【目次】
■日本IP大活況期、商業施設がALL JAPAN化する2024年の上海
■静安大悦城の日本IPコラボ全盛時代:1万人が来るエヴァ・呪術コラボ、3日で数億円売上のちいかわコラボ
■新世界城も日本IPフロアが玉手箱状態、サンリオは2年でアジア売上が倍の200億弱
■ZXビルにみる上海「オタクビル」現状、中国市場の日本IPブームの火付け役
■ZX-All Japan IPの破壊力、2023→24年で倍々成長をみせる高収益ビル
■旺盛な中国企業、慎重な日本企業:対照的な展開スピード
■旺盛な日本IP需要を目の前に、その市場はローカル企業が取りつくしている
■日本IP大活況期、商業施設がALL JAPAN化する2024年の上海
人口2475万人を擁する上海市は東京都の人口約2倍、面積約3倍。GDP約90兆円、1人あたりGDP約350万円、いずれも中国No.1の「商業中心都市」だ。2022年の1年間でショッピングモールが20施設もオープンし、新規出店は1073店舗(うち133店舗が海外から)、カフェの数も8530軒(東京都で6710軒)と世界一の数を誇る「文化の最先端都市」でもある。日本企業にとっても中国市場への玄関口、最もゆかりが深い都市といえる。
その中心地「黄浦区」の南京東路~人民広場は、日本でいえば銀座と渋谷を足して割ったような地域といってよいだろうか。「新世界大丸百貨」(大丸がブランド貸をしている。6万m^2、2015年~)からはじまり、「新世界城」(7.5万m^2、1993年~)、「百聯ZX創趣場」(0.5万m^2、2023年~)など若者向けブランドのビルが並んでいる。その先に少し足を延ばすと静安区の「上海静安大悦城」(16万m^2、2010年~)もある。
これらのビルでは2024年7-9月の夏休み期間に、日系IPとのコラボが過去見たことのないレベルで行われていた。今回は「上海にみる日本IPの中国ポテンシャル」についての取材である。結論からいうと「日系エンタメ企業は撤退傾向の中国市場で、いま日本IPが不況の救世主としてリテール業界で急激にもてはやされている」という合矛盾した現象が起きている。
なぜポップアップショップからフィギュアの棚に日本IPが数多く立ち並ぶのか?それはデジタルでSNSが中心となったコロナ後の時代において「リアルこそがユーザーが自発的に拡散をしてくれる有効なプロモーション手段だ」ということだ。場所を大きく貸し切り、たいそうな装飾で飾ったポップアップ店舗はまるで町中がテーマパークになったようで、かつ誰かとともにその場で出会ったという感動をそのまま拡散写真に乗せてくれる。ショップはもはやユーザー人気を絞り切る物販会場ではなく、IPコレクションを見せる「メディア」なのだ。
■静安大悦城の日本IPコラボ全盛時代:1万人が来るエヴァ・呪術コラボ、3日で数億円売上のちいかわコラボ
300超もの店舗を集まる大悦城は、中国に16カ所も施設をもち、売上132億元(2,600億円)規模にもなるJoy City Real Estateが運営しており、この静安だけで95%も埋まり、年間2億元(40億円)の賃料と2023年に『SPY×FAMJILY』『進撃の巨人』「伊藤潤二シリーズ」のポップアップが展開されていたが、今回は「JOY UNIVERSE」といって『呪術廻戦』に始まり、『藍色禁区(ブル―ロック)』『銀魂』『スキップとローファー』『新世紀福音戦士(エヴァンゲリオン)』『初音ミク』『ParadoxLive(パラライ)』といったIPが立ち並ぶ。
まず入口を入ると中心広場を盛大に飾っていたのは『呪術廻戦』のPOPUPSHOPである。コスプレーヤーが数十人という単位で滞在し、ショッピングモールなのかアニメイベントなのかが混乱するほどの大盛況、グッズを買うだけなのに1時間近い長蛇の列ができていた。上の階に足を運べばレッグス上海が展開する『呪術コラボカフェ』が展開され、これは現在日本で展開されたものをそのまま上海でも実施したものだ。アニメはすでに日本も中国も同時間に同タイミングで配信される時代だが、ついにテーマカフェすらも日中同時開催されるような時代に入った。
