【インタビュー】『アイナナ』10周年運営と新作開発の挑戦―キーマンが語る新オフィスと共創体制で拡大するG2 Studiosの現在地

「第二創業期」を掲げてV字回復を実現したG2 Studios。事業成長に伴う体制強化の一環として、2025年7月より新オフィスに移転したという。
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あれから1年。ゲーム業界でも様々な市場の変化が進む中、G2 Studiosのその後はどうなったのか。
本稿ではG2 Studios執行役員の加納氏へインタビューを実施。新体制の狙いやオフィス環境に込めた思想、“共創”をキーワードとした組織文化の深化、そして今後の展望までを伺った。
V字回復からの新たな体制強化―G2 Studiosオフィス移転の狙い
──: この7月より新オフィスへと移転となりましたが、改めて移転経緯についてお聞きしても良いですか?
G2 Studiosの第二創業期として事業方針の転換や経営理念の見直しが行われてきました。そして約1年が経ち、安定してきたとともに、会社としてもう一段階成長するフェーズにあります。
その上では、従業員の働き方や働く環境については、特に重視しています。私たちは「より良いものを、スピード感をもって作るためには、圧倒的に円滑なコミュニケーション」が大切だと考えています。以前のオフィスでは座席数や設計の自由度に制約があり、どうしても手狭であったり、G2 Studiosにとって最適な形を実現することが難しい部分がありました。また、グループ会社との連携を強化するためにも、拠点を統合していくことが必要でした。
そのような中で、今回のオフィスに出会うことができ、このタイミングで移転することを決断いたしました。結果としては最適なタイミングであったと感じています。
また、新しいオフィスは、「働く環境から一緒に作っていきたい」という想いの象徴であり、社員と共に“創る” ことを大切にしたいという経営陣の想いが込められています。最初からすべてを揃えるのではなく、あえて余白やメリハリをつくり、ここで働く社員とともに私たちらしいオフィスに育てていきたいと思っています。
──: 新オフィスのほか、大阪に新たな開発拠点が立ち上がったとのことですが、その背景や狙いについて教えてください。
大阪では、これまで主にMMORPGを開発運営していたチームに合流いただきました。現在は、スマートフォンゲームの運営案件と新規オンラインゲームのプロトタイプ開発を行っており、今後はプロジェクトに応じて段階的に規模を拡大していく計画です。拠点の増加によって、物理的な距離は広がりましたが、オンラインでのやり取りを通じて連携がスムーズに行える体制づくりを心がけています。
──: 開発体制についても、変化があったと伺っています。現在はどのような構造でプロジェクトを進行しているのでしょうか?

2024年度から大きな体制変更を行い、「開発スタジオ型」の考え方に近い構造にしています。THE FIRSTとG2 Studiosで東京・大阪・札幌の3拠点があり、それぞれ開発責任を持ち、独立性を高めた分業体制を採っています。
各スタジオがオーナーシップを持ってプロジェクトを進行できる体制にしたことで、意思決定のスピードが上がり、クリエイティブへの集中度も高まっています。
またグローバル向けのサービスの観点で、札幌スタジオも一つの鍵になっています。ここではローカライズやカルチャライズ対応だけでなく、グローバルユーザー向けのUI/UX検証や市場調査も行っています。東京とは異なる視点でプロダクトを見られるという点で、非常に重要な役割を担っています。それぞれの拠点にある強みを活かしつつ、より良いゲーム作りに注力したいですね。
──: 職能を越えた“共創”の場を意識しているのですね。今、その体制は以前より進化していますか?
以前より、ゲーム企画とビジュアル制作、エンジニアリングのそれぞれが、同じテーブルで議論できる文化がありましたが、新オフィスへの移転や大阪拠点の開設を通じて、その“共創”の幅がさらに広がっています。
とくに、初期段階から複数職能が関わることによって、アイデアがより柔軟に、そしてスピーディに形になっていく実感があります。職能の壁を越えた“プロジェクトチームとしての一体感”が生まれているのは、組織として大きな強みだと思います。
新作を控えるほか更なる10年を目指す『アイドリッシュセブン』

