【インタビュー】“第二創業期”の開始から1年──V字回復による黒字化を達成したG2 Studiosが目指す、"ヒット率No.1のゲームスタジオ”とは

2024年春、「第二創業期」としてのスタートを切ったG2 Studios。
新体制では、「誇りを持ってユーザーと作品に向きあう開発スタジオでありたい」と同社代表の久保氏は語っていた。
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あれから1年。ゲーム業界でも様々な市場の変化が進む中、G2 Studiosのその後はどうなったのか。
本稿では、前回の取材からの同社の近況について、久保氏と、G2 Studiosと親会社であるTHE FIRSTの取締役を兼任する佐藤氏、G2 Studios執行役員加納氏にインタビューを実施。グループにおけるエンターテインメント事業とG2 Studiosの現在地について聞いてみた。
「第二創業期」から1年。G2 Studiosの今とは。
── 昨年のインタビューでは、G2 Studiosの第二創業期の幕開けとして「アニメIPのゲーム化という分野で、国内No.1を目指す」と語られていました。そこからの1年を振り返って、事業面ではどのような変化があったのでしょうか。
久保氏:明確に言えるのは、この1年は”経営の地盤づくり”をやり切る期間であって、結果として企業としての健全化が実現できた、ということです。具体的には「ゲームデベロッパーが事業としてやるべきこと」を明確にしたことで、V字回復により黒字化を実現できました。
2024年春の時点は、企業としては苦しい時期であり、急ピッチでの組織構造や収益構造の再構築が必要なフェーズでした。ましてや経営体制が変わったタイミングであり、200名を超える社員とのお互いの理解も不十分な状況です。そこから重要な事業課題、組織課題に対してスピード感をもって対応を進めるとともに、「強くて良い会社」を目指すうえで中長期的に取り組むべき経営テーマへの方針を定めてきました。結果としては、短期間での改革が進み、まずはしっかりと利益を出せる状態まで改善することができました。
また、当然のことながら会社に急激な変化が起こるタイミングなので、離れるメンバーもいて寂しい思いもしました。しかし、一緒に会社を良くしていきたい、もっと良いサービスを作っていきたいと思ってくれるメンバーが思った以上に多く居てくれたおかげで、スピード感をもって改革を進めていくことができました。G2 Studiosがここまで短期間で変わることができたのは、従業員の理解と協力があったからこそと感謝しています。
加えて、フィロソフィーの見直しも行いました。2024年春に、G2 StudiosのValue(価値基準)を「五方よし」に見直しました。五方よしとは、ユーザー、版元、パブリッシャー、チーム(当社)、社会の五方すべてにとって良い状態を作ろう、そういった判断を行うという価値基準です。
これは、変化が激しいゲーム市場において、当社のようなIPを扱うゲームデベロッパーが事業を継続するために非常に重要なことであると考えています。これからのG2 Studiosは、今まで以上に周辺のステークホルダーのことを意識し、すべてのステークホルダーにとって定性的、定量的な価値のある状況を目指していきます。具体的には、ユーザーに面白いコンテンツを届けるだけでなく、版元様やパブリッシャー様にとってのIP戦略や経済的な利益を生み出し、当社の社員や社会にとっても価値のある仕事をしていく、そういった想いです。
そのうえで、今年はG2 StudiosのVision(目指す組織)を「日本一のアニメIPゲームスタジオになるために、まずは『ヒット率No.1のゲームスタジオ』になる」に見直しました。
前回話していた「アニメIPのゲーム化という分野で、国内No.1を目指す」、「ゲームづくりを本気でやり切る」というテーマは今も変わっていません。しかしながら、1年が経った今、組織としてこの瞬間にやるべきことの全社員の解像度を高めたいという思いから、目指す組織を「ヒット率No.1のゲームスタジオ」という非常にシンプルな目標に修正しました。
「五方よし」であり「ヒット率 No.1のゲームスタジオ」な状態とは、要するに、G2 Studiosに依頼をすれば「IP戦略に沿ったオモシロいコンテンツを開発できる」だけでなく、「どこよりも成功確度が高く、投資回収の確率や期間が早い」ということです。これは今のゲーム業界では非常に求められていることであり、当社が再現性をもってビジネスを成長させ、日本一のアニメIPゲームスタジオを目指すうえでも絶対的に必要なことだと思っています。
またプロジェクトの規模感については、当社のこれまでの実績から中規模予算(約10~20億円)のIPタイトルの成功確度を高めることに集中し、ノウハウや競争力を高めていくことが重要であると考えています。
更に、G2 StudiosとTHE FIRSTのエンターテインメント事業部が一体となって、両社の強みや特徴を生かした組織を作っていきます。すでに関連する部署では人的な連携や融合が進んで、一体となって仕事に取り組んでいますが、2025年7月に東京の本社オフィスの統合を予定していることなど、今年はこれまで以上にグループ一体となり事業に取り組んでいければと考えています。
このように、G2 Studiosは第二創業期は短期間で様々な改革を進め、企業としての健全性を高めるとともに、ゲームスタジオとしてやるべきことを明確にしてきました。
今後は、これを形にするための具体的な施策をひとつひとつ実行していくことや、目の前で取り組ませていただいているプロジェクトをしっかりと成功させることに全力で取り組んでいきます。
── 実際に手がけているタイトル数や開発ラインも変わってきているのでしょうか?
佐藤氏:はい。昨年の3月から新規が2本増えて新規の開発ラインが4本、かつ様々なパブリッシャー様と連携をしながら開発しています。特にキャラクターにかかる2Dのアート表現と演出に期待いただく案件が多く、弊社内ではイラストやLive2D、Spineなどを中心にさらなるノウハウとチーム体制の強化を進めています。
昨今のゲーム業界では、体制面やノウハウ含めて”作れる”開発ラインがだいぶ減っており、お声掛けは多くいただくようになりました。もちろん、弊社に開発を任せていただけるだけでも非常に有難いことです。 結果で報いるためには、他デベロッパーよりも迷わずより良い物を、より短い期間で作り、ブラシュアップの工数を確保することが、クライアントのみでなくユーザー様にも認められる品質でお届けするために重要だと考えています。
── パブリッシャー企業との関係や、期待されることに変化はありましたか?
久保氏:デベロッパー自体も減ってきているなかで、パブリッシャー様のビジネスモデルや経営方針の変化に伴い、当社に期待されることは変わってきている印象があります。最近では開発だけでなく、マーケティングやCSなどのパブリッシングの一部を相談されるケースも増えています。
加納氏:開発現場の視点では、経営体制が変わったことで、これまで以上に「コンテンツファースト」で判断ができるようになりました。その結果として、パブリッシャー様やパートナー企業様からの信頼が高まってきているかなと感じます。あるタイトルでは、長年の間パブリッシャー様が企画とクリエイティブの制作を担い、当社がゲーム開発・運営を行う座組でサービスを運営してきましたが、今年からは企画やクリエイティブ制作の大部分を含めた運営を弊社主導に任せていただく形に変わるなど、実際に評価いただけたことが形になったのは嬉しいですね。