レッグス上海はもともと広告代理店のような立場で10年以上前から中国展開を行ってきたが、2010年代後半は日系代理店が続々と“撤退"していった時期である。アニメにゲームにと輸出需要に乗じて支社展開を強めていた2010年代半ばから、中国市場の難しさやエログロ規制が厳格で「版号」という形で許諾を得ないとゲームもアニメも映画も展開できない市場の制約を目の当たりにして撤退を決める。そうなると一緒に出ていった代理店としては“食いぶち"を失う。
そうした中で同社は2020年に「エヴァンゲリオン」のポップアップショップを展開し、意外な成功をおさめる。もうアニメの放映から20年以上たった本作は中国人気が根強く、人気のあまり3回も同じポップアップを実施したが、それでも1万人をこえるユーザーが押し寄せ続けていた。SNS全盛期となる時代においては、むしろリアルな場所でのオフラインの装飾や写真映えこそがユーザーのSNS拡散を手伝い、何よりのプロモーションになる、という“発見"をしたことで『働く細胞』『FGO/Fate Grand Order』や『ジョジョの奇妙な冒険』展などを続々展開してきたノウハウをもって、今回の『呪術』カフェも運営していた。
今回の呪術廻戦コラボカフェの肝は「日中同時開催」である。メニューの中身も日本で行われているテーマカフェをそのまま上海でも展開。アニメも同時視聴の時代だが、テーマカフェも時差や物流のハードルを越えて「同時開催」が求められる時代なのだ。
本屋でも『ファイアパンチ』『ルックバック』『チェンソーマン』などを集めた「藤本タツキ展」が展開され、『名探偵コナン』『SPY×FAMILY』『ブル―ロック』『葬送のフリーレン』はそれぞれの1ブロックずつプロモーションがされているほど取り扱いが大きかった。
同施設は2024年3月19日に「ちいかわ」の中国第一号ポップアップ展を展開したことでも有名になった。2023年に一大ブームとなっていた中国の地ではじめて展開された公式Popupは中国の大手雑貨チェーン「MINISO」とのコラボで、オープン前日から徹夜で並ぶ長蛇の列が7000人に及んだ。1店舗の売上は3日間で800万元(約1.6億円)、オンラインでは一度のライブ販売だけで100~250万元(約2000~5000万円)が動き、MINISO以外でも巨大な商圏を生み出している。
■新世界城も日本IPフロアが玉手箱状態、サンリオは2年でアジア売上が倍の200億弱
大悦城から歩いて5分ほど、こちらも有名な「新世界城」、年間売上2兆円を超える大不動産グループNew World Development Company によって1995年にリニューアルしたときには上海浦西で最大面積の商業施設としてデビュー。2019年の大規模改修時には「ナルトワールド」を含めた新体験レジャー施設となり、この数年で日本IPとの距離も急激に近づいている。半年前は4-5メートルサイズの巨大なポケモン人形が出迎えていたが、あっという間に様変わりして現在はサンリオコラボがビル全体の表看板を染め上げる。
まず目についたのは「初音ミク」コラボだ。正直各フロアに1つずつあるのではないかというほど、よく見かけた。Bilibili社でアレンジされた初音ミクは日本でみることがない形状で、単純に「日本で売れたモノの輸出」ではなく、もはや中国の顧客向けに「中国ローカライズされた初音ミク」のグッズが所狭しと並び、むしろ日本ファンがその希少性に買いに渡航するような状況にもなってきている。
新世界城も大悦城にならんで日本IPとコラボする歴史が長く、ここ数年は1フロアすべてが日本IP、といった具合だ。『呪術廻戦』『ブル―ロック』やVTuber『NIJISANJI EN』『ぼっちざろっく』があり、日本のゲームメーカーでもカプコンとコーエーテクモが自社ブランドショップを展開している。
