【インタビュー】グリーグループのライブサービスゲーム事業統合の背景に迫る…モバイル、コンシューマ、アニメなど事業カテゴリ特化を推進した意図とは
グリーホールディングス<3632>は、2025年1月1日より、事業推進とユーザー体験の強化を目的に、ゲーム・アニメ事業のWFS、ポケラボ、グリーエンターテインメントの3社のライブサービスゲーム事業を中心に統合して事業運営していくことを発表した。また、コンシューマゲーム事業に特化したGREE Studiosを2024年11月1日付で、新たに設立。
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<ライブサービスゲーム事業統合および新会社設立 体制図>
今回の統合に関して、どのような背景があったのかを深掘りするため、gamebizではグリーホールディングス株式会社 取締役 上級執行役員兼GREE Studios代表取締役の前田悠太氏にインタビューを実施。その内容を以下にてお伝えしていく。
▲グリーホールディングス株式会社 取締役 上級執行役員兼GREE Studios代表取締役・前田悠太氏。
■事業統合でカテゴリに合わせた戦略を追求
――:まず、改めて今回WFS、ポケラボ、グリーエンターテインメントのライブサービスゲーム事業が統合するに至った経緯をお教えください。
前田悠太氏(以下、前田):そもそも、体制変更に関しては2023年より検討を進めてきました。毎日モバイルゲームで遊んでいるコアユーザーの主要タイトルが固定化されてきた中、1作品の作り込みを深めながら効率的に開発・運営を続け、ファンの方々に喜び続けてもらうには、組織が分散していると効率が悪いというのが大きな背景としてあります。だからこそ、ライブサービスという事業カテゴリのノウハウやリソースを集中させるため今回の統合という判断に至りました。
これまで、スタジオを分散させることで多面的な挑戦を増やすことができ、スタジオ単位で開発戦略自体のポートフォリオを持つというメリットはありました。しかし、作るものがどんどん大規模で複雑になってきた昨今、ひとつの作品を生み出すのにも長い開発期間が必要になり、カジュアルなやり方が時代に合わなくなってきたことも要因のひとつです。これからは、そういったより深い作り込みができるようにしていく必要があると考えています。
また、実際事業カテゴリごとに向き合うべき課題があり、より事業カテゴリごとの課題解決や戦略を追求しやすくしたという部分もあります。
これまでのWFS・ポケラボ・グリーエンターテインメントにおいてゲーム事業に従事する人員を合わせると約1200名ほどの規模になるのですが、このチームを分散するのではなく、市場に合わせた体制に移行しようというのが今回の統合の経緯になります。
――:モバイルとコンシューマそれぞれの事業を統合することでメリットがあると。
前田:仰る通りです。エンディングを前提とした作り方、遊ぶ環境やビジネスモデルなど、根本的な違いはありつつ、開発PDCAの回し方やファンの方々への向き合い方は共通する部分もあります。これまでライブサービスゲーム事業で培ってきたRPGの作り込みなど、強みは活かしつつもそれぞれの市場に合った作り方をシンプルに追求した方が効率は良くなると考えています。
――:ちなみに、今まで3社間ではどのように連携されていたのでしょうか? また、今回の統合でどのような変化が起きるかについてもお伺いしたいです。
前田:元々、ゲーム・アニメ事業の3社はオフィスも一緒ですし、これまでも各社間での交流も盛んだったため、短期的には大きな変化はないと考えています。また、中期的には市場環境に合わせて、それぞれの会社がこれまで培ってきた特徴や強みを取り入れていきたいと考えています。
また、これまでは会社が異なることから触れられない情報も当然あり、そのためにグループでも活用しきれていないノウハウが点在していました。これも、今回の統合により各メンバーがリーチできる情報が増え、ノウハウが積み上げやすくなっていくと思います。
――:ちなみに、これまではWFS、ポケラボ、グリーエンターテインメントでどのような特徴があったとお考えでしょうか?
前田:基本的には開発戦略が異なっています。例えば、WFSであればストーリーテリングなRPGを作っていました。ポケラボはエンドコンテンツを軸としたダークファンタジー調のゲームに特化していましたし、グリーエンターテインメントはブラウザ時代からのタイトルも含めて超長期運営に関するノウハウが溜まっています。そのような特性や戦略ごとのスタジオ子会社体制でした。短期的に何かが変わることはなく、中長期的にはそれぞれの良いところを融合させて、よりファンの方々に喜んで頂ける開発・運用体制にしていきたいと考えています。
――:今後、WFSとポケラボの開発者が同じチームでひとつのタイトルを制作することになった際、どういった化学反応が生まれることに期待しているかについてもお話を聞かせてください。
前田:これに関しては、グループ間でメンバーが相互に異動し合うということはこれまでもありましたが、統合することでよりその障壁は少なくなります。既にクリエイター同士は具体的な協業をはじめており、この延長線上で、どんどん自然なコラボレーションが生まれ、各社の特徴や強みがそれぞれのタイトルに反映されていくとよい化学反応になってくるのではと考えています。
――:既存タイトルへの影響はあるのでしょうか?