── 実質的にパブリッシャーとデベロッパーの“一体運営”に近づいてきていると。
佐藤氏:そうですね。パブリッシャー様と共通目標と意識があるからこそ、運営とプロモーションといったユーザーコミュニケーションが連動してくる。これも「ヒット率を高める体制」の一つの要素だと思います。
「”売れる”アソビ創造集団。」を目指して

── この1年の中で、組織や人に関する“カルチャーの変化”も進んだとのことですが、改めてG2 Studios・THE FIRSTの職場環境や人材観について教えてください。
久保氏:先ほどフィロソフィーの見直しを行ったと説明させていただきましたが、実はMission(使命)についてもマイナーチェンジを行いました。
G2 Studiosは2018年の設立以来、「アソビ創造集団。」というMissionを掲げ、ゲームやコンテンツ作りが好きなメンバーが集まり、よりオモシロいゲーム作りに取り組んできました。しかしながら、昨今のゲーム市場において当社が成長していくためには、開発プロジェクトの成功確度を高めていくことが重要です。成功とは「オモシロいコンテンツ」を作るだけでなく、「ヒットして長く続ける」ことだと思っています。
パブリッシャー様や版元様にしっかりと利益を生み出しながら、ユーザー様に長くサービスを楽しんでもらう。当たり前のことなのですが、この当たり前のことに向けて徹底するゲームスタジオでありたいという思いから、このタイミングでMissionを「”売れる”アソビ創造集団。」に変更しました。
当然、しっかりとした黒字体質で、安定した財務基盤の維持があってこそできることではありますが、自社の利益のみを追及するのではなく、長く作品が続き関係する人たちみんなにとっていい状態を続けること、そのためにヒットさせることに重きをおいて事業運営を行っています。 実際にこの1年でも「持ち出しで利益率を下げても良いから、ここはチャンレンジしよう」、「このタイミングでやらないとコンテンツにとってマイナス、後で後悔するならやってみよう」といったことから、いくつかの投資を行いコンテンツ改善の成功に繋げていっています。
また、経営理念の変化に合わせて、組織や各メンバーが同じ方向を見て事業に取り組めるよう、経営管理の仕組みや組織構造、人事制度の見直しを進めてきました。配属先のそれぞれのプロジェクトにコミットしながらも職種横断でノウハウ共有ができるチームビルディングや、目標設定の手法など、これまで以上に個人がチームに対して付加価値を出す構造を意識して改善を進めていっています。
加納氏:個人的に大事にしているのは、“どんな人が光るか”という視点です。我々の現場は、マネジメント志向の人もいれば、デザインクオリティやゲームの面白さに強いこだわりを持つ人もいる。そういった多様性を受け入れながら、それぞれが自分のスタイルで挑戦できる空気感を作ることを意識しています。

