされているんです。

桝田 例えばアメリカは多人種、多宗教の国ですので、キリスト教に紐づいているクリスマスという言葉をそのまま使うのではなく、ホリデーというフワッとした言い方にした方が良かったりと、現地のパブリッシャーさんと相談しながら対応を行っています。そういうノウハウを蓄積していかなければ、今後海外展開していく上で色々と壁にぶち当たるなというところがまず一つあります。

小村 アニメIPを海外で取り扱う点については、例えば翻訳する際にセリフや文章をそのまま翻訳してしまうと、実は海外においては正しい翻訳ではないという事が起こるケースもあります。これは弊社タイトル『カゲマス』を海外展開した時の話ですが、キャラクター名を韓国語に翻訳したら実は正しい翻訳ではなかったんです。

これは原作が韓国語向け翻訳をした際に、単に間違えていたのか、それとも外国語からの翻訳なので当時はそれが良いとされたのかはわかりませんが、しっかりと翻訳した名称とは違う言葉で翻訳されていたということがありました。我々としては間違いのない翻訳だと思って提出したんですけど、「これは昔から原作で使われている名前と違う翻訳になっているので直してください」と指摘されてそんなことがあるんだなと思いました。

桝田 そのIPの歴史が長ければ長いほど、恐らくこういうケースは多くなると思います。『ダンまち』は10周年を迎えたIPですので、正しいと思った翻訳が既にリリースされている海外版のアニメやコミックとは異なっていることも出てきてしまうのがローカライズの難しい部分ですね。

――:翻訳以外で例えばデザインやグラフィックの修正が入ることもあるのでしょうか?

桝田 小物やエンブレムで変えなければいけないという事はありましたが、今のところこのキャラを出すのはNGだとか、大きな問題は出ていません。ただ今後その可能性がゼロではないと思っていますので、そこは注意していく必要があります。

小村 衣装の修正は結構言われます。海外、特にアメリカはキャラクターの表現に非常に厳しい国です。日本ではここまでOKだと思っているものでも、もっと露出を抑えてくださいと言われるケースは結構あります。

桝田 その都度、ライセンス元に確認を取って修正を行うので、そういった点もアニメIPを海外に持っていく上で大変な部分ですね。

小村 他のケースとして、例えば中東では飲酒表現などがNGだったりします。『ダンまち』の中に神酒というものが出てくるのですが、それを飲むシーンが飲酒表現にあたるのではないか、と指摘されました。そこで最初は中東だけ『ダンクロ』のレーティングが18歳以上になるかもという話になったのですが、最終的には表現などを調整することになりました。

桝田 ファンタジーものの作品は暴力や飲酒、喫煙などの表現が多いので、海外展開となると判断基準が厳しい国もあれば寛容な国もあるので、それぞれの文化の違いと向き合うことが重要です。

――:そうした難しさがある中で御社は積極的な海外展開を見せていますが、今後もその方針は続けていくのでしょう?

小村 そうですね。「世界中で楽しまれる、本当におもしろいゲームを作る。」というTeamCARAVANのスローガンの元、今後リリースするゲームに関しても基本的には海外も視野に入れていきます。また、プラットフォームに関しても基本的には全てのプラットフォームというところを検討しながら、実現性を持ったところから優先的にゲームの開発を行っていこうと考えています。

――:クロスボーダー課として今後人材面の強化についてはどのようにお考えでしょうか?

小村 採用に関しましても、やはりグローバル展開で必要になっていく部分として、言語だけではなく文化の知見のある方を採用していきたいと思っています。加えてIPの知識を持った方も積極的に採用していこうと考えております。

桝田 クロスボーダー課は中国、韓国、台湾、マレーシア、フィリピンなど様々な国籍のメンバーで形成されていて、席の周りは色々な言語が飛び交っている多国籍なチームになっています。

――:文化やIPに対する知見のほかにどのようなマインドを持った人材を求めていますか?

