
ネクソン<3659>は、8月13日、2026年12月期第2四半期の決算レターを公開し、2026年下期から2027年以降にかけて投入を予定する新作ゲームのパイプラインを明らかにした。2026年第3四半期から第4四半期にかけて複数タイトルのリリースを予定するほか、2027年以降も「アラド戦記」「マビノギ」といった既存フランチャイズの拡張タイトルや、完全新作を含む幅広いラインアップを揃えている。
同社は、今回の決算レターで、下半期について「新作タイトルのリリース」が成長を後押しする要因になると説明。第3四半期にはポートフォリオの多様化に伴う移行コストや新作のローンチマーケティング費用が発生する一方、下半期のリリース作品による売上収益の増加を期待しているという。
同社は、これまで長期間にわたって自社も含めて世界各地のゲーム開発スタジオへの地道な投資を行ってきたが、その成果が徐々に現れつつあるといえよう。
■2026年下期は『マビノギモバイル』日本版などを投入
まず注目されるのが、既に海外展開を開始している『マビノギモバイル』だ。
同作は7月22日に台湾、香港、マカオでサービスを開始。決算レターによると、これらの地域では堅調なスタートを切っており、第3四半期には前四半期比で二桁台の大幅な成長を見込んでいる。そして日本向けサービスについては第4四半期の開始を予定している。
ネクソンにとっては、韓国で展開している『マビノギ』ブランドをモバイルへ広げるだけでなく、日本を含む新たな市場へフランチャイズを拡大する取り組みとなる。
また、MINTROCKETが開発した『デイヴ・ザ・ダイバー』のモバイル版も9月17日にグローバルローンチを予定している。PCやコンソールで評価を得たタイトルをモバイルへ展開することで、新たなユーザー層へのリーチを狙う。
さらに、Bilibiliが開発するサブカルチャー系収集型3D RPG『Higan: Eruthyll』は7月23日に韓国でサービスを開始。Blizzard Entertainmentとのパブリッシング契約に基づくPC版『オーバーウォッチ』についても、8月12日から韓国でサービスを開始している。
■『アラド戦記』では「MapleStory」型の横展開を狙う
新作パイプラインの中でも特徴的なのが、『アラド戦記』フランチャイズの拡張だ。
ネクソンは『MapleStory Worlds』や『MapleStory: Idle RPG』によって、既存IPを異なるゲーム体験へ展開することでプレイヤーベースを拡大する戦略を進めている。今回の決算レターでは、この成功モデルを『アラド戦記』にも適用する方針を明確にしている。
その第一弾となるのが『Arad: Idle RPG』だ。新規カジュアル放置系ゲームとして第4四半期のローンチを予定しており、休眠ユーザーの呼び戻しと新規プレイヤーの獲得を狙う。
さらに、オリジナル版『アラド戦記』のアクション体験を現代向けに再構築する『Dungeon&Fighter Classic』、PC・コンソール向けオンラインアクションRPGの『Project OVERKILL』、そしてアラド戦記フランチャイズをグローバル市場へ展開する『Dungeon&Fighter: ARAD』も開発中だ。『Dungeon&Fighter Classic』については2027年のリリースを予定している。
つまり『アラド戦記』については、既存タイトルの運営だけでなく、カジュアルゲーム、クラシック版、PC・コンソール向け作品、グローバル展開タイトルと、複数の方向からブランドを再活性化する構えとなっている。
■外部開発タイトルも積極的に投入
完全な自社開発タイトルだけではなく、外部スタジオとのパートナーシップによる作品もラインアップに含まれている。
中国のManjuu Gamesが開発する『アズールプロミリア』は、独自のアートスタイルと壮大な世界観を特徴とするPC・モバイル向けファンタジーワールドRPGで、ネクソンは年内に韓国でパブリッシングする予定。
また、GRAYGAMESが開発する『TEMPPAL: OVERGEARED』は、人気ウェブ小説・ウェブトゥーン『テムパル』のIPを活用したフル3D MMORPG。リアルな中世ファンタジー世界と三人称視点のシームレスなオープンワールドを特徴とし、韓国、台湾、香港、マカオでのサービスを予定している。
こうした作品を組み合わせることで、ネクソンは自社フランチャイズだけに依存しないタイトルポートフォリオの構築も進めている。
■2027年以降は「フランチャイズ拡張」と「完全新作」の二本立て
2027年以降に目を向けると、パイプラインはさらに厚くなる。
『マビノギ』では、PC・コンソール向けアクションゲーム『Vindictus: Defying Fate』を2027年に基本プレイ無料でローンチする予定。さらに、オリジナルのPC版『マビノギ』をUnreal Engine 5へ移行する『Mabinogi Eternity』では、9月に韓国で初回アルファテストを実施する。
一方、完全新作では、荒廃したソウルを舞台にしたマルチプレイヤー型ゾンビサバイバルゲーム『NAKWON: LAST PARADISE』を2027年にグローバルリリースする予定。同作では『ARC Raiders』を手掛けたEmbark Studiosのデザイン、ナラティブ、技術面の知見も活用している。
このほか、朝鮮王朝時代の英雄チョン・ウチをモチーフにしたアクションアドベンチャー『Woochi the Wayfarer』、PC・コンソール向けマルチプレイヤーオープンワールドサバイバルゲーム『Durango World』、国内でも人気を詰めている『ブルーアーカイブ』の開発元であるIO divisionが手掛けるPC・モバイル・コンソール向けタイトル『Project RX』なども開発中だ。『Project RX』は東京ゲームショウ2026でプレイアブル出展を予定している。
さらに、『カートライダー』のリブート作品『クレイジーレーシング・カートライダー』、『デイヴ・ザ・ダイバー』のスピンオフとなる『バンチョ・ザ・シェフ』、『ゴジラディフェンスフォース: X』などもラインアップ。Embark Studiosでは初期開発段階にある2本の新作ゲームも存在する。
■『ARC Raiders』に続く「次の柱」をどう作るか
今回のパイプラインで興味深いのは、ネクソンが「既存IPの拡張」と「完全新作」の両方を並行して進めている点だ。
同社は経営変革の中で、利益率の低いライブ運営プロジェクトを段階的に縮小し、実績のあるフランチャイズへリソースを再配分する一方、大きな成長ポテンシャルを持つ新作への投資も継続している。
その象徴ともいえるのが『ARC Raiders』だ。同作は2026年第2四半期に183億円の売上収益を計上し、累計販売本数は1630万本を突破。ネクソンは、既存フランチャイズが優勢な欧米市場でも完全新作をヒットさせられることを同作が実証したと評価している。
今後は、この『ARC Raiders』で得たグローバル展開のノウハウを新作群へどう波及させるかもポイントになりそうだ。
2026年下期には『デイヴ・ザ・ダイバー』モバイル版や『Arad: Idle RPG』、『アズールプロミリア』、そして日本版『マビノギモバイル』などが控え、2027年以降には『Dungeon&Fighter Classic』『Vindictus: Defying Fate』『NAKWON: LAST PARADISE』などが続く。
既存IPを別ジャンル・別市場へ広げる「フランチャイズ拡張」と、世界市場を狙う完全新作。その両輪で、ネクソンが『ARC Raiders』に続く新たな成長ドライバーを生み出せるかが、今後の焦点となりそうだ。





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会社情報
- 会社名
- 株式会社ネクソン
- 設立
- 2002年12月
- 代表者
- 代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上収益4751億200万円、営業利益1240億1200万円、税引前利益1404億5100万円、最終利益920億5200万円(2025年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3659