── 社内のコミュニケーションや評価については、どのような特徴がありますか?
久保氏:定期的な1on1やフィードバック制度を通じて、なるべく「納得感のある評価」を実現するよう心がけています。また、組織や個人のアウトプットのスピードと品質の両方をバランスよく追及する文化を目指しています。あいまいな中でも仮説を立てて前進する、課題の解像度を高めて解決する、こだわるべきポイントには徹底的にこだわり、そして実行しきる、その姿勢を評価する文化が徐々に浸透してきました。
加納氏:そうですね。一人ひとりがゲームの開発や運営に注力・貢献できているかを評価できるような制度や文化が醸成されてきています。
また、新規プロジェクトの立ち上げや開発・運営しているゲームをより良くするための「企画立案」「提案」といった行為そのものを歓迎する雰囲気があります。上下関係ではなく、“プロジェクトを良くするための発言”として受け取るカルチャーが育ってきていると感じますね。
── 新たにジョインする人にとっても、働きやすい文化が整ってきたという印象です。
佐藤氏:はい。特に今は、再チャレンジをしたい人、成長の手応えをもう一度得たい人にとって、良いフェーズに入っていると思います。ベテランにも、若手にも、それぞれに役割と挑戦の場がある。そんな組織を目指しています。
信頼されるゲームスタジオとして仲間を募集中!
── 最後に、今後の展望についてお聞かせください。この先、G2 StudiosとTHE FIRSTはどのような未来を描いているのでしょうか?
久保氏:今まさに、いくつかのプロジェクトが開発の佳境を迎えており、2025年は“勝負の年”になると考えています。中長期的な経営課題への取り組み以上に、目の前のプロジェクトの成功に向けて全チームが一丸となっています。

佐藤氏:アニプレックス様から配信を予定し、THE FIRSTで運営を担う『オルタナヴェルト -青の祓魔師 外伝-』についてもご期待いただきたいです。開発元は弊社ではないものの、運営準備にとどまらず設計やUI面の改善、公開されているキービジュアルから一部キャラクター設定の制作など、関わりは多岐に渡ります。 今年1月に立ち上げた札幌支社を中心に、国内外のユーザーさまに対してゲームを運営していく体制とノウハウづくりも行っております。 グループ全体として提案力・開発力・運営力の3軸を磨いていきたいと考えています。
── 最後に、この記事を読んでいる業界関係者や、G2 Studios・THE FIRSTに関心のある読者にメッセージをお願いします。

久保氏:今、G2 StudiosとTHE FIRSTはまさに“挑戦のフェーズ”にあります。これまでの成功や反省も踏まえながら、次の一手を本気で形にしようとしています。IPへの敬意、ユーザーへの誠実さ、そしてエンタメへの情熱を持った方と一緒に、グループの未来を創っていきたいと思っています。
ゲームタイトルについても年間で2本以上はリリースしていけるようなプロジェクト数と体制を続けていきますので、様々な経験やチャレンジができるチャンスも多くあります。
加納氏:これからのG2 Studios・THE FIRSTは、“変化を楽しみ、挑戦を称える”組織であり続けたいと思っていますので、ご自身のゲーム開発の可能性を広げたい方とはぜひお会いしたいですね。
佐藤氏: あっという間の1年でしたが、よりゲーム開発や運営に対して、また真摯にユーザーのことを考えて行動できる会社になってきたと思いますし、もっと頑張って行きたいです。そんな環境で力を発揮したい方がいれば、ぜひ一度、扉を叩いていただけたら嬉しいです。
── ありがとうございました。
撮影場所: WeWork渋谷
なお、G2 Studios・THE FIRSTでは現在、以下職種を中心にメンバーを積極採用中だ。札幌メンバーの募集など幅広く拡大を目指しているので、気になる人はチェックしてみてほしい。
・運営ディレクター【運用タイトル経験5年以上必須】
・ディレクター候補【有名IPを使った開発タイトル】
・運営プランナー(運営プランナー経験3年以上必須)
・クリエイティブセクションにおけるマネジメント業務
・ゲームプランナー【札幌/UIターン歓迎】第2期メンバー募集!オンラインゲーム開発/運用/ローカライズ
会社情報
- 会社名
- THE FIRST株式会社
- 設立
- 2016年6月
- 代表者
- 代表取締役 福地 正幸/久保 宗大
- 決算期
- 9月
- 上場区分
- 未上場