小村 やはりゲームをよく遊んでる方ですね。ただ、これは条件が難しいと思ってまして、言語にも長けていて、且つゲームもすごく好きという方はなかなかいらっしゃらない。なぜゲーム好きが良いかというと、ゲーム好きなメンバーが多いAimingで同じゲームの話ができることはもちろんですが、ゲーム業界は専門用語が多いので、ゲームに興味がない方からするとちんぷんかんぷんな言葉も結構あるというのも大きな理由です。「ログボって何?」となってしまうと、もう海外のパートナー様と向き合うブリッジとしては厳しいと考えています。ですので、一定のゲームリテラシーがある方を最優先で検討しています。ゲームの翻訳もストーリーだけではなくシステム用語やエラーメッセージの翻訳もあります。専門用語がわからないと本来の意味と異なった翻訳になる可能性もあるので、ゲームの開発経験がなくても、プレイヤーとして一定以上のゲームリテラシーをお持ちの方を非常に重要視しています。

――:実際に働いている皆さんから見て、TeamCARAVAN、そしてクロスボーダー課の魅力は?

小村 一番の魅力は、やはり自分たちが作ったゲームを世界中に届けることができることです。世界を相手に仕事ができるというところにやりがいを感じます。作ったゲームをより多くの方に遊んでほしいと思うのはゲームの作り手として当然だと思います。

色々な考え方、意見を持った方々に遊んでもらって、褒めてもらったり逆に厳しい意見をいただいたり、それが日本だけではなく世界中から聞こえてくるのはとても面白いですし、ゲーム業界で働く人間として、ゲームを通じて世界と仕事ができるというのは非常に魅力的です。

東田 会社全体、スタッフ全体として多言語や多プラットフォームというものにチャレンジしているところです。失敗することもあるし、いろいろな問題も起きることはありますが、いかにユーザー様に楽しんでもらえるかを模索していく。そこに一番のやりがいを感じています。

桝田 自分たちが作った日本のゲームを、世界のユーザーさんに遊んでもらえる。そういう仕事に携われるのが一番の魅力です。加えて、海外のパートナー会社様とのやり取りで学べる部分も多いです。それと、生の海外ユーザーさんの声も聞くことができるところも魅力です。例えば日本ではこのキャラクターが人気なのに、海外だと別のキャラのほうが人気だったという、キャラクターに対する反応を肌で感じられるのもすごく面白いなと思っています。

――:それでは最後に読者へ向けたメッセージをお願いします。

小村 日本に限らずグローバルというところで言うと、今は多様性の時代だと思いますし、ゲームをプレイする環境はプレイヤーの皆さんによって様々だと思います。そういった状況の中で、自分たちが作ったゲームが全世界のユーザーさんに遊ばれているというのは、ゲームを作り手としてすごくワクワクします。昨年10月に『カゲマス』の繁体字版を現地のパブリッシャー様と協力してリリースさせていただきましたが、台湾ではセールスランキングで1位を獲得しました。

やはり自分たちの作ったゲームが違う国のプレイヤーさんに評価されているというのは作る側からしても非常に励みになりますし、当然台湾で1位になったというニュースが入ってきたときに開発チームもすごく盛り上がりました。開発側としても非常に嬉しい話ですし、日本のプレイヤーさんにとっても「自分たちが遊んでいるゲームが海外で1位になった」とすごく盛り上がるのかなと。そういった意味で、我々は今後も自分たちのゲームを自信を持って世界にリリースしていきたいですし、プレイヤーの皆さんがゲームを通じて世界と繋がる機会を作っていきたいです。

東田 進行管理の立場から、TeamCARAVANのゲームをより多くの方に楽しんでいただけるようにこれからも全力を尽くしていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

桝田 クロスボーダー課はまだ発足から1年弱と日が浅いですが、『カゲマス』『ダンクロ』に続いて新規プロジェクトも控えております。我こそはという方は採用ページからエントリーしていただければ嬉しいです。よろしくお願いします。

次回予告

次回は先日発表された新規タイトルのチームインタビューについてお届けする予定なので、お楽しみに!

株式会社Aiming
http://aiming-inc.com/
自分たちの面白いをカタチに変える
自分たちの面白いをカタチに変える

会社情報

会社名
株式会社Aiming
設立
2011年5月
代表者
代表取締役社長 椎葉 忠志
決算期
12月
直近業績
売上高181億9900万円、営業損益13億900万円の赤字、経常損益11億円の赤字、最終損益22億2700万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3911
企業データを見る