──:オフィス移転にて更なる体制強化となったわけですが、改めて、御社にて手がけているゲームについての近況をお聞かせいただけますでしょうか。
前回からの新しい動きで言いますと、『オルタナヴェルト -青の祓魔師 外伝-』がリリースされました。
本タイトルは、THE FIRST札幌オフィスを中心に、日本語版、英語版の同時運営をおこなっています。現在は、一部のお客様で発生している不具合の解消に努めておりますが、この夏よりイベントやキャンペーン、アップデートを細かくおこないながら、より良いサービスを目指していきます。
G2 Studiosの動きで言うと詳細なタイトルはまだお伝えできないのですが、来年のリリースを目標に複数の新作が動いており、ちょうど開発も後半に差し掛かるくらいのタイミングです。これまでお付き合いのなかったパートナー様とも、新たなチャレンジに取り組めておりますので、G2の新作にぜひご期待いただければと思います。
──:既存タイトルについてはいかがでしょうか。
新作と同じように、運営中のタイトルも我々の柱の一つです。
その中でも『アイドリッシュセブン』は今年で10周年を迎えるタイトルで、大きな節目になります。これまで長く携わってきた中で、IPに対する理解も深まり、社内にしっかりと知見が蓄積されています。特に今は、メンバーのモチベーションも非常に高く、チームとしては10年の運営の中で一番良い状態にあると思っています。
長く運営を積み上げてきた結果、パートナー企業さんからも信頼いただけていると感じておりますし、未来に向けた運営を考えながら、さらにファンの皆様に感動を与えられるようチャレンジをしていこうという気持ちでプロジェクトメンバーも運営できています。
長期タイトルらしい効率化や安定的な運用だけでなく、新しい驚きを届けるための工夫も重要視して、これからもファンの皆様にとって安心かつ魅力的なサービスを提供し続けていきたいと思います。目指すは15年、20年と長く愛される運営タイトルになること、そのための仕組みや運営体制をしっかり整えておりますのでこちらも楽しみにしてもらいたいですね。
新しいオフィスでの芽吹く「共創」のゲームスタジオ
──:再びオフィスについてとなりますが、加納さんご自身のお気に入りの場所などはありますか?
個人的には、エントランスが一番気に入っていますね。会社のロゴが掲げられ、G2 Studios THE FIRSTというブランドが象徴的に表現されているのを見ると、「自分たちの場所がここにあるんだ」とテンションが上がります(笑)。

執務室内で言うと、オープンスペースのソファや椅子の座り心地が非常に良くて、クリエイターが集中できる空間になっていると感じています。制作や共創する環境づくりが意識されているなと感じますね。

──:ありがとうございます。他のメンバーからの反響はいかがでしょうか。
私が耳にする限り良い反応が非常に多いです。初日から「このオフィスいいですね」と言ってくれるメンバーが多くて、狙いどおりだったなと感じています。渋谷という場所もこれまでと変わらず、立地としても不満はありませんし、フリースペースも広く、自然な雑談やチームを跨いだコミュニケーションが生まれる設計になっている点が非常に良いですね。