子供も含めたマス向けブランドとしては『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『Pokemon』『ウルトラマン』『名探偵コナン』がトップ5ブランドといってよいだろう。特にクレヨンしんちゃんはこの数年で急激に勢いを伸ばしており、もともと韓国で強かった同ブランドが様々な中国ローカライズ品を増やしたり、中国市場に版権をアジャストしていったことが功を奏している。この2023~24年は30年前の日本国内のクレヨンしんちゃんブームに次ぐ「30年ぶりの過去最高売上」に沸いているのはこの中国市場での成功が大きく影響している。
もちろん中国・韓国IPも『原神』『ブルーアーカイブ』など広く展開されている。日本にはない特徴的なアミューズメントとしては、MRXのマーダーミステリープレイなどがある。4-5時間かけて皆で人狼のようなテーブルトップゲームをやるのだが、貸衣装があり、コスプレをするための化粧台まであり、かなり本格的な「ゲーム」である。日本であればカラオケやトレーディングカードゲームのファイトスペースといったところだが、それがもっとマス向けに本格的に楽しんでやろうという家族連れや友達がキャッキャキャッキャと湧いているのをみると、日本がもはやアジアのなかで必ずしもエンタメ先進国ではないのではないか、というほどのレベルで新しい遊びの形が生まれている。
新世界城を包んでいたサンリオはアジア地域売上を89億(2021)→103億(2022)→192億(2023)とたった2年でダブルスコアにまで成長させている。日系IPの中国市場需要は各社IRをみるだけでも顕著な結果となって現れている。
■ZXビルにみる上海「オタクビル」現状、中国市場の日本IPブームの火付け役
では、なぜ大悦城や新世界城のような大手ディベロッパーがこれほど日本IPとのコラボに力を入れるようになったのか?その起源は2023年にオープンしてビルまるごと日本IPで埋めてしまった「百聯ZX創趣場(通称ZXビル)」に起因する。百联集团は国有企業で売上30億元(約600億円)規模の不動産会社、決して前述の2つのモールと比べると大手とはいえない中堅サイズだ。だが、そんな彼らが「中国版オタクの聖地」ともいえるビルを一等丸ごとリスタートさせた2023年は分岐点となった。
実は百聯自体が新しいビルの開発を始めたのは2018年ごろ。そもそも日本IPやキャラクターなどの「推し」ブームへの気づきがあったが、それ以上に中国フィギュアメーカーPOPMART(日本でいえばグッドスマイルカンパニーのような会社)がIPコラボなどを展開し、飛躍的に玩具・MDを増やしていたことが大きなきっかけとなった。
「東京キャラクターストリート」など日本でもIPブームに火がついている傾向やPOPMARTの躍進もみて、百聯としても「ビル全体を日本IPで埋めてしまおう」というダイナミックなコンセプトを打ち出すに至る。コロナ禍のなかで、足しげく日本に通いながらバンダイ、Aniplex、東映アニメーションなどの1企業ずつ、1店舗ずつの出店を口説いていった。
現在5500m^2になるキャラクター向けの展示スペースは、ほかの商業施設に比べれば小さめ。オープン時に42店舗が同時リリースした。うち9店舗は直に日本からの出展社で、「アニメイト」「ANIPLEX」「東映アニメーション」、そして「TAMASHII NATION」「TOMIKA」「ガチャポン」「ブシロード」「Kelafan」「メガハウス」といった面々である。アニメイト、Aniplex、東映アニメーションは中国展開の歴史も長く“直営"での展開をしているが、むしろ驚くべきはその他6社が「中国初出展」であるという事実だ。まだ支社も作っていない中で、IPとしては中国人気が高まっており、今回のAll Japan商業ビルの開設にあたって大きな決断となったことだろう。
本商業ビルが扱うのは日系以外の企業であっても基本的には日系IPばかり。42店舗のうち18店舗が初出展となっているところから、中国企業としてもチャレンジ幅の大きいトライをしていた。「ほとんどノウハウも知見もない状態のIP版元・IPライセンシーを説得してAll Japan的なビルを建てたZ/X」の偉業の大きさを実感する。長い中国の日本IPコラボ史のなかでもここまで集中的に日系を集める取り組みは初めてのことである。