前田:運営中のタイトルは、基本的には、既にファンの方々とのコミュニケーションの中で煮詰めたものを提供しているので、会社側の都合だけでそれを急に変えたり、押し付けたりするつもりはありません。
――:今回、「ポケラボ」の名前をWFS傘下のブランドとして残したのにはどのような背景があったのでしょうか?
前田:まず一般論として、ゲームスタジオの法人格とブランドは別物だという前提があるうえで、ブランドにおける特徴が認知されていると考えています。つまり、「ポケラボ」のタイトルについては”ポケラボらしさ”があり、「ライトフライヤースタジオ」のタイトルは”ライトフライヤースタジオらしさ”があり、それらも会社の大事な資産です。これからも各々の特徴を活かしたゲームブランドとしての開発を行っていけたらと思っています。
――:新たに設立されたGREE Studiosではコンシューマゲーム事業を展開していくとの話ですが、御社から見た現在のコンシューマゲーム市場の印象はいかがでしょうか?
前田:月並みですが、Steamが市場を大きく進化させている状態だと思っています。ジャンルに多様性があってインディー市場も盛り上がっていますし、それは参入の多様性としても凄く面白いと感じています。この3年間ほど、WFSとポケラボで、水面化でコンシューマゲームのR&Dや企画もしてきました。我々のようなライブサービスゲーム事業を主としてきた会社の強みを活かしながら、今の時代に合ったコンシューマゲームを作れるのではないかというビジョンが見えてきたからこそ、今回、GREE Studiosを立ち上げ、コンシューマゲーム事業も統合したという流れになります。
――:GREE Studiosとしては、今後どういった方針でコンシューマゲームを開発されていくのでしょうか?
前田:詳細な情報に関してはまた改めて公開したいと考えています。これまでの強みを活かしたRPG系のプロジェクトや、全く新しいジャンルに挑戦するプロジェクトなど複数準備しています。今後の詳細情報に関しては、改めて順次公開させていただきたいと考えています。
――:アニメ製作を担うグリーエンターテインメントでは、自社タイトルのアニメ化と、他社から相談があったIPのアニメ化、どちらを主軸に考えておられるのでしょうか?
前田:どちらも実現しているという実績があるうえで、軸になるのは後者です。中でも、ゲームとの相性が良い作品を、これまでも特にアニメ事業として取り組んできています。アニメを作ったうえでゲーム化するという流れをメインに展望を描いております。もちろん、内製のオリジナルゲームタイトルも増えてきてアニメ化の需要もあるので、そちらも進めていく予定です。
――:最後に、新たな体制となったことで今後3社が見据えている展望についてもお聞かせください。
前田:冒頭にも申し上げた通り、今回、自分たちが注力すべき事業カテゴリごとに再編を行いました。今後も、愚直にお客様やパートナー企業様と向き合うことで、良質な作品や、運営を通じて「この会社の作品だからプレイしてみたい」、「この会社が関わっているからプレイしてみたい」と思っていただけるお客様が増えること、また「この会社に、このIP作品を任せたい」と、他社様に思ってもらえるようになることを目指し良いものを作り続け、皆様に愛されるスタジオ・会社にしていきたいと強く思っています。
今回の再編で、外から見たときにも分かりやすくなったと思います。これまで、パートナー企業様や協業先様からは、社内にモバイルゲームを制作するスタジオが3つあることで何をどこに相談すれば良いのか迷ってしまわれる部分もありましたが、統合したことで今後、ライブサービスゲームについて相談するならWFS、コンシューマゲームならGREE Studios、アニメ関連ならグリーエンターテインメントと、分かりやすくなったと思います。今後は、ライブサービスゲームとコンシューマゲーム、アニメ製作・ライセンス、全てにおいてお客さまやパートナー企業さまと真摯に向き合い続けられる会社でありたいと考えています。
――:本日はありがとうございました。
(取材・文 編集部:山岡広樹)
会社情報
- 会社名
- グリーホールディングス株式会社
- 設立
- 2004年12月
- 代表者
- 代表取締役会長兼社長 田中 良和
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高571億1100万円、営業利益48億6000万円、経常利益37億6000万円、最終利益11億9400万円(2025年6月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3632
会社情報
- 会社名
- ポケラボ
- 設立
- 2007年11月
会社情報
- 会社名
- 株式会社WFS
- 設立
- 2014年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 柳原 陽太
会社情報
- 会社名
- グリーエンターテインメント株式会社
- 設立
- 2021年7月
- 代表者
- 代表取締役社長 柿沼 洋平