また新しいオフィスでの、良い化学反応が起きているなと感じます。というのも、オフィス移転をきっかけに、THE FIRSTとの交流も増えてきました。
例えば、ある課題に対してTHE FIRSTのメンバーに相談したところ、G2にはない知見が得られ解決に導く糸口を掴むことができました。G2とは違った強みがあるTHE FIRSTがいたからこと解決できたことでした。このようなグループ企業同士の連携によって、会社の枠を超えた「共創」が生まれている実感があります。
それぞれ得意分野が異なるからこそ、補完し合いながら新しい価値を創出できる。今後は運営以外にローカライズといった分野でも、より連携が深まると考えています。
──:オフィスという皆が集まることができる場所があってこそのメリットと言えますね。
そうですね。刺激を受け合いながら切磋琢磨できていると思います。
またオフィスの変化だけでなく、より良いクオリティでゲームを提供していくためにグラフィックを推進するチームを作ったなど組織の変化もあります。
もとからグラフィックについては、パートナー様からも「これほど高いレベルの2D表現が制作できるのか」と驚かれることもありG2 Studiosの強みとなっていました。2D表現といっても、イラスト・エフェクト演出・カメラワーク・アニメーション・UI含めた総合的な演出体験が必要なため、横断的に成功事例の展開やナレッジ共有を行い、この分野の強みをより研ぎ澄ましていくために新たなチームを発足しました。
──:ユーザーにとって、ビジュアルや演出がその作品の“第一印象”でもありますからね。
だからこそ、G2では企画段階からプランナー・エンジニア・デザイナーが一丸となって検討するようにしています。作品の“らしさ”を視覚的にどう定義するかは、今後のプロジェクト全体に関わってくる要素です。ビジュアル表現は、単なる手段ではなく“クリエイティブの思想”だと思っています。
そういった“共創”の幅を活かすようにしているのもあり、既存のタイトルでも、G2主導での開発・運営を任せていただくケースも増えました。そういった変化は評価いただけているという実感を得られるためチームとしても嬉しいですね。新しい環境でも大事にしていきたいと思います。
――:現在も体制強化されているとのことですが、どういった人物を特に求めているのでしょうか。
G2はIPを扱うゲーム開発がメインとなるため、担当プロジェクトのIPに愛を持ち、最大限に活かすことに意欲的で、推進力のある「コンテンツディレクター」、そしてコンテンツをゲームに落とし込むための設計を深く考え抜くことができる「プランナー」が今のフェーズでは特に必要だと考えています。
良くどんな経歴やスキルが必要ですか、と聞かれることがありますが、特別な経歴が必要なわけではないと私は考えています。別セクションからのポジション変更、例えばプログラマー出身のプランナーやディレクターも活躍していますし、何よりも“やりたい”という気持ちを持っている方に来ていただきたいです。
開発において大事なのは、どれだけ考え抜けるかということだと思っており、例えば、今の世の中でヒットしているゲームが出た時に、それがただ「人気IPを使っているから」だけでなく、「ゲーム設計のどの部分に反響があるのか」「そのIPのファンに対してはどういった部分が、どんな理由で刺さっているのか」なども仮説を立てながら深く分解して考えられることが大事だと思います。
これは、作品が好きだとか、IPを活用した開発経験があるだけでは足りない大事な素養だと思うので、“やりたい”という気持ちを持ち深く考えることが好きな人とぜひ一度お話をしてみたいですね。
──:最後に、この記事を読んでいる業界関係者や、G2 Studiosに関心を持っている方々へ向けてメッセージをお願いします。
今、G2 Studiosは新たな拠点と開発環境を得て、まさに“次の10年”に向けた歩みを始めたところです。私たちは「おもしろさの原点」を忘れずに、丁寧に、そして情熱的にゲームづくりに取り組んでいます。開発の現場では、挑戦が歓迎される風土が根付いており、異なる視点が交差することで新しい価値が生まれる瞬間を日々目にしています。
新たな体制でこれまで以上にファンの皆様に驚きや感動を届けられるゲーム開発を実現していくので、今まで遊んでいただいている方はもちろん、この記事を見た方もぜひ私たちの作品を手に取ってみていただきたいですね。

また、新しい拠点で歩みだしたばかりということもあり、みんなが同じ目線で関わりやすい状況です。新しく入られた方も垣根なく「自分たちの場所だ」と思ってもらえる状況であり、今こういったフェーズのゲーム会社も貴重かなと個人的には思います。
ですから、そうした場所に身を置いてみたいと思った方は、ぜひ一度オフィスに遊びに来てみてほしいです。
――:ありがとうございました。
なお、G2 Studios・THE FIRSTでは現在、以下職種を中心にメンバーを積極採用中だ。札幌メンバーの募集など幅広く拡大を目指しており、THE FIRST のキャリア採用説明&個別面談会も8月22日に実施予定だ。気になる人はチェックしてみてほしい。
・運営ディレクター【運用タイトル経験5年以上必須】
・ディレクター候補【有名IPを使った開発タイトル】
・運営プランナー(運営プランナー経験3年以上必須)
・クリエイティブセクションにおけるマネジメント業務
・ゲームプランナー【札幌/UIターン歓迎】第2期メンバー募集!オンラインゲーム開発/運用/ローカライズ
会社情報
- 会社名
- THE FIRST株式会社
- 設立
- 2016年6月
- 代表者
- 代表取締役 福地 正幸/久保 宗大
- 決算期
- 9月
- 上場区分
- 未上場