▲6階建てのフロア。B1に書籍、1Fにフラグシップ店舗・フィギュアがあり、2F~5Fの4フロアはキャラクターショップが立ち並び、6FにはVR体験Zoneがある
■ZX-All Japan IPの破壊力、2023→24年で倍々成長をみせる高収益ビル
Z/Xの成功の陰に、女性客の獲得がある。1Fにフィギュアやプラモデルを並べるのはモニュメント的で集客もいいが、男性客というのはとかく目的グッズをめがけて購入し、帰ってしまう。比べれば長時間眺めたり滞在してくれる女性客がいることがビルのブランディングとしても大きい。まさにこの写真が証明しているとおりだろう。
出典)「男と女の違いを『スカイリム』の洞窟とショッピングモールで比較」
実際にアニメイトのある5F最上階フロアは女性が7-8割を占め、つねに混雑したよい雰囲気を作れている。日本で女性向けIPを展開している企業は、まだ中国未進出でもポテンシャルのあるコンテンツは池袋にたくさん眠っている。ロリータ服やコスプレグッズ、お茶会のようなイベント型ショップも可能性があり、スポーツやタレントはまだまだ可能性があるだろう。
ZX全体で売上は数十億円と言われるが、2023年に比べて2024年はそれが倍のペースで成長している。これは実際とんでもない数字だ。面積でいえば20倍以上の「静安大悦城」の年間賃料収入が40億円程度であることを考えれば、いかに面積効率のよい結果となっているかがわかる。ZXの好業績によって、大悦城や新世界城が日本IPコラボを深めているのだ。
この好業績は2023~24年のコロナ後の景気と大きく連動しているといってよい。中国の場合は2020年のコロナ勃発期よりも、2022年末までの「ゼロコロナ戦略」時代のほうがダメージは大きい。それが放棄された2023年年初から2年間、いまだ海外からの渡航客(日本からの観光客はVISAも必要でかなり入国ハードルは高いままだ)が積極的に呼び込めていない中で「中国国内の地方部からの旅行客」がメインの顧客となる。上海在住者が半分をしめるが、もう半分は「中国国内からの観光客」であり、今後も中国への外国人観光客が増えていけばさらに伸びていく可能性がある。
■旺盛な中国企業、慎重な日本企業:対照的な展開スピード
こうした中国での日本IP好景気を見て、今日本企業はどのような状況だろうか?実は同時期に取材したChina Joyにおいて、日系企業で大型ブースを出展していたのはバンダイナムコグループくらいのもの。あとは「パルワールド」のポケットベアと、「くにおくん」のアークシステムワークス、コロナ前の喧騒はどこへやらで日本企業も日本作品も日本人駐在も影も形もないほどのイベントになってしまっていた。特にゲーム系はこの4-5年で版号がおりずにリリースできない状況をみて撤退傾向にある。玩具系でも、まだ気焔を吐いているといえる企業は少ない。
日系企業は今月が5000万円だとすれば来月は5500万円出せればいい。2店舗目を出すにも慎重を期し、場所×来客数×客単価をち密に計算し、収支が確実にとれる場合に年1店舗、2年で1店舗、という具合に一歩ずつ踏み固めていく。かたや中国企業はこれが売れるとなれば、あっというまに在庫をとりそろえて来年は1億円を目指す。そして同時に1年で10数店舗を同時開店してしまったりする。
それを「IP人気を絞りつくされる」という表現する版元もいたが、裏をかえせば需要があるうちに最大収益を確保しにいくスピード感に乗せてもらえているともいえる。直近では『ウルトラマン』や『Pokemon』『ちいかわ』の人気などが、そうした中国企業との提携によってうまくいった事例といえる。
もちろん中国支社があり、展開の歴史がある日系企業はそうした中でも機敏に対応はしている。メガハウスはMarch Monster、魂ネイションはFunfun、東映アニメーションはU-SHOP、AniplexはGoingなど、提携企業と一緒に展開している。だがまだ中国未進出の日系企業は、中国でのIP人気は把握しておりながらも実際に店舗を出そうという決定にいたるまでに(店舗運営は直営でなく委託だとしても)1年はかかってしまう。
日本IPを扱う「三月獣March Monster(杭州翻翻動漫ファンファン漫画グループ)」や「KUMATOYS」などは破竹の勢いだ。「来月出店しますか?」で即断できてしまうほどのスピード感で、上海だけでも20店舗展開をしており、蘇州や北京など他地方でもどんどん広げている。完全に直営にこだわらず、地方に関してはスピード優先でフランチャイズ展開も活用する。
ただ中国全土にどんどん広がればいいかというと、地方部が充実すると今度はわざわざ上海にインバウンドでくる中国人旅行客が買わなくなる。「ここにしかない」というグッズの希少性は考える必要もあるだろう。今後は版権を借りて、OEM(委託者のブランドで製品を製造する)やODM(委託者から製品の設計から開発まですべてを請け負う)などの形態も増えてくるだろう。
好況をみて日本企業のZX進出はさらに勢いを増している。2024年8月現在で「Good smile company」が開店準備中であり、まだ“新興"VTuber事務所のBrave Groupもポップアップショップを期間限定で展開している。もはや店舗も来場客もパンパンな状態であり、百聯は現在2号店として現在の1.5倍サイズのスペースを展開する予定で、新たな誘致に動いている。
■旺盛な日本IP需要を目の前に、その市場はローカル企業が取りつくしている
ZX以外も含め今回の7-9月シーズンは「呪術廻戦」、「初音ミク」、「エヴァンゲリオン」あたりが現在のPOP UP SHOPでよく展開されている人気IPであった。KADOKAWAの「パン泥棒」やの「シャム猫あずきさん」など、絵本発で中国で大きく人気を伸ばしているIPもある。
ではアニメ・漫画のキャラクターだけなのかというとそういうわけでもない。ポニーキャニオン所属のメイリア(美依礼芽)は「極楽浄土」をきっかけにいま中国で一番人気の日本人アーティストであり、中国ツアーも予定されている。タレントとしてのポップアップを出す話も進んでいたり、日本人タレントも一つのIPとして強い需要を感じる。
もちろん中国ならではの制約もある。「進撃の巨人」イベントは人気があったが暴力的な描写などが問題になり直前で開設がNGとなった事例もあった。「僕のヒーローアカデミア」も丸太問題(2020年に悪の組織の医師「志賀丸太」が旧日本軍の731部隊が捕虜を“マルタ"と呼んでいた事実を想起させるとして中国でのコミックス展開が不可能になった)もあり、一筋縄ではいかない。漫画原作がNGとなれば、当然ながらグッズやイベントなどを展開することにも施設側は臆病になる(禁止ではないので商品を置いてある店は多い)。
一度は人気になっても、継続的な盛り上げを作ることは難しい。2021~22年は中国版プロジェクト101でエイベックスの三太や力丸がそのメンバーとして大人気になり、フォロワー数も数百万クラス。だが番組が終わった後は継続的な露出が担保できていないうちに、ほかのアーティストがその座におさまってしまった。
だからこそだろう。展開は中国のローカル企業に任せれば、ということでマスターライセンス契約を締結してしまい、その成功の果実をほんのわずかなロイヤリティという形でしか受け取れていない企業がほとんど、という現実が今回の取材で明らかになってきたところだ。中国は難しい、だから東南アジアだ、やっぱりアメリカだという動きはもちろんそれなりの合理性はある。だがその「難しさ」の先に、確かな市場があり、それは日本で想像もできないレベルにまで膨れ上がっている。2024年に入って中国は不況だと聞いたかその影響はないのか?と現地の見識者に聞くと、「不動産もラグジュアリーも明確に買われなくなっているが、日本IPだけはポップアップを展開すると数字が跳ねる。オフラインイベントをしても反響がいい。だからどこの商業施設も日本IPに飛びついているんだ」という答えだった。
会社情報
- 会社名
- Re entertainment
- 設立
- 2021年7月
- 代表者
- 中山淳雄
- 直近業績
- エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
- 上場区分
- 